カウリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カウリス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カウリスは東京証券取引所グロース市場に上場し、マネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業を展開する企業です。法人向けクラウド型不正アクセス検知サービスを主力とし、金融機関等への導入を進めています。直近の業績は、主力サービスの堅調な推移により増収増益を達成し、継続的な成長を遂げています。


※本記事は、カウリスの有価証券報告書(第11期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カウリスってどんな会社?


法人向けクラウド型不正アクセス検知サービスを提供し、金融機関のセキュリティ対策を支援しています。

(1) 会社概要


2015年12月に設立されました。2016年12月に法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」の提供を開始しています。2019年10月に関西電力送配電と業務提携契約を締結しました。2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、2025年9月には金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービスの提供を開始しています。

従業員数は単体で53名です。筆頭株主は代表取締役の資産管理会社であるrhizomeで、第2位は創業者の島津敦好氏、第3位はGMOインターネットグループとなっています。

氏名 持株比率
rhizome 46.17%
島津敦好 6.89%
GMOインターネットグループ 4.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は島津敦好氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
島津敦好 代表取締役社長 Capy, Inc.等を経て2015年12月同社設立、代表取締役社長就任。rhizome代表取締役就任。
造田洋典 取締役 ザッパラス管理本部長、ノボット取締役CFO等を経て2019年1月同社取締役就任。
眞武信和 取締役 ドリコム、グリー等を経て2019年3月同社取締役就任。マネーフォワード入社。


社外取締役は、伊東寛(元情報通信研究機構主席研究員)です。

2. 事業内容


同社は「マネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

マネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業


同社は、法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」を提供し、銀行や証券会社などの金融機関、通信キャリア、インフラ事業者などを顧客としています。エンドユーザーの各種情報から行動履歴をデータベース化し、不正アクセスやマネー・ローンダリングのリスクを未然に検知するサービスを展開しています。

収益は、顧客企業から毎月受け取る継続的なサービス利用料(ストック型収益)と、初期設定作業や概念実証などの利用料から構成されます。ビジネスモデルは利用者の総アクセスカウント数や訪問ユーザー数を基に契約金額を決定しており、同社単体でサービスの運営やコンサルティングの提供を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大しており、5期間で約2.8倍に成長しています。経常利益も売上の拡大に伴って大幅に増加し、利益率は約30%前後の高い水準で安定して推移しています。継続課金型のストック収益が積み上がるビジネスモデルにより、安定した成長と高収益を実現していることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4.9億円 7.7億円 9.9億円 12.3億円 14.0億円
経常利益 0.1億円 2.2億円 2.9億円 3.9億円 4.1億円
利益率(%) 2.8% 28.6% 29.5% 31.7% 29.3%
当期純利益 0.1億円 2.5億円 2.6億円 2.8億円 2.8億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益も拡大していますが、サーバー費用の増加や開発投資などにより売上総利益率および営業利益率はやや低下しています。それでも営業利益率は約30%と高い水準を維持しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 12.3億円 14.0億円
売上総利益 7.7億円 8.2億円
売上総利益率(%) 63.2% 58.3%
営業利益 4.1億円 4.1億円
営業利益率(%) 33.7% 29.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が1.4億円(構成比34%)、支払報酬が0.4億円(同10%)を占めています。売上原価の内訳は、経費が3.6億円(構成比62%)、労務費が2.0億円(同34%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントです。主力サービスである不正アクセス検知サービスへの需要が高まり、トラフィック増加に伴う既存顧客からのストック売上の増加や新規顧客の獲得により、売上高は堅調に推移しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
マネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業 12.3億円 14.0億円
連結(合計) 12.3億円 14.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.7億円 2.1億円
投資CF -0.0億円 -3.7億円
財務CF 5.1億円 -0.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.9%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「情報インフラを共創し、世界をより良くする」というミッションを掲げています。先端技術を活用した実用的なサービスを創り続け、誰もが安心・安全なデジタル社会での利益を享受できる情報インフラの構築を目指し、企業価値の最大化を図ることを経営方針としています。

(2) 企業文化


同社のミッションには「共創」という言葉が含まれています。これまでの個社ごとにモニタリングし検知するというアプローチではなく、顧客横断・業界横断でデータを流通させ、日本全体の犯罪データをプラットフォーム化して国民の生命・財産を守ることを目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するための主要な経営指標として、月次経常収益(MRR)を特に重視しています。この指標を目標として経営を行うことにより、企業の成長性および効率性の確保を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の注力領域として、既存の主力サービスである不正検知サービスへの経営資源の投下に加え、新規事業である金融機関等向けKYC(本人確認)サービスの販売に重点的に取り組む戦略を掲げています。また、新たな脅威に対する技術開発や、組織体制の整備、専門人材の採用と育成にも注力して持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、営業やエンジニアを中心とした人材の採用を積極的に進めており、リファラル採用も取り入れています。ビジネス研修やマネージャー研修プログラムの導入、資格取得を促進する手当の導入により継続的な人材育成に努め、従業員のキャリア形成に即した配置や雇用管理に配慮しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.8歳 3.0年 6,523,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マネー・ローンダリング対策市場の変動


マネー・ローンダリング対策市場は成長が予測されていますが、競合他社の参入による競争激化やキャッシュレス決済から現金決済への回帰、新たな法的規制の導入などにより市場の成長が鈍化した場合、同社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応遅れ


日々発生する新たな脅威や技術革新に伴い、顧客のニーズは変化しやすくなっています。プライバシーポリシーの強化などで端末識別の難易度が上がり、同社サービスの不正抑止効果が薄れたり、新たな技術への対応が遅れたりした場合、競争力が低下する恐れがあります。

(3) 特定顧客・業界への高い依存度


同社の売上高は銀行や証券会社などの金融機関、クレジットカード事業者に集中しており、特定の業界や顧客への依存度が高い状況です。顧客の経営方針の変更による契約見直しや、見込み通りに顧客拡大が進まない場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。