※本記事は、株式会社キューブの有価証券報告書(第32期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. キューブってどんな会社?
キューブは、ゴルフ関連の衣料品や雑貨の企画、小売・卸売事業をグローバルに展開するアパレル企業です。
■(1) 会社概要
1994年にスノーボード関連商材等の販売を目的として設立され、2004年に現在のキューブへ商号変更しました。2008年に主力ブランド「MARK&LONA」を発表し、2014年には韓国企業との独占販売契約を通じて海外卸事業を開始しました。2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。
従業員数は単体で87名体制です。筆頭株主は投資事業を行うエヌエックスシー・ジャパンで、第2位は創業者の松村智明氏、第3位は松村里恵氏となっています。同社はエヌエックスシー・ジャパンを含むNXC Corporationグループの持分法適用会社ですが、経営の独立性は確保されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エヌエックスシー・ジャパン合同会社 | 35.40% |
| 松村智明 | 20.20% |
| 松村里恵 | 16.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは橋本和武氏が務めています。社外取締役の比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本和武 | 代表取締役社長CEO | ファーストリテイリング、ナイキジャパン、アシックス等を経て2024年に同社専務取締役。2025年4月より現職。 |
| 松村智明 | 代表取締役会長 | 1994年にSPINYを開業し同社の設立時に入社。2004年に代表取締役社長に就任し、2025年4月より現職。 |
| 福岡裕太 | 取締役CFO | 2013年有限責任監査法人トーマツ入所。2018年に同社へ入社し、2023年に執行役員へ就任。2024年3月より現職。 |
| 高橋勇介 | 取締役 | 2001年ファイブ・フォックス入社。三陽商会等を経て2012年に同社へ入社。2021年に執行役員。2023年3月より現職。 |
| 波多野奨 | 取締役 | 2003年キング入社。複数の企業を経て2018年に同社へ入社。2021年に執行役員へ就任し、2023年3月より現職。 |
社外取締役は、吉成和彦(元国際興業取締役副社長)、大西秀亜(元ファーストリテイリング執行役員CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「衣料品等の企画販売事業」を展開しています。
■(1) 国内リテール・国内EC・海外EC事業
主力ブランド「MARK&LONA」などのゴルフカジュアルウェアや雑貨を、国内主要都市の商業施設・百貨店、路面店で販売するほか、直営の公式オンラインストアやZOZOTOWNを通じて日本全国および全世界の顧客へ直接販売(D2C)しています。
一般消費者からの商品購入代金が主な収益源です。ハイエンド層をターゲットに、過度な値下げを避けてブランド価値を維持する販売戦略をとっています。運営はキューブが単独で行っています。
■(2) 卸売事業(韓国・中国・海外・国内)
日本全国の代理店に加え、韓国、中国、台湾、イタリア、米国などの海外卸先に対して、同社ブランドの商品やライセンスを提供しています。特に韓国では総代理店を通じて主要都市の百貨店などで展開し、中国では合弁会社を通じて旗艦店を展開しています。
国内外の卸先企業からの商品販売代金や、ライセンス供与に伴うロイヤルティ収入が主な収益源です。運営はキューブ本体が行うほか、中国市場における商品の製造・販売事業は、合弁会社であるIllumiVista Co., Limitedなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2022年12月期に56億円と大きく伸長した後、直近3期は49億円規模で安定して推移しています。一方、経常利益および当期利益は2022年12月期をピークに減少傾向にあります。これは、ブランドのグローバル展開や出店強化、人材採用といった成長投資を積極的に行っていることによる費用増加が主な要因です。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 39.0億円 | 55.6億円 | 48.6億円 | 48.6億円 | 48.6億円 |
| 経常利益 | 6.9億円 | 9.0億円 | 2.9億円 | 1.7億円 | 0.6億円 |
| 利益率(%) | 17.7% | 16.2% | 6.0% | 3.5% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.8億円 | 6.1億円 | 1.9億円 | 1.1億円 | 0.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が横ばいで推移する中、原価低減の取り組みにより売上総利益率は改善しました。しかし、事業拡大に向けた積極的な投資により販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 48.6億円 | 48.6億円 |
| 売上総利益 | 28.1億円 | 29.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 57.7% | 60.5% |
| 営業利益 | 1.7億円 | 0.6億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が4.3億円(構成比15%)、給料手当が4.5億円(同16%)、広告宣伝費が2.6億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
事業区分別の売上動向を見ると、新規出店やリニューアル効果により国内リテールが順調に伸び、売上の牽引役となりました。一方で、韓国卸や国内ECなどは前年を下回りました。また、当期からは新たに中国卸事業が立ち上がり、売上に寄与し始めています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 国内リテール | 17.6億円 | 20.9億円 |
| 国内EC | 9.2億円 | 8.2億円 |
| 海外EC | 1.3億円 | 1.0億円 |
| 韓国卸 | 14.8億円 | 13.2億円 |
| 中国卸 | - | 1.0億円 |
| 海外卸 | 2.2億円 | 1.5億円 |
| 国内卸 | 3.2億円 | 2.6億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 48.6億円 | 48.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは末期型の傾向を示しています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.4億円 | -2.5億円 |
| 投資CF | -1.7億円 | -12.4億円 |
| 財務CF | -0.0億円 | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「時代の顔を創る」をビジョンに掲げ、複雑に変化する市場に対して価値のある商品を提供し、新たなライフスタイルの創造を世界へ発信することを目指しています。また「ゴルフに、自由を」というミッションのもと、伝統的なスポーツであるゴルフに革新をもたらし、ファッションの枠を超えた新しいスポーツとしての魅力を日本からアジア、そして世界へと訴求しています。
■(2) 企業文化
ハイエンド層に向けたプレミアムライフスタイルを提供するブランド創造に取り組んでおり、「プレミアムラグジュアリーブランドの創造」を基本戦略(ストラテジー)としています。高いクリエイティビティと自由な発想を重視し、大量生産・大量廃棄を避けるサステナブルなものづくりを徹底することで、適度な枯渇感を醸成しつつ独自のブランド価値を高める姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値を継続的に拡大することが重要であると考え、売上高、売上総利益および営業利益を重要な経営指標に設定しています。今後の事業拡大において海外売上高およびEC売上高の増加を想定しており、海外売上高比率とEC化率の上昇を目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
日本と韓国で築いたブランディングを強固にし、D2C(消費者への直接販売)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を極めた次世代アパレルの理想形を目指しています。具体的な戦略として、アジアを中心としたグローバルでのブランド認知拡大、店舗とデジタルチャネルの連携強化によるユーザー体験の向上、サプライチェーンの見直しや生成AIの活用等による収益構造の改革を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル人材やプロフェッショナル人材を中核と位置づけ、「ダイバーシティ推進」や「自律型人材の育成」に注力しています。多様な人材の採用や職場環境の整備を進めるとともに、OJTや各種研修、eラーニングによる自律的な学習機会を提供しています。また、長時間労働のモニタリングや心理的安全性の確保を通じて、働きがいのある環境づくりとエンゲージメントの向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.3歳 | 3.6年 | 5,520,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は関連法令による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(30.0%)、本部自主研修受講率(21.4%)、年次有給休暇取得率(72.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カントリーリスク
韓国をはじめとした海外市場での事業比率が高いため、日韓の政治・外交問題や法規制の変更、為替変動などが生じた場合、取引機会の縮小等により同社の事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、迅速な情報収集とリスク管理体制の構築に努めています。
■(2) 棚卸資産評価損に関するリスク
アパレル商品を扱う特性上、需要の急変や市場への商品投入タイミングを誤った場合、滞留在庫が発生し棚卸資産の評価損を計上するリスクがあります。対策として、システムや倉庫を活用した在庫移動を行い、複数チャネルでの流通量をコントロールすることで在庫消化率の向上を目指しています。
■(3) 海外の特定販売先への依存に関するリスク
韓国での商品販売は総代理店を通じて展開しており、同社販売額の一定割合を占めています。そのため、当該代理店の業績悪化や政策変更によって取引が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。韓国以外の海外エリアでの事業展開を加速し、特定販売先への依存リスクの低減を図っています。



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