※本記事は、ノイルイミューン・バイオテックの有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ノイルイミューン・バイオテックってどんな会社?
同社は、独自のPRIME技術を活用し、固形がんに対する次世代型免疫細胞療法の研究開発を行う創薬ベンチャーです。
■(1) 会社概要
2015年4月に国立がん研究センターおよび山口大学発のバイオテック企業として設立されました。同年9月より山口大学などとCAR-T細胞療法に関する共同研究契約を締結し、10月には次世代型CAR-T細胞プラットフォーム技術の独占実施許諾を取得しました。2023年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしています。
現在の従業員数は単体で23名です。筆頭株主は事業会社である武田薬品工業で、第2位は資産管理業務などを行う鶴亀、第3位は創業者の玉田耕治氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 武田薬品工業 | 18.75% |
| 鶴亀 | 16.53% |
| 玉田耕治 | 8.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長の玉田耕治氏が経営を牽引しています。取締役5名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉田耕治 | 代表取締役社長 | 1992年九州大学医学部卒業。米国メイヨークリニック医科大学等の博士研究員や助教授を経て、2011年山口大学大学院医学系研究科教授に就任。2016年より同社取締役に就き、2020年9月より現職。 |
| 渡嘉敷努 | 取締役事業企画研究部長 | 2006年オンコセラピー・サイエンス入社。リーディングバレー代表取締役を経て2015年同社入社。経営企画部長、事業本部長等を歴任し、2020年1月より事業企画研究部長、2019年5月より現職。 |
| 永井寛子 | 取締役管理部長 | 1999年永野・森田米国公認会計士事務所入所。2004年アーンストアンドヤング入社後、2010年Hiroko Nagai CPA Officeを設立。2020年3月に同社に入社し、同年6月より現職。 |
社外取締役は、フィリップ・フォシェ氏(元グラクソ・スミスクライン社長)、花井陳雄氏(元協和発酵キリン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「がん免疫療法創薬事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
同社は独自技術であるPRIME技術を活用し、主に固形がんに対する次世代型CAR-T細胞療法などの遺伝子改変免疫細胞療法を研究開発しています。安全かつ有効な治療薬の開発が世界的に求められている医療ニーズの高い固形がん領域において、国内外の製薬企業や研究機関を顧客・提携先として事業を進めています。
収益源は、自社で開発したパイプラインやPRIME技術のライセンス供与による技術アクセス料、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストン収入、および販売後のロイヤリティなどです。事業運営は同社が主体となり、自社が主導する「自社創薬」と、他社に技術をライセンスして共同で医薬品開発を進める「共同パイプライン」のハイブリッドモデルを構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、創薬ベンチャー特有の先行投資フェーズにあり、研究開発費の負担が先行しているため、各期において経常損失および当期純損失を計上しています。事業収益はライセンス契約の一時金やマイルストン収入の有無によって大きく変動する傾向があり、直近2期間は事業収益が0.1億円で推移しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 事業収益 | 1.0億円 | 6.3億円 | 3.2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 経常利益 | -8億円 | -4億円 | -11億円 | -10億円 | -8億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -4億円 | -11億円 | -10億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
収益は主に顧客企業からの収入で構成されています。研究開発活動の継続により多額の研究開発費が発生しているほか、経営管理体制の強化による一般管理費が事業収益を上回るため、営業利益は継続してマイナスとなっています。ただし、前事業年度から研究開発費の減少等により営業損失の幅は縮小しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -11億円 | -8億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が0.9億円(構成比20.1%)、給料手当が0.8億円(同19.1%)を占めています。売上原価の計上はありません。
■(3) セグメント収益
同社は「がん免疫療法創薬事業」の単一セグメントであるため、事業別の収益は全社の事業収益と一致します。当期の事業収益は、顧客との契約に基づく特定の製薬企業へのライセンス供与等による収益によって構成されています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| がん免疫療法創薬事業 | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 0.1億円 | 0.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ノイルイミューン・バイオテックは、CAR-T細胞療法研究開発に注力しており、多額の研究開発費が先行投資となるため、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス傾向にあります。投資活動においては、研究開発費の支出が主となります。財務活動では、研究開発費を賄うための資金調達を実施する可能性があります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -9億円 | -8億円 |
| 投資CF | - | - |
| 財務CF | - | - |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「Create the Future to Overcome Cancer」「がんを克服できる社会の創生に貢献する」という企業理念を掲げています。がん治療の現状と課題を熟知した医師たちによる「がんという病を根絶させたい」「免疫なくして生命は成り立たず」という想いのもと、革新的な治療プラットフォームを利用した効果的ながん治療法を開発し、社会に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、「革新的な治療法の開発と継続的な企業の成長により、患者さん、社員、株主、そして社会の期待に応える」という経営理念を重視しています。また、多様な国籍やバックグラウンド、スキル、性別などを持つ社員が働きやすく魅力を感じる職場づくりを目指すため、「Consideration(許容)」というバリューを行動指針の基盤としています。経営の健全性や透明性、コンプライアンスを高める文化の醸成にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は現在研究開発段階にあるため、売上高や利益率、ROEなどの数値的な目標となる経営指標は設定していません。その代わり、開発中の自社パイプラインにおいては、非臨床試験の段階で詳細な作業工程表を作成し、定期的なモニタリングによる進捗管理を行っています。また、臨床試験の段階では、医療機関で治験を実施する患者数などを具体的な目標として管理し、着実な研究開発の推進を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
革新性の高いPRIME技術を中核とし、大型の収入が期待できる「自社創薬」と、早期の収益確保が可能な「共同パイプライン」の2つの事業モデルを組み合わせたハイブリッドビジネスモデルを推進します。これにより安定感のある事業ポートフォリオを構築し、早期の黒字化を目指します。重点施策として、自社パイプラインの臨床ステージへの移行、基礎研究体制の拡大、ライセンス先への支援を通じた事業展開の加速に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の主要な業務は、経営理念に深く共感するチームメンバーが主体性をもって研究開発を行うことを基本方針としています。採用においては、候補者の経歴や能力に加え、経営理念への共感を重視しています。育成面では、コンプライアンス研修のほか、現場でのOJTや部門長による個別の教育・能力開発プログラムを実施し、全社的な成長と定着を図りながら、研究開発を加速させる人材基盤の強化に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.1歳 | 3.6年 | 7,075,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品の研究開発事業一般に関するリスク
医薬品の開発には多額の投資と長期間を要し、成功確率が低いという不確実性が伴います。また、想定外の副作用が発現した場合には、臨床試験の遅延や中止、製造販売承認の取り消し、さらには損害賠償請求を受けるリスクがあり、同社の財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業内容に由来するリスク
同社の事業は「PRIME技術」に特化しており、当該技術への依存度が極めて高い状態です。臨床試験で安全性や有効性が確認できなかった場合、パイプライン全体に波及する懸念があります。また、ライセンス先企業の開発戦略の変更によっても、想定される収益が変動する可能性があります。
■(3) 知的財産権に関するリスク
事業の競争優位性を保つため、特許権等の知的財産権の確保と維持が不可欠です。しかし、十分な権利範囲が認められない場合や、第三者から特許無効審判などを請求されるリスクがあります。また、第三者の知的財産権を知らずに侵害し、訴訟等を提起される恐れもあります。
■(4) 業績や資金繰りに関するリスク
「自社創薬」を中心とする研究開発費用の負担により、長期にわたり先行投資の期間が続きます。そのため、安定した収益源を確保するまでは継続的な営業損失の計上が見込まれ、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には事業継続に重大な影響が生じる懸念があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。