なとり 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

なとり 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

なとりは東京証券取引所プライム市場に上場し、おつまみを中心とした食料品の製造販売事業および不動産賃貸事業を展開しています。直近の連結業績は、売上高が486億円、営業利益が19億円の減収減益となりました。持続的な成長に向けて、新規事業の開発や持続可能な環境と社会の実現への貢献を推進しています。


**なとり転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、なとりの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. なとりってどんな会社?


なとりは、チーズ鱈などの多様なおつまみの製造販売を主力とする食品メーカーです。

(1) 会社概要


なとりは1937年に名取精米店として創業し、1948年に加工水産物の製造を目的に設立されました。1981年に「おつまみコンセプト」を掲げ、1982年に主力製品のチーズ鱈の製造を開始しました。1991年に現在の社名に変更し、2002年に東京証券取引所第一部に上場を果たしています。

同社の従業員数は連結で815名、単体で583名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先を中心とした持株会、第3位には創業家であり代表取締役会長兼社長を務める名取三郎氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.37%
なとり取引先持株会 5.20%
名取三郎 3.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長兼社長は名取三郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
名取三郎 代表取締役会長兼社長 1973年同社入社、1981年常務取締役、1992年専務取締役、2005年代表取締役社長を経て、2012年より現職。
名取光一郎 取締役専務執行役員営業本部長 2004年同社入社、2016年執行役員、2018年取締役、2020年常務執行役員営業本部長を経て、2024年より現職。
山形正 取締役執行役員食品安全推進本部長 1984年同社入社、2001年名古屋支店長、2004年執行役員、2012年取締役、2020年物流本部長を経て、2026年より現職。
阿部覚 取締役執行役員生産本部長 1990年同社入社、2011年執行役員、2016年南京名紅旺食品出向、2019年生産本部長を経て、2020年より現職。
安宅茂 取締役執行役員経営企画部長兼経理部長 2003年同社入社、2011年経理部長、2013年経営企画部長、2016年執行役員を経て、2020年より現職。


社外取締役は、中尾誠男(元三菱化学エンジニアリング専務)、竹内冨貴子(カロニック・ダイエット・スタジオ代表取締役)、蒲生邦道(元東洋エンジニアリング代表取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造販売事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 食品製造販売事業


水産加工製品、畜肉加工製品、酪農加工製品、農産加工製品、ポケット菓子製品、チルド製品などの多様なおつまみの製造および販売を行っています。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどを通じて、一般消費者向けに製品を提供しています。

小売店や卸売業者に対する製品の卸売りによって収益を得ています。事業の運営は、なとりおよび、なとりデリカ、全珍、名旺フーズ、メイホク食品、函館なとりなどの連結子会社がそれぞれ担っています。

(2) 不動産賃貸事業


東京都北区などの地域に保有する賃貸用住宅をはじめとした不動産の賃貸サービスを提供しています。一般の入居者などを対象に、住まいとしての空間や関連設備を貸し出しています。

入居者からの不動産賃貸料を主な収益源としています。本事業の運営は、なとりが主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は451億円から489億円まで拡大したのち、当期は486億円とやや一服しています。経常利益は原材料価格の高騰や物流費の増加などの影響を受け、当期は19億円と減益傾向にありますが、価格改定やコストコントロールの徹底により収益力の維持を図っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 451億円 451億円 476億円 489億円 486億円
経常利益 23億円 7億円 22億円 20億円 19億円
利益率(%) 5.1% 1.4% 4.5% 4.1% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 4億円 12億円 12億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前年からわずかに減少したものの、売上総利益は微増となっています。一方で、給料や運賃などの販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しました。エネルギー価格や物流費の上昇に対応しつつ、プロダクトミックスの改善を進めています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 489億円 486億円
売上総利益 103億円 104億円
売上総利益率(%) 21.1% 21.3%
営業利益 20億円 19億円
営業利益率(%) 4.0% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が19億円(構成比23%)、運賃が18億円(同21%)を占めています。売上原価は382億円であり、売上原価合計に対する大部分が製品の製造に係る原材料費等で占められています。

(3) セグメント収益


主力の食品製造販売事業では、価格改定に伴う一部製品の販売数量の落ち込みがあったものの、チーズ鱈などの酪農加工製品や農産加工製品が伸長し、売上を支えました。不動産賃貸事業は安定的に推移し、堅調な利益を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品製造販売事業 485億円 482億円
不動産賃貸事業 4億円 4億円
連結(合計) 489億円 486億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。本業で稼いだ資金を設備投資に充てつつ、借入金の返済なども進める安定した財務基盤を築いています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 17億円
投資CF 0.2億円 -5億円
財務CF -19億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「自由闊達にして公正で節度ある企業活動により、食文化の創造と発展を通して、顧客満足・株主還元・社会貢献の実現を図り、社会的に価値ある企業として、この会社に係わるすべての人が誇りを持てる会社を目指す」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、「ひとつまみの幸せ。」を企業メッセージとし、手軽で様々な食シーンにマッチするおつまみを提供しています。

(2) 企業文化


同社は創業以来、「飽くなき食への探究心」に基づいたものづくりへの情熱を原点としています。安全安心で高品質な製品を提供し続けるため、「正直、親切、誠実な人」「俊敏に、主体的に、柔軟に行動できる人」「情熱をもって挑戦し、周囲に活力を与え、失敗しても決してあきらめない人」という求める人物像を定め、自由闊達な組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、収益力の観点から売上高営業利益率、株主重視の観点からROEの向上を意識した経営を進めています。2028年3月期を最終年度とする第6次中期経営計画「Next Value up for 80」を推進し、「“もっと”おいしく、楽しく、ワクワクするおつまみをお届けする会社」の実現を目指しています。

* 2027年3月期目標 売上高:489億円
* 2027年3月期目標 営業利益:21億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、新しい楽しさを持ったおつまみの提供によるファン拡大、すべての人材が活躍できる職場づくり、SDGsへの取り組みとガバナンスの強化を重点戦略としています。期間限定パッケージや他社とのコラボ商品の展開により新規顧客を開拓するほか、太陽光発電の導入拡大など環境負荷低減策も進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を最も重要な経営資源の一つと位置づけ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる社内環境の整備に取り組んでいます。階層別の研修プログラムの充実や通信教育の支援により自己啓発を後押しするとともに、1on1ミーティングの全社的な実施を通じて職場内の良好なコミュニケーションと働きがいのある組織づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.4歳 17.0年 6,247,215円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修派遣人数(累計1,553名)、通信教育受講及び資格取得件数(累計1,649件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料や資材の調達

同社は、水産品、酪農品、畜産品などの原材料を国内外から幅広く調達しています。気候変動による環境変化、家畜疫病の発生、地政学的リスクなどに伴う供給不足や価格高騰が発生し、価格転嫁やコスト削減で吸収できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品の安全・安心

同社グループは食品の製造・販売を主力としており、意図的な異物混入を防ぐフードディフェンスを含む衛生管理を徹底しています。しかし、想定を超える事態によって品質の信頼性が損なわれる問題が発生した場合、製品の回収や販売停止による費用増加などを招く恐れがあります。

(3) 為替相場変動

同社は使用する原材料の約6割を海外に依存しており、そのうち約4割が為替変動の影響を受けます。調達先の国内回帰や複数通貨建ての購買体制構築に努めていますが、急激な円安などの為替変動が生じた場合、調達コストが増加し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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