※本記事は、ネットスターズの有価証券報告書(第17期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ネットスターズってどんな会社?
マルチQRコード決済サービス「StarPay」を主軸に、店舗DXを支援するサービスを展開しています。
■(1) 会社概要
2009年に設立され、2015年にQRコード決済サービス「StarPay」の提供を開始しました。その後、シンガポール、ベトナム、中国に子会社を設立して海外展開や開発体制を強化し、2023年9月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。
現在の従業員数は連結で221名、単体で146名です。筆頭株主は創業者である李剛氏で、第2位はKJP2 L.P.、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 李剛 | 19.71% |
| KJP2 L.P. | 12.19% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長CEOは李剛氏が務めています。取締役8名のうち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 李剛 | 代表取締役社長CEO | 1999年にCSKに入社し、新日鉄ソリューションズを経て2009年に同社を設立、代表取締役社長CEOに就任。海外子会社役員なども歴任し現職。 |
| チン・ビン | 取締役CTO | シンガポール航空等を経て2001年日立ソリューションズ入社。eBay等を経て2020年1月同社取締役CTOに就任。中国やベトナム子会社役員を兼任し現職。 |
| 安達源 | 取締役CFO | シティグループ証券、ゴールドマン・サックス証券を経て2021年9月に同社取締役CFOに就任。エボラニの社外取締役も務め現職。 |
| 長福久弘 | 取締役COO | アドバンテージ等を経てLINE Pay取締役CEOに就任。2021年同社に入社し、2022年取締役COOに就任。海外子会社役員も兼任し現職。 |
| 王鯤 | 取締役 | 威発系統などを経て2010年三通に入社。2011年10月に同社取締役に就任。中国子会社の納思達科技(大連)の取締役も務め現職。 |
| 吉田興佳 | 取締役 | 中聯集団、富士通フロンテックを経て2011年2月に同社取締役に就任。ベトナム、中国、香港の関係会社役員を兼任し現職。 |
社外取締役は、濵田敏彰(元財務省国税庁税務大学校長)、中村康佐(元メリルリンチ日本証券副会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「フィンテック事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 決済関連事業
複数のQRコード決済を一つのアプリで可能にするマルチQRコード決済サービス「StarPay」を提供しています。国内外合わせて40種類以上のブランドを統合し、加盟店は複数の決済ブランドを一括して導入・運用できるのが特徴です。既に店舗にあるタブレットやPOSシステムにもAPIを通じて柔軟に対応します。
主な収益源は、決済額に応じて加盟店やOEM提供先から受け取る決済手数料です。また、加盟店のニーズに応じて決済端末の販売による収益も得ています。事業の運営は主に同社が行い、シンガポールの子会社であるNETSTARS ASIA HOLDINGS PTE. LTD.が海外展開を推進しています。
■(2) DX関連事業およびその他
店舗業務の効率化を目指す加盟店向けに、セルフレジやモバイルオーダーなどのDX製品を開発・提供しています。決済と注文の効率化を実現し、顧客の購買体験向上と店舗の省人化を支援します。また、海外向けのインバウンドプロモーションの企画運営も手掛けています。
収益源は、DX製品の初期開発・導入サポートの対価である初期売上、継続的なシステム利用料・保守運営料としての月額利用料、および製品を通じた決済額に応じた手数料です。これらのシステム開発等は、主に中国やベトナムの子会社が同社からの受託先として運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、キャッシュレス決済市場の拡大を背景に売上高は右肩上がりで成長を続けています。先行投資により赤字が続いていましたが、決済取扱高の増加に伴い収益性が改善し、直近の2025年12月期には経常利益および当期利益の黒字転換を達成しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 19.6億円 | 29.9億円 | 37.2億円 | 39.0億円 | 47.9億円 |
| 経常利益 | -10.1億円 | -5.7億円 | -3.3億円 | -0.2億円 | 4.4億円 |
| 利益率(%) | -51.6% | -19.0% | -8.8% | -0.6% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9.6億円 | -5.2億円 | -3.5億円 | -0.4億円 | 4.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は76%台の高い水準を維持しています。増収効果によって営業費用を吸収し、営業利益も黒字化を果たしており、本業の稼ぐ力が着実に強化されていることがわかります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.0億円 | 47.9億円 |
| 売上総利益 | 29.8億円 | 36.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 76.3% | 76.6% |
| 営業利益 | -0.8億円 | 2.9億円 |
| 営業利益率(%) | -2.2% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11.9億円(構成比35.4%)、管理費が3.7億円(同11.0%)を占めています。売上原価は決済手数料売上の増加に伴い11.2億円(構成比100%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社はフィンテック事業の単一セグメントですが、サービス別の売上構成を見ると決済関連事業が全体の大部分を占めており、成長を牽引しています。大型加盟店の獲得などにより決済手数料が伸びたことで、決済関連の売上が大きく増加しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 決済関連 | 33.2億円 | 43.1億円 |
| DX関連 | 3.6億円 | 3.2億円 |
| その他 | 2.3億円 | 1.6億円 |
| 連結(合計) | 39.0億円 | 47.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で継続的にキャッシュを生み出しつつ、資金調達も行いながら積極的な投資を続ける「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は19.9%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 75.1億円 | 23.8億円 |
| 投資CF | -2.0億円 | -1.1億円 |
| 財務CF | 0.1億円 | 0.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「お金の流れを、もっと円(まる)く」というミッションを掲げています。世界規模で急速に進むデジタル化によって生活様式が大きく変わる時代において、経済の基盤である決済をより安全かつスピーディーにすることで、社会の発展の一翼を担うことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社はキャッシュレス化という重要な社会課題に対して、高い倫理観と使命感を持って取り組む文化を重んじています。中立的な立ち位置で多様な決済会社や端末ベンダーと幅広く協業する姿勢を大切にしており、決済データを活用して社会全体の効率化に貢献することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業拡大と事業価値向上を確実にするため、3段階の経営ビジョンを設定しています。まずは国内QR決済市場で高シェアを獲得し、次に加盟店経営を広範に支援して収益源の多様化を実現することを目指します。中長期的には決済データの有効活用やM&A等により、新たな領域への参入を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の持続的な成長に向け、既存パートナーとの協業やOEM先等との連携強化による新規加盟店の獲得に注力します。また、展開領域の拡大を見据えた決済システムの安定稼働のための投資や、海外展開、DXサービスの推進など事業展開スピードの加速化を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的な企業成長に不可欠な経営資本と位置づけ、有用な人材の継続的な確保と育成に努めています。人種、年齢、性別などに関係なく能力や実績に応じた処遇を行うとともに、フレックスタイム制や在宅勤務、時短勤務制度などを整備し、従業員が意欲を持って多様な働き方ができる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 38.2歳 | 3.8年 | 6,930,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 63.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 65.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 117.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合と市場環境の変化
キャッシュレス決済市場は普及が進み成熟段階に移行しつつあり、事業者間の競争が激化しています。競合他社による低価格戦略や機能の高度化が進展した場合、手数料率の低下による収益性の悪化や大口加盟店の他社への切り替えが生じる可能性があります。また、市場の成長鈍化も業績に影響を及ぼすリスクとなります。
■(2) 特定の製品・サービスへの依存
同社の売上高はマルチ決済サービス「StarPay」の動向に大きく依存しています。将来的には収益源の多様化を図る方針ですが、当面はこのサービスへの依存度が高水準で推移すると予想されます。また、売上比率の高い主要なQRコード決済事業者から契約解除や条件変更がなされた場合、業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) システム障害と情報セキュリティ
インターネット回線やクラウドサービスを基盤に事業を展開しているため、予期せぬシステム障害やサイバー攻撃によるシステムダウンが発生した場合、サービスの提供が妨げられるリスクがあります。また、事業を通じて取得した個人情報が漏洩した場合、損害賠償請求や信用の失墜により今後の事業展開に悪影響を与える可能性があります。



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