ソフトバンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソフトバンク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の通信・IT大手。携帯電話事業を基盤に、LINEヤフーやPayPayなどを擁する「Beyond Carrier」戦略を展開しています。2025年3月期は、全セグメントでの増収やメディア・EC事業の好調により、売上高6兆5443億円、営業利益9890億円の増収増益を達成しました。


※本記事は、ソフトバンク株式会社 の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ソフトバンクってどんな会社?


国内最大級の顧客基盤を持つ通信キャリアであり、LINEヤフーやPayPayを傘下に持つ総合デジタルプラットフォーマーです。

(1) 会社概要


1986年に鉄道通信として設立され、日本テレコムを経て、2006年にソフトバンクグループ傘下でボーダフォン日本法人を買収し、移動通信事業へ本格参入しました。2018年12月に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ上場。2019年にはヤフー(現LINEヤフー)を連結子会社化し、通信とインターネットの融合を推進しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は55,070名、単体従業員数は18,895名です。筆頭株主は親会社のソフトバンクグループジャパン(持株比率40.21%)であり、同社はソフトバンクグループの完全子会社です。第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で10.48%を保有しています。

氏名 持株比率
ソフトバンクグループジャパン 40.21%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.48%
日本カストディ銀行(信託口) 3.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性5名の計15名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表者は代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏です。取締役11名のうち過半数の6名が社外取締役で構成され、経営の透明性を確保しています。

氏名 役職 主な経歴
宮川 潤一 代表取締役社長執行役員 兼 CEO ももたろうインターネット等の社長を経て2003年入社。CTOとしてネットワーク構築を指揮し、Sprint(現Sprint LLC)のCOO等を歴任。2021年4月より現職。
榛葉 淳 代表取締役副社長執行役員 兼 COO 1985年日本ソフトバンク入社。コンシューマ事業や決済事業の要職を歴任し、SBペイメントサービス社長を兼務。2024年4月より現職。
今井 康之 取締役会長 1982年鹿島建設入社。2000年ソフトバンク入社後、法人事業統括などを歴任し、代表取締役副社長兼COOを経て、2024年4月より現職。
藤原 和彦 取締役専務執行役員 兼 CFO 1982年東洋工業(現マツダ)入社。2001年ソフトバンク入社。財務部門の要職やソフトバンクグループ常務執行役員を経て、2025年4月より現職。
孫 正義 創業者 取締役 1981年日本ソフトバンク設立。ヤフー社長、ボーダフォン日本法人CEO等を歴任。現在はソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長執行役員を務める。


社外取締役は、堀場厚(堀場製作所会長兼グループCEO)、上釜健宏(元TDK会長)、大木一昭(公認会計士)、越直美(弁護士・元大津市長)、坂本真樹(電気通信大学教授)、佐々木裕子(チェンジウェーブグループ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンシューマ」「エンタープライズ」「ディストリビューション」「メディア・EC」「ファイナンス」の5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

コンシューマ事業


国内の個人客に対し、モバイル通信サービス、ブロードバンドサービス、および「おうちでんき」などの電力サービスを提供しています。「SoftBank」「Y!mobile」「LINEMO」の3ブランドを展開し、多様なニーズに対応しています。

収益は、契約者からの通信料(基本使用料、通話・データ通信料)や手数料、および携帯端末・アクセサリーの販売代金からなります。また、電力サービスの利用料も収益源です。運営は主にソフトバンクが担い、SBパワーなどが電力事業を行っています。

エンタープライズ事業


法人客に対し、モバイル回線、固定電話、データ通信などの通信サービスに加え、データセンター、クラウド、AI、IoT、セキュリティ、デジタルマーケティングなどのソリューションサービスを提供しています。

収益は、法人契約者からの通信サービス利用料、携帯端末のレンタル料、各種ソリューションサービスの利用料や機器販売代金等からなります。運営はソフトバンクのほか、IDCフロンティアやSBテクノロジーなどが担っています。

ディストリビューション事業


法人向けにはクラウドやAI等の先進技術を活用した商材を、個人向けにはモバイルアクセサリーやソフトウエア、IoTプロダクト等を提供しています。変化する市場環境を捉えた最先端のプロダクトやサービスを取り扱っています。

収益は、販売パートナーや法人・個人顧客への製品・ライセンス販売代金、およびクラウドサービス等のサブスクリプション利用料からなります。運営は主にSB C&Sが行っています。

メディア・EC事業


メディア領域では「Yahoo! JAPAN」や「LINE」、コマース領域では「Yahoo!ショッピング」「ZOZOTOWN」「Yahoo!オークション」などを展開しています。オンラインからオフラインまで一気通貫したサービスを提供しています。

収益は、広告主からの広告掲載料、eコマースにおける出店者からのテナント料や販売手数料、決済手数料等からなります。運営はLINEヤフー、ZOZO、アスクル、一休などのグループ各社が担っています。

ファイナンス事業


QRコード決済「PayPay」やクレジットカード、決済代行サービス、スマートフォン専業証券などを提供しています。キャッシュレス決済を基盤に、金融サービスの多角化を推進しています。

収益は、加盟店からの決済手数料、ユーザーや加盟店への金融サービス手数料、決済代行手数料等からなります。運営はPayPay、PayPayカード、SBペイメントサービス、PayPay証券などが行っています。

その他


デジタルメディア・コンテンツの企画・制作や、新領域への投資事業などを行っています。AIやFinTechなど最先端技術を活用した事業展開を図っています。

収益は、広告収益やコンテンツ提供料などからなります。運営はアイティメディアなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに拡大基調にあります。特に売上高は連続で過去最高を更新しており、事業規模が着実に拡大しています。利益面でも、一時的な変動はあるものの、高水準を維持しています。親会社所有者に帰属する当期利益も安定して推移しており、通信事業の盤石な基盤と新規事業の成長が業績を牽引しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 52,055億円 56,906億円 59,120億円 60,840億円 65,443億円
税引前利益 8,477億円 8,580億円 8,629億円 8,059億円 8,801億円
利益率(%) 16.3% 15.1% 14.6% 13.2% 13.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4,913億円 5,171億円 5,314億円 4,891億円 5,261億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高が約8%増加し、営業利益も約13%の増益となりました。売上総利益率は約48%と高い水準を維持しており、収益性の高さが伺えます。増収に伴い売上原価や販管費も増加していますが、営業利益率は約15%と前年から改善しており、効率的な事業運営が行われていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 60,840億円 65,443億円
売上総利益 29,333億円 31,602億円
売上総利益率(%) 48.2% 48.3%
営業利益 8,761億円 9,890億円
営業利益率(%) 14.4% 15.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの従業員給付費用が5,490億円(構成比25%)、販売手数料及び販売促進費が5,168億円(同23%)を占めています。売上原価においては、商品売上原価が1兆8923億円(売上原価の56%)、減価償却費及び償却費が7,480億円(同22%)となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益となりました。主力のコンシューマ事業はモバイルや物販が好調で増収増益、メディア・EC事業は子会社の支配喪失益計上や広告売上増により大幅な増益となりました。ファイナンス事業はPayPayの決済取扱高増加により黒字化を達成しています。ディストリビューション、エンタープライズも堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンシューマ 28,226億円 29,529億円 4,952億円 5,304億円 18.0%
エンタープライズ 8,339億円 9,224億円 1,668億円 1,703億円 18.5%
ディストリビューション 6,466億円 8,895億円 262億円 304億円 3.4%
メディア・EC 16,141億円 16,781億円 1,980億円 2,673億円 15.9%
ファイナンス 2,328億円 2,773億円 -50億円 332億円 12.0%
その他 1,165億円 1,234億円 -101億円 -365億円 -29.6%
調整額 -1,825億円 -2,992億円 49億円 -61億円 -
連結(合計) 60,840億円 65,443億円 8,761億円 9,890億円 15.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであることから「健全型」と判定されます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12,397億円 13,679億円
投資CF -9,276億円 -9,952億円
財務CF -3,571億円 -9,564億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、創業以来一貫して情報革命を通じた人類と社会への貢献を推進しています。情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業に取り組み、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ、企業価値の最大化に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中」の実現を通じて、持続可能な社会の維持に貢献することを目指しています。また、マテリアリティ(重要課題)として「DXによる社会・産業の構築」「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」など6つを特定し、本業を通じた社会課題解決を推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指しています。2023年度から2025年度の中期経営計画では、この実現に向けた事業基盤の再構築を掲げており、最終年度である2025年度(2026年3月期)には、親会社の所有者に帰属する純利益を最高益とすることを目指しています。

* 2026年3月期 親会社の所有者に帰属する純利益:5,400億円

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略「Beyond Carrier」を掲げ、コアビジネスである通信事業の持続的成長を図りつつ、通信キャリアの枠を超えて情報・テクノロジー領域での事業拡大を進めています。特に生成AI領域に注力し、計算基盤の拡張や国産LLMの開発を推進しています。

* 通信事業:5G展開、スマホ契約数拡大、ARPU向上。
* エンタープライズ:DX/ソリューション商材の販売、生成AIソリューション開発。
* メディア・EC:LINEヤフーグループのシナジー創出、コマース領域の成長。
* ファイナンス:PayPayの成長と周辺金融サービスの強化(PayPay銀行・証券の子会社化)。
* 新規事業:生成AI、自動運転、HAPS(成層圏通信)などの先端技術開発。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」と「事業」をつなぎ双方の成長を実現することをミッションとし、チャレンジする人を支援する方針です。デジタル人材の育成・確保に注力し、「ソフトバンクユニバーシティTech」などの学習環境を提供しています。また、ジョブポスティング制度や社内起業制度、副業制度などを通じ、従業員の自律的なキャリア形成とイノベーション創出を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 14.5年 8,491,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.9%
男性育児休業取得率 82.8%
男女賃金差異(全労働者) 76.6%
男女賃金差異(正規) 77.1%
男女賃金差異(非正規) 83.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、テレワーク実施率(95.1%)、年休取得率(75.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と競争


人口減少や通信市場の競争激化、異業種参入により、既存契約数の維持やARPU(顧客単価)が低下する可能性があります。また、DXや金融、新規事業領域においても、市場ニーズの捉え損ねや競合他社・新興企業との競争により、期待通りの成果が得られないリスクがあります。法規制の変更がサービス提供に制約を与える可能性もあります。

(2) 技術革新と情報セキュリティ


AIやIoTなど技術変化が激しい産業において、新技術への対応遅れや、導入した技術が想定通りの効果を生まない可能性があります。また、膨大な顧客情報を取り扱うため、サイバー攻撃や内部不正による情報流出、サービス不正利用が発生した場合、信用失墜や損害賠償により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。特にLINEヤフーでの事案など、グループ全体でのセキュリティガバナンスが課題となります。

(3) 親会社との関係と経営資源


親会社であるソフトバンクグループが当社の議決権の約4割を保有しており、経営方針に影響を及ぼす可能性があります。また、通信機器の調達や他社回線の利用など、外部経営資源への依存リスクもあります。さらに、国際情勢の不安定化によるサプライチェーンの分断やエネルギー価格高騰が、事業運営やコストに悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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