ファーストアカウンティング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファーストアカウンティング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファーストアカウンティングは東京証券取引所グロース市場に上場し、会計分野に特化したAIソリューション事業を展開する企業です。経理業務を効率化するAI-OCRプラットフォーム「Remota」などが好調に推移し、直近の連結決算では売上高が約23.7億円、経常利益が約2.9億円の増収増益を達成しています。


※本記事は、ファーストアカウンティング株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ファーストアカウンティングってどんな会社?


会計分野に特化したAIソリューションを提供し、エンタープライズの経理業務のデジタルトランスフォーメーションを支援する企業です。

(1) 会社概要


同社は2016年にAIを用いた会計処理の高速化サービスを目的に設立されました。2018年以降、通帳や領収書、請求書の画像をテキスト化するAIモジュール「Robota」シリーズを順次展開しています。2020年にプラットフォーム「Remota」の提供を開始し、2023年には東証グロース市場への上場を果たしました。

従業員数は連結・単体ともに74名体制で事業を運営しています。筆頭株主は創業者の森啓太郎氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるMoriSpaceManagement、第3位は金融機関のINTERACTIVE BROKERS LLCとなっています。

氏名 持株比率
森啓太郎 23.05%
MoriSpaceManagement 21.40%
INTERACTIVE BROKERS LLC 8.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は森啓太郎氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
森啓太郎 代表取締役社長 ソフトバンク入社後、アカマイ・テクノロジーズ合同会社営業本部長などを経て、2011年にホワイト・コンタクト設立。2016年に同社を設立し、現職。
松田顕 取締役執行役員CTO HMVジャパンなどを経て、2003年にワンダーウォールを設立。2011年にDozens設立後、2017年に同社入社。プロダクト開発部長などを経て現職。
中薗直幸 取締役執行役員CRO 日本デジタルイクイップメントコーポレーション等を経て、日本マイクロソフトの本部長やUiPathの本部長を歴任。2020年に同社入社し現職。
上村朗 取締役CFO 藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社し、財務統括部長や経理部長を歴任。KHネオケムの執行役員経理財務部長などを経て現職。


社外取締役は、牧野正幸(元ワークスアプリケーションズ社長)、三村真宗(元コンカー社長)、石関加代子(元ソニーコーポレートサービス統括部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

AIソリューション事業


経理業務の効率化とリモート化を実現するAIソリューションサービスを提供しています。AI-OCR関連と会計仕訳のアルゴリズムを機能化した「Robota」シリーズや、それらを組み合わせて業務を遂行できるクラウド型AIプラットフォーム「Remota」、高度な経理判断業務を支援する「経理AIエージェント」を中心に展開しています。

主な収益源は、1年以上の契約に基づく定額の月額課金、読み取った帳票枚数に応じた従量課金、初期設定等のプロフェッショナルサービスによる利用料です。エンタープライズ(大企業)には同社が直接または販売パートナーを通じて提供し、中小企業にはOEMパートナーの会計ソフトウェアを通じて機能を提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、研究開発や人員採用への先行投資により過去に損失を計上していましたが、事業規模の拡大に伴い近年は利益を創出するフェーズに移行しています。直近の2025年12月期には売上高が約23.7億円に到達し、利益率も12.3%を記録するなど、堅調な収益基盤の強化と事業成長が続いています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - - - - 23.7億円
経常利益 - - - - 2.9億円
利益率(%) - - - - 12.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.6億円 -0.8億円 1.3億円 4.7億円 2.0億円

(2) 損益計算書


収益性の推移を見ると、AIソリューションサービスの導入社数拡大によって売上総利益と営業利益が順調に伸長しています。直近の2025年12月期は、売上高約23.7億円に対して売上総利益率は72.4%、営業利益率は12.3%となり、SaaS型ビジネスモデルによる高い収益性を確保していることが伺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - 23.7億円
売上総利益 12.0億円 17.2億円
売上総利益率(%) - 72.4%
営業利益 1.8億円 2.9億円
営業利益率(%) - 12.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.0億円(構成比27.7%)、業務委託費が1.8億円(同12.6%)、減価償却費が1.0億円(同7.1%)を占めています。売上原価についても、開発およびサービス導入要員の給料や手当、外注に伴う業務委託費、通信費などのコストが含まれています。

(3) セグメント収益


同社はAIソリューション事業の単一セグメントであるため、全社の業績がそのまま同事業の業績となっています。プラットフォーム「Remota」の継続的な好調や、エンタープライズ企業を中心とした経理業務のデジタルトランスフォーメーション需要を背景に、売上の拡大を牽引しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
AIソリューション事業 - 23.7億円
連結(合計) - 23.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業で稼いだ資金と調達した資金を用いて、将来の成長に向けた積極的な投資を行っている積極型の状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%であり、いずれもグロース市場の平均を上回っています。

項目 2025年12月期
営業CF 3.5億円
投資CF -2.7億円
財務CF 0.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「制約を取り払うことで、自信と勇気を与える。」をパーパス(社会における存在意義)として掲げています。顧客や従業員、社会が抱える制約を取り払うことで、自信と勇気が満ち溢れる社会を作ることを目的に事業を展開しています。また、「AIと最先端技術を活用して、顧客と取引先にシームレスで効率的な商取引を提供し、生産性の向上と社会の発展を支援する。」をミッションとしています。

(2) 企業文化


同社は、経営戦略の基本として情熱を持って取り組める領域へのリソース集中を掲げています。また、多様性を重視した企業文化を育んでおり、性別や国籍にかかわらず幅広く人材を登用しています。社内で英語を用いて業務ができる環境の整備や育児休業の取得推進を通じて、国籍差や男女格差なく、誰もが能力を発揮して就業できるフラットでオープンな組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の持続的な向上のため、SaaSビジネスの重要指標であるARPA(1アカウント当たりの売上高)の維持・上昇と、契約更新に伴うグロスチャーンレート(解約率)の低減を経営上の目標として掲げています。また、株主還元については安定した配当の継続を基本方針とし、今後の配当性向は21.0%に設定して利益配分を行っていく計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、エンタープライズの経理デジタルトランスフォーメーション領域に経営資源を集中し、マーケットシェアの拡大を目指しています。重点施策として、独自のLLM等を活用した生成AIの研究開発と付加価値の高いサービス化を推進し、高度な経理判断業務の自動化を進めています。また、グローバル化に向けて米国に子会社を設立し、外国籍人材の採用を強化して北米市場におけるソリューションの展開を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、AI領域の急速な技術革新と多様化する顧客ニーズに対応するため、プロフェッショナル人材の中途採用を中心とする人材戦略を採用しています。国内外を問わず最先端の技術と経験を有する優秀な人材の安定的な確保に努めるとともに、将来の経営層候補に対する教育研修プログラムを通じた育成にも注力しています。また、多様性の確保が事業成長に重要であるとの認識のもと、性別や国籍にかかわらず幅広い人材の登用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.8歳 3.6年 6,766,915円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、労働者の男女の賃金の差異に関する記載は有報にはありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の比率(23.0%)、全正社員における女性比率(29.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティとシステム障害のリスク


取り扱う顧客の会計データに機密情報が含まれるため、不正アクセス等による情報漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながる可能性があります。また、SaaS形式でのインターネットを通じたサービス提供であるため、アクセス急増や自然災害等に伴うシステムの動作不良が生じた場合も業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) AI技術の急速な革新への対応リスク


同社が属するAI業界は国内外で研究開発が進み、常に新しい技術が生み出されています。競争力の源泉である技術力を維持するため、最新技術の収集や優秀な人材確保に努めていますが、急速な技術革新への対応が遅れた場合、新規契約の伸び悩みや既存顧客の解約が発生し、競争優位性が低下する恐れがあります。

(3) 販売パートナーへの依存リスク


同社は自社の直接営業に加え、コンサルティングファームや会計ソフトウェアベンダーなどのパートナー経由での販売も行っており、売上の約半数を占めています。今後、パートナーとの契約が更新されない場合や、相手方の販売方針の変更によってパートナー経由の受注が大きく落ち込んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。