HOUSEI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HOUSEI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

HOUSEIは東京証券取引所グロース市場に上場するIT企業です。新聞社など紙媒体メディア事業者向けのシステム開発やクラウドサービスを主力とし、中国をはじめとした海外でのオフショア開発や金融業界向けITサービスも展開しています。直近の業績は減収となり、純利益は赤字に転落しています。


※本記事は、HOUSEI株式会社の有価証券報告書(第30期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. HOUSEIってどんな会社?


メディア業界向けのシステム開発を主力とし、中国にオフショア開発拠点を有するIT企業です。

(1) 会社概要


同社は1996年に方正として設立され、システム開発事業を開始しました。2004年に中国・武漢の開発拠点を法人化し、2014年に現社長によるMBOで独立しました。2021年にHOUSEIへ社名変更し、2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場、2024年には中国や香港のIT事業をM&Aで取得しています。

現在の従業員数は連結で456名、単体で189名です。筆頭株主のBAIRUIXIANGHONG(HONG KONG)CO.,LIMITEDおよび第2位株主のKSK合同会社は、いずれも創業社長である管祥紅氏の資産管理会社です。第3位には資本業務提携先であるEPSホールディングスが名を連ねています。

氏名 持株比率
BAIRUIXIANGHONG(HONG KONG)CO.,LIMITED 29.40%
KSK合同会社 26.73%
EPSホールディングス 12.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は管祥紅氏が務めています。社外取締役比率は43%です。

氏名 役職 主な経歴
管祥紅 代表取締役社長 1996年同社を設立し代表取締役社長に就任。SEVEN&EIGHT SYSTEM代表取締役やアイード取締役、OmniXuttle代表取締役などグループ各社の役員を兼任し現在に至る。
石自力 取締役 2001年に同社入社後、他社を経て2004年に方正璞華軟件(武漢)入社。2018年より現・璞華国際科技(武漢)の董事長を務め、2022年に同社取締役に就任し現在に至る。
羽入友則 取締役 リクルートなどを経て2002年に同社入社。取締役退任や退職を経て2016年に再入社し執行役員管理本部長に就任。2021年に同社取締役に就任し現在に至る。
多名賀淳 取締役 リクルートなどを経て2022年に同社へ執行役員として入社。2023年に同社取締役に就任。2024年に常務執行役員を経て、現在は執行役員社長室長を兼務し現在に至る。


社外取締役は、松村晶信(元CAC Holdings常務執行役員)、井上隆司(井上隆司公認会計士事務所代表)、菊池武志(元インターネットイニシアティブ専務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内IT事業」および「海外IT事業」を展開しています。

(1) 国内IT事業


日本国内の顧客向けに、システムインテグレーション主体の受託システム開発や、自社開発のソフトウェア・クラウドサービスを提供するプロダクト販売を行っています。特に新聞社や出版社などのメディア事業者向けには、組版システムや統合編集システム「NOVO」といった独自性の強いシステムをワンストップで提供しています。

受託開発の請負代金やクラウドサービスの利用料を主な収益源としています。メディア事業やプロフェッショナルサービス事業、プロダクト推進事業を同社が運営するほか、英語スピーキング評価AIを活用した事業をアイード、エンターテインメント関連事業をSEVEN&EIGHT SYSTEMが運営しています。

(2) 海外IT事業


中国を中心とした海外市場に向けて、情報システムのオフショア開発や現地の金融・メディア業界向けITサービスを提供しています。同社から発注されるシステムの設計やプログラム開発のオフショア開発を担うほか、現地の銀行や証券会社向けの情報システム開発事業、香港のメディア業界向けITサービスなどを手掛けています。

同社からのオフショア開発委託費や、現地顧客からのシステム受託開発代金・サービス利用料を収益源としています。オフショア開発は主に璞華国際科技(武漢)が担当し、中国国内の金融業界向け開発は璞華供給鎖(蘇州)が、香港のメディア業界向けサービスは方正環球科技がそれぞれ事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第26期から第29期にかけて増加傾向にありましたが、直近の第30期は減収に転じています。経常利益は減少傾向が続いており、利益率も第26期の6.9%から第30期には1.1%まで低下しました。また、当期利益についても第30期は特別損失の計上などにより赤字に転落しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 第26期 第27期 第28期 第29期 第30期
売上高 41億円 43億円 46億円 49億円 48億円
経常利益 2.8億円 2.0億円 2.0億円 1.3億円 0.5億円
利益率(%) 6.9% 4.7% 4.4% 2.6% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.1億円 0.4億円 1.1億円 0.5億円 -2.6億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上原価の減少により売上総利益率は改善しました。一方で、研究開発費や外注費の増加などにより販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益および営業利益率は大きく低下しています。

項目 第29期 第30期
売上高 49億円 48億円
売上総利益 15億円 15億円
売上総利益率(%) 31.1% 31.7%
営業利益 0.8億円 0.4億円
営業利益率(%) 1.6% 0.8%

(3) セグメント収益


国内IT事業は、大型請負案件の受注時期ずれなどが影響し、わずかに減収となりました。海外IT事業も、中国本土における金融業界向け大型案件の売上計上が期ずれしたことなどから減収となっています。

区分 売上(第29期) 売上(第30期)
国内IT事業 42億円 42億円
海外IT事業 7.0億円 5.9億円
連結(合計) 49億円 48億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

HOUSEIグループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としており、主に金融機関からの長期借入金及び社債で調達しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上原価や販売費及び一般管理費等の営業費用を賄うための資金を生み出しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業拡大や設備投資等に関連する資金の増減を示しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金や社債の調達・返済等、資金調達に関する活動を示しています。

項目 第29期 第30期
営業CF 3.6億円 10億円
投資CF -0.9億円 -1.6億円
財務CF -0.8億円 -3.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「DXを実現するITパートナーとして、メディア業界で培った成功経験やノウハウを活かし、世界中から先進技術を取り入れて、日本産業が弱いとされるIT分野の強化に貢献する。」をミッションとして掲げています。社会のニーズをもとに製品やビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーションを牽引し、新たな価値を創造し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「変化を前向きに受け止め、変革を自ら起こし、新しい価値を創造し続ける」という企業理念を重視しています。多様性を事業に活かし、顧客への提供価値を高めることを目指す「和して同ぜず」の文化が根付いており、日々学び続ける従業員がさまざまなバックボーンを持ちながら相乗効果を発揮できる組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、顧客ごとにカスタマイズされたシステム構築からクラウドを活用した汎用的なITサービス提供への転換を図っています。この事業転換により利益率の向上が見込まれるため、同社は売上総利益率を最も重要視する経営指標として定めています。また、ソフトウエア開発における競争力の指標としても売上総利益率の改善を目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、安定した持続的な成長を実現するため、既存顧客の深耕と新規領域での主要顧客拡大を推進しています。ヘルスケアや不動産など既存優良顧客に近い業界へノウハウを展開するほか、生成AIや顔認証技術を活用した新規事業の確立に注力しています。また、中国国内でのM&Aを通じたITサービス事業の拡大や、日中両国での優秀な人材の確保と技術解決力の向上を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「一人ひとりの能力の最大化と多様性による相乗効果の発揮」を人材育成方針に掲げています。対面でのコミュニケーション充実と柔軟な働き方を両立させる環境整備を進めており、日中両国での採用連携や人材・技術交流を強化しています。また、従業員の自発的な学びを促す一貫した教育プランを提供し、専門性の高い人材の育成と多様な人材が活躍できる組織づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第30期 40.4歳 7.9年 5,783,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 93.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 97.3%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 73.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、開発人材の日本拠点比率(39.6%)、日本拠点の開発人材における多国籍人材比率(34.4%)、セキュリティ研修の受講率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新聞・メディア業界への依存と市場縮小


同社の連結売上高の約4割は新聞社および通信社から得ていますが、紙媒体メディア市場は中長期的に縮小傾向にあります。同業他社の撤退により一時的な残存者利益を享受しているものの、他業界の顧客開拓が想定通り進まない場合、売上高が減少する可能性があります。

(2) 中国のオフショア開発拠点を巡るリスク


同社は中国・武漢の子会社にシステム開発の重要部分を委託し、コストや品質面での競争優位性を確保しています。将来的に中国政府の政策変更による輸出規制や顧客の意向による中国での開発委託の制限、急激な為替変動が生じた場合、事業運営や業績に支障をきたす可能性があります。

(3) システム開発プロジェクトの採算性悪化


情報システム構築は請負契約が多く、納期までに要件を満たすシステムを完成させる責任を負います。仕様の変更やトラブルによって想定以上の作業時間が発生した場合や、納品後に不具合の補修費用が生じた場合、超過費用を同社が負担することになり、採算性の悪化や業績への影響が懸念されます。

(4) 技術革新と激しい開発競争への対応遅れ


情報システム業界は技術革新や顧客ニーズの変化が非常に速く、開発や販売における競争が激化しています。同社が予期しない新技術の台頭や顧客ニーズへの対応が遅れた場合、あるいは提供するサービスが陳腐化した場合、競争力の低下を招き、事業や業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。