※本記事は、株式会社eWeLLの有価証券報告書(第14期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. eWeLLってどんな会社?
同社は、訪問看護ステーションの業務効率化を支援するクラウド型電子カルテの提供を主力事業とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は2012年に大阪市で設立されました。2014年に主力サービスである「訪問看護専用電子カルテ iBow」をリリースし、事業の基盤を構築しました。その後、2021年には事務管理代行サービスの提供を開始し、2022年に東京証券取引所グロース市場へ株式上場を果たしています。
現在は単体で107名の従業員を擁する体制となっています。株主構成については、筆頭株主は創業者の代表取締役社長である中野剛人氏で、第2位も同社役員の北村亜沙子氏となっており、第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中野 剛人 | 39.02% |
| 北村 亜沙子 | 16.24% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中野剛人氏が務め、取締役4名のうち1名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中野 剛人 | 代表取締役社長 | 1991年サンエース入社。2012年同社を設立し代表取締役社長就任。2018年取締役会長を経て、同年代表取締役社長に復帰し現在に至る。 |
| 北村 亜沙子 | 常務取締役 | 1998年エンジェルダスト入社等を経て、2012年同社に入社し常務取締役に就任。その後管理本部長等を経て、2023年よりカスタマー本部長として現職。 |
| 浦吉 修 | 取締役 | 1984年ジュピターミュージックスタジオ入社等を経て、2019年同社に入社。2020年取締役就任。カスタマー本部長等を経て、2023年よりプロダクト本部長として現職。 |
社外取締役は、松下智樹(Singular Perturbations副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「訪問看護ステーション向けサービス提供事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■クラウドサービス
訪問看護ステーション向けに、オペレーション業務を網羅したクラウド型電子カルテ「iBow」を中心に提供しています。現場の看護師等の業務効率化に貢献するSaaS型業務支援ツールであり、勤怠管理システムやレセプトシステムなども包括的に展開しています。
収益源は、1ステーションごとの月額基本料金と、訪問件数に応じた従量課金によるサブスクリプション型の利用料です。訪問件数の増加が同社の収益増につながる仕組みとなっており、同社が運営主体として開発から運用サポートまでを提供しています。
■BPaaS
訪問看護ステーションにおけるレセプト(診療報酬明細書)等の事務業務を代行する「iBow 事務管理代行サービス」を提供しています。医療・介護保険情報の登録や請求データの作成確認等を行い、顧客が看護業務に集中できる環境を支援しています。
収益モデルは、顧客の保険請求等による総売上に対して一定の割合を利用料金として受け取る仕組みとなっています。複雑なレセプト業務を専門事務員に代わって同社が代行することで、顧客の収入増加と同社の収益拡大が連動する事業展開を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高および利益ともに一貫して高い成長を続けています。売上高は12億円から34億円へと約3倍に拡大し、経常利益率も30%台から45%を超える水準まで継続的に向上しています。安定したサブスクリプションモデルによる収益基盤の強さが業績拡大を牽引しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12億円 | 16億円 | 21億円 | 26億円 | 34億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 7億円 | 9億円 | 11億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 33.8% | 42.2% | 44.0% | 44.3% | 45.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 4億円 | 6億円 | 8億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な成長に伴い、各利益段階でも着実な増益を達成しています。特に売上総利益率は78%前後の高い水準を維持しており、営業利益率も前期の44%台から45%台へと改善傾向にあります。事業規模の拡大によるスケールメリットが利益水準の向上に寄与しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26億円 | 34億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.7% | 78.3% |
| 営業利益 | 11億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 44.2% | 45.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が2.5億円(構成比22.0%)、広告宣伝費が1.3億円(同11.4%)を占めています。また、売上原価については労務費が3.7億円(構成比49.5%)、外注費が2.8億円(同38.5%)となっており、システム開発や人材関連の費用が主要なコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
当事業年度は主力サービス「iBow」の契約ステーション数の増加やAI関連サービスの利用拡大により、クラウドサービスの売上高が順調に伸長しました。また、事務管理代行を中心とするBPaaS事業も利用者数が増加し、全体の売上成長を後押ししています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| クラウドサービス | 23億円 | 29億円 |
| BPaaS | 2.7億円 | 4.4億円 |
| その他 | 0.3億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 26億円 | 34億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはともにマイナスとなっており、本業で創出した資金を基に投資や株主還元等を行っている健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 13億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -2億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は37.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も78.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ひとを幸せにする」をミッションに掲げ、「私たちは在宅療養に新しい価値の創造を行い、すべての人が安心して暮らせる社会を実現します」をビジョンとしています。在宅療養の核となる訪問看護ステーションに向けた業務支援を通じ、誰もが住み慣れた地域で自分らしく生活を続けられる社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は5つのバリュー(行動指針)を定めており、「Be a challenger(挑戦と成長)」「Be innovative(新たな価値の創造)」「Be sincere(誠実な対応と信頼の構築)」「Be positive(前向きな姿勢)」「Be professional(プロ集団としての使命)」を大切にしています。これらを基盤として事業活動を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業規模と収益性を測る指標として、売上高および営業利益の拡大を重視しています。また、主力サービスである「iBow」の展開において、複合的なサービス提供を通じた循環的な成長をサステナブルな成長の基礎と位置づけています。
・稼働ステーション数の増大
・市場シェアの拡大
・月次平均解約率の低減
・顧客平均単価の向上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後はクラウドサービスの市場シェア拡大に加え、BPaaSや地域包括ケアプラットフォーム等の拡大を図り、訪問看護市場におけるプラットフォーマーとしての地位確立を目指しています。また、蓄積された医療データを匿名加工情報として活用し、パーソナルヘルスレコード(PHR)を中心としたデータビジネスの展開にも注力していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は事業拡大に向けて、性別や国籍を問わず優秀な人材の確保と育成を重要な課題と位置づけています。訪問看護に関する専門知識の習得やITリテラシー向上を支援する研修制度を充実させるほか、男性の育児休業取得の推進や女性管理職の輩出など、多様な人材が働きやすい職場環境の整備に継続して取り組む方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.5歳 | 3.3年 | 5,219,659円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 33.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全) | 74.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「訪問看護eラーニング」の受講完了者(61名)、「ITパスポート試験」の資格取得者(30名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療保険制度・介護保険制度の改正対応
同社の主力サービスは医療・介護保険制度の強い影響を受けます。数年ごとの診療報酬や介護報酬の見直しに伴う法律等の改正に対し、適時適切なシステム開発での対応が遅れた場合、競合他社に対して競争力が低下し、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 訪問看護業界への依存
同社の売上は訪問看護業界向けに集中しています。新規事業の開拓や医療データビジネスの展開等により事業基盤の多角化を進めていますが、訪問看護ステーションの需要縮小や人員不足による事業所の減少が生じた場合、同社の成長や業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 特定のサービスへの依存
現在、同社の売上高の大半は主力サービスである「iBow」が占めており、同サービスに大きく依存しています。顧客ニーズとの乖離や競合に対する優位性の喪失が発生した場合、業績に重要な影響が及ぶ可能性があるため、第2・第3の収益の柱となる新規サービスの拡充を図っています。



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