ハッチ・ワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハッチ・ワーク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハッチ・ワークは東京証券取引所グロース市場に上場し、月極駐車場オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」を展開する月極イノベーション事業や、貸会議室を運営するビルディングイノベーション事業を展開しています。直近の業績は、主力事業の拡大により売上高が堅調に推移し、増収増益を達成しています。


※本記事は、ハッチ・ワークの有価証券報告書(第26期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ハッチ・ワークってどんな会社?


月極駐車場のオンライン管理支援と貸会議室の運営を主力とし、空間の有効活用を推進する企業です。

(1) 会社概要


2000年にジーシーメディアとして創業し、2008年に貸会議室事業を開始しました。2010年には月極駐車場検索ポータルサイトをリリースし、2018年に現在の社名であるハッチ・ワークへ変更するとともに、オンライン管理支援サービス「アットパーキングクラウド」を開始し、2024年に上場を果たしました。

現在の従業員数は単体で73名です。筆頭株主は資産管理を行う大竹アンドパートナーズで、第2位は事業関連のダイナエッグ、第3位は創業者の大竹弘氏となっています。経営陣と関連法人が上位を占め、強固な経営体制を構築しています。

氏名 持株比率
大竹アンドパートナーズ 24.20%
ダイナエッグ 14.40%
大竹弘 8.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は増田知平氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
増田知平 代表取締役社長 セブンイレブンジャパン等を経て2006年に同社入社。2007年より取締役、2018年より現職。
大竹弘 取締役会長 セコムやビルディング不動産等を経て2005年に同社代表取締役社長に就任。2025年より現職。
竹内聡 取締役CFO アメリカン・エキスプレスや税理士事務所等を経て2018年に同社取締役管理部長兼CFOに就任し、2024年より現職。


社外取締役は、高野茂久氏(元パルマ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「月極イノベーション事業」「ビルディングイノベーション事業」および「その他」事業を展開しています。

月極イノベーション事業


月極駐車場のオンライン管理支援システム「アットパーキングクラウド」を管理会社や利用者に提供するほか、検索ポータルサイト「アットパーキング」や駐車場サブリースを展開しています。
収益は、管理会社からのシステム利用料や利用者からの保証料、決済手数料などから構成され、同社がサービスを運営しています。

ビルディングイノベーション事業


貸会議室サービス「アットビジネスセンター」や企業内会議室のシェアサービス「シェア会議室」に加え、ミドル世代向けのコミュニティオフィス「インスクエア」などを提供しています。
収益は、利用者からの会議室利用料やオフィスの賃料などから構成され、同社が直営方式および委託方式で運営しています。

その他事業


主力事業に関連するシステムの受託開発などを行っています。同社がサービスを提供し、開発案件に応じた受託収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。経常利益も過去の赤字から黒字転換を果たし、直近では利益率も向上するなど、収益体質の改善と成長が同時に進行しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 14億円 16億円 21億円 24億円 28億円
経常利益 -4億円 -4億円 0.1億円 2億円 3億円
利益率(%) -26.7% -23.9% 0.6% 6.5% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 -4億円 0.8億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も増加しており、高収益の事業構造が定着しています。営業利益率も改善が進んでおり、効率的な事業運営による利益の創出が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 24億円 28億円
売上総利益 14億円 16億円
売上総利益率(%) 58.2% 59.1%
営業利益 2億円 2億円
営業利益率(%) 7.7% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比22.3%)、業務委託費が3億円(同20.0%)を占めています。売上原価においては、経費が9億円(構成比83.3%)、労務費が2億円(同16.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である月極イノベーション事業が売上・利益ともに大きく牽引しています。ビルディングイノベーション事業も堅調に売上を伸ばしており、両セグメントで安定した収益基盤を形成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
月極イノベーション事業 14億円 18億円 4億円 5億円 29.1%
ビルディングイノベーション事業 10億円 10億円 3億円 2億円 21.8%
その他 - 0.1億円 - - -
調整額 - - -4億円 -5億円 -
連結(合計) 24億円 28億円 2億円 2億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ハッチ・ワークは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としています。役務提供前に対価を収受する事業特性から、その方針に沿って財源を確保しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に事業計画に基づいた将来の収益力や課税所得の見積りから判断されます。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業用資産の減損損失の判定において、将来キャッシュ・フローの見積りや投資額の回収可否を判断する際に考慮されます。財務活動によるキャッシュ・フローについては、有価証券報告書に具体的な記載はありません。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 0.2億円 3億円
投資CF -0.6億円 -2億円
財務CF 4億円 -0.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「温故×創新」を企業哲学、「社会に可能性の卵を。」をパーパスとして定めており、「CREATE FUTURE BASE」をミッションとして掲げています。まだ世の中にない独自の発想から遊休資産に新たな価値を生み出し、その仕組みを創造することで社会の永遠の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営の健全性や効率性を確保することを重視し、的確かつ迅速な意思決定や適正な監督・監視体制の構築に努める文化を持っています。また、人材への投資をコストではなく未来への投資と捉え、公平で納得性の高い評価制度や教育制度を通じて、従業員の自律的な成長とエンゲージメント向上を支援する社風が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高の継続的な成長と業務の効率化を通じた利益体質の強化を目標としています。経営上の客観的な指標として「売上高成長率」「営業利益率」「営業活動によるキャッシュ・フロー」を重視しており、加えて月極イノベーション事業における「アットパーキングクラウド」への登録台数を重要KPIとして設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、オンライン契約可能な月極駐車場の開拓余地が大きいと判断し、管理会社の獲得とそれに伴う利用者拡大に重点を置いています。蓄積したデータを活用し、短期貸しやカーシェアリング拠点開発など多様な高付加価値サービスを提供することで、駐車場がモビリティ関連サービスのハブとなる構想の実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業の急速な成長とビジネスモデルの変革に対応するため、先進テクノロジーを活用できるエンジニアやAI専門人材等の採用と育成を推進しています。働き方の多様化に応じた社内環境の整備や、研修体制の拡充、勤務体系の抜本的な改定など、経営基盤の刷新と組織体制の再構築に最優先で投資を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 34.9歳 5.8年 6,330,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.4%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 46.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 135.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合優位性の喪失


「アットパーキングクラウド」などの新規事業領域において、資金力や技術力に優れる大手企業や新興企業が参入し競争が激化する可能性があります。同社は機能追加や顧客満足度の向上に努めていますが、競合の動向によって優位性が失われた場合、事業拡大や経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 駐車場需給の急激な緩和


ガソリン価格の急騰やカーシェアリングの発展などによる自動車保有台数の減少により、駐車場需給が急激に緩和するリスクがあります。同社は蓄積されたデータを利用して未稼働区画の有効活用や新たなサービスを開発することで、環境変化に対応し収益源の多角化に努めています。

(3) 利用料の滞納及び回収不能


同社は駐車場利用者に対して滞納保証を行っており、支払能力の低下などにより滞納が発生した場合は立替払いを行います。債権回収の専門部署を設けて対応し引当金を計上していますが、未回収額が想定を上回った場合には、同社の財政状態や業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。