不二電機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

不二電機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(スタンダード市場)に上場する、電気制御機器の専業メーカーです。制御用開閉器や接続機器などを主力とし、電力インフラや鉄道車両向けに製品を展開しています。直近の業績は、主力の汎用端子台等が伸長し増収となりましたが、原材料価格の高騰や人件費増加等の影響で減益となりました。


※本記事は、不二電機工業株式会社 の有価証券報告書(第67期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 不二電機工業ってどんな会社?


電気制御機器の専業メーカーとして、電力・鉄道・産業用機器向けのスイッチや端子台等を製造・販売しています。

(1) 会社概要


同社は1958年に制御機器の製造販売を目的として設立され、1963年に主力工場となる草津製作所を開設しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2014年には東京証券取引所市場第一部へ銘柄指定されました。その後、市場区分の見直しに伴い、2022年にスタンダード市場へ移行しています。

同社の従業員数は単体で109名です。連結子会社はありません。筆頭株主は同社創業家出身の藤本豊士氏で、第2位は奨学金事業を行う公益財団法人です。

氏名 持株比率
藤本豊士 15.82%
公益財団法人藤本奨学会 12.13%
京都中央信用金庫 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は八木達史氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
八木達史 代表取締役社長 1996年同社入社。技術営業部技術部長等を経て2018年より現職。
志萱章宏 常務取締役執行役員技術営業部門統括技術部長 1983年同社入社。生産部門統括、管理部長、取締役(監査等委員)等を経て2024年より現職。
佐々木誠仁 取締役執行役員経営企画室長兼M3エンジニアリング部長 1994年同社入社。生産部門統括、草津製造部長等を経て2024年より現職。
中清水毅 取締役執行役員経営管理部門統括人事部長 1994年同社入社。新旭製造部長、草津製造部長等を経て2018年より現職。
下村徳子 取締役執行役員総務部長 公認会計士。中央監査法人を経て2006年同社入社。2018年より現職。
藤居和義 取締役(監査等委員) 1986年同社入社。常務取締役、技術営業部門統括等を歴任。2024年より現職。


社外取締役は、吉村良一(吉村建設工業代表取締役)、佐賀義史(弁護士)、伊原友己(弁護士・弁理士)、西健晴(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社は、電気制御機器の製造加工及び販売事業を単一セグメントとして展開していますが、製品分類ごとに事業を行っています。

制御用開閉器


電力設備や鉄道車両などで使用されるスイッチ類を提供しています。主な製品には、カムスイッチ、補助スイッチ、鉄道車両用スイッチ、押しボタン・車掌スイッチ、ドラムスイッチなどがあり、これらは電力インフラや交通インフラの制御に不可欠な機器です。

同事業の主な顧客は重電機器メーカーや鉄道事業者などです。収益は、これらの顧客への製品販売代金として得ています。運営は主に同社が行っています。

接続機器


電気回路を接続するための各種端子台やコネクタを提供しています。主な製品には、汎用端子台、高耐圧端子台、断路端子台、コンデンサ内蔵端子台、試験用端子、大電流接触子などがあり、配電盤や制御盤内で使用されます。

同事業は電力会社や各種産業機器メーカーを主な顧客としています。収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は主に同社が行っています。

表示灯・表示器


機器の動作状態や故障を表示するための装置を提供しています。主な製品には、LED表示灯・集合表示灯、電磁式表示器、落下式故障表示器、鉄道車両用表示灯などがあり、視認性と信頼性が求められる現場で使用されています。

同事業の顧客は重電機器市場や鉄道車両市場など多岐にわたります。収益は、これらの製品販売によって得ています。運営は主に同社が行っています。

電子応用機器


電気信号の監視や伝達を行う電子機器を提供しています。主な製品には、アナンシェータリレー、ボルテージリレー、インターフェイスユニット、テレフォンリレーなどがあり、システムの自動化や監視用途で利用されています。

同事業は変電設備などの重電機器市場を主な顧客としています。収益は、製品販売代金として得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台後半で安定的に推移しており、直近の2025年1月期には39億円を超え増加傾向にあります。経常利益は3億円から4億円台の間で推移しており、利益率は8〜11%程度の水準を維持しています。当期純利益も黒字を継続しており、堅実な収益構造が見て取れます。

項目 2021年1月期 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 37億円 37億円 37億円 37億円 39億円
経常利益 3.1億円 2.7億円 3.7億円 4.3億円 3.5億円
利益率(%) 8.4% 7.4% 10.1% 11.4% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.1億円 1.9億円 2.6億円 3.5億円 2.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は37億円から39億円へと増加しましたが、売上総利益は13億円から12億円へ減少しました。これは製造原価の増加によるもので、売上総利益率も低下しています。営業利益についても、販管費の増加などが影響し、4億円から3億円へと減少しました。増収ながらもコスト増により利益が圧迫される構造となっています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 37億円 39億円
売上総利益 13億円 12億円
売上総利益率(%) 35.6% 31.8%
営業利益 4.0億円 3.0億円
営業利益率(%) 10.7% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料が2.6億円(構成比27%)、その他経費が1.8億円(同18%)を占めています。売上原価においては、材料費が12億円(構成比49%)、労務費が7億円(同27%)となっており、製造コストの中で材料費の割合が高い傾向にあります。

(3) セグメント収益


当期は、主力の「接続機器」において汎用端子台等が好調で増収となりました。「制御用開閉器」や「表示灯・表示器」も鉄道車両向け等の需要を取り込み増収となっています。一方で、「仕入販売」は事業終息に伴い減収となり、「電子応用機器」もテレフォンリレーの減少等により微減となりました。全体としては増収基調を維持しています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期)
制御用開閉器 9.2億円 10億円
接続機器 15億円 16億円
表示灯・表示器 4.4億円 5.0億円
電子応用機器 7.2億円 7.1億円
仕入販売 1.0億円 0.7億円
その他 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 37億円 39億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を元に、借入金の返済や配当支払いを行いながら、設備投資も自己資金の範囲内で実施している「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。本業で確実にキャッシュを生み出し、財務基盤の安定性を維持しています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 4.5億円 4.2億円
投資CF -1.0億円 -3.6億円
財務CF -1.8億円 -4.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は92.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はモノづくり企業として、「品質、コスト、納期など、あらゆる面で顧客の信頼を得ること」を経営の基本方針としています。また、市場環境が変化する中で、電気制御機器の専業メーカーとして技術力を高め、ユーザーと共に切磋琢磨し、最良の製品を提供する「共創共生」の関係構築を重要視しています。

(2) 企業文化


同社は「企業は公器」という基本理念のもと、労使一体となって経営資源を重点テーマに集中させる姿勢を持っています。環境変化に機敏に対応できる強固な経営体質の確立を目指し、従業員、得意先、株主、地域社会など、すべてのステークホルダーから信頼される企業づくりを進める文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は長期的目標として2033年1月期に売上高50億円を目指す経営計画「新STEP50」を策定しています。その第1フェーズとして「中期経営計画2027」を掲げ、2027年1月期までに以下の数値目標の達成を目指しています。

- 売上高:42.5億円
- ROE:5.0%以上
- EPS:80円以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は事業拡大のため、既存の強みである重電機器市場の深耕に加え、鉄道車両市場や海外市場の開拓を進めています。また、デジタル化や省力化・省人化に対応した製品開発を迅速化し、外販用の装置製作や金型製作技術を活かした新規事業への展開も図っています。

- 重電機器市場の深耕
- 鉄道車両市場の開拓
- 海外市場の開拓
- 利益拡大への取り組み強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「働きがいのある職場環境の整備」を重点戦略とし、「エンゲージメント向上」と「ダイバーシティ推進」に取り組んでいます。具体的には、人材育成プログラム「Fuji Value」の展開、仕事と家庭の両立支援、女性や障がい者の活躍推進などを通じて、全従業員が生き生きと働ける企業風土の確立を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 42.4歳 17.7年 5,830,476円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は常時雇用する労働者が300人以下であり、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、チーフ職に占める女性の社員の割合(5.9%)、障がい者の雇用率(3.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 収益構造


同社の製品は電力各社向けを中心とした重電機器市場に依存しており、電力各社の設備投資動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、一般産業市場や鉄道車両市場、海外市場の開拓を進めることで収益基盤の多様化を図っていますが、景気動向や競争激化によっては経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

(2) 原材料の価格変動と調達


主要原材料である成形材料の価格は原油の需給バランス等により変動するため、急激な価格変動が業績に影響を与える可能性があります。また、自然災害や政情不安等により原材料の調達が困難になったり納期が長期化したりする場合、生産活動に支障をきたし、納入遅延等を通じて経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 人材の育成及び確保


製品開発や品質管理等を支える人材の確保は事業継続において重要です。同社は人材育成や働きがいのある職場環境の整備に取り組んでいますが、労働者不足の影響で必要な人材を十分に確保できない場合や人材流出が発生した場合、事業展開が制約され、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。