※本記事は、ナイル株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナイルってどんな会社?
自動車流通DXの推進とデジタルマーケティング支援を通じて、社会のDX課題を解決する産業DXカンパニーです。
■(1) 会社概要
2007年に設立され、2010年にデジタルマーケティング事業(現在のホリゾンタルDX事業)を開始しました。2018年には自動車産業DX事業を立ち上げ、個人向け自動車サブスクリプションサービスをリリースしています。2023年に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2024年にはパティオを連結子会社化しました。
現在の従業員数は連結で268名、単体で251名体制となっています。大株主の状況としては、筆頭株主が同社創業者の高橋飛翔氏で、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は資産管理業務などを行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 高橋 飛翔 | 40.22% |
| JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合 | 14.59% |
| 特定金外信託受託者SMBC信託銀行 | 4.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は高橋飛翔氏が務めています。また、取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋 飛翔 | 代表取締役社長 | 2007年1月に同社を設立し代表取締役に就任。2010年3月より現職。 |
| 長澤 斉 | 取締役 コーポレート本部本部長 | 2007年3月に同社入社後、2008年に執行役員。2010年1月より現職。 |
| 土居 健太郎 | 取締役 人事本部本部長 | 2009年2月に同社へ入社し、事業部長等を経て、2019年1月より現職。 |
社外取締役は、畠山謙人(畠山謙人公認会計士事務所代表)、成松淳(ミューゼオ代表取締役社長)、富田寛之(千鳥ヶ淵法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、自動車産業DX事業およびホリゾンタルDX事業を展開しています。
■自動車産業DX事業
オンラインとオフラインの双方から自動車販売市場のDXを推進し、車を「買う・乗る・売る」までの包括的な支援を提供しています。オンラインでは個人向けマイカーサブスクリプション「カーリースカルモくん」を運営し、オフラインでは実店舗を通じた地域密着の車両販売や整備・板金サービスを展開しています。
初年度に広告宣伝費を投じて顧客を獲得し、提携金融事業者からの初期紹介手数料を得ます。その後は契約期間中の月額課金で安定収益を得るモデルです。サブスクリプションサービスなどの運営は同社が行い、オフライン領域での実店舗による新車・中古車販売はパティオが担当しています。
■ホリゾンタルDX事業
特定の産業に限定せず、インターネットを活用したDXやデジタルマーケティングの技術・ノウハウを用いて、広範な業種業態の企業を支援しています。デジタル戦略コンサルティング、コンテンツ制作、生成AIによる業務自動化支援に加え、自社開発のバーティカルメディアの運営やデジタル広告に関するソリューションも提供しています。
コンサルティングサービスにおいて、役務提供期間に応じた準委任契約による報酬や、成果物納品による請負契約の報酬を顧客企業から受け取ります。また、メディア運営や広告運用サービスでは、広告配信を通じた単価ベースの報酬を得ています。これらの事業運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期の連結業績を見ると、売上高は順調に拡大を続けています。一方で利益面においては先行投資の影響などにより経常損失を計上していますが、増収効果もあって直近の期では赤字幅が大幅に縮小する傾向にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 67億円 |
| 経常利益 | -7億円 | -1億円 |
| 利益率(%) | -12.7% | -2.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | -2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加にともない、売上総利益も順調に伸びています。売上総利益率は低下したものの、販売費及び一般管理費が抑えられたことで、営業損失の赤字幅は前期から大きく改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 67億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.5% | 36.3% |
| 営業利益 | -7億円 | -1億円 |
| 営業利益率(%) | -12.4% | -1.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比36%)、広告宣伝費が4億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車産業DX事業が全体の売上の大部分を牽引しており、前期から大幅な増収を達成しています。ホリゾンタルDX事業についても安定した売上規模を維持しており、全体的な収益基盤の拡大に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 自動車産業DX事業 | 31億円 | 45億円 |
| ホリゾンタルDX事業 | 23億円 | 23億円 |
| 連結(合計) | 55億円 | 67億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ですが将来の成長に向けた投資と資金調達を積極的に継続する「勝負型」の局面にあるといえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -11億円 | -3億円 |
| 投資CF | 0.4億円 | -1億円 |
| 財務CF | 2億円 | 2億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「幸せを、後世に。」をミッションに掲げ、社会に根付く事業作りを通じて時代を超えて人々の幸せに貢献することを目指しています。また、豊かで幸せな未来を次の世代に紡ぐため、「日本を変革する矢」をビジョンとしています。絶え間ない自己変革を繰り返しながら日本のDX課題を解決する「産業DXカンパニー」として事業に挑戦しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりの成長が事業成長に直結するという考えのもと、各自がより高みを目指して大きな壁に挑むことを当たり前とする風土づくりを推進しています。また、前例のない事業や組織課題に対し、多様な価値観による集合知で課題解決を図るため、多様なバックボーンを持つ人材が思い切り活躍できるオープンな組織文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
より高い成長性と収益性を確保する観点から、各セグメントにおける売上高成長率と営業利益を重視しています。また、売上高の継続的な増加を実現するため、自動車産業DX事業ではカスタマーチャーンレートや契約残高、延べ申込件数を、ホリゾンタルDX事業では顧客継続率や契約社数を重要なKPIとして設定し、モニタリングを行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車産業DX事業では、オンラインとオフラインを融合させたプラットフォームを構築し、商品ラインナップの拡充による成約転換率の向上と、アナログな実店舗運営へのDXモジュール注入による収益性改善を図ります。ホリゾンタルDX事業においては、デジタル戦略コンサルティングを主軸としつつ、生成AI活用支援など提供ソリューションの多様化を進め、プロフェッショナルによる現場での実働支援を通じて戦略と実行の分断を解消していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
継続的な事業成長を実現するため、DXに造詣の深い多様な人材の採用と、強い組織体制の整備を経営上の重要課題と位置付けています。組織内からのマネジメント人材の育成や、個別フォローおよび社員希望での部署異動を叶える人事制度の促進を通じて、自律的なキャリア形成と組織の流動性を高めています。また、生成AI活用を推進し、全社的な生産性向上に向けた働き方のアップデートにも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 36.3歳 | 3.7年 | 6,055,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、eNPS(-31.08)、正社員における女性比率(44.5%)、正社員(女性)の育児休業取得率(150.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合参入や技術革新による競争激化
マーケティング関連市場では生成AIの普及など技術革新が速く、自動車販売市場においても新興事業者や異業種からの参入が相次いでいます。同社は最新の技術動向の把握や優秀な人材確保によって環境変化へ迅速に対応していますが、競争激化や顧客ニーズの変化に対応できない場合、または多額のシステム投資や人件費が生じた場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 外部事業者への依存リスク
インターネット上でのマーケティングソリューション提供やユーザー集客において、同社は大手テクノロジー企業が提供する検索エンジンやプラットフォームを活用しています。検索アルゴリズムの変更や運営方針の変更に迅速に対応する体制を整えていますが、対応が遅れたり多額の費用負担が発生したりした場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 自動車産業DX事業における提携先との関係
「カーリースカルモくん」の提供にあたり、金融事業者を中心とした戦略的な提携先と密接な関係を構築し、オンライン主体の手続きや自宅納車等のオペレーションを実現しています。良好な関係の維持に努めていますが、提携先との関係が悪化した場合や想定通りに顧客基盤の拡大に寄与しなかった場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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