ポーターズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ポーターズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するポーターズは、人材紹介会社や労働者派遣会社向けにクラウド型マッチング総合管理システムなどを提供するHR-Tech事業を主力としています。直近の業績では、主要サービスの継続的な成長により増収を達成した一方で、人員増加や賃上げなどの投資が先行し減益となっています。


※本記事は、ポーターズの有価証券報告書(第25期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ポーターズってどんな会社?


同社は人材マッチングプロセスの最適化を目指し、人材サービス企業向けにクラウドシステムを提供しています。

(1) 会社概要


2001年に人材紹介会社向け管理システムの提供を目的として設立されました。2012年に主力となる人材ビジネス向けクラウドサービスをリリースし、2022年にサービス名称をPORTERSに変更するとともに、同年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。2023年にはatBを子会社化しています。

現在は連結で144名、単体で77名の従業員を擁する体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の西森康二氏が代表を務めるKAキャピタルで、第2位と第3位には西森氏ご本人および取締役副社長の御子柴智美氏が名を連ねており、経営陣による安定した保有構造となっています。

氏名 持株比率
KAキャピタル 45.96%
西森 康二 10.06%
御子柴 智美 10.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は西森康二氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
西森 康二 代表取締役社長 リクルートなどを経て2001年にポーターズを設立。現在はKAキャピタルやatBなどの関連会社でも取締役や代表を務め、グループの事業を推進している。
御子柴 智美 取締役副社長 インターウォーズを経て2002年に取締役に就任。シンガポール法人の要職などを歴任し、2019年より取締役副社長として同社のグローバル展開を支えている。
三ツ井 健 常務取締役 スタッフサービス、リクルートスタッフィングなどを経て2022年に入社。シンガポール法人等を経て2023年より常務取締役としてグループ経営に参画している。
天野 竜人 取締役 サミー等を経て2017年に入社。2018年に執行役員を経て取締役に就任し、現在はatBやKIKAN flexの取締役も兼任している。


社外取締役は、中村恒一(元リクルート取締役副社長)、清水有滋(元日本電気財務室長)、長尾二郎(左門町法律事務所所長)、佃勇吾(サクセッション代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HR-Tech事業」および「Global HR-Tech事業」を展開しています。

HR-Tech事業


人材マッチングサービスを展開する人材紹介会社や労働者派遣会社向けに、クラウド型マッチング総合管理システム「PORTERS」を提供しています。求職者と求人企業のマッチングを最適化するため、双方の情報一元管理や選考プロセス管理、契約管理などを可能にする機能やツールを備えています。

主に月額課金制(サブスクリプションモデル)によるシステムのID利用料を収益源とするほか、導入時のデータ移行やカスタマイズ、外部システム連携などの支援サービスによる手数料も得ています。本事業の運営は主にポーターズおよびKIKAN flexが行っています。

Global HR-Tech事業


同社グループの海外拠点を活用し、スマートフォンやウェブサイト向けのソフトウエアのオフショア開発事業や、バングラデシュ国内での求人媒体「atB JOBS」の開発および運営などを行っています。海外市場における雇用創出への貢献を目指した事業展開が特徴です。

オフショア開発の受託に伴う開発手数料や、求人媒体における有料求人掲載プランの販売等による収益を得ています。本事業は主にatBやバングラデシュの現地法人であるATB LABなどが運営を行っており、海外リソースを活用したサービス提供を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績推移を見ると、売上高は着実な右肩上がりの成長を続けており、安定した事業拡大の様子がうかがえます。一方、経常利益および当期利益については、先行投資やのれん減損損失等の特別損失の計上などが影響し、直近の当期においては減益となっています。売上規模の拡大と並行して、収益性の確保が今後の焦点となります。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 16億円 19億円 21億円
経常利益 3.8億円 3.9億円 3.7億円
利益率(%) 23.8% 20.1% 17.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.7億円 3.4億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


主力サービスの継続的な成長により売上高が増加し、売上総利益も拡大しています。一方で、システムの安定稼働や機能向上のためのコスト増加により、売上総利益率はわずかに低下しました。また、人材投資やマーケティング施策の強化により営業費用が膨らんだ結果、営業利益および営業利益率は前年を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 19億円 21億円
売上総利益 15億円 16億円
売上総利益率(%) 76.8% 74.9%
営業利益 3.9億円 3.6億円
営業利益率(%) 20.3% 16.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比27%)、役員報酬が1.4億円(同11%)、広告宣伝費が1.3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるHR-Tech事業は、積極的なマーケティングやイベント開催を通じて新規顧客を開拓し、ID数が順調に伸長したことで増収に貢献しています。一方でGlobal HR-Tech事業は、海外でのオフショア開発案件の減少などが影響し、減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
HR-Tech事業 19億円 21億円
Global HR-Tech事業 0.4億円 0.1億円
連結(合計) 19億円 21億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入等によって積極投資を行う「積極型」の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -0.9億円 1.5億円
投資CF -2.4億円 -2.3億円
財務CF - 1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Matching, Change your business」をミッションに掲げ、「テクノロジーで世界の雇用にもっとも貢献する」というビジョンのもとに事業を展開しています。人材マッチングサービスを提供する企業に対し、情報の最適化を図るシステムを提供することで、雇用創出産業への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


企業使命実現に向けた行動指針として「顧客が目的を達成し、心から満足するサービスを目指す」ことを掲げています。また、「相手の成果を第一に考えよう」「自ら一歩踏み出そう」「もっと高い山から景色を見よう」「変化を楽しもう、変化を起こそう」「誠実・素直であろう」の5つのCore Valuesを大切にする文化が明記されています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と企業価値の向上を目指し、主力事業であるHR-Tech事業におけるPORTERSの販売を重要視しています。客観的な指標として、PORTERSの有料稼働ID数およびその財務的成果である売上高、そして新規投資の原資となる営業利益を重要な経営指標として掲げ、事業運営に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


企業の「人材ニーズ」と「人材」のマッチングプロセスの最適化を実現するため、サービスの利便性向上や新製品開発によるプロダクトの拡充を進めています。また、メディアへの広告展開によるマーケティング及びセールス体制の強化、カスタマーサクセスによる顧客接点の強化、アジアを中心とした海外展開の本格化を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、持続的な成長や企業価値向上を実現するうえで人材が競争力の源泉であるとし、人材の確保と育成を最重要視しています。社員一人ひとりがキャリアを長期的に発展させられるよう定期的な目標設定を行い、新しい技術やソフトスキルの習得を支援するほか、多様な価値観に合わせた働き方や産休からの早期復帰を支える環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 36.0歳 4.4年 7,000,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材サービス業界の動向に依存するリスク


人材マッチングクラウドサービスの主要顧客である人材紹介会社や労働者派遣会社の業績は、転職市場や派遣需要に左右されます。有効求人倍率の低下や失業率の上昇により労働市場が悪化した場合、サービスの契約ID数が変動し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定のサービスへの依存とシステム障害リスク


売上の大部分を主力製品である「PORTERS」に依存しています。アクセス障害やソフトウエアの不具合、サイバー攻撃等により長期間サービスが提供できなくなった場合、顧客離れや損害賠償を通じて同社グループの財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 海外での事業展開に関するリスク


アジアを中心とした海外市場での事業展開を進めていますが、政治、文化、法令、規制などの違いによる不確実性が伴います。不測の事態が発生し、現地での業務遂行や市場拡大に支障をきたした場合、同社の海外戦略および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。