群栄化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

群栄化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、化学品事業と食品事業を中核とする素材メーカーです。直近の連結業績は、売上高が305億円と前期比で微増収となった一方、原材料価格高騰や販売費及び一般管理費の増加などが影響し、営業利益は23億円と減益になりました。


※本記事は、群栄化学工業株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 群栄化学工業ってどんな会社?

合成樹脂や高機能繊維などの化学品と、澱粉糖類などの食品素材を製造販売する、群馬県高崎市に本社を置く化学メーカーです。

(1) 会社概要

1946年に群馬栄養薬品として設立され、ぶどう糖の生産を開始しました。1951年にフェノール樹脂へ進出し、1953年に現商号へ変更。1979年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2012年にはインドに製造子会社を設立するなど海外展開も進めました。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

連結従業員数は537名(単体355名)です。筆頭株主は信託銀行で、第2位は特定関係事業者である三井化学の退職給付信託口、第3位は取引先持株会となっています。その他、東京応化工業や三菱瓦斯化学などの取引先企業や、地元金融機関である群馬銀行が大株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.90%
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・三井化学退職給付信託口) 8.70%
群栄化学取引先持株会 8.00%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長執行役員は有田喜一郎氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
有田 喜一郎 代表取締役社長執行役員 1998年入社。管理本部長、日本カイノール社長等を経て、2018年6月より現職。
有田 喜一 代表取締役会長 1967年入社。群栄ボーデン社長、同社代表取締役社長等を歴任し、2016年6月より現職。
丸山 克浩 取締役執行役員コーポレート本部長 1992年入社。電子材料ユニット長、タイ子会社社長、管理本部長等を経て2021年7月より現職。
新井 光浩 取締役執行役員営業・マーケティング本部長 1994年入社。東京支店長、経営企画室長等を経て、2025年6月より現職。
笠原 勲 取締役常勤監査等委員 1992年入社。経営企画室長、監査室長、常勤監査役を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、大村康二(元三井化学副社長執行役員)、平澤洋一(元群馬銀行常務取締役)、鈴木宏子(共和産業代表取締役社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「化学品事業」、「食品事業」および「不動産活用業」事業を展開しています。

(1) 化学品事業

工業用フェノール樹脂(レヂトップ)、特殊フェノール樹脂、電子材料用樹脂、高機能繊維(カイノール)などを製造販売しています。主要顧客は自動車、電子材料、住宅・建設業界など多岐にわたります。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、同社および子会社のThai GCI Resitop Company Limited、India GCI Resitop Private Limited、東北ユーロイド工業株式会社、American GCI Resitop, Inc.が行っています。

(2) 食品事業

異性化糖、ブドウ糖、水あめ、オリゴ糖などの澱粉糖類を製造販売しています。飲料・食品メーカー等を主な顧客としています。

収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(3) 不動産活用業

同社グループが所有する不動産の賃貸を行っています。群馬県内等に商業用地や賃貸住宅等を保有しています。

収益は、テナントや入居者からの賃貸料として受け取ります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移しています。利益面では、経常利益が変動しており、2023年3月期に一時低下しましたが、その後回復傾向にあります。当期は売上高が微増ながら、経常利益はやや減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 252億円 294億円 314億円 303億円 305億円
経常利益 25億円 28億円 19億円 32億円 27億円
利益率(%) 9.7% 9.6% 6.2% 10.4% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 20億円 15億円 19億円 18億円

(2) 損益計算書

売上高は微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。営業利益も減少しており、コスト増が利益を圧迫した形となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 303億円 305億円
売上総利益 69億円 65億円
売上総利益率(%) 22.7% 21.4%
営業利益 27億円 23億円
営業利益率(%) 9.0% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が17億円(構成比39%)、運送・保管費が9億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益

化学品事業は増収となったものの、原材料価格高騰や経費増により減益となりました。食品事業は販売数量減少により減収となりましたが、価格是正とコストダウンにより増益となりました。不動産活用業は概ね横ばいで推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
化学品事業 248億円 255億円 26億円 21億円 8.2%
食品事業 53億円 48億円 0.1億円 0.3億円 0.7%
不動産活用業 2億円 2億円 2億円 2億円 65.3%
連結(合計) 303億円 305億円 27億円 23億円 7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を借入金返済や株主還元に充てつつ、投資も自己資金の範囲内で行っている健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 43億円
投資CF -22億円 -28億円
財務CF -8億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.9%でプライム市場平均(製造業)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会造りに貢献する」を理念として掲げています。サステナビリティを巡る課題への対応に積極的に取り組み、顧客を中心としたステークホルダーと共に繁栄することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は「GCIグループのサステナビリティ」に掲げる指針に沿って、ステークホルダーとの信頼関係構築を重視しています。また、多様な人材の活躍を促進するダイバーシティ対応など、従業員エンゲージメント強化を重要なテーマと捉え、誰もが挑戦できる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標

同社グループは「高純度・先端材料」「環境対応ケミカル」「新事業創出(高機能糖ケミカル)」「経営基盤強化」を目指す方向性として掲げています。外部環境の変化に左右されない事業構造改革を推進し、Green Chemical Industryへの進化を目指しています。
* 2030年度CO2排出量30%削減(2013年度比)

(4) 成長戦略と重点施策

電子材料分野を中心とする「高純度・先端材料」では、フォトレジスト原料の増産設備稼働や新工場建設を進め、需要に対応します。また、「環境対応ケミカル」として高機能繊維「カイノール」の増産設備を稼働させ、用途拡大を図ります。「新事業創出」では、糖と化学品を融合させた独自開発製品の事業化を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「結果に責任を持ち最後までやり遂げること」「自ら主体的に変化を起こすこと」「広く興味を持ち、関心を持って学び続けること」をコア・バリューとし、個とリーダーの育成を図ります。また、健康経営優良法人の認定を受けるなど、健康を軸とした働きやすい職場環境の整備や、キャリア開発申告制度による挑戦できる環境作りを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.8歳 16.1年 7,082,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 88.5%
男女賃金差異(正規雇用) 87.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -


※女性のパート・有期労働者がいないため非正規雇用の差異は集計対象外となっています。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動リスク

外国通貨建ての原材料調達コストや製品売上高、在外子会社の連結決算への影響が想定されます。同社は為替影響のモニタリングや円建て取引の推進によりリスク回避に努めています。

(2) 原材料の調達、サプライチェーンに関するリスク

地政学リスク等による原材料価格の高騰や供給遅延、物流問題による納入遅延などが業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、価格転嫁や調達先の複数化、適正在庫の管理などで対応しています。

(3) 製品の品質と安全の確保に関するリスク

製品品質不良による健康被害やコスト増加、信用低下のリスクがあります。設備メンテナンス強化、品質管理体制の強化、PL保険の付保、供給元への品質向上サポートなどで対策を講じています。

(4) 気候変動リスク

脱炭素社会への移行に伴うコスト増や既存製品の競争力低下が懸念されます。廃棄物削減、再エネ導入によるGHG削減、カーボンニュートラル対応製品の開発などを進め、機会獲得にも取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。