※本記事は、不二電機工業株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月21日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二電機工業ってどんな会社?
電気制御機器の製造および販売を主力とする同社の概要と経営体制を紹介します。
■(1) 会社概要
同社は1958年に制御機器の製造および販売を目的として京都市に設立されました。1963年に滋賀県草津市に製作所を開設し、1994年に株式を店頭登録しました。その後、2004年のジャスダック上場、2006年の東京証券取引所市場第二部への上場を経て、現在はスタンダード市場に上場しています。
現在の従業員数は単体で114名体制です。筆頭株主は藤本奨学会で、第2位は個人株主である藤本豊士氏、第3位は金融機関の京都中央信用金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 藤本奨学会 | 12.52% |
| 藤本豊士 | 11.87% |
| 京都中央信用金庫 | 2.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は八木達史氏が務めており、社外取締役比率は44.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 八木達史 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。2016年技術営業部技術部長、2017年執行役員技術営業部門統括などを経て、2018年より現職。 |
| 志萱章宏 | 常務取締役執行役員技術営業部門統括技術部長 | 1983年同社入社。2008年取締役上席執行役員などを経て、2016年取締役(監査等委員)。2024年より現職。 |
| 中清水毅 | 取締役執行役員経営管理部門統括人事部長 | 1994年同社入社。2015年執行役員新旭製造部長を経て、2018年に取締役執行役員人事部長。2021年より現職。 |
| 下村徳子 | 取締役執行役員総務部長 | 1999年中央監査法人入所、公認会計士登録。2006年同社入社。2015年執行役員総務部長を経て、2018年より現職。 |
| 藤居和義 | 取締役(監査等委員) | 1986年同社入社。みなみ草津製造部長などを歴任し、2015年取締役就任。常務取締役などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、吉村良一(吉村建設工業代表取締役)、佐賀義史(大江橋法律事務所所属弁護士)、伊原友己(弁護士・弁理士)、西健晴(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気制御機器の製造加工および販売」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 制御用開閉器
カムスイッチ、補助スイッチ、鉄道車両用スイッチ、押しボタン・車掌スイッチ、ドラムスイッチなどを製造しています。主な顧客は電力各社を中心とした重電機器市場や、鉄道車両市場などの一般産業市場です。
収益モデルは、顧客である企業への製品の販売による代金収入です。本事業の運営および販売は不二電機工業が自社で行っています。
■(2) 接続機器
端子台、高耐圧端子台、断路端子台、コンデンサ内蔵端子台、コネクタ、試験用端子、大電流接触子などを展開しています。こちらも重電機器市場の深耕や一般産業市場向けに機器の安全性を高めた製品を提供しています。
収益源は、これらの接続機器を重電機器メーカーや一般産業等の顧客へ販売することによる代金収入です。本製品群の開発から製造、販売までを不二電機工業が単独で行っています。
■(3) 表示灯・表示器
LED表示灯、集合表示灯、電磁式表示器、落下式故障表示器、鉄道車両用表示灯などを製造しています。重電機器市場のみならず、鉄道市場へも適用できる製品の開発および提供を行っています。
この事業領域の収益も、顧客企業に対する製品の販売代金によって構成されています。製品の企画、開発、および販売の全てを不二電機工業が担っています。
■(4) 電子応用機器
アナンシェータリレー、ボルテージリレー、インターフェイスユニット、テレフォンリレーなどの電子応用機器を扱っています。通信I/Oモジュールや電力用リレーなどを重電・鉄道市場向けに展開しています。
収益モデルは、ユーザーへの電子応用機器の直接販売による製品代金です。当事業の運営主体も不二電機工業です。
■(5) その他事業
電気制御機器以外の外販用の装置製作や金型製作などを行っており、省力化・省人化のニーズに直面するさまざまな産業へ展開しています。
収益は、顧客の要望に応じた新製品の開発や金型・装置の製作および販売代金によって得ています。本事業も不二電機工業が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は37億円から39億円台で安定して推移しています。経常利益率は概ね7%から11%の範囲で推移しており、底堅い利益水準を維持しています。直近の期間は材料費の高騰等の影響により、前期間と比較して減収かつ経常利益率も低下する結果となりました。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 37億円 | 37億円 | 37億円 | 39億円 | 38億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 4億円 | 4億円 | 3億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 10.1% | 11.4% | 8.8% | 8.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期間から減少しました。それに伴い売上総利益も減少しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいを保っています。一方、販売費および一般管理費の増加が利益を圧迫し、営業利益および営業利益率ともに低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.8% | 32.6% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 7.7% | 6.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が3億円(構成比28%)、支払手数料が1億円(同12%)を占めています。また、売上原価の内訳については、材料費が14億円(当期総製造費用に対する構成比54%)、労務費が7億円(同27%)となっています。
■(3) セグメント収益
当期の売上高は、サージアブソーバー端子台やカムスイッチなどの需要が堅調だった接続機器および制御用開閉器が増加しました。一方で、I/Oターミナルや各種表示器の販売が減少したことにより、表示灯・表示器および電子応用機器の売上は前期間を下回りました。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) |
|---|---|---|
| 制御用開閉器 | 10億円 | 10億円 |
| 接続機器 | 16億円 | 17億円 |
| 表示灯・表示器 | 5億円 | 5億円 |
| 電子応用機器 | 7億円 | 5億円 |
| その他 | 0.1億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 39億円 | 38億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
不二電機工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により資金を創出し、投資活動により事業基盤を強化し、財務活動により株主還元や自己株式の取得を行っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、これは主に本業での利益や売上債権の減少によるものです。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは減少しており、これは将来の成長に向けた設備投資や有価証券への投資を行ったためです。財務活動によるキャッシュ・フローも減少しており、これは株主への配当金支払いと自己株式の取得によるものです。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 4億円 |
| 投資CF | -4億円 | -5億円 |
| 財務CF | -4億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「企業は公器」という基本理念のもと、どのような状況下にあっても電気制御機器の専業メーカーとして、社会のトレンドやユーザーニーズに対応した最良の製品を提供し続けることを使命としています。従業員、得意先、株主、地域社会など、全てのステークホルダーから信頼される企業づくりを進めています。
■(2) 企業文化
「共創共生」の関係こそが時代を生き抜くキーワードであると考え、ユーザーとともに切磋琢磨し自ら創意工夫して技術力を高める文化があります。また、品質、コスト、納期などあらゆる面で顧客の信頼を得る「モノづくり企業」としての姿勢が深く根付いています。
■(3) 経営計画・目標
長期的目標である経営計画「新STEP50」において、第75期(2033年1月期)での事業拡大を目指しています。また、企業価値の向上と株主共同の利益を確保するため、以下の経営指標を目標として掲げています。
・売上高 42.5億円(2027年1月期)
・ROE 5.0%以上
・EPS 80円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」に基づき、重電機器市場の深耕、鉄道車両市場および海外市場の開拓に注力しています。また、既存の強みを追求しつつ、デジタル化や省力化・省人化に対応した製品開発を迅速に進め、外販用の装置・金型製作の技術を他産業へ展開する新規事業にも挑戦しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業における課題を解決するためには人材の確保・育成が不可欠であるとし、「人の成長を促し働きがいのある企業づくり」をテーマに掲げています。エンゲージメントの向上とダイバーシティの推進によって働きがいのある職場環境の整備を進め、男女均等な機会と待遇が確保される企業風土の確立を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 42.4歳 | 19.8年 | 6,125,810円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 40.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 73.9% |
※男性労働者の育児休業取得率については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者の雇用率(3.5%)、チーフ職に占める女性の社員の割合(11.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 重電機器市場への依存リスク
同社の製品は電力各社向けを中心とした重電機器市場に依存しており、電力各社の設備投資動向が業績に直接影響を及ぼす可能性があります。これを回避するため、鉄道車両市場など一般産業市場や海外市場の開拓による収益基盤の多様化を進めています。
■(2) 原材料の価格変動リスク
主要原材料である成形材料および金属の価格は、資源輸出国の経済情勢や国際的な需給バランス等により変動します。急激な原材料価格の高騰や調達困難な状況が発生した場合、収益の悪化や生産体制に影響を与えることによる納入遅延を招くリスクがあります。
■(3) 海外市場への為替変動リスク
中東、アジア、欧米などの海外市場へ展開しており、一部は商社経由で販売しています。直接的なリスク回避のため主に円建て販売を行っていますが、過度な円高の推移は海外顧客の購買力低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 製品の欠陥による賠償リスク
ISO9001などの認証を取得し製品の安定供給と品質維持に努めていますが、将来全ての製品に欠陥がないとは保証できません。製品の回収や修理、製造物賠償責任請求などが発生した場合、加入している保険で全てを賄えないリスクがあります。



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