※本記事は、株式会社アイズの有価証券報告書(第19期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイズってどんな会社?
アイズは、広告業界のプラットフォームやクチコミマーケティング事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2007年の設立後、同年にクチコミマーケティングサービス(現在のトラミー)を開始しました。2013年にはメディアレーダーを事業譲受してプラットフォーム事業を拡大し、2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2025年にはファクログ運営会社を子会社化ののち吸収合併し、事業領域を広げています。
同社の従業員数は64名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社であるシエルで、第2位は創業経営者である福島範幸氏、第3位は個人の牧田伸一氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| シエル | 38.99% |
| 福島範幸 | 6.82% |
| 牧田伸一 | 6.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福島範幸氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 福島範幸 | 代表取締役社長 | 大日本印刷やマクロミル等を経て、2007年2月にアイズを設立し代表取締役社長に就任。2019年6月よりシエル代表社員。 |
| 三谷翔一 | 取締役副社長兼広報部門長兼内部監査室長 | フェスティバル等を経て2010年10月にアイズへ入社。取締役副社長やセールス部門長などを歴任し、2025年1月より現職。 |
社外取締役は、中村慶郎氏(元デジタルアイデンティティ代表取締役・現Orchestra Holdings代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プラットフォーム事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) メディアレーダー
広告業界のインフラを目指すBtoBプラットフォームです。広告やマーケティングに関するサービスを提供する企業と、情報を探す広告主や代理店をつなぎ、通年での見込み顧客情報の獲得を支援しています。
会員が資料ダウンロードやセミナー申し込み等を無料で行う際の情報を見込み顧客情報として提供元に提供し、そのリード提供を対価として収益を得ています。運営は同社が行っています。
■(2) トラミー
SNSを利用する20代から40代の一般女性を中心とした会員を保有するクチコミマーケティングのプラットフォームです。会員が商品やサービスを体験し、自身のSNS上でレビューを発信します。
代理店を経由して消費財メーカー等に広告商品を提供し、会員の投稿物やデータを企業の広告に二次利用可能にすることで役務提供の対価を得ています。運営は同社が行っています。
■(3) ファクログ
企業や個人事業主向けに、ファクタリング会社の情報を比較検討できるプラットフォームです。手数料や入金スピード、必要書類といった条件やクチコミをもとに、ニーズに合ったサービス選定を支援しています。
ファクタリング等の金融サービス企業に対し、サイトを通じて発生した問い合わせや申し込みなどの見込み顧客情報を提供する、成果報酬型の役務提供を行うことで収益を得ています。運営は同社が行っています。
■(4) その他
主要インターネットメディアが提供する広告枠の代理販売を行う運用型広告事業のほか、クラウドサービス向けのクラウドレーダーやママ向けメディア、コスメのクチコミサイト等を展開しています。
広告出稿額に対して運用管理費の手数料を受け取る運用代行の対価や、各マッチングプラットフォームでのリード獲得による成果報酬等によって収益を得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大傾向にありましたが、当期は広告宣伝費の抑制や一部規制の影響等により減少に転じました。また、新規事業の取得に伴う費用増や先行投資の影響などもあり、利益面でも直近ではマイナスに転じており、成長フェーズにおける一時的な踊り場を迎えています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.1億円 | 8.5億円 | 10.2億円 | 10.4億円 | 9.7億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | 1.4億円 | 0.4億円 | 0.4億円 | -0.5億円 |
| 利益率(%) | 12.5% | 16.8% | 4.2% | 3.7% | -5.3% |
| 当期純利益 | 0.5億円 | 1.0億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | -0.7億円 |
■(2) 損益計算書
プラットフォーム事業を主体とするため、売上総利益率は非常に高い水準を維持しています。しかし当期は売上高が減少した一方で、新規事業の買収に伴う管理コストの増加や広告活動の強化により販管費が高止まりし、営業損失を計上する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10.4億円 | 9.7億円 |
| 売上総利益 | 9.5億円 | 8.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 91.5% | 90.9% |
| 営業利益 | 0.3億円 | -0.5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | -5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.9億円(構成比31.1%)、広告宣伝費が2.0億円(同21.5%)を占めています。また、売上原価の内訳では外注費が0.8億円となり、売上原価合計の95.8%を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はプラットフォーム事業の単一セグメントですが、サービス別の売上実績が開示されています。主力のメディアレーダーやトラミーは市況変化等の影響で減収となった一方、新たに取得したファクログが売上に寄与し始め、その他事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| メディアレーダー | 5.4億円 | 4.9億円 |
| トラミー | 4.1億円 | 3.7億円 |
| ファクログ | - | 0.1億円 |
| その他 | 0.9億円 | 0.9億円 |
| 合計 | 10.4億円 | 9.7億円 |
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業の収益がマイナスとなる中で、将来の成長に向けた事業取得等の投資を借入等によって継続している「勝負型」の局面と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.7億円 | -0.6億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -2.6億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | 2.2億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均(グロース市場・非製造業43.3%)を上回っています。なお、当期は純損失を計上したためROEの記載はありません。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「みんなの感動と幸せを追求する」を経営理念に掲げ、すべてのステークホルダーからの高い信頼を得ることを目指しています。また、「世の中を変革する台風の目になる」というビジョンのもと、時代の流れを見極め、成長市場に合わせたプラットフォーム型のサービスを展開することで、既存の業界を変革していくことを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、コンプライアンスを社会に対する責任を果たすための大切な基礎として捉え、その徹底が事業活動を継続していく上で不可欠の要件であると認識しています。また、従業員の働き方については多様化する価値観に合わせて柔軟に働ける仕組みを整備し、全ての人が健康で活躍できる組織風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社が重視する客観的な経営指標として、売上高成長率と売上総利益率を定めています。また、主力のマッチングプラットフォームサービスを拡大するための指標として、メディアレーダーにおいては「平均リード単価」と「課金ダウンロード数」、トラミーにおいては「案件数」と「案件単価」を最も重要な経営管理指標として設定し、事業活動を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は主力サービスであるメディアレーダーおよびトラミーの提供価値向上と、人的資本への投資を通じた組織体制の強化を推進しています。また、広告・マーケティング業界のリードジェン市場を深耕しつつ、既存事業の運営ノウハウを金融業界向けファクログ等の他業界へ横展開させることで事業ポートフォリオの多角化を図り、中長期的な企業価値向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長や企業価値の向上を実現する上で、人材が競争力の源泉であると認識し、多様性に富んだ優秀な人材の採用と育成を行っています。具体的には、新卒向けビジネスマインド研修や上司向けのマネジメント研修に加え、職務に特化したスキル習得のためのテーマ別研修を実施し、実務スキルの開発と早期育成の仕組みづくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 29.1歳 | 3.7年 | 4,672,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット広告市場の変化
同社の主要事業はインターネット広告業に限られているため、技術革新や法改正など広告業界の動向に大きな影響を及ぼす変化が発生した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、特定の業界市況に左右されない収益基盤の構築を目指し、金融業界向けプラットフォーム事業の拡大等に努めています。
■(2) 主要SNSのユーザー利用動向と規制変更
同社の広告商品は主要SNSプラットフォーム上でのマーケティングを中心としているため、ユーザーの利用動向の変化に適切な対応が遅れた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、広告関連の規約・規制変更により従来の手法が使えなくなった場合やプラットフォームの信頼性が低下した際にもリスクとなります。
■(3) クチコミマーケティングの信頼性低下
同社のトラミー事業では、会員に対して法令・ガイドラインの遵守や有用な情報を提供し、厳密な審査体制を構築しています。しかし、多様な要因で会員との信頼関係が低下した場合や、会員が広告審査基準を遵守せず炎上するなど同社の管理が困難な事態が発生した場合、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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