モロゾフ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

モロゾフ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムに上場し、洋菓子製造販売および喫茶・レストラン事業を展開する企業です。2025年1月期の業績は、売上高が360億円で増収となった一方、原材料価格や人件費の高騰等が響き、営業利益は21億円で減益となりました。バレンタイン商戦等は好調でしたが、コスト増が利益を圧迫しています。


#記事タイトル:モロゾフ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、モロゾフ株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. モロゾフってどんな会社?


神戸発祥の高級洋菓子メーカーとして知られ、百貨店等での洋菓子販売と喫茶事業を展開しています。

(1) 会社概要


1931年に神戸で創立し、日本にバレンタインデーの文化を紹介したパイオニア企業の一つです。1974年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、その後東京証券取引所にも上場しました。洋菓子の製造販売を主力としつつ、喫茶・レストラン事業も展開しています。2020年には株式会社鎌倉ニュージャーマンを子会社化し、ブランドポートフォリオを拡充しました。

連結従業員数は566名、単体では541名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は不動産業等を営む平和、第3位は取引金融機関のみずほ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(株)(信託口) 9.18%
平和(株) 4.30%
(株)みずほ銀行 3.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は山口信二氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
山口 信二 代表取締役社長 1981年同社入社。マーケティングセンター長、営業本部長などを経て、2016年より現職。日本チョコレート工業協同組合理事長も務める。
山岡 祥記 代表取締役副社長管理部門統括 1980年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2008年同社監査役を経て、経営統括本部長などを歴任。2024年より現職。
鈴木 正人 常務取締役マーケティング本部長 1994年同社入社。営業本部福岡支店長、営業本部長などを経て、2025年より現職。
高田 耕治 取締役生産本部長 1989年同社入社。六甲アイランド工場長、西神工場長などを経て、2020年より現職。
磯野 健治 取締役経営統括本部長 1989年同社入社。関西支店営業部長、人事総務部長などを経て、2024年より現職。
佐々木 誉之 取締役営業本部長 1990年同社入社。名古屋支店長、関西支店長などを経て、2025年より現職。
木村 雅一 取締役(常勤監査等委員) 1986年同社入社。経営統括本部経理部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、笠原かほる(ザ・パック(株)社外取締役)、森澤武雄(弁護士)、渡邊純子(京都大学大学院経済研究科教授)、松尾茂樹(元河淳(株)常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「洋菓子製造販売事業」および「喫茶・レストラン事業」を展開しています。

**洋菓子製造販売事業**
チョコレート、クッキー、チーズケーキ、プリンなどの洋菓子を製造・販売しています。主力ブランドの「モロゾフ」に加え、「ガレット オ ブール」などの新ブランドも展開しており、販売チャネルは全国の百貨店や駅ビル等の直営・準直営店が中心です。
収益は、一般消費者への製品販売代金等から得ています。運営は主にモロゾフが行っているほか、子会社の鎌倉ニュージャーマンも同事業を担っています。

**喫茶・レストラン事業**
百貨店やショッピングセンター内において、ケーキ、コーヒー、パスタなどを提供するカフェやレストランを展開しています。こだわりのスイーツと空間を提供し、ブランド価値の向上にも寄与しています。
収益は、来店客からの飲食代金から得ています。運営はモロゾフが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方で利益面では、2023年1月期から2024年1月期にかけて比較的高い利益率を維持していましたが、直近の2025年1月期では減益となり、利益率も低下しました。原材料価格の高騰や人件費の上昇が利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 - 325億円 349億円 360億円
経常利益 - 26億円 25億円 21億円
利益率(%) - 8.0% 7.2% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 17億円 18億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も微増を確保していますが、売上原価の上昇が目立ちます。また、販売費及び一般管理費の増加率が売上高の伸びを上回っており、これが営業利益の減少につながっています。コストコントロールが今後の課題といえるでしょう。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 349億円 360億円
売上総利益 180億円 183億円
売上総利益率(%) 51.5% 50.8%
営業利益 25億円 21億円
営業利益率(%) 7.1% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が55億円(構成比33%)、販売手数料が33億円(同20%)を占めています。人件費と販売関連費用のウェイトが高い構造となっています。

(3) セグメント収益


洋菓子製造販売事業は、バレンタイン商戦や焼菓子ブランドの好調により増収となりましたが、原材料高騰等の影響で減益となりました。喫茶・レストラン事業も人流回復やメニュー改定効果で増収となりましたが、営業損失を計上しており、収益性の改善が課題となっています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
洋菓子製造販売事業 331億円 340億円 37億円 34億円 10.0%
喫茶・レストラン事業 19億円 20億円 -0.2億円 -0.3億円 -1.3%
連結(合計) 349億円 360億円 25億円 21億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


末期型(一時的な営業CFマイナス)
営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなっていますが、営業CFのマイナスは主に下請法改正に伴う仕入債務の減少(支払サイト短縮による資金流出)による一時的なものです。手元資金は十分にあり、自社株買いや配当等の株主還元も実施しています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 21億円 -6億円
投資CF -5億円 -7億円
財務CF -10億円 -18億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.1%で市場平均(46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として『Be Prime, Be Sweet.』を掲げています。これは、すべてはお客様の笑顔のために、最高のおいしさを追求し、安心・安全な品質を確保し、最良のサービスを提供するため、一流(Prime)をめざして日々進化することで、常に感動をお届けすることを約束するメッセージです。

(2) 企業文化


同社は企業スローガンとして『こころつなぐ。笑顔かがやく。』を掲げています。スイーツを通して「こころ」と「こころ」をつなぐ架け橋となり、かがやく笑顔を広げたいという想いが込められています。スイーツには疲れた心を癒し、感動や歓びを記憶に刻む力があると考え、わくわくする感動やドキドキする感動をお届けすることを原点としています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは中期経営計画「つなぐ ~next stage 2031~」を推進しており、その第1ステップの最終年度である2026年1月期の目標数値を設定しています。当初計画から修正し、原材料価格や人件費の上昇を踏まえた現実的な見通しを示しています。

* 売上高:360.5億円(見込)
* 営業利益率:2.8%(見込)

(4) 成長戦略と重点施策


中長期ビジョン達成のため、「新たなる『成長戦略』の実現」「コスト抑制とさらなる生産性向上」「人材確保と従業員満足度向上」をテーマに取り組んでいます。特に成長戦略では、パーソナルギフト需要に適した焼菓子市場の開拓を強化し、新ブランド開発や生産体制の整備を進めています。

* 商品・ブランド戦略:新しい焼菓子の定番商品や新プロダクトブランドの開発。
* 市場戦略:新ブランド店舗の拡大、エリア限定商品による市場開拓、OEM等のBtoBビジネス推進。
* 生産・物流戦略:船橋工場の建替えや西神工場の改修、神戸物流センターの新設による供給体制の確立。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材確保と従業員満足度向上」を重要テーマとし、管理職層の退職や人材不足に対応するため、「人的資本」を意識した投資と制度見直しを進めています。従業員を財産と捉え、個性を尊重しつつ共に成長できる企業を目指し、公平な雇用・処遇、能力開発、健康維持、ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 42.0歳 14.1年 5,340,617円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与その他の臨時給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 60.9%
男女賃金差異(正規) 70.1%
男女賃金差異(非正規) 86.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児短時間勤務利用者率(49.2%)、子育て女性の勤務率(32.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達および価格の変動


使用する主原料は農産物であり、天候不順や自然災害、需給状況により仕入価格が変動する可能性があります。輸入原料は為替変動の影響を受け、包装材料は原油価格の影響を受けます。これらが高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食の安心、安全


食品業界では偽装表示や異物混入等の問題が発生しており、消費者の関心が高まっています。同社はHACCPシステム等に基づき万全の体制を構築していますが、想定外の問題により大規模な製品回収や製造物責任が発生した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 得意先の経営破綻等


同社は全国の主要百貨店等を中心とした直接販売を行っており、販売先の経営破綻により債権が回収不能となるリスクがあります。与信管理を行っていますが、予期せぬ破綻が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 気候変動の影響


カカオや乳製品等の主原料である農畜産物が気候変動により不作となった場合、調達価格の上昇や販売機会の損失が生じる可能性があります。また、自然災害により生産・物流・販売体制に支障をきたす恐れもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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