ケイファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケイファーマは東京証券取引所グロース市場に上場し、iPS細胞を活用した中枢神経疾患領域向けのiPS創薬事業および再生医療事業を展開しています。売上高は現段階で計上されておらず、研究開発の推進により経常損失は前期の8.4億円から当期は9.2億円へと赤字幅が拡大する業績トレンドとなっています。


※本記事は、株式会社ケイファーマの有価証券報告書(第9期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ケイファーマってどんな会社?


ケイファーマは、慶應義塾大学医学部発のベンチャーとして、iPS創薬と再生医療の研究開発を行う企業です。

(1) 会社概要


ケイファーマは2016年11月、医薬品および再生医療等製品の研究開発を目的として設立されました。2017年に慶應義塾と筋萎縮性側索硬化症治療剤等の特許実施許諾契約を結び、2020年には共同研究契約を締結しました。2023年3月にアルフレッサファーマとライセンス契約を結び、同年10月に上場しました。

現在、同社の単体従業員数は20名です。筆頭株主は創業科学者であり代表取締役社長を務める福島弘明氏で、第2位はベンチャーキャピタルのSBI Ventures Two、第3位は同じく創業科学者で取締役CTOの中村雅也氏となっています。

氏名 持株比率
福島 弘明 20.07%
SBI Ventures Two 14.87%
中村 雅也 10.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は福島弘明氏が務めており、取締役5名のうち1名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
福島 弘明 代表取締役社長 エーザイ入社後、Eisai Research Institute of Boston等を経て、2016年11月に同社を設立し、代表取締役社長に就任。以後、現職。
松本 真佐人 常務取締役CFO PwCコンサルティング等を経て、ストライプインターナショナル取締役経営企画室長を務め、2021年9月に同社へ入社。2024年3月より現職。
岡野 栄之 取締役CSO 慶應義塾大学医学部長等を経て、現在同大学教授および再生医療リサーチセンター長を務める。2019年10月より現職。
中村 雅也 取締役CTO 慶應義塾大学医学部整形外科学教室教授等を経て、日本再生医療学会常務理事を務める。2019年10月より現職。


社外取締役は、山田美穂(元CBSフィナンシャルサービス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社は「医薬品等の研究・開発・製造・販売」の単一セグメントで事業を展開しています。

iPS創薬事業


iPS創薬事業では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症等の難治性神経疾患に対する治療薬の研究開発を行っています。患者由来のiPS細胞から分化誘導した神経細胞を活用し、既存の化合物ライブラリーから薬剤の候補となる化合物を効率的に選別する独自の表現型スクリーニング手法を用いています。

収益モデルは、製薬会社等との共同研究開発やライセンス契約に基づき、契約一時金、開発進捗に応じたマイルストン収入、上市後の販売ロイヤリティ収入を受領するものです。同事業の開発や提携先の開拓は、同社が主体となって大学や研究機関と連携しながら推進しています。

再生医療事業


再生医療事業では、脊髄損傷や脳梗塞などの神経損傷疾患に対して、他家iPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を移植し、損傷部位の治療を行う再生医療等製品の研究開発を推進しています。特に、亜急性期の脊髄損傷を優先ターゲットとし、臨床研究とそれに続く企業治験に向けた準備を進めています。

収益は、iPS創薬事業と同様に製薬会社等のパートナー企業へのライセンス供与に伴う一時金やマイルストン収入、販売ロイヤリティ収入が中心です。将来的には、同社自らが国内での製造販売を行うことも視野に入れ、各種企業と業務提携を結びサプライチェーンの構築を図っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、研究開発費の先行投資が継続しているため、売上高の計上がない期間が多く、各期において経常損失を計上しています。2023年12月期には事業提携等による一時的な売上高の計上があり経常黒字化しましたが、その後は再び研究開発が本格化し、赤字幅が拡大する傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - - 10億円 - -
経常利益 -2.2億円 -3.6億円 3.4億円 -8.4億円 -9.2億円
利益率(%) - - 34.4% - -
当期純利益 -2.3億円 -3.9億円 2.6億円 -8.5億円 -9.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、両期とも売上高は計上されておらず、研究開発や事業拡大に伴う経費が先行して発生しています。当期は人員増強などの影響により販売費及び一般管理費が増加したため、営業損失の赤字幅が前期から拡大する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -8.4億円 -9.2億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.1億円(構成比45%)、役員報酬が1.4億円(同15%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長や研究開発のために資金調達による投資を継続している「勝負型」の状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -9.8億円 -9.2億円
投資CF -0.1億円 -0.5億円
財務CF - 15億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.1%で市場平均をわずかに下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たします」を経営理念に掲げています。また、「再生医療および創薬の研究開発を踏まえ、一刻も早く、患者様に有効な医薬品を提供すること」を経営方針とし、世界中で未だ有効な治療法のない神経疾患に対して、新たな治療法を見出すことに挑戦し続けています。

(2) 企業文化


同社は、大学医学部で長年培った最先端の基礎研究の成果を直接的に事業活動に活用する「From Basic to Clinical」の価値観を重視しています。また、難治性の希少疾患の研究開発から、患者数の多い一般的な病気の研究開発へと結び付ける「From Rare to Common」戦略を推進する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は現在、継続的に売上を計上する段階には至っていないため、具体的な数値目標ではなく、iPS創薬事業および再生医療事業における各開発パイプラインの研究開発の進捗状況を、経営上の目標の達成状況を判断するための主要な指標として位置付けています。未だ有効な治療法が確立していないアンメットメディカルニーズ領域の課題解決を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、複数の開発パイプラインのライセンスアウトを推進し、製薬会社等との共同研究開発や権利譲渡による収益化を図ります。特に再生医療事業においては、中長期的に自社で製造販売を行うための体制構築を目指しており、医薬品等のサプライチェーン強化に向けた業務提携や資金調達を機動的に進め、研究開発の加速と事業基盤の拡充に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社の事業は最先端の基礎研究を基盤としており、非常に高度な専門性が要求されます。そのため、基礎研究、知財、臨床開発、製造等に知見を有する優秀な人材の確保を最重要課題と位置付けています。専門型裁量労働制やフレックスタイム制といった柔軟な働き方の環境整備に加え、適切な人事考課を実施することで、多様性に富んだ人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社単体従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 45.9歳 3.6年 9,091,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品等の研究開発に関する不確実性


新薬や再生医療等製品の研究開発には多額の費用と長い期間を要し、治験データの解析結果が予想と異なる等の理由で開発が予定通り進まないリスクがあります。また、各国の厳格な審査基準を満たす有効性や安全性のデータが得られず、上市の延期や断念を余儀なくされる可能性があり、その場合、同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 予期せぬ副作用や法的規制への対応


臨床試験段階や上市後に、予期せぬ副作用等が発現するリスクがあります。特に再生医療等製品はヒト由来の細胞を原材料とするため、感染等の安全面でのリスクを完全に排除することは困難です。さらに、各国の医療行政による薬価規制や薬事関連法等の変更によって想定通りの価格が設定されない場合や、承認が遅延する場合、事業計画に悪影響を与える恐れがあります。

(3) 知的財産権の確保と他社特許への抵触


事業の推進には、同社が独自に保有する特許だけでなく、大学等からの実施許諾を得ることが不可欠です。必要な知的財産権の実施許諾が得られない場合や、現在出願中の特許が成立しないリスクが存在します。また、他社による優位な技術開発によって同社の特許技術が淘汰される可能性や、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合、事業展開に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。