GVA TECH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

GVA TECH 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場上場のGVA TECHは、法務業務のDXを推進するリーガルテックSaaS事業および登記事業を展開しています。業績トレンドとしては、新規顧客の獲得等により増収を達成しつつ、内製化や費用対効果の見直しによって営業赤字を縮小させており、今後の収益化に向けた基盤強化を進めている状況です。


※本記事は、GVA TECH株式会社の有価証券報告書(第9期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. GVA TECHってどんな会社?


法務部門や事業部門向けのリーガルテックSaaSおよびオンライン登記サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2017年1月に設立。2018年にAIによる契約書チェックサービス、2019年に商業登記オンライン支援サービスを開始しました。2023年の法務データ基盤システム提供開始を経て、2024年11月にこれらを統合した「OLGA」をリリース。同年12月に東証グロース市場への上場を果たしています。

現在の従業員数は単体で69名です。筆頭株主は創業者の山本俊氏で、第2位はベンチャーキャピタル等の投資ファンド、第3位も同様に外資系ファンドが名を連ねており、事業成長に向けた外部資本の導入が図られている構成となっています。

氏名 持株比率
山本俊 19.33%
DBJキャピタル投資事業有限責任組合 12.40%
SALESFORCE VENTURES LLC. 5.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は山本俊氏が務めており、社外取締役の比率は16.7%となっています。

氏名 役職 主な経歴
山本俊 代表取締役社長 弁護士登録後、法律事務所勤務を経てGVA法律事務所を創業し代表弁護士就任。2017年に同社を創業し現職。
康潤碩 取締役 弁護士登録後、GVA法律事務所に入所しパートナー就任。2021年より同社取締役として事業部管掌。
有賀之和 取締役 IT企業や楽天等での勤務、フルセイル代表取締役等を経て2019年に同社入社。2021年より取締役就任。
板倉侑輝 取締役 SCSK等のIT企業を経て、BREW取締役を務めた後、2023年に同社取締役へ就任し経営企画部管掌。
秦野元秀 取締役 証券会社やデジタルガレージ取締役、駅探取締役、Gunosy等を経て2024年に同社取締役に就任し管理部管掌。


社外取締役は、菅原貴与志(弁護士法人小林綜合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リーガルテック事業」を展開しています。

LegalTech SaaS事業


法務部門や事業部門向けに、法務業務のDXを推進する全社対応の法務オートメーション「OLGA」をクラウドサービスとして提供しています。案件の受付や進捗管理を一元化する法務データ基盤や、AIを活用した契約審査、契約管理などの各機能をモジュールとして組み合わせることで、業務効率と品質の向上を支援します。

収益は主に利用アカウント数などに応じた月額利用料によるサブスクリプション型モデルと、導入時の初期費用等から構成されています。同事業の運営は同社が単独で行っており、大企業から中堅企業の法務部門を中心に、事業部門を含めた全社的な契約業務の最適化を推進することで安定したストック収益を積み上げています。

登記事業


法務機能が十分でないスタートアップや中小企業向けに、オンラインで簡単に商業登記の変更申請書類を作成できる「GVA法人登記」などを提供しています。また、法人の履歴事項全部証明書を取得できるサービスや、商標の出願書類作成を支援する「GVA商標登録」も展開し、複雑な法務手続きの負担軽減を図っています。

収益は主にトランザクション型モデルを採用しており、利用者が各サービスで手続きを行う都度に発生するサービス利用料や、書類の印刷・製本などのオプション代行料金を受け取っています。本事業の運営も同社が担っており、利用社数の拡大と提供サービスの多角化を通じて、手軽で安価な行政手続き支援を実現しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上は毎期順調に拡大しており、5期間で大きく成長しています。一方で、新規顧客獲得に向けたマーケティング投資や、サービス開発・体制強化に伴う人材採用への先行投資を継続しているため、経常損失および当期純損失が続いています。ただし、直近ではストック収益の積み上がり等により損失幅は縮小傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3億円 4億円 7億円 12億円 15億円
経常利益 -3億円 -3億円 -4億円 -5億円 -3億円
利益率(%) -88.9% -70.9% -59.1% -45.6% -21.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 -3億円 -4億円 -5億円 -3億円

(2) 損益計算書


売上高は着実に増加し、売上総利益も拡大しています。費用面では、継続的な人材投資等による人件費の増加があったものの、業務の内製化や費用対効果を見直した広告宣伝費の抑制が奏功し、販売費及び一般管理費は減少しました。その結果、営業赤字の幅が前年と比べて大きく改善しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 12億円 15億円
売上総利益 8億円 9億円
売上総利益率(%) 64.7% 61.6%
営業利益 -5億円 -3億円
営業利益率(%) -44.9% -20.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4億円(構成比30%)、広告宣伝費が2億円(同17%)を占めています。また、売上原価の多くは事業拡大に伴う仕入や開発関連の費用等で構成されています。

(3) セグメント収益


売上高は両事業ともに順調に拡大しています。特にLegalTech SaaS事業は、新機能のリリースに伴う新規顧客獲得が牽引し、前年比で大きく成長しました。登記事業も利用件数が増加し、安定的な売上成長を支えています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
LegalTech SaaS事業 6億円 8億円
登記事業 6億円 7億円
連結(合計) 12億円 15億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長に向けたソフトウェア開発等への投資を継続するため、借入や増資等の財務活動によって資金調達を行っている勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -3億円 -0.2億円
投資CF -4億円 -4億円
財務CF 7億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失計上のためマイナスとなり市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も17.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「法とすべての活動の垣根をなくす」というパーパスを掲げています。社会のあらゆる活動を支える法がもつ複雑さという「垣根」を、テクノロジーの力で取り除くことを目指しています。専門家向けの業務効率化から始まり、全社対応ソリューションや中小企業向け支援へと領域を広げ、最終的には個人ユーザーにまでサービスを広げることで、誰もがより創造的かつ効果的に活動できる社会の実現を追求しています。

(2) 企業文化


同社は持続的な成長や事業価値の向上のため、人材を最も重要な経営資源と位置づける文化を持っています。性別や年齢、国籍に関係なく多様性に富んだ人材が活躍できるよう、フレックスタイム制や在宅勤務、育児休業取得など、ライフステージや多様な価値観に合わせた働き方を後押ししています。また、教育機会の提供や適正な人事評価を通じて、従業員がやりがいを持って成長できる組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高の最大化が営業キャッシュ・フローの拡大、ひいては企業価値の向上につながると位置づけ、高い成長率の維持を重要な経営指標としています。また、各事業の継続的な成長を実現するためのKPIとして、SaaS事業ではサブスクリプション売上、ARR(Annual Recurring Revenue)、顧客数、顧客平均単価などを設定し、登記事業ではサービス利用数や累計利用社数などを目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の注力領域として、提供するSaaSモジュール間の連携を強化し、法務案件の受付から契約審査までをシームレスに繋ぐことで顧客単価の向上と解約率の低下を図ります。さらに、事業部門でも利用可能な機能を拡充し、法務にとどまらない全社的な契約業務の最適化を推進します。登記事業においては、対応可能な登記事項を拡充するとともに、商標登録などの新たな法務手続きプロダクトを開発し、既存の顧客基盤への横展開を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の持続的成長のため、最先端の技術と経験を持つ優秀な人材の確保を喫緊の課題としています。AI技術の急速な発展に対応すべく、積極的な採用活動を通じて多様な人材を確保し、継続的な雇用創出に努めています。また、労働環境や福利厚生の充実、教育機会の提供を進め、リーガルテック業界での知名度向上を図りながら、従業員が能力を最大限に発揮し成長し続けられる魅力的な企業基盤の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 37.0歳 2.9年 6,966,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) クラウドおよびリーガルテック市場の成長鈍化リスク


同社は「OLGA」や「GVA法人登記」などのクラウド型サービスを展開していますが、経済情勢の変化や新たな法規制の導入、技術革新の停滞等により、ターゲットとする市場の成長が鈍化した場合には、IT投資の抑制を招き、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 急速な技術革新とAI関連人材の確保競争


同社の競争力の源泉はAIをはじめとしたIT技術力にあります。そのため、常に最新技術を研究・導入し、優秀なエンジニアを確保することが不可欠です。しかし、他業界を含むAI関連企業との人材獲得競争が激化し、適切な人材の確保や急速な技術革新への対応が遅れた場合、事業成長に影響が生じる恐れがあります。

(3) 弁護士法および司法書士法による法的規制リスク


「OLGA」のAI契約レビューモジュールや「GVA法人登記」の申請書類作成機能は、弁護士法や司法書士法の非資格者による業務制限規制に抵触しないよう設計されています。ガイドライン等に準拠し適法性を確認していますが、今後の法令の解釈や規制内容が変更された場合、事業展開が制約を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。