※本記事は、リガク・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第5期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. リガク・ホールディングスってどんな会社?
同社はX線技術を中心とした分析・計測機器の開発、製造、販売、サービス等をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1951年に理学電機(現リガク)として設立され、国産X線装置の製造・販売を開始しました。1971年に米国へ進出するなどグローバル化を推進し、2020年に設立された現法人が2021年にリガクを完全子会社化しました。2024年には東京証券取引所プライム市場への上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で1,971名、単体で126名です。筆頭株主はカーライルが運用する投資ファンドのAtom Investment, L.P.で、第2位は志村晶氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Atom Investment, L.P. | 42.08% |
| 志村 晶 | 12.15% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは川上潤氏です。取締役7名中5名が社外取締役であり、社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川上 潤 | 代表取締役社長CEO | 日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン入社、GEヘルスケア・ジャパン代表取締役社長兼CEO、アルテリア・ネットワークス代表取締役社長兼CEO等を経て、2023年2月より現職。 |
| 尾形 潔 | 取締役副社長、グローバルプロダクトユニットリーダー | 日立製作所を経て、リガクに入社。執行役員、常務執行役員、取締役専務執行役員を歴任し、2023年7月より現職。 |
社外取締役は、富岡隆臣(カーライル・ジャパン・エルエルシー日本共同代表)、Andrea Knoblich(元The Bank of New York Mellon Corporation Director)、田口倫彰(元日本テキサス・インスツルメンツ代表取締役)、江端貴子(元衆議院議員・アステラス製薬社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「理科学機器の製造・販売」の単一セグメントですが、事業内容として「多目的分析機器」、「半導体プロセス・コントロール機器」、「部品・サービス」等を展開しています。
■(1) 多目的分析機器
X線回折、蛍光X線分析、X線イメージング等のX線技術を利用する分析・計測機器の開発・販売を行っています。様々な材料の研究開発や生産プロセスにおける品質管理、医薬品の研究開発等において、大学・研究機関等のアカデミアや産業分野の幅広い顧客に利用されています。
顧客からの製品購入代金を主な収益源としています。卓越したX線要素技術力を武器に、先端的なX線分析ソリューションを提供しています。事業の運営は主にリガクや海外の連結子会社が行っています。
■(2) 半導体プロセス・コントロール機器
蛍光X線、X線反射率、X線回折等の分析手法を組み合わせて、半導体ウェーハの汚染検査や薄膜評価など半導体製造における様々なパラメータを測定する機器を開発・販売しています。世界大手の半導体メーカーや半導体製造機器メーカーを顧客としています。
顧客からの機器購入代金を主な収益源としています。デバイス製造プロセスの品質を計測し、歩留まり改善に寄与する高付加価値な計測機器を提供しています。事業の運営は主にリガクや海外の連結子会社が行っています。
■(3) 部品・サービス及びその他
販売した製品のアフターサービスとして、消耗品や交換部品の供給、修理・点検、保守契約等を提供するとともに、X線発生装置等の要素部品の一部を他社へ外販しています。また、熱分析装置や水銀測定装置等のその他の分析機器も取り扱っています。
顧客からの部品購入代金やサービス利用料、保守契約料を収益源とし、製品のライフサイクルにわたって継続的なストック型収益を得ています。事業の運営は主にリガクや海外の連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近4期間で一貫して増加傾向にあり、順調な事業成長が伺えます。当期は半導体プロセス・コントロール機器の好調等により売上収益が942億円となりました。一方で、当期利益は先行投資や一時費用の影響もあり、前期比で減益の114億円となっています。
| 項目 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 627億円 | 799億円 | 907億円 | 942億円 |
| 税引前利益 | - | - | 30億円 | 75億円 |
| 利益率(%) | - | - | 3.3% | 8.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 109億円 | 136億円 | 114億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期から増加し増収を達成しましたが、営業利益は減少しました。事業拡大に向けた研究開発投資や人員増強等の先行投資を継続していることが、営業利益率の低下要因の一部となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 907億円 | 942億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 184億円 | 167億円 |
| 営業利益率(%) | 20.3% | 17.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円、支払手数料が6億円を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「理科学機器の製造・販売」の単一セグメントです。AI需要やデータセンター向けの需要拡大を背景に、半導体プロセス・コントロール機器の販売が大きく伸長したことが売上増加に貢献しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 理科学機器の製造・販売 | 907億円 | 942億円 | 184億円 | 167億円 | 17.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 146億円 | 94億円 |
| 投資CF | -61億円 | -66億円 |
| 財務CF | -24億円 | -66億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「科学技術の進歩を通して人類社会の発展に貢献する」を企業理念に掲げています。また、「視るチカラで、世界を変える」を実践し、X線技術を中心とした最先端の分析ソリューションを顧客や社会に提供することで、様々な活動分野で生まれる技術イノベーションを支援し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「顧客を大切にする 人を大切にする 技術を大切にする」を社是としています。世界各地の拠点が有する多様性を武器に、全世界の仲間が全体最適を共有・尊重して能力を結集する「グローバル・ワン・リガク」のスピリットを重視し、独自の成長モデルを創造する「A One-of-a-Kind Global Technology Company」を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な経営戦略の推進により、持続的な成長と企業価値の向上を図るための中期計画目標を設定しています。収益性の向上と積極的な成長投資のバランスを取りながら、安定した財務基盤の維持と売上収益の着実な増加を目指しています。
・売上収益:1,340億円~1,480億円(2027年12月期目標)
・調整後EBITDAマージン:29%~32%
・調整後営業利益率:27%~30%
■(4) 成長戦略と重点施策
卓越したX線要素技術力と顧客基盤を活かし、研究開発部門(Lab)での協働から確立した分析技術を生産プロセス(Fab)へ展開する「Lab to Fab 戦略」を中長期的な経営戦略の中心に据えています。多目的分析機器での海外市場成長の加速、半導体技術進化に伴う新領域への拡大、および新市場創出による事業領域の拡大を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル市場での持続的成長のため、優秀で多様な人材の確保と育成を不可欠と位置づけています。「リガク・コンピテンシー」の浸透やジョブ型人事制度の導入により、従業員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、ワークライフバランス向上の支援や健康管理体制の推進を通じて、すべての従業員が能力を十分に発揮できる環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 48.4歳 | 9.5年 | 10,084,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 95.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(46.6%)、女性取締役比率(28.6%)、障がい者雇用率(3.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の市場動向と半導体業界の変動リスク
同社の分析・計測機器の需要は、研究開発予算や設備投資計画、各国の経済情勢の影響を受けます。特に、主力事業として成長している半導体プロセス・コントロール機器は半導体業界のシリコンサイクルの影響を受けやすく、市場の需要が著しく減少した場合には業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法令・規制や輸出管理に関するリスク
同社の製品は各国における安全基準や環境規制、輸出管理規制の対象となっています。特に軍事転用リスクに対する安全保障の観点から輸出規制が強化されており、貿易管理プロセスでのデュー・ディリジェンスを徹底していますが、予期せぬ規制変更等により事業が制限された場合、業績に影響が及ぶおそれがあります。
■(3) 新技術の開発と競合との競争激化リスク
科学分析機器市場では継続的な新技術の開発が不可欠です。同社は研究開発への重点的な投資やM&Aを通じた技術獲得を進めていますが、技術の発展に追いつけない場合や競合他社との価格・技術競争が激化してシェアが低下した場合には、長期的な成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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