Atlas Technologies 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Atlas Technologies 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Atlas Technologiesは東証グロース市場に上場し、決済・銀行・証券・保険分野などFintech領域におけるコンサルティングおよびプロジェクト実行支援を展開しています。直近の業績は、既存の決済分野が底堅く推移し、新規サービス分野も収益貢献したことで増収および各段階で黒字転換を果たしました。


※本記事は、Atlas Technologies株式会社の有価証券報告書(第8期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Atlas Technologiesってどんな会社?


Atlas Technologiesは、Fintech領域に特化したコンサルティングおよびプロジェクト実行支援をワンストップで提供しています。

(1) 会社概要


Atlas Technologiesは、2018年1月にFintechコンサルティング事業の展開を目的に設立されました。2022年1月にシンガポール支店を設置し、同年10月に東証グロース市場へ上場しました。2023年8月にはKapronasia Singaporeを完全子会社化し、グローバル事業の推進体制を強化しています。

現在の従業員数は連結69名、単体69名です。大株主について、筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める山本浩司氏です。第2位株主は同社で執行役員を務める小椋祐治氏、第3位株主は個人投資家の吉川直樹氏となっており、経営陣関係者が上位株主を占める構成となっています。

氏名 持株比率
山本浩司 66.73%
小椋祐治 4.30%
吉川直樹 2.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本浩司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山本浩司 代表取締役社長 2008年有人宇宙システム入社。宇宙航空研究開発機構への出向やソフトバンク・ペイメント・サービスを経て、2018年1月に同社を設立し代表取締役就任より現職。
石川豊明 取締役 1983年日本興業銀行入行。PwCアドバイザリーやEYフィナンシャル・サービス・アドバイザリー社長等を経て、2024年4月に同社取締役就任より現職。


社外取締役は、松尾茂氏(元SHIFT取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

Atlas Technologiesは、Fintech領域の独立系コンサルティング企業として、決済・銀行・証券・保険分野において戦略立案からプロジェクト実行支援までを提供しています。近年はITリスクやPMO支援分野へもサービスを拡張しており、顧客企業のデジタルソリューション・パートナーとして課題解決に伴走しています。

収益は、顧客企業に提供する専門性の高いコンサルティングサービスやプロジェクトマネジメント業務に対する業務委託料として受け取ります。一気通貫のプロジェクト支援を通じて継続的および追加的な受注を獲得するビジネスモデルであり、事業運営はAtlas Technologiesおよびその子会社が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期の業績は、2024年12月期に大型案件の終了等による減収と各利益段階での赤字を計上しましたが、2025年12月期は既存の決済分野の底堅い推移や新規サービス分野の立ち上げが寄与し、再び増収に転じて経常黒字への回復を果たしています。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 26億円 21億円 23億円
経常利益 1億円 -4億円 0.2億円
利益率(%) 5.0% -17.6% 1.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -9億円 0.2億円

(2) 損益計算書


収益性の推移を見ると、増収および売上原価の抑制により売上総利益率が改善しています。また、積極的な人材採用を継続しつつも採用費や外注費の効率化を進めたことで販売費および一般管理費が減少し、営業利益が黒字転換しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 21億円 23億円
売上総利益 4億円 6億円
売上総利益率(%) 19.1% 24.9%
営業利益 -4億円 0.1億円
営業利益率(%) -18.0% 0.4%


販売費および一般管理費のうち、給料手当が1億円(構成比23%)、地代家賃が0.9億円(同16%)、役員報酬が0.8億円(同13%)を占めています。また、売上原価については、業務委託費が9億円(売上原価合計に対する構成比53%)、労務費が8億円(同47%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は金融・決済関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に売上債権の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -1億円 -1億円
投資CF - -0.1億円
財務CF - -


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


Atlas Technologiesは、「人と産業の可能性を、解き放つ」をビジョンに掲げています。テクノロジーの力により、世界中の人や組織、産業が本来持っている力を最大限に発揮できる豊かな社会の実現を目指しています。また、「あらゆる産業とFintechの融合」をミッションとし、決済などの金融領域が再定義され、創造された価値がなめらかに移動する社会の構築を社会的意義としています。

(2) 企業文化


同社は、5つの価値観(Set of Values)を重視しています。「Challenge the Possibilities(可能性に挑戦しよう)」や「Build Leadership(全員がリーダーであろう)」をはじめ、「Act As One(チームで実現)」「Have Integrity(誠実さと謙虚さ)」「Keep It Fun(日常に遊び心)」を掲げ、主体性とチームワーク、誠実さを兼ね備えた行動様式を組織の文化として根付かせています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年12月期から2028年12月期までの4か年度を対象とした中期経営計画を策定し、収益性を伴った事業成長に向けた取組みを推進しています。ただし、昨今の事業環境等を総合的に勘案し、財務計画については一旦取り下げており、合理的に策定できるようになった時点で速やかに公表する方針としています。具体的な数値目標に代わり、事業成長戦略の着実な実行に注力しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の主要な取組みとして「サービスの拡大と高付加価値化」「優秀な人材の採用と育成」「クライアントの獲得と深耕」の3点を推進しています。祖業である決済分野に加え、銀行・証券・保険分野の体制を確立し、ITリスク・PMO支援などの新規サービスも立ち上げています。一気通貫のプロジェクトマネジメントを強みとし、既存顧客の深耕と新規顧客の開拓により、安定的な収益成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「組織力」と「人材力」の向上を重要テーマと位置づけ、多様性の確保を含む人材の採用・育成に注力しています。適性を見極めるサーベイの活用でミスマッチを防ぐとともに、OJTや社内外の多様な研修プログラムを通じてコンサルタントの専門性を高めています。また、All Hands(全社集会)の開催や表彰制度など、コミュニケーションを活性化し、相互理解を図る組織風土の醸成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.3歳 2.0年 10,230,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社との競争激化


同社はFintech領域に特化した高い専門性と経験を持つコンサルタントによるサービスを強みとしています。現時点では直接的な競合は少ないと認識していますが、今後同等の知見を持つ企業が市場に参入し競争環境が激化した場合、同社の受注状況や利益率が低下し、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定顧客への売上依存


同社は多様な顧客からプロジェクトを受託していますが、総売上高に占めるNTTドコモの比率が当期において51.6%と高い水準にあります。強固な関係を維持しているものの、永続的な取引が確約されているわけではなく、契約条件の変更や取引額の大幅な減少が生じた場合、同社の業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) 代表取締役社長への高い経営依存


創業メンバーであり筆頭株主でもある代表取締役社長の山本浩司氏は、事業戦略の決定など全般において極めて重要な役割を担っています。同社は権限委譲や経営幹部の育成を進め、特定人物への依存度を下げる体制整備に努めていますが、同氏が何らかの理由で業務を継続できなくなった場合、事業推進に支障をきたす恐れがあります。

(4) 優秀なコンサルタントの確保と定着


コンサルティング事業の継続的な拡大や新規サービス分野の推進には、FintechやIT領域に精通した優秀な人材の確保が不可欠です。同社は採用力の強化や育成プログラムの拡充に注力していますが、労働市場の逼迫等により求める人材を適切なタイミングで獲得できない、あるいは定着率が低下した場合、成長計画の遅れを招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。