Photosynth 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Photosynth 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Photosynthは東京証券取引所グロース市場に上場しており、スマートロックなどのIoT機器を活用したAkerun入退室管理システムをはじめとする空間DX事業を展開しています。直近の業績トレンドとしては、複数サービスのパッケージ化によるクロスセル施策等が奏功し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社Photosynthの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Photosynthってどんな会社?


同社はスマートロックを活用したAkerun等のIoTサービスを通じて、空間DX事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2014年9月に設立され、2015年3月に家庭向けスマートロックを発表しました。2016年7月には法人向け「Akerun Pro」の提供を開始し、2021年11月にマザーズ(現グロース市場)へ上場しました。直近では2024年に施設運営BPaaSを手掛けるMigakunを設立し、2025年にfixUを完全子会社化するなど、無人化・省人化ソリューションを拡充しています。

同社の従業員数は連結で155名、単体で147名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の河瀬航大氏であり、第2位および第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
河瀬航大 15.82%
UH Partners 2投資事業有限責任組合 7.78%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は河瀬航大氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河瀬航大 代表取締役社長 2011年4月ガイアックス入社。2014年9月に同社を設立し、代表取締役社長に就任。
渡邉宏明 取締役副社長 2011年4月ソフトバンクテレコム(現ソフトバンク)入社。2014年9月に同社設立とともに取締役副社長に就任。2021年1月にMIWA Akerun Technologies代表取締役社長に就任。
熊谷悠哉 取締役 2012年4月パナソニック入社。2014年9月に同社入社。2020年3月に取締役に就任。


社外取締役は、島田和衛(元日本航空法務部副部長)、鈴木敦子(元起業家支援団体ETIC.創業)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空間DX事業」の単一セグメントのもと、複数のサービスを展開しています。

Akerun事業


同社の中核サービスであるAkerun入退室管理システムは、クラウドとインターネットでつながるスマートロック等のIoT端末を活用し、法人オフィスや住宅、商業施設などの入退室管理とセキュリティを提供しています。既存の扉に後付けでき、Web管理ツールでの権限設定や外部システムとの連携が可能です。

収益源は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたサブスクリプションモデルによる月額利用料です。法人向けサービスは同社が運営し、住宅向けサービスは美和ロックとの合弁会社であるMIWA Akerun Technologiesが展開しています。

施設運営BPaaS「Migakun」


Migakunは、ギグワーカープラットフォームを活用し、コワーキングスペースやフィットネスジム等の会員制施設における総務業務や清掃・管理などの施設運営を代行するサービスです。テクノロジーとリアルな業務を組み合わせることで、顧客企業の施設運営における無人化・省人化を支援しています。

収益源は、発注企業からの施設運営代行サービスの利用料です。従来の多重下請け構造を排除した直接取引によるサービス提供モデルを構築しており、本事業は完全子会社のMigakunが運営しています。

店舗運営SaaS「fixU」


fixUは、コワーキング施設等を中心としたレンタル施設や会員制施設の無人化・省人化を実現するためのクラウド型顧客管理・請求管理・決済システムです。会員登録から予約、決済までの店舗運営業務を自動化し、Akerunとの連携による入退室履歴に基づく従量課金も可能にしています。

収益源は、店舗運営者から受け取るSaaSモデルの利用料などです。複数のツールを導入することなくワンストップで店舗運営に必要な機能を提供しており、本事業は完全子会社のfixUが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して成長を続けています。かつてはプロダクト開発やマーケティングへの先行投資により赤字が先行していましたが、ストック収益の積み上がりと収益性強化の取り組みが奏功し、黒字転換を果たしました。その後も増益基調を維持しており、着実な事業成長と利益創出を実現しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 16億円 20億円 25億円 30億円 34億円
経常利益 -9億円 -6億円 -2億円 0.9億円 2億円
利益率(%) -54.4% -30.1% -8.9% 3.1% 6.9%
当期純利益 -9億円 -6億円 -2億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴って売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率は70%台半ばの高水準を維持しており、販売費及び一般管理費の増加を吸収することで、営業利益とその利益率の大幅な改善に繋がっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 30億円 34億円
売上総利益 23億円 25億円
売上総利益率(%) 76.6% 75.1%
営業利益 0.8億円 2億円
営業利益率(%) 2.6% 6.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が9億円(構成比39%)、広告宣伝費が2億円(同11%)を占めています。売上原価についても、Akerunの稼働台数増加やMigakunの拡大に伴い増加しています。

(3) セグメント収益


同社グループは空間DX事業の単一セグメントですが、製品・サービス別の売上構成を見ると、中核であるAkerunが売上全体の大部分を牽引しています。また、施設運営代行サービスも着実に売上を積み上げており、複数のサービスが組み合わさることで全社的な増収に貢献しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
Akerun - 29億円
施設運営代行 - 4億円
その他 - 0.3億円
連結(合計) 30億円 34億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 4億円 5億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF -2億円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「つながるモノづくりで感動体験を未来に組み込む」をミッションに掲げています。また、ビジョンとして「人手に依存しない、自律型の物理空間で、社会を自由化する。」を策定しており、テクノロジーの力で物理空間の管理や運営を自動化し、社会そのものを人手不足や物理的な制約から解放することを目指しています。

(2) 企業文化


ハードウェアからソフトウェア、AIまでを網羅するフルスタックの開発体制を備えたモノづくり企業として、最先端技術を活用した社会課題の解決を重視する文化があります。社内には様々なバックグラウンドを持つ人材が在籍しており、年齢や性別、国籍を問わず多様性を尊重し、柔軟な働き方を推進する職場環境が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年12月期を開始年度とする新たな中期経営計画を策定し、売上成長の再加速と調整後EBITDAの拡大を目指しています。中長期的な定量目標として、毎年の売上成長率で20〜30%の達成を見込んでいます。

・2028年12月期における売上高:58億円〜75億円
・2028年12月期における調整後EBITDA:11.6億円〜15億円

(4) 成長戦略と重点施策


Akerunの顧客数最大化を目指す「マーケット開拓」と、周辺領域の商材拡充による顧客単価最大化を目指す「ソリューション開発」を掛け合わせることで事業収益を追求します。

・光通信グループとのパートナーシップ等によるAkerunの加速度的拡大
・Akerun、Migakun、fixUを組み合わせたパッケージ化によるクロスセルの推進
・研究開発拠点を通じたフィジカルAI領域への新規参入と業務支援ロボットの開発

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長と社会課題の解決に向けて、多様な人材の確保と育成、社内環境の整備を不可欠なものと位置づけています。エンジニアや営業人員の採用を強化するとともに、職階別研修やジョブローテーションを通じて従業員の自律的な成長を促進し、能力を最大限に発揮できる組織体制と企業文化の醸成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 35.4歳 3.0年 6,555,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 先行投資に伴う財務への影響


Akerun等のサブスクリプションモデルは、広告宣伝費や開発費などの顧客獲得費用が先行して計上される特徴があります。事業環境の急激な変化などにより、これらの先行投資が想定通りの成果に繋がらない場合、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) クラウドシステムの大規模なトラブル


同社のサービスはクラウドプラットフォームを通じて提供されており、サーバーの冗長化やバックアップ等の対策を講じています。しかし、自然災害や外部からの不正アクセス等によって大規模なシステムトラブルが発生した場合、顧客からの信用失墜や損害賠償の発生に繋がるリスクがあります。

(3) ハードウェア製造委託先への依存


Akerunのスマートロック等は自社工場を持たず、すべての製造を外部に委託しています。委託先との密な連携や代替先の選定を進めていますが、関係悪化による取引停止や被災等による生産体制の崩壊が生じた場合、製品の安定供給が困難になる可能性があります。

(4) 個人情報や入退室ログの漏洩


同社のサービスは、認証に用いる個人情報や入退室記録などの機密情報を保有しています。情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格認証を取得し管理を徹底していますが、悪意あるハッキング等により情報が外部に漏洩した場合、同社の経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。