INFORICH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INFORICH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INFORICHは東京証券取引所グロース市場に上場しており、国内外でモバイルバッテリーシェアリングサービス「CHARGESPOT」を展開しています。プラットフォーム事業も育成中です。直近の業績は、利用拡大により大幅な増収、営業利益および経常利益は増益を達成しましたが、最終利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社INFORICHの有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. INFORICHってどんな会社?


INFORICHは、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「CHARGESPOT」を国内外で展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2015年に設立され、2018年に日本および香港でモバイルバッテリーシェアリングサービス「CHARGESPOT」を開始しました。2022年に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。その後も展開を加速し、2024年にベビーケアルームを運営するTrimを子会社化し、2025年にはイタリアへ進出しました。

現在、同社グループは連結で303名、単体で126名の従業員を擁しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社の創業者であり代表取締役の秋山広宣氏で、第2位および第3位には証券会社や信託銀行などの金融機関が名を連ねており、経営陣と金融機関を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
秋山 広宣 11.91%
SBI証券 4.66%
日本カストディ銀行(信託口) 3.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役兼執行役員Group CEOは秋山広宣氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
秋山 広宣 代表取締役兼執行役員Group CEO 2005年にユンタクとアーティスト契約を結び、2011年にIGNISに入社しました。2016年に同社取締役に就任し、2017年より現職。
高橋 朋伯 取締役兼執行役員Japan COO 2010年にラグザイアに入社し、2012年にVELOCITYへ入社しました。2017年に同社取締役に就任し、2023年より現職。
橋本 祐樹 取締役 2012年に有限責任監査法人トーマツに入所し、インベスターズクラウドやメルカリを経て、2019年に同社へ入社しました。2020年より現職。


社外取締役は、角田耕一(C Channel取締役)、鈴木シュヴァイスグート絵里子(Kind Capital代表取締役)、星健一(SocialGood取締役)、天野友道(ハーバード・ビジネス・スクール助教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CHARGESPOT国内」「CHARGESPOT海外」「プラットフォーム」の各報告セグメントを展開しています。

CHARGESPOT国内


主にスマートフォン等の小型電子機器向けモバイルバッテリーシェアリングサービス「CHARGESPOT」を日本国内で提供しています。駅やコンビニ、商業施設等にバッテリースタンドを設置し、専用アプリを通じてどこでも借りて返せる利便性の高いサービスを展開し、ユーザーの充電ニーズに応えています。

収益源は、ユーザーがバッテリーをレンタルした時間に応じて支払う利用料金です。各種キャッシュレス決済に対応し、料金回収リスクを低減しています。サービスの運営やバッテリースタンドの設置拡大は同社が主体となって行い、設置先企業には無償貸与を基本とすることで導入のハードルを下げています。

CHARGESPOT海外


日本国内と同様のモバイルバッテリーシェアリングサービスを、香港、中国本土、台湾、オーストラリア、イタリアなどの海外市場で展開しています。グローバルで同一のアプリを使用可能にしながらも、各エリアの決済手段や店舗形態に合わせたローカライズを行い、人流の多い場所へ集中的に設置しています。

収益源は国内事業と同様にユーザーからのレンタル利用料金です。香港、台湾、オーストラリア、イタリア等では同社の子会社が直営で運営を行い、タイ、シンガポール、マカオ等では現地の提携企業によるフランチャイズ方式で運営しています。

プラットフォーム


「CHARGESPOT」のバッテリースタンドに搭載されたデジタルサイネージを活用した広告枠の販売や、ファンが個人で応援広告を出稿できる「CheerSPOT」を展開しています。また、完全個室型のベビーケアルーム「mamaro」の販売およびレンタルも行い、新たな顧客接点の創出を図っています。

収益源は、企業や個人からの広告出稿料や「mamaro」の一括販売・月額レンタル料金です。広告枠の販売は同社が手掛け、全国のバッテリースタンド網を活かしたリテールメディアとして提供しています。「mamaro」の事業は、2024年に子会社化したTrimが主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、モバイルバッテリーシェアリングサービスの普及に伴い、売上高は継続して大幅な増収を記録しています。利益面については、初期の積極的な先行投資による赤字から脱却して黒字化を達成し、以降も安定して利益を計上する段階へと成長を遂げています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 16.5億円 43.9億円 76.8億円 107.0億円 144.3億円
経常利益 -19.5億円 -11.8億円 6.3億円 17.5億円 19.9億円
利益率(%) -118.3% -26.8% 8.2% 16.4% 13.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -24.5億円 -17.1億円 4.8億円 20.6億円 17.8億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に拡大しており、高い売上総利益率を維持しています。事業拡大に向けた投資や費用負担が増加しているものの、増収効果がそれを吸収し、営業利益ベースでも着実な増益を達成して収益構造の安定化が進んでいます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 107.0億円 144.3億円
売上総利益 83.3億円 114.5億円
売上総利益率(%) 77.8% 79.4%
営業利益 16.6億円 20.5億円
営業利益率(%) 15.5% 14.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17.2億円(構成比18%)、ロイヤリティが16.5億円(同18%)、地代家賃が16.1億円(同17%)を占めています。また、売上原価のうち、減価償却費が17.5億円(構成比59%)、支払手数料などが含まれています。

(3) セグメント収益


CHARGESPOT国内事業は、設置台数の増加とレンタル回数の伸長により主力として収益をけん引しています。CHARGESPOT海外事業は、新規エリアへの進出効果等で増収となった一方、先行投資により営業損失を計上しています。プラットフォーム事業も育成段階にあり増収・営業損失となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
CHARGESPOT国内 83.4億円 103.2億円
CHARGESPOT海外 22.7億円 33.4億円
プラットフォーム 0.9億円 7.7億円
連結(合計) 107.0億円 144.3億円


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 39.4億円 48.6億円
投資CF -46.7億円 -26.8億円
財務CF 51.4億円 -5.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」をミッションとして掲げています。各ローカルのヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えてグローバルに橋渡ししていくことを社会的使命としています。社会的価値と経済的価値の両立を実現し、日本と世界の発展に寄与することを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


同社グループの組織運営の中核には、「多様なものが混在する中にこそ、多くの可能性がある」という信念が根付いています。様々な国籍やバックグラウンドを持つメンバーが集まり、多様な価値観をサービス運営に反映させる風土があります。心理的に安全な職場環境の整備を進め、多様な人材がそれぞれの多彩な才能を活かし、社員同士が「Bridge(橋渡し)」し合える組織を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、「月間レンタル回数」「月間アクティブユーザー数」「バッテリースタンド設置台数」の3つを重要指標として掲げて事業を推進しています。また、ファンが個人で応援広告を発信できるプラットフォーム事業なども立ち上げ、リテールメディアとしてのネットワーク価値の最大化と持続的な成長を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


ロケーションベースのリアルなタッチポイントを保有するCHARGESPOT事業を中核とし、国内市場での安定的な利益創出と海外市場での積極的なエリア拡大を進めています。また、獲得した設置場所とユーザーとの関係性を活かし、サイネージ広告やベビーケアルームなどのプラットフォーム事業への横展開を加速させ、事業間のシナジーを最大化することで将来利益の最大化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバル展開の加速と新規ビジネスの創出に向けて、多様な人材による視点と多彩な能力の確保を重要視しています。女性リーダーの育成や若手社員の登用を推進するとともに、国籍を問わない採用活動を通じて多様な価値観を取り入れています。また、コアタイムのないフルフレックスタイム制やリモートワーク制度の活用により、ワークライフバランスを保ちやすい柔軟な環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.7歳 3.3年 7,803,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.8%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 65.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 120.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における非日本国籍社員比率(連結67.9%)、女性社員比率(連結32.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) シェアリングサービス市場の競争激化


モバイルバッテリーシェアリングサービスは規制業種ではなく、製造もOEMが可能なため、参入障壁が低く競合が激化するリスクがあります。同社は設置台数の多さとサービス水準の高さで優位性を築いていますが、競争環境の変化により計画通りに事業が進行しない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 通信・ネットワーク環境の障害


サービスの提供は通信インフラやサーバー環境に大きく依存しています。自然災害や事故、サイバー攻撃、アクセス急増などによりシステム障害が発生しサービスが停止した場合、機会損失や顧客への損害が発生し、ブランドの信頼性低下とともに業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 新技術の普及による充電ニーズの低下


スマートフォンの内蔵バッテリー性能が飛躍的に向上し、重度な利用でも長時間の追加充電を必要としない技術革新が起こり広く普及した場合、充電サービス自体の需要が減少する恐れがあります。同社は技術動向を継続的に監視していますが、急激な変化は事業の根幹に影響を及ぼすリスクとなります。

(4) 規律ある事業拡大と継続的な投資


市場でのシェアを獲得・維持するためには、バッテリースタンドの設置拡大や新機種開発など継続的な先行投資が不可欠です。投資に見合う十分なユーザー利用や収益が獲得できなかった場合、フリーキャッシュフローの悪化や減損損失の計上などにより、財務状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。