※本記事は、ソフトバンクの有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ソフトバンクってどんな会社?
通信とITを融合し、多彩なデジタルサービスで国内最大級のユーザー基盤を持つ総合情報通信企業です。
■(1) 会社概要
1986年に鉄道通信として設立され、1989年に日本テレコムへ商号変更しました。その後、ボーダフォンの買収を経て2006年にソフトバンクモバイルとなり、2015年の合併により現在のソフトバンクへ社名を変更しています。近年ではLINEやPayPayなどを子会社化し、通信の枠を超えた事業拡大を進めています。
現在の従業員数は、連結で58,432名、単体で19,150名となっています。筆頭株主は親会社のソフトバンクグループジャパンで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。強固な顧客基盤とグループ各社との連携を活かし、次世代社会インフラを提供する企業として持続的な企業価値の向上を目指しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ソフトバンクグループジャパン | 40.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.81% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性6名の計15名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役 社長執行役員 兼 CEOは宮川潤一氏が務めています。社外取締役の比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮川潤一 | 代表取締役社長執行役員 兼 CEO | 2003年ソフトバンクBB取締役。2006年ボーダフォン取締役専務執行役等を経て、2021年4月より現職。 |
| 榛葉淳 | 取締役会長 | 1985年日本ソフトバンク入社。2006年ボーダフォン常務執行役等を経て、2026年4月より現職。 |
| 孫正義 | 創業者 取締役 | 1981年日本ソフトバンク設立、代表取締役社長。2020年ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長執行役員。2021年4月より現職。 |
| 今井康之 | 取締役特別顧問 | 2000年ソフトバンク入社。2018年同社代表取締役副社長執行役員等を経て、2026年4月より現職。 |
| 藤原和彦 | 取締役上席顧問 | 2001年ソフトバンク入社。2018年同社取締役専務執行役員等を経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、堀場厚(堀場製作所代表取締役会長兼グループCEO)、越直美(三浦法律事務所パートナー弁護士)、坂本真樹(電気通信大学教授)、佐々木裕子(チェンジウェーブグループ代表取締役社長)、唐木秀明(唐木秀明公認会計士事務所代表)、仲條亮子(元ブルームバーグ情報テレビジョン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■コンシューマ事業
主に国内の個人顧客に対し、モバイル通信サービスやブロードバンドサービス、電力サービスなどを提供しています。「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」という特長の異なる3つのブランドを展開し、多様なニーズに応える通信環境と携帯端末を販売しています。
収益の柱は、契約者からの月額基本使用料や通信料、オプション利用料、および携帯端末の販売代金です。同事業の運営は、主にソフトバンクが自ら担っているほか、子会社のSBパワーなどが電力サービスの提供を行っています。
■エンタープライズ事業
法人顧客を対象に、モバイル回線や固定電話、データ通信などのネットワークサービスを提供しています。また、企業のデジタル化需要に応え、データセンター、クラウド、セキュリティ、AI、IoTなどの多様なソリューションサービスを展開しています。
顧客企業からの通信サービス利用料や、ソリューションの導入・運用に伴う対価が主な収益源です。運営はソフトバンクを中心に、IDCフロンティア、イーエムネットジャパン、SB OAI Japanなどの各子会社・合弁会社が専門領域のサービスを提供しています。
■ディストリビューション事業
変化する市場環境を捉え、最先端のプロダクトやサービスを法人および個人向けに提供しています。法人向けにはクラウドサービスやAIなどの先進テクノロジー商材を、個人向けにはPCソフトウエアやモバイルアクセサリーなどを幅広く取り扱っています。
メーカーやディストリビューターとして商品を販売することで得られる販売代金や継続的なサービス利用料が収益源となっています。同事業の運営は、主に子会社であるSB C&Sが中心となって担っています。
■メディア・EC事業
メディアおよびコマースを中心としたサービスを展開し、オンラインからオフラインまで一気通貫で提供しています。総合インターネットサービス「Yahoo! JAPAN」や「LINE」のほか、「Yahoo!ショッピング」「ZOZOTOWN」などのeコマースサービスを運営しています。
メディア領域では広告主からの広告掲載料が、コマース領域では出品者や出店者からの販売手数料などが主な収益源です。運営は、LINEヤフーを中心に、アスクルやZOZO、一休などの有力なグループ企業が各サービスを担っています。
■ファイナンス事業
QRコード決済やクレジットカードなどのキャッシュレス決済サービスを中心に、利便性の高いデジタル金融プラットフォームを構築しています。決済サービスに加えて、銀行や証券などの金融サービスをシームレスに提供し、ユーザーの利便性向上を図っています。
加盟店からの決済手数料や、クレジットカードの利用に伴う手数料、金融サービスの手数料などが収益源となっています。運営は、PayPayを中心に、PayPayカード、PayPay銀行、PayPay証券、SBペイメントサービスなどの子会社が担っています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、デジタルメディアやデジタルコンテンツの企画・制作などを行っています。また、最先端の技術革新をビジネスチャンスと捉え、FinTech、IoT、クラウドなどの分野に積極的に投資を行い、事業展開を図っています。
提供するサービスやコンテンツの利用料、および投資先の事業成長に伴うリターンなどが収益源となります。同事業の運営は、ソフトバンクおよびアイティメディアなどのグループ会社がそれぞれの領域で事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、非通信事業の成長やM&Aの効果などにより売上高が継続して拡大し、過去最高を更新しています。税引前利益は先行投資等の影響で一時的な増減があるものの、概ね安定した高水準を維持しており、着実な成長トレンドを描いています。
| 項目 | 第36期 | 第37期 | 第38期 | 第39期 | 第40期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 56,906億円 | 59,120億円 | 60,840億円 | 65,443億円 | 70,387億円 |
| 税引前利益 | 8,580億円 | 8,629億円 | 8,059億円 | 8,801億円 | 9,300億円 |
| 利益率(%) | 15.1% | 14.6% | 13.2% | 13.4% | 13.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5,171億円 | 5,314億円 | 4,891億円 | 5,261億円 | 5,508億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は主力事業の好調に支えられて拡大し、それに伴って売上総利益も増加しています。営業利益率も安定した水準を維持しており、効率的なコストコントロールと高付加価値サービスの提供が利益成長に大きく貢献していることがうかがえます。
| 項目 | 第39期 | 第40期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 65,443億円 | 70,387億円 |
| 売上総利益 | 31,602億円 | 33,840億円 |
| 売上総利益率(%) | 48.3% | 48.1% |
| 営業利益 | 9,890億円 | 10,426億円 |
| 営業利益率(%) | 15.1% | 14.8% |
販売費及び一般管理費などの営業費用全体において、商品売上原価が20,745億円と最も大きく、次いで減価償却費及び償却費が7,853億円、販売手数料及び販売促進費が5,822億円を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の業績では、コンシューマやエンタープライズ事業が主力として安定した利益を生み出しています。また、ディストリビューションやファイナンス事業も大きく売上を伸ばしており、特にファイナンス事業は決済取扱高の増加に伴い大幅な増益を達成しました。
| 区分 | 売上(第39期) | 売上(第40期) | 利益(第39期) | 利益(第40期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンシューマ | 29,529億円 | 30,151億円 | 5,304億円 | 5,508億円 | 18.3% |
| エンタープライズ | 9,224億円 | 10,029億円 | 1,703億円 | 1,924億円 | 19.2% |
| ディストリビューション | 8,895億円 | 10,563億円 | 304億円 | 353億円 | 3.3% |
| メディア・EC | 16,289億円 | 16,680億円 | 2,588億円 | 2,404億円 | 14.4% |
| ファイナンス | 3,255億円 | 4,045億円 | 417億円 | 863億円 | 21.3% |
| その他 | 1,234億円 | 1,422億円 | -365億円 | -629億円 | -44.2% |
| 調整額 | -2,982億円 | -2,503億円 | -61億円 | 3億円 | - |
| 連結(合計) | 65,443億円 | 70,387億円 | 9,890億円 | 10,426億円 | 14.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 第39期 | 第40期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13,679億円 | 13,938億円 |
| 投資CF | -9,952億円 | -12,708億円 |
| 財務CF | -9,564億円 | -1,369億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、創業以来一貫して情報革命を通じた人類と社会への貢献を推進しています。情報・テクノロジー領域において多様な事業に取り組み、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ、持続的な企業価値の最大化を目指して経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を共有しつつ、挑戦を恐れない活気に満ちた企業文化を重視しています。「サステナビリティ基本方針」においては、従業員のやりがいと誇り、個性が活かされ、平等で多様性に富んだ環境を大切にすることが明記されており、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度にありたい姿として、長期ビジョン「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を掲げています。さらに、2026年度から2030年度までの中期経営計画では以下の数値目標を設定しています。
・2031年3月期の連結営業利益:1兆7,000億円
・2031年3月期の親会社の所有者に帰属する純利益:7,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略「Activate AI for Society」を掲げ、全事業でAIの可能性を起動させ、社会への実装を推進しています。通信事業では高品質なネットワークの構築と増収増益を図り、非通信事業ではAIインフラの整備やメディア・EC、ファイナンス事業の連携強化を通じて、グループ経済圏の拡大と収益力の向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人」と「事業」をつなぎ、双方の成長を実現することを人事ミッションとしています。社員を「資本」と捉え、自己成長や挑戦を後押しするため、ジョブポスティング制度や社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」などの環境を整備しています。また、デジタル人材の育成にも積極的に投資しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第40期 | 42.0歳 | 14.8年 | 8,713,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.3% |
※男性育児休業取得率については、総合職や一般職など雇用区分別の開示となっており、企業全体の合算値が公表されていないため記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、テレワーク実施率(95.1%)、年休取得率(77.0%)、コンプライアンス研修受講率(99%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢および市場環境の変化
少子高齢化に伴う国内市場の縮小や、通信関連の法令・規制の変更が競争力や収益性に影響を及ぼす可能性があります。また、他社との競争激化や新規参入者の台頭により、顧客の維持・獲得が困難になるリスクがあります。
■(2) 技術・ビジネスモデルへの対応
AIやIoTなどの技術革新が急速に進む中、新たな技術やビジネスモデルへの対応が遅れた場合、市場での競争力を失い、提供するサービスが顧客の期待に応えられなくなることで、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報の流出や不適切な取り扱い
サイバー攻撃や内部不正などにより顧客情報や機密情報が流出・消失した場合、損害賠償やシステムの改修費用が発生するほか、企業ブランドや社会的信用が大きく毀損し、事業の継続に深刻な影響を与えるリスクがあります。



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