ダイドーグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイドーグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイドーグループホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外の飲料事業、医薬品関連、食品事業を展開しています。直近の業績は、トルコ飲料事業等が牽引し売上高は2,412億円と増収を確保しましたが、国内飲料の原価高騰や自販機関連資産の減損等により営業減益となり、最終赤字を計上しました。


※本記事は、ダイドーグループホールディングス株式会社の有価証券報告書(第51期、自 2025年1月21日 至 2026年1月20日、2026年4月14日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイドーグループホールディングスってどんな会社?


同社グループは、自販機を主力とする国内飲料事業を中心に、海外飲料、医薬品関連、食品事業を展開しています。

(1) 会社概要


1975年にダイドーとして設立され、「ダイドーブレンドコーヒー」を発売しました。2001年に東証二部へ上場し、2003年に一部指定を受けています。2012年にたらみを完全子会社化、2016年にはトルコの飲料製造会社等を子会社化しました。2017年に持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更しています。

同社の従業員数は連結で5,375名、単体で52名です。大株主の状況は、筆頭株主がハイウッドで15.51%を保有しており、第2位が有限会社サントミ、第3位が資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
ハイウッド 15.51%
有限会社サントミ 12.62%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長は髙松富也氏です。社外取締役の比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
髙松 富也 代表取締役社長 2004年4月同社入社。2008年4月取締役、2009年4月常務、2010年3月専務、2012年4月副社長を経て、2014年4月より現職。
殿勝 直樹 取締役執行役員財務部長 1986年3月同社入社。2011年1月財務企画部長、2013年3月執行役員管理本部長、2014年1月執行役員財務本部長等を経て、2017年4月より現職。
西山 直行 取締役経営戦略・内部統制担当役員 1988年3月同社入社。2014年1月経営戦略部長、2015年3月執行役員経営戦略部長兼海外事業部長等を経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、井上正隆(元ミツカングループ本社常務)、栗原道明(元参天製薬アジア事業部営業推進部長)、河野純子(元リクルート「とらばーゆ」編集長)、伊藤三奈(元ベーカー&マッケンジー法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内飲料事業」「海外飲料事業」「医薬品関連事業」「食品事業」「希少疾病用医薬品事業」を展開しています。

(1) 国内飲料事業


ダイドードリンコおよび販売会社が、各種清涼飲料を自販機やコンビニエンスストア等の店頭を通して消費者に販売しています。自社工場を持たず、商品の企画開発に特化し、製造は外部の協力業者へ委託するファブレス経営を採用しています。

自販機を通じた販売による収益が中心であり、顧客から商品代金を受け取ります。事業の運営は主にダイドードリンコが担い、ダイドーアサヒベンディングなどの販売会社や共栄会(パートナー企業)と一体となって自販機網を管理しています。

(2) 海外飲料事業


トルコ、ポーランド、中国、イギリスなどの海外市場において、清涼飲料の製造および販売を行っています。現地企業を通じて炭酸飲料、ミネラルウォーター、果汁飲料などの独自ブランドを展開するほか、他社ブランドの受託製造も担っています。

消費者や小売チェーンからの商品代金や、他社製品の受託製造費用が主な収益源です。トルコではデラ・ギダ社、ポーランドではヴォサナ社が製造・販売を担い、中国では上海大徳多林克商貿有限公司が販売を行っています。

(3) 医薬品関連事業


主にグループ外の製薬会社や化粧品メーカー等から受託したドリンク剤やパウチ製品(医薬品、医薬部外品、清涼飲料水表示)の製造を行っています。また、一部自社グループで販売する清涼飲料の製造も手掛けています。

顧客企業からの受託製造に伴う製造代金が主な収益源となります。事業の運営は主に大同薬品工業が行っており、奈良県と群馬県の工場を活用し、充実した生産体制と高い品質管理体制で幅広い顧客基盤を有しています。

(4) 食品事業


主にフルーツゼリーの製造および販売を行っています。多様化する消費者ニーズに応じた付加価値の高い商品開発を進め、ドライゼリー市場においてトップシェアを誇るほか、蒟蒻パウチゼリー市場でも商品展開を行っています。

消費者からのゼリー等の商品代金が主な収益源です。事業の運営は主にたらみが担っており、長崎県の自社工場にて商品の製造を行い、スーパーなどの様々な販売チャネルを通じて顧客へ商品を提供しています。

(5) 希少疾病用医薬品事業


国内患者数が5万人未満とされる希少疾病を対象とした医療用医薬品の製造販売承認を取得し、日本国内での販売や治療薬候補の導入、開発等を行っています。

販売承認を得た治療薬の販売による代金が主な収益源です。事業の運営は主にダイドーファーマが行っており、初の新薬となるランバート・イートン筋無力症候群治療剤「ファダプス」の販売を開始しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で増加傾向にあり、特に海外飲料事業の成長やM&A効果により直近は2,412億円まで拡大しています。一方、利益面では原材料価格の高騰やトルコの超インフレ会計の影響等を受け経常利益は伸び悩み、直近は自販機関連資産の減損損失により大幅な最終赤字を計上しています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 1,626億円 1,601億円 2,134億円 2,372億円 2,412億円
経常利益 57億円 6億円 31億円 30億円 15億円
利益率(%) 3.5% 0.4% 1.5% 1.3% 0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 19億円 29億円 31億円 -261億円

(2) 損益計算書


売上高は増加していますが、原材料価格の上昇等により売上総利益はほぼ横ばいにとどまっています。その結果、売上総利益率は悪化し、販売費及び一般管理費等の負担を吸収しきれず営業減益となっています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 2,372億円 2,412億円
売上総利益 1,093億円 1,090億円
売上総利益率(%) 46.1% 45.2%
営業利益 48億円 42億円
営業利益率(%) 2.0% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が250億円(構成比24%)、給与手当が198億円(同19%)、発送配達費が119億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内飲料事業は消費者の節約志向等により減収となりました。一方、海外飲料事業はトルコにおける戦略的な価格改定やポーランドの販売増により大幅な増収を牽引しました。医薬品関連事業はパウチ製品の受注増により増収、食品事業は記録的猛暑等により減収となっています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
国内飲料事業 1,474億円 1,425億円
海外飲料事業 563億円 653億円
医薬品関連事業 128億円 132億円
食品事業 206億円 196億円
希少疾病用医薬品事業 0.1億円 6.1億円
連結(合計) 2,372億円 2,412億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業利益と借入等の資金調達を合わせて積極的な投資を行う「再建・転換型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 108億円 114億円
投資CF -116億円 -121億円
財務CF -17億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-38.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」というグループ理念を掲げています。これは創業以来培ってきた「共存共栄」の精神を謳うものであり、ステークホルダーとの共存を図りながら人に社会に奉仕することを目指しています。また、ブランドメッセージとして「こころとからだに、おいしいものを。」を制定し、わかりやすく企業姿勢を表現しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「共存共栄」の精神を重要な企業文化として根付かせています。自社工場を持たずに全国の協力業者へ委託するファブレス経営や、共栄会(同社機のオペレーションを行うパートナー企業)とともに自販機網を管理する独自のビジネスモデルは、このステークホルダーとの強固な信頼関係の上に成り立っています。企業の成長とともに従業員が成長できるよう、ダイナミックにチャレンジする風土の醸成にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿として「グループミッション2030(世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ)」を定めています。現在は「成長ステージ」として「中期経営計画2026」に取り組み、最終年度の2027年1月期に向けて以下の数値目標を掲げています。

* 売上高成長率(年平均):+9%
* 営業利益率:3%
* 連結ROIC:4%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」において、「国内飲料事業の再成長」「海外飲料事業戦略の再構築」「非飲料領域の強化・育成」を基本方針として推進しています。主力となる国内飲料事業では、スマート・オペレーションのさらなる進化により自販機ビジネスの収益体質転換を図ります。海外ではトルコやポーランドでの基盤強化、非飲料領域ではパウチ製品の工場再編や希少疾病用医薬品事業の育成など、事業ポートフォリオの強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、社会の変化へ柔軟に対応できる多様な自律型プロフェッショナル人材の育成を方針としています。従業員の主体的なキャリア形成を支援する仕組み「DyDoキャリア・クリエイト」を導入し、求める5つの資質(志、チャレンジ精神、成長意欲、達成意欲、自律心)を備えた人材の成長を後押ししています。また、多様な価値観が尊重される心理的安全性の高い組織づくりや、ワークライフシナジーの実現に向けた環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 40.8歳 11.2年 8,482,299円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.1%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 53.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、主要子会社合計の正社員女性比率(29.2%)、主要子会社合計の女性管理職比率(14.4%)、主要子会社合計の男性育児休業取得率(57.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・資材の調達コスト高騰


国内飲料事業の主要原料であるコーヒー豆は国際市況商品であり、相場や為替レートの変動を受けます。エネルギーコストの上昇も相まって原材料や資材の調達コストが高騰した場合、同社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。同社は継続的な価格改定や調達先の見直しによりリスク低減に努めています。

(2) トルコ国内のハイパーインフレに関連するリスク


海外飲料事業の主要拠点であるトルコにおいて、急激なインフレとリラ安が進行しており、超インフレ経済下での会計処理(IAS第29号)を適用しています。今後さらにインフレが深刻化し会計上の調整が多額にのぼる場合や、固定資産の減損が必要となった場合、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 既存の自販機ビジネスへの集中・依存


コアビジネスである国内飲料事業は自販機チャネルに大きく依存しています。消費者の節約志向の高まり等により自販機市場の収益性が低下しており、今期も自販機関連資産の減損損失を計上しています。中長期的な収益構造への転換が遅れた場合、業績に影響を及ぼすため、スマート・オペレーションの進化や不採算機の撤去等を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。