トライト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トライト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トライトは東証グロース市場に上場し、医療福祉業界および建設業界向けの人材紹介・派遣サービスを主力事業としています。第7期は、慢性的な人手不足を背景に需要が継続し、売上収益は571億円で増収となりましたが、広告宣伝費の増加や一時的な費用等により税引前利益は43億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社トライト の有価証券報告書(第7期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. トライトってどんな会社?


トライトは、介護・看護・保育などの医療福祉分野および建設業界に特化した人材紹介・派遣サービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社グループの実質的な事業は2004年のTS工建設立に始まります。2014年にティスメおよびメディアメイドを設立し、医療福祉・建設分野での人材事業を拡大しました。2020年にトライトを親会社とするグループ体制へ移行し、2021年に旧トライトを吸収合併して現在の商号となりました。2023年には東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。

同社グループの従業員数は連結で7,937名、単体で354名です。筆頭株主は投資会社EQTが運営するLIFE SCIENCE & DIGITAL HEALTH CO. LIMITEDで、発行済株式の60.0%を保有しています。第2位と第3位は、金融機関の決済営業部が常任代理人を務める外国銀行等の名義となっています。

氏名 持株比率
LIFE SCIENCE & DIGITAL HEALTH CO. LIMITED 60.00%
JP MORGAN CHASE BANK 385632 4.44%
J.P. MORGAN BANK LUXEMBOURG S.A. 381572 2.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は笹井 英孝氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
笹井 英孝 代表取締役社長 三井住友銀行、経営共創基盤等を経て、ライフドリンクカンパニー代表取締役社長等を歴任。2019年より旧トライト代表取締役社長を務め、2021年より現職。
原 敬信 取締役 日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(現EQTパートナーズジャパン)代表取締役等を歴任。2021年より現職。


社外取締役は、井筒 廣之(元マンパワーグループ代表取締役社長)、西本 悟朗(デロイトトーマツコンサルティング執行役員)、大野 麻衣子(元メリルリンチ日本証券)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療福祉事業」および「非医療福祉事業」を展開しています。

(1) 医療福祉事業


介護、看護、保育業界において、有資格者を主なターゲットとした人材紹介(CA型)、採用支援(DR型)、および人材派遣サービスを提供しています。また、介護・医療データ活用プラットフォームや介護事業特化型コミュニケーションツール等のICTサービスも展開し、業務効率化を支援しています。

収益は、人材紹介サービスにおける紹介手数料や、人材派遣サービスにおける派遣料、ICTサービスの利用料等から構成されています。運営は、人材サービスをトライトキャリアが、ICTサービスをbright vie等が担っており、これら子会社を通じてサービスを提供しています。

(2) 非医療福祉事業


建設業界向けに人材サービスを提供しており、主にゼネコンや大手工務店に対して、建築士や施工管理技士等の有資格者を派遣しています。また、建設業界に特化した求人サイト「施工管理ジョブ」を通じた人材紹介サービスも行っています。

収益は、建設現場への技術者派遣による派遣料や、人材紹介による紹介手数料が主な柱です。運営は主に子会社のトライトエンジニアリングが行っており、医療福祉分野で培ったノウハウを活かして建設業界の人材不足解消に取り組んでいます。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上収益は442億円から571億円へと順調に拡大しており、増収基調が続いています。一方、税引前利益は56億円、71億円、43億円と推移しており、第7期は減益となりました。利益率は10%台から7.6%へ低下しています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上収益 442億円 528億円 571億円
税引前利益 56億円 71億円 43億円
利益率(%) 12.6% 13.4% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 49億円 29億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率は高い水準を維持していますが、営業利益率は前期の14.2%から9.1%へと低下しており、コスト負担が増加していることが読み取れます。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上収益 528億円 571億円
売上総利益 350億円 372億円
売上総利益率(%) 66.3% 65.2%
営業利益 75億円 52億円
営業利益率(%) 14.2% 9.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が142億円(構成比44%)、広告宣伝費が121億円(同38%)を占めています。売上原価の多くは派遣売上原価であり、売上原価合計の大部分を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは人材サービス業の単一セグメントですが、医療福祉事業と非医療福祉事業(建設)の両方で旺盛な需要を取り込み、売上収益は増加しました。特に主力の医療福祉事業が底堅く推移し、建設分野も高い有効求人倍率を背景に伸長しています。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期)
人材サービス業(連結) 528億円 571億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動はマイナス、財務活動はマイナスとなりました。本業で稼いだ現金を借入金の返済や配当支払いに充てつつ、必要な投資も行っている健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF 74億円 41億円
投資CF -10億円 -5億円
財務CF -32億円 -63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパスを掲げています。人材サービスやICTソリューションを通じて、労働力不足や職場環境の改善といった社会課題に取り組み、業界の発展とステークホルダーの課題解決に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、従業員の行動指針となるバリューとして「社会からの期待を超える。」「その先の人たちへ。」「変化することで進化する。」の3つを掲げています。これらのバリューに基づき、従業員が働きがいを持ち、社会により良い影響を与えられるような企業文化・風土づくりを推進しています。また、成果主義とインセンティブ設計を結合させ、高い営業生産性を追求する文化も有しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、以下の項目を重視しています。また、中長期的には少子高齢化による生産年齢人口の減少を見据え、医療福祉業界における労働力確保と生産性改善に対応していく方針です。

* 売上収益
* EBITDA
* 営業利益

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、人材ソリューション、ICTソリューション、非医療福祉事業の複合的なサービス提供による成長を目指しています。特に人材紹介サービスでは営業社員の確保と生産性向上、ICT分野では業務効率化支援の加速、建設分野では派遣社員数の増加と単価向上を重点施策としています。

* CA型人材紹介サービスの成長加速(営業社員の確保・育成、定着率向上)
* ICTソリューション事業への取り組み強化(M&A・提携含む)
* 非医療福祉事業(建設人材派遣)の持続的な成長

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、パーパスの実現に向けて、従業員が安心安全に働ける環境確保と成長機会の提供に注力しています。年齢や入社年次に関わらず役割と成果で報酬を決定する「ミッショングレード制」を導入し、成果主義を徹底するとともに、ダイバーシティ推進や女性管理職比率向上に向けた取り組みも強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 34.4歳 2.9年 5,954,558円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 26.9%
男性労働者の育児休業取得率 83.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 59.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 67.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 23.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(35.2%)、女性育休取得率(98.7%)、育休後復職率(92.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境に関するリスク

国内の景気動向や人材紹介・派遣業界の市場環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。また、少子高齢化や労働人口の減少、法規制の変更、または競合他社との競争激化により、同社サービスの需要や競争力が低下した場合、財政状態や経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

(2) 許認可に関するリスク

同社グループの事業は、職業安定法や労働者派遣法に基づく許可を必要としています。これらの法令違反により業務停止や許可取消等の処分を受けた場合、中核事業の継続が困難となり、経営に重大な影響を与える可能性があります。過去には一部事業で行政処分を受けた経緯もあり、コンプライアンス体制の維持が重要です。

(3) のれんの減損リスク

M&Aにより多額ののれんを計上しており、総資産に占める割合が高くなっています。買収した事業が計画通りの収益を上げられず、減損テストの結果として減損損失を認識することになった場合、同社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。