TBSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TBSホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の認定放送持株会社です。メディア・コンテンツ事業を中核に、ライフスタイル事業や不動産事業を展開しています。2025年3月期は、テレビ広告収入の回復や配信事業の伸長に加え、不動産事業も堅調に推移し、増収増益(売上高4,067億円、営業利益195億円)となりました。


※本記事は、株式会社TBSホールディングスの有価証券報告書(第98期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TBSホールディングスってどんな会社?


日本の民間放送の草分けとしてラジオ・テレビ放送を開始し、現在は総合メディアグループとして多様なコンテンツを展開する企業です。

(1) 会社概要


1951年に株式会社ラジオ東京として設立され、同年ラジオ本放送、1955年にテレビ本放送を開始しました。1960年に東証へ上場し、2009年には認定放送持株会社体制へ移行して株式会社東京放送ホールディングスへ商号変更しました。2020年に現在の株式会社TBSホールディングスとなり、グループ体制を強化しています。

連結従業員数は8,095人、単体では259人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第3位には大阪の放送持株会社であるMBSメディアホールディングスが名を連ねています。放送法の規制により外国人等の議決権保有比率に制限がある点も特徴です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.74%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(退職給付信託口・株式会社電通口) 5.69%
株式会社MBSメディアホールディングス 5.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は阿部龍二郎氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 卓 取締役会長 1982年入社。TBSテレビ編成局長、同社代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。
阿部 龍二郎 代表取締役社長 1988年入社。TBSスパークル代表取締役社長、TBSテレビ執行役員等を経て、2024年6月より現職。
龍宝 正峰 代表取締役副社長 1987年入社。TVer代表取締役社長、TBSテレビ取締役等を経て、2024年6月より現職。
菅井 龍夫 取締役副社長 1983年入社。TBSテレビ取締役、同社専務取締役等を経て、2024年6月より現職。
玄馬 康志 常務取締役 1989年入社。TBSテレビグループデザイン室長、同社取締役等を経て、2024年6月より現職。
井田 重利 常務取締役 1991年入社。TBSテレビ人事労政局長、同社取締役等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、柏木斉(元リクルート社長)、八木洋介(株式会社people first代表取締役)、春田真(ベータカタリスト代表取締役CEO)、武井奈津子(元ソニー常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア・コンテンツ事業」「ライフスタイル事業」「不動産・その他事業」および「その他」事業を展開しています。

メディア・コンテンツ事業


テレビ・ラジオの放送、番組制作、映像技術、アニメ・映画の企画制作、動画配信、各種イベントの開催などを行っています。視聴者や聴取者へのコンテンツ提供に加え、海外市場への番組販売やフォーマット販売も手掛けています。

主な収益源は、広告主からのタイム・スポット広告収入、有料動画配信の視聴料、コンテンツ販売収入、イベント興行収入などです。運営は、株式会社TBSテレビ、株式会社TBSラジオ、株式会社BS-TBS、株式会社TBSスパークル、株式会社TBSグロウディアなどが担っています。

ライフスタイル事業


雑貨の小売販売、化粧品の製造・販売、および知育・教育事業を展開しています。生活に密着した商品やサービスの提供を通じて、消費者の豊かな生活をサポートしています。

収益は、雑貨店「PLAZA」等での商品販売収入、化粧品販売収入、学習塾や幼児教室の受講料収入などから得ています。運営は、株式会社スタイリングライフ・ホールディングス、株式会社やる気スイッチグループなどが主に行っています。

不動産・その他事業


保有するスタジオやオフィスビル等の不動産賃貸・管理、保守サービスを行っています。赤坂地区を中心とした不動産開発や、これに付帯する冷暖房管理、駐車場管理なども含まれます。

収益源は、テナントからの不動産賃貸収入やビル管理手数料、機材リース料などです。運営は、同社(TBSホールディングス)、株式会社TBSテレビ、株式会社緑山スタジオ・シティなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は3,257億円から4,067億円へと増加傾向にあり、特に直近3期は連続で増収となっています。経常利益は200億円台から300億円台で推移し、当期は316億円となりました。当期利益も増加基調を維持しており、安定した収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,257億円 3,583億円 3,681億円 3,943億円 4,067億円
経常利益 192億円 307億円 351億円 277億円 316億円
利益率(%) 5.9% 8.6% 9.5% 7.0% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 281億円 320億円 352億円 381億円 439億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。営業利益も前期の152億円から195億円へと大きく伸長しました。販売費及び一般管理費は増加しましたが、増収効果が上回り、利益率の向上に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,943億円 4,067億円
売上総利益 1,204億円 1,287億円
売上総利益率(%) 30.5% 31.7%
営業利益 152億円 195億円
営業利益率(%) 3.8% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、代理店手数料が336億円(構成比31%)、人件費が268億円(同25%)を占めています。売上原価では、番組制作費や売上商品原価などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


当期は全セグメントで増収となりました。メディア・コンテンツ事業は放送収入や配信広告の伸長により増収増益を達成しました。ライフスタイル事業は増収となったものの、コスト増等により減益となりました。不動産・その他事業は賃料収入等の増加により増収増益で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディア・コンテンツ事業 2,879億円 2,962億円 39億円 85億円 2.9%
ライフスタイル事業 899億円 936億円 42億円 35億円 3.7%
不動産・その他事業 166億円 169億円 71億円 75億円 44.2%
連結(合計) 3,943億円 4,067億円 152億円 195億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローのパターンは「改善型」です。本業で得た資金に加え、投資有価証券の売却等により投資CFもプラスとなっており、これらを原資として有利子負債の返済や株主還元を進めています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 265億円 233億円
投資CF -296億円 136億円
財務CF -510億円 -61億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「時代を超えて世界の人々に愛されるコンテンツとサービスを創りだし、多様な価値観が尊重され、希望にあふれる社会の実現に貢献する」ことを企業理念として掲げています。また、ブランドプロミスとして「最高の“時”で、明日の世界をつくる。」を制定し、心揺さぶる時間を提供して社会を動かす起点となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「TBSグループ行動憲章」を全ての役職員が守るべき誓約として定めています。また、ブランドメッセージ「ときめくときを。」のもと、新しいことへの挑戦を推奨しつつ、公正・迅速な報道と良質なコンテンツ提供に努める姿勢を重視しています。公共性と高い倫理観を持ちながら、創造性を発揮することが求められる風土です。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」の第2フェイズとして「TBSグループ 中期経営計画2026」を策定しています。2026年度の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:4,500億円
* 連結営業利益:240億円

(4) 成長戦略と重点施策


「VISION2030」の達成に向け、コンテンツ制作力を核とした拡張戦略「EDGE(Expand Digital Global Experience)」を推進しています。具体的には、配信強化によるデジタル領域の開拓、海外市場への展開、ライブエンタテインメントやライフスタイル事業等の「体験」事業の拡大にリソースを集中させます。

* オリジナルIP開発とクリエイティブ力の強化
* 海外市場への飛躍(Global)およびデジタルコンテンツの開拓(Digital)
* 体験型事業の拡大(Experience)
* 政策保有株式の売却と成長投資への資金充当

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、クリエイター育成を重視した人的資本経営を掲げています。多彩なクリエイティビティと専門性を持つ自立した個人の育成、多様な価値観を認め合い創造性を発揮できる組織づくり、そして従業員が幸せを感じられる環境整備を基本方針としています。特に、グローバル展開や新規事業を担う人材の育成・獲得に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.2歳 13.3年 12,639,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.9%
男性育児休業取得率 88.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.0%
男女賃金差異(正規雇用) 82.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.8%


※上記は提出会社が公表義務対象外のため、主要連結子会社である株式会社TBSテレビの実績を記載しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地上波テレビ広告収入への依存


同社グループの主要な収益源である地上波テレビ広告収入は、景気動向や企業の業績に大きく影響を受けます。また、広告費が固定費的なタイム枠から変動費的なスポット枠へシフトする傾向や、ネット広告との競合激化により、広告市場が縮小した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) メディア間の競争とコンテンツ獲得


動画配信サービスの普及により、メディア間の競争が激化しています。優良なコンテンツやスポーツ放送権の獲得競争によるコスト高騰、または競争力の低下により視聴者の可処分時間を確保できなくなった場合、広告収入や配信収入が伸び悩み、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 知育・教育事業の環境変化


ライフスタイル事業における知育・教育分野では、少子化による生徒獲得競争の激化や、労働人口減少に伴う人材確保難がリスク要因です。また、教室等での事故や不祥事が発生した場合、ブランドイメージの毀損により生徒数が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制の影響


放送法や電波法などの規制変更が事業に影響を与える可能性があります。特に、マスメディア集中排除原則や外資規制等のルール変更、あるいは放送番組の同一化に関する規制緩和などが、競争環境や提携関係に変化をもたらし、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。