Synspective 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Synspective 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Synspectiveは東証グロース市場に上場し、独自の小型SAR衛星の開発・運用と取得した画像データの販売、データ解析ソリューションを提供する宇宙スタートアップです。業績面では、官公庁向けの実証案件や補助金収入の計上により大幅な増収を達成し、当期純損失は前期から大きく縮小して改善傾向にあります。


※本記事は、株式会社Synspectiveの有価証券報告書(第8期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Synspectiveってどんな会社?


同社は独自の小型SAR衛星の開発・製造・運用から、画像データの販売と解析ソリューションまでを一貫して手掛ける企業です。

(1) 会社概要


2018年に設立され、シンガポールにマーケティング拠点を新設しました。2020年には小型SAR衛星の実証初号機の打上に成功し、民間では日本初となる小型SAR衛星画像の取得を達成しました。2024年に量産工場であるヤマトテクノロジーセンターを稼働させ、同年12月に東証グロース市場へ上場を果たしています。

従業員数は連結で228名、単体で219名です。筆頭株主はヒューリックで、第2位は三菱電機、第3位は創業者の新井元行氏となっています。

氏名 持株比率
ヒューリック 12.17%
三菱電機 9.50%
新井 元行 6.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役CEOは新井元行氏が務め、取締役6名のうち3名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
新井 元行 代表取締役CEO PwCコンサルティングやWASSHA等を経て、2018年に同社を創業し代表取締役CEOに就任。海外子会社トップも兼任し現職。
小畑 俊裕 取締役 三菱電機や東京大学大学院工学系研究科学術支援専門職員を経て、2019年に同社へ入社し取締役に就任。子会社取締役も兼任し現職。
志藤 篤 取締役CFO 監査法人等を経て、WASSHAの設立取締役に就任。2018年に同社へ入社し、2021年より取締役。子会社取締役も兼任し現職。


社外取締役は、海老澤観(元モバイル・インターネットキャピタル社長)、渥美優子(ベーカー&マッケンジー法律事務所等を経て弁護士)、榎本亮(EY Japanチーフ・ブランディング・オフィサー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衛星データ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) データ販売


独自の小型SAR衛星「StriX」シリーズのコンステレーションから取得した画像データを販売するサービスです。天候や昼夜に左右されずデータ取得が可能で、安全保障や防災・減災などを目的に各国の政府機関(特に防衛関連省庁)を主要顧客としています。

顧客はWeb上のプラットフォームで契約した購入枚数の範囲内で対象地域を指定し、データの納品を受ける収益モデルです。運営は主に同社および子会社のSynspective Japanや海外子会社が行っています。

(2) ソリューション提供


取得したSAR衛星データを中心にデータサイエンスを用いた自動解析を行い、業務上すぐ利用できる情報として提供するサービスです。損害保険、インフラ開発、資源エネルギー企業などに向け、災害リスク評価や環境調査等のニーズに応えています。

サービスはWeb上のプラットフォームで完結し、解析箇所や頻度に基づく解析料を受け取る収益モデルです。初回の導入コンサルティングも提供しており、運営は主に同社および各国のグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は官公庁向けの案件獲得等により継続的な成長を遂げており、直近の売上高は24億円規模に拡大しています。利益面においては、衛星開発や量産体制の構築に伴う先行投資が続いているため各段階で損失を計上していますが、補助金収入の獲得等により直近では経常損失や当期純損失が大幅に縮小する改善傾向を見せています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4.9億円 13.9億円 23.2億円 23.8億円
経常利益 -43.4億円 -19.5億円 -35.9億円 -10.7億円
利益率(%) -881.5% -140.8% -155.2% -45.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -62.7億円 -15.6億円 -35.7億円 -2.5億円

(2) 損益計算書


売上高は着実に増加しているものの、観測衛星の減価償却費等の増加により売上総利益は縮小しています。また、事業拡大に向けた人員の積極採用や販売体制の拡大による業務委託費の増加から、営業損失の赤字幅は拡大しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 23.2億円 23.8億円
売上総利益 2.1億円 0.1億円
売上総利益率(%) 9.1% 0.3%
営業利益 -30.7億円 -41.4億円
営業利益率(%) -132.4% -174.1%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が12.2億円(構成比29.5%)、給料及び手当が8.1億円(同19.6%)を占めています。売上原価においては、観測衛星の減価償却費等を含む経費が17.4億円(構成比72.8%)と大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力となる画像データ販売は、各国の防衛機能を担う省庁など官公庁向けの売上が好調に推移し、大幅な増収を達成しています。一方で、ソリューションおよび受託サービス等を含むその他の売上高は、前期と比較して減少する結果となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
画像データ販売 9.2億円 14.7億円
ソリューション 5.5億円 5.1億円
その他 8.4億円 3.9億円
連結(合計) 23.2億円 23.8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失の計上により算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -18.0億円 16.6億円
投資CF -74.6億円 -116.3億円
財務CF 190.3億円 202.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「次世代の人々が地球を理解し、レジリエントな未来を実現するための新たなインフラをつくる」ことをミッションとして掲げています。地球規模での自然災害や気候変動、安全保障等のリスクを定量的に可視化・理解し、人類が自然環境や次世代を思いやりながら安心して生きていける持続可能な社会の構築を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、様々なバックグラウンドや専門知識を持つ多様な人材が活躍できるよう、グループ行動指針である「CREDO」を策定しています。不確実性の高い宇宙ビジネスの領域において、専門家同士が自由に議論し、試行錯誤を組織の知恵に変える「自律型学習組織」の構築に注力し、風通しの良い企業風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高と補助金収入を合算した「総収入」と、将来の売上を予測する「受注額・受注残高」を重要な指標として管理しています。また、SAR衛星データの供給力を決定づける「衛星運用機数」についても継続的な拡大を目標に掲げて事業を展開しています。

(4) 成長戦略と重点施策


当面の日本政府によるデータ需要を起点として安定した収益基盤を構築しつつ、衛星の運用機数を増やし海外展開やソリューション展開を進めて高収益化を目指す戦略です。民間市場への参入や余剰データの有効活用、長期的なデータ値崩れリスクへのヘッジを図り、特定の産業や地域に強いパートナー企業との連携を通じてグローバル展開を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、幅広い専門知識と技能を持つ人材の確保を重視し、日本国内に留まらず世界各地での直接採用や多様な雇用形態を積極的に導入しています。グローバルカンパニーへの変貌を見据え、国籍や性別を問わない役員・管理職の登用を推進するほか、言語や文化の異なる人材が活躍できるよう語学学習の奨励など社内環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.7歳 3.2年 9,021,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続的な先行投資と収益化遅延

SAR衛星データの市場シェア獲得を目指し、複数の衛星システム構築やソリューション開発に向けた先行投資を継続しています。競争環境の激化や需要の不確実性により、想定通りの成果が得られず黒字化が遅れる可能性があります。

(2) 衛星打上の失敗による事業影響

同社は自社で開発した衛星の打上を外部のロケット事業者に委託しています。ロケット保険に加入し金銭的な補償体制は整えていますが、打上が失敗した場合、計画していたデータ取得ができなくなり事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 官公庁など特定顧客への販売依存

現状の売上高の多くを日本政府など各国の官公庁に対するデータ販売が占めています。民間企業など新たな顧客層の開拓を進めているものの、方針変更等により官公庁との安定的な取引が継続できなくなった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 宇宙活動法や電波法など法規制の変更

人工衛星の運用は、宇宙活動法、電波法、衛星リモートセンシング法などの規制を受けます。関連する法律の改正や規制強化が行われた場合、あるいは各種許認可の取得が想定通りに進まない場合、事業の展開が阻害される可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。