雨風太陽 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

雨風太陽 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

雨風太陽は東京証券取引所グロース市場に上場し、生産者と消費者を直接つなぐ産直アプリ「ポケットマルシェ」の運営や地方創生を支援する自治体事業を展開しています。直近の業績トレンドでは、自治体支援サービスの成長により売上高が微増し、販売費の削減等により営業赤字が大幅に縮小、上場来初の経常黒字化を達成しました。


※本記事は、株式会社雨風太陽 の有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 雨風太陽ってどんな会社?

都市と地方をつなぐ産直プラットフォーム「ポケットマルシェ」の運営や地方創生支援事業を展開しています。

(1) 会社概要

2013年、NPO法人東北開墾として設立され、食材付き情報誌「東北食べる通信」を創刊しました。2015年に前身となる企業を設立し、2016年に日本初のスマートフォンで完結する産直アプリ「ポケットマルシェ」をリリースしました。2022年に雨風太陽へ社名変更し、2023年に東証グロース市場へ上場しました。

従業員数は単体で37名です。筆頭株主はPNB-INSPiRE Ethical Fund 1 投資事業有限責任組合で、第2位は創業時の出資企業等と関係が深い小橋正次郎氏、第3位は創業者の高橋博之氏です。

氏名 持株比率
PNB-INSPiRE Ethical Fund 1 投資事業有限責任組合 13.09%
小橋正次郎 12.13%
高橋博之 8.11%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は高橋博之氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋博之 代表取締役社長 2006年岩手県議会議員。2013年NPO法人東北開墾代表理事。2015年同社設立代表取締役を経て、2025年1月より現職。
権藤裕樹 代表取締役副社長 2017年総務省入省。2021年同社取締役C2C事業部門部門長を経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、永田暁彦(UntroD Capital Japan代表取締役)、小橋正次郎(小橋工業代表取締役社長)、小沼大地(特定非営利活動法人クロスフィールズ代表理事)です。

2. 事業内容

同社は、「個人向けサービス」および「法人向けサービス」事業を展開しています。

個人向けサービス

全国の農家や漁師から直接食材を購入できる産直アプリ「ポケットマルシェ」やふるさと納税プラットフォーム、宿泊予約サイト「STAY JAPAN」、子ども向け企画旅行などを一般消費者向けに提供しています。

商品代金に応じた販売手数料や旅行プログラムの参加費などを収益源としています。事業の運営は、すべて雨風太陽が主体となって行っています。

法人向けサービス

中央省庁や地方自治体向けに関係人口創出や販路拡大を支援する事業や、法人向けの食材販売、社会的価値を創出するためのインパクト共創に関するサービスなどを展開しています。

自治体からの委託費や、他企業との連携による法人向け食材販売の食材費・企画費などを主な収益としています。事業の運営は、すべて雨風太陽が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況

同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5年間の業績を見ると、売上高はサービスの拡大に伴い継続して成長しています。一方、事業拡大に向けた広告宣伝や人員増強への先行投資により赤字が続いていましたが、販売費の削減など運営効率化が進んだことで利益率は改善傾向にあり、当期は経常黒字への転換を果たしています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4.5億円 6.4億円 9.6億円 10.2億円 10.3億円
経常利益 -5.6億円 -3.2億円 -1.8億円 -1.6億円 0.2億円
利益率(%) -126.8% -50.5% -19.0% -15.7% 2.0%
当期純利益 -5.7億円 -3.2億円 -1.8億円 -1.6億円 -0.0億円

(2) 損益計算書

売上高は自治体支援サービスの成長により前年比で微増となりました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、組織運営の効率化や広告宣伝費の適正化により販売費及び一般管理費が大幅に減少した結果、営業赤字の縮小につながっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 10.2億円 10.3億円
売上総利益 6.7億円 6.7億円
売上総利益率(%) 65.3% 65.6%
営業利益 -1.6億円 -0.1億円
営業利益率(%) -15.3% -0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比29.7%)、決済手数料が0.8億円(同12.0%)を占めています。売上原価の内訳としては、通信費が0.3億円(構成比7.9%)、支払送料が0.1億円(同4.0%)などを計上しています。

(3) セグメント収益

個人向けサービスは物価高騰の影響等により売上が微減したものの、運営の効率化と販売費等の削減により利益は大幅に増加しました。法人向けサービスは、「ふるさと住民登録制度」に関連する関係人口領域や旅行領域での新規受託案件が増加し、増収増益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
個人向けサービス 7.5億円 7.3億円 0.7億円 1.7億円 23.5%
法人向けサービス 2.7億円 3.0億円 0.3億円 0.5億円 16.0%
調整額 -億円 -億円 -2.6億円 -2.3億円 -%
単体(合計) 10.2億円 10.3億円 -1.6億円 -0.1億円 -0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

雨風太陽は、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却等による資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払い等、資金調達や返済に関する動きを示しています。

短期運転資金は自己資金と短期借入、長期運転資金は金融機関からの長期借入を基本としています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -2.5億円 -0.0億円
投資CF -0.9億円 -0.4億円
財務CF -0.0億円 -0.4億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げています。現在の日本における都市と地方、生産者と消費者の分断を乗り越え、双方をつなげて境目をなくすことを使命としています。ヒト・モノ・カネのあらゆる側面で都市と地方をつなぐサービスを提供し、地域を持続可能にして活力ある日本社会を残すことを目指しています。

(2) 企業文化

同社は生産者と消費者が直接コミュニケーションを取れる「顔の見える取引」を重視しています。金銭的なリターンだけでなく、事業活動から生まれる社会的なインパクトを測定する指標を取り入れ、社会価値の創出を目指す文化を持っています。地球と地域・文化のサステナビリティに真摯に向き合う姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標

同社は、売上高の成長に加えて、ミッション実現の進捗を測るインパクト指標を重要な経営目標として設定しています。具体的には、「『顔の見える取引』にかかる流通総額」「生産者と消費者のコミュニケーション数」「都市と地方を往来して過ごした日数」の成長を通じ、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に図っています。

(4) 成長戦略と重点施策

同社は、主力の「ポケットマルシェ」においてSEO対策の強化やクロスセルによる顧客生涯価値(LTV)の向上を図り、収益性を高める戦略を掲げています。また、関係人口領域のモデルとなる自治体との連携や、子ども向け企画旅行「ポケマルおやこ地方留学」等の旅行事業の拡大により、関連サービスの成長を加速させる方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、持続的成長と企業価値向上において人材を最も重要な経営資源と位置づけています。ミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った多様で優秀な人材を積極的に採用する方針です。また、個人の可能性を引き出し組織として活かすため、個人と企業が共に成長できる環境や風土づくり、継続的な社内環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.8歳 3.5年 5,421,000円

※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は法令の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社の影響と販売手数料率の変更

EC事業や旅行事業における有力な競合企業との競争が激化した場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。また、経済状況を鑑みて販売手数料率の引き上げを行っており、今後の手数料変更やシステム変更等により他社サービスとの間で明確な差異が生じた場合にも、競争優位性や利用状況に影響が及ぶリスクがあります。

(2) インターネット関連市場と技術の変動

主力の産直アプリは販売手数料を主な収益源としており、インターネットの利用拡充が持続的な成長の鍵となります。しかし、革新的な新技術の登場や新たな法的規制の導入などにより市場の利便性が損なわれたり、発展が阻害されたりした場合、プラットフォームの利用が減少し、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティと個人情報漏洩

プラットフォームの運営にあたり、多数の会員情報や個人情報を取り扱っています。暗号化やアクセス制御などのセキュリティ対策を講じていますが、外部からの不正アクセスや想定外の事態により個人情報が外部へ流出する可能性は完全には排除できません。万一漏洩が発生した場合、損害賠償責任の発生や企業イメージの悪化につながるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。