ZenmuTech 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ZenmuTech 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ZenmuTechは東京証券取引所グロース市場の上場企業です。データを無意味化して保護する独自の秘密分散技術を用いた情報セキュリティソリューションの展開を主力事業としています。直近の業績は売上高8.5億円、当期純利益1.6億円となり、前期から大幅な増収増益を達成し成長を続けています。


※本記事は、株式会社ZenmuTechの有価証券報告書(第12期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ZenmuTechってどんな会社?


独自の秘密分散技術を活用した情報セキュリティ事業を展開する同社の概要を解説します。

(1) 会社概要


2014年3月にシンクライアント用ソフト等の提供を目的として設立されました。2015年に秘密分散技術を利用したPC向け情報漏洩対策ソリューションの提供を開始し、2017年に現在のZenmuTechへ商号を変更しました。その後も秘密計算ソリューションの開発等を行い、2025年に上場を果たしました。

同社の従業員数は単体で36名です。大株主については、筆頭株主は創業者の岡積正夫氏で、第2位は情報セキュリティソリューション事業を展開するセグエグループ、第3位は創業者の田口善一氏となっています。

氏名 持株比率
岡積 正夫 6.98%
セグエグループ 5.90%
田口 善一 5.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは阿部泰久氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
阿部泰久 代表取締役社長CEO 1996年9月日本オラクル入社、アマゾンウェブサービスジャパンなどを経て2022年に同社へ入社し、2025年6月より現職。
國井晋平 専務取締役COO兼CTO 1983年4月東芝入社、台湾東芝国際調達社副社長などを経て2017年に同社へ入社し、2025年6月より現職。
酒井茂輝 取締役CFO兼CWO 2008年4月SUS入社、2017年に同社へ入社し管理本部マネージャーなどを経て2025年3月より現職。


社外取締役は、白川彰朗(インテリジェント・キャピタルゲイト代表取締役)、轟芳英(轟公認会計士事務所代表)、樽本哲(ミクスト代表取締役)、髙栁文子(髙栁文子税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、情報セキュリティ事業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 秘密分散ビジネス

同社は、データを意味のない状態に変換して分散保管し、情報漏洩を防ぐ独自の秘密分散技術「ZENMU-AONT」を用いたソリューションを提供しています。主力となるPC向け情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive」は、シンクタンクや金融機関など幅広い業界の顧客に利用されています。

収益は、ライセンスの買い切りによるフロー型収益や、サブスクリプションおよび保守契約によるストック型収益から得ています。また、顧客の製品に同社の技術を組み込むソフトウエア開発キットのライセンス提供やロイヤルティ収入もあり、同社が事業を運営しています。

(2) 秘密計算ビジネス

同社は、秘密分散技術を応用し、産業技術総合研究所との共同研究に基づいた秘密計算ソリューション「QueryAhead」を開発しています。データを秘匿化したまま計算や分析ができる技術であり、クラウドや社内サーバーを問わずに安全なデータ利活用を実現するサービスを提供しています。

収益は、秘密計算ソリューションを利用した委託研究の受託役務などから得ています。現在は金融、製造、物流、ヘルスケア分野などをターゲットに、複数の企業と連携して研究開発を進めるとともに、サービスの事業化を目指すパートナーの開拓を同社が行っています。

(3) その他

設立当初から展開しているシンクライアント用OSのカスタマイズや、シンクライアント基盤最適化のコンサルティングを「Embedded」ソリューションとして提供しています。

収益は、既存の代理店案件や導入済み顧客からの追加導入、PC更新時などのリピート案件において、顧客の運用に応じたコンサルティングやカスタマイズ作業といった受託役務から得ており、同社が事業を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上高は順調に拡大しており、直近5期間で約4倍に成長しています。経常利益と当期純利益については、先行投資により赤字が続いていましたが、2023年12月期に黒字転換を果たして以降、利益率も大きく改善しながら着実な増益傾向を見せています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2.1億円 2.3億円 4.4億円 6.5億円 8.5億円
経常利益 -0.5億円 -1.1億円 0.6億円 0.8億円 1.6億円
利益率(%) -23.9% -48.8% 12.9% 13.0% 18.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.5億円 -1.2億円 0.7億円 0.8億円 1.6億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期から増加しています。独自のソフトウェアソリューションを中心としているため、売上総利益率は90%前後と非常に高い水準を維持しており、営業利益率も16.9%へと改善傾向にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 6.5億円 8.5億円
売上総利益 5.9億円 7.7億円
売上総利益率(%) 90.7% 90.0%
営業利益 0.8億円 1.4億円
営業利益率(%) 11.8% 16.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.4億円(構成比22.2%)、研究開発費が1.1億円(同17.2%)を占めています。また、当期総製造費用のうち、労務費が1.5億円(構成比52.3%)、業務委託費を中心とした経費が1.4億円(同47.7%)となっています。

(3) セグメント収益


主力事業である秘密分散ビジネスは、販売代理店戦略の推進やサブスクリプションライセンスの堅調な獲得により、前期比で大幅な増収となりました。秘密計算ビジネスなどの売上高も安定して推移しており、全体として成長を牽引しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
秘密分散ビジネス 5.1億円 7.0億円
秘密計算ビジネス 1.2億円 1.3億円
その他 0.2億円 0.2億円
連結(合計) 6.5億円 8.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続している勝負型のキャッシュ・フロー状況です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も62.9%で市場平均を上回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2.4億円 -0.3億円
投資CF -0.2億円 -0.7億円
財務CF -0.2億円 3.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「データの保護、データの利活用を追及する」をミッションとして掲げ、安心・安全なデータセキュリティを社会に提供することを使命としています。また、「安心・安全な情報の利活用で世界を変える」ことを目的として事業に取り組み、「安全な情報社会の一翼を担う」「情報の利活用により、潜在価値の発掘・新たな価値の創造に貢献する」というビジョンのもと、情報の潜在的価値を引き出すことを目指しています。

(2) 企業文化


同社の企業文化に関する明確なバリューや行動指針は有価証券報告書に記載されていません。一方で、カスタマーサポート部門と技術開発部門が常に連携してサービスの改善・強化に努めるなど、顧客から選ばれるサービスの提供に向けた顧客志向の姿勢が事業活動の随所に反映されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、自社製品の利用者数を客観的に表す「サブスクリプション契約と保守契約の合計値(ライセンス数)」を最重要視しています。ライセンス数の増加に伴い、今後の収益基盤となるストック型収益の成長を実現し、事業の安定的な拡大を図ることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、販売代理店に対するインセンティブなどの販売強化策を推進し、主力ソリューション「ZENMU Virtual Drive」の拡販に努める方針です。また、秘密計算データベースプラットフォーム「QueryAhead」の事業化を進め、将来の収益の柱となる新規事業を開拓することで事業領域の拡大を目指します。中長期的には海外市場への展開も見据えつつ、多様なパートナー企業とのOEM展開によるアライアンス拡大にも注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員が能力を最大限に発揮できる体制の構築に努めています。社内におけるノウハウの共有や教育訓練等を通じて、高い専門性を持った優秀な技術者や営業担当者の確保・育成に注力しています。また、リモートワークやフレックスタイム制度の導入など柔軟な働き方を推進するとともに、最高ウェルビーイング責任者(CWO)を選任し、従業員のウェルビーイング向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 49.4歳 4.6年 7,534,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応遅れ


情報セキュリティ分野は、新たなサイバー脅威や技術革新による事業環境の変化が激しい市場です。同社は新しい発想による技術開発や研究機関との連携で競争力の維持に努めていますが、技術革新に十分な開発費用を投じられなかったり、製品が陳腐化したりした場合には、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業・サービスへの依存


同社は情報セキュリティ事業の単一セグメントであり、特に主力サービスである「ZENMU Virtual Drive」に関する売上高の依存度が82.2%と高くなっています。OEM強化や秘密計算ソリューションの研究開発などで依存度の低下を進めていますが、市場縮小などの環境変化に適切に対応できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 専門的な人材の確保・育成


技術革新が続く情報セキュリティ業界において、専門的な技術を持つエンジニアや業界に通じた営業担当者の獲得は困難な状況にあります。同社は働きやすい環境の整備やウェルビーイングの推進により人材の定着に努めていますが、優秀な人材を十分に確保できない場合や社外へ流出した場合には、経営戦略の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。