ブルーイノベーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ブルーイノベーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するブルーイノベーションは、複数のドローンやAGV等の自律移動ロボットを遠隔制御・統合管理するプラットフォームを基軸に、点検、ポート、教育等のソリューションを展開しています。直近の業績は、個別対応が先行したこと等により売上計上が分散し、減収および赤字拡大の傾向にあります。


※本記事は、ブルーイノベーション株式会社の有価証券報告書(第27期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ブルーイノベーションってどんな会社?


自律移動ロボットを統合管理するプラットフォームを基盤とし、インフラ点検や防災ソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


1999年に有限会社アイコムネットとして設立され、海岸防災等のコンサルティング事業から開始しました。ドローン活用の有用性に着目し、2013年にブルーイノベーションへ社名変更しています。2018年にドローン統合管理システムを発表し、2023年に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

現在の従業員数は単体で68名です。筆頭株主は創業家であり代表取締役社長である熊田貴之氏で、第2位は福田重男氏、第3位は熊田雅之氏となっています。

氏名 持株比率
熊田貴之 37.02%
福田重男 4.47%
熊田雅之 2.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長最高執行役員は熊田貴之氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
熊田貴之 代表取締役社長最高執行役員 2004年水圏科学コンサルタント入社。2010年同社入社。2012年代表取締役社長就任。2022年より現職。
熊田雅之 取締役副社長執行役員(ソリューション本部管掌 兼 システム開発本部管掌) 2002年富士ソフト入社。2011年同社入社。2012年取締役就任。2026年より現職。


社外取締役は、古川聖(元ディジタルメディアプロフェッショナル常務取締役)、野島威(元バンダイ取締役)、中川雅博(元伊藤忠商事常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ドローン関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 点検ソリューション


プラント施設、送電線、屋内施設等の点検業務をドローンやAGVで代替するソリューションを提供しています。電力会社、石油化学会社、製鉄会社、鉄道会社などのインフラ企業が主な顧客です。

収益源は、導入コンサルティングや実証実験の業務委託料、ドローン機体やAGVのリース料、ソフトウェアの月額課金、運用サービスの委託料などです。事業の運営は同社が行っています。

(2) ポートソリューション


ドローンが離発着するポートシステムや、津波避難広報ドローンシステム等の開発と実証サービスを提供しています。国土交通省や地方自治体、サービスプロバイダなどが主な顧客です。

収益源は、ドローンポートシステムの開発や導入に伴うコンサルティング料、および実証実験等に関する業務委託料です。事業の運営は同社が行っています。

(3) 教育ソリューション


ドローン操縦の基礎教育や応用教育、専用飛行支援地図サービス等のパイロット育成・管理サービスを提供しています。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)や林野庁などが主な顧客です。

収益源は、会員数やスクール数に応じたJUIDAからの業務委託料、ドローン講習の業務委託料、地図サービスの有料課金などです。事業の運営は同社が行っています。

(4) ネクストソリューション


次なる事業の柱となる新規ソリューションの創造に向け、様々な実証サービスや研究開発を提供しています。機械メーカーや化学メーカーなどが主な顧客です。

収益源は、新規デバイスの接続やソフトウェアのカスタマイズ開発に関する業務委託料などです。事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は数年間にわたり拡大傾向にありましたが、直近の2期間では個別対応の増加や供給体制の制約などにより減収に転じています。一方、先行投資や開発資金の負担等により経常利益および当期純利益は継続してマイナスとなっており、直近では赤字幅が拡大する傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 7億円 9億円 13億円 12億円 11億円
経常利益 -4億円 -3億円 -3億円 -4億円 -6億円
利益率(%) -54.3% -37.6% -23.4% -32.0% -53.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 -3億円 -3億円 -4億円 -6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、売上総利益も低下しています。また、社会実装への対応として人的リソース等の確保を進めた結果、販売費および一般管理費が増加し、営業赤字の幅が大きく拡大する結果となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 12億円 11億円
売上総利益 5億円 4億円
売上総利益率(%) 41.7% 39.0%
営業利益 -4億円 -5億円
営業利益率(%) -32.6% -52.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が3億円(構成比33%)、研究開発費が2億円(同16%)を占めています。売上原価(当期製造費用)については、経費が4億円(構成比71%)、労務費が1億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


点検分野はインフラ企業向けの需要等によりわずかに増収となりました。一方でポート分野は運用安定性を優先したため減収となり、教育分野およびネクスト分野も提供内容の見直しやリソースの集中により売上を大きく落とす結果となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
点検 6億円 6億円
ポート 3億円 3億円
教育 3億円 2億円
ネクスト 0.6億円 0.2億円
連結(合計) 12億円 11億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「勝負型」の傾向を示しています。本業は赤字ですが、将来の成長に向けた資金調達を行い、事業への投資を継続している状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -5億円 -3億円
投資CF -0.4億円 -0.3億円
財務CF -0.2億円 7億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.4%で、グロース市場の平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「新しい発想(アイデア)・創造・技術革新(イノベーション)によって、世界中の人々に安心、安全、便利、楽しさを提供し、人々の豊かな生活の実現に貢献する。」を経営理念として掲げています。常にクリエイティブな技術者集団としてイノベーションを起こし続け、人々の生活の豊かさを実現するサービスを提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


経営理念の実現に向けた行動指針として、「自律(インテグリティ)」、「行動(チャレンジ)」、「貢献(ギフト)」の3つを掲げています。あらゆる多様性を認め、誰もが働きがいを持って活躍できる環境を重視し、「安心、安全な環境」の提供と「ダイバーシティ、グローバル」な視点に基づく企業文化の醸成を推進しています。

(3) 経営計画・目標


安定した売上成長と中長期的な収益安定性の確保を目指し、「年間取引企業数」と「ストック型売上比率」を重要な経営指標(KPI)に設定しています。2025年実績では年間取引企業数128社、ストック型売上比率22.0%となっており、今後は継続契約の積み上げによるストック収益の安定化および拡大を目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


従来の個別対応を前提としたフロー型モデルから脱却し、ハードウェアやソフトウェア、運用などをセットにした標準化・パッケージ化によるストック型ビジネスモデルへの転換を推進しています。また、強みを持つプラント領域や防災分野にリソースを集中させ、アライアンス先との連携を通じたサービスの横展開を図ることで、効率的なトップラインの成長と収益性の改善を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の拡大局面においても持続的かつ効率的に価値を提供できる体制を構築するため、ドローンやロボットの運用に関する専門人材に加え、システム設計やデータ活用などを俯瞰できる人材の育成と配置を進めています。また、多様な人材が能力を発揮できるよう、外国籍の従業員の積極的な採用やリモートワークの推進など、柔軟な働き方を支援する環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.4歳 4.6年 7,132,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 開発および技術革新への対応


顧客との共同によるソリューション開発には不確実性が伴い、要件変更や開発遅延が発生する可能性があります。また、ドローンやロボット分野の技術革新のスピードは速く、研究開発等の対応が遅れた場合には同社の競争力が低下し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 提携先からの機体調達リスク


同社はスイスのメーカーから屋内点検用ドローンを輸入し、国内独占販売契約を結んでいます。今後、契約更新の協議において販売権の喪失や製品の安定確保が困難になった場合、あるいは新たなハードウェアへの切り替えに時間を要した場合、事業活動に影響を与える可能性があります。

(3) 季節変動と先行投資の負担


大企業向けのサービス展開が中心であるため、顧客企業の予算消化サイクルや検収のタイミングにより、年末や年度末に売上が集中する傾向があります。また、技術開発や体制整備に向けた先行投資を継続して行っているため、想定した収益化に遅れが生じた場合は財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。