石井表記 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石井表記 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石井表記は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、プリント基板製造装置やインクジェットコーター等の電子機器部品製造装置、および車載向けなどのディスプレイ・電子部品の開発から販売までを手掛けています。直近の業績は、AI関連向け基板の設備投資増や電子部品実装需要の回復を背景に増収増益を達成しています。


※本記事は、石井表記の有価証券報告書(第53期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 石井表記ってどんな会社?


石井表記は、独自の技術力で電子機器部品製造装置とディスプレイ・電子部品をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1963年に石井表記製作所として創業し、1973年に設立されました。1981年にプリント基板製造装置の製造販売を開始し、1989年にはフィリピンに合弁会社(現在の連結子会社)を設立して海外展開を推進しました。その後、1999年に上場を果たし、近年は車載部品向け印刷製品など新規領域への展開を続けています。

現在の従業員数はグループ全体で695名、単体で301名です。筆頭株主は創業者関連の資産管理を行うアイエフエムで、第2位は創業家の石井敏博氏、第3位は従業員持株会となっており、安定した株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
アイエフエム 24.62%
石井敏博 7.70%
イシイヒョーキ従業員持株会 7.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本晋宏氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山本晋宏 代表取締役社長 1994年同社入社。マシナリー事業部長、装置事業本部長兼インクジェット事業本部長、常務取締役などを経て、2023年4月より現職。
石井峯夫 代表取締役会長 1963年石井表記製作所創業。1973年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。アイエフエム代表取締役などを経て、2023年4月より現職。
松井忠則 常務取締役管理本部長 1991年同社入社。経理部長、執行役員管理本部副本部長、取締役管理本部長などを経て、2023年4月より現職。上海賽路客電子有限公司董事長等を兼任。
岩永浩司 取締役デバイス事業本部長 1991年同社入社。デバイス事業本部営業部部長、執行役員デバイス事業本部長などを経て、2024年4月より現職。
松井誠治 取締役装置事業本部長 1992年同社入社。装置事業本部営業部部長、執行役員装置事業本部長などを経て、2024年4月より現職。


社外取締役は、石井裕工(元広島県庁商工労働局産業振興部県内投資促進課長)、本田祐二(ばらのまち法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子機器部品製造装置」「ディスプレイ及び電子部品」および「その他」事業を展開しています。

電子機器部品製造装置


プリント基板の製造工程における研磨、表面処理を行う装置や、塗布のスピード・均一性に優れた大型液晶パネル向けのインクジェットコーターなどの開発・製造を行っています。AI関連向けパッケージ基板など最新の需要に対応する装置群を提供しています。

顧客からの装置や関連消耗品の購入代金を主な収益源としています。本事業の運営は主に石井表記が担っているほか、中国にある連結子会社のISHII HYOKI(SUZHOU)CO.,LTD.や国内子会社のCAPなども展開しています。

ディスプレイ及び電子部品


自動車向け印刷製品をはじめ、工作機械および産業用機械分野に向けた操作パネルの供給などを行っています。内部基板から表示シートまでを一貫生産し、顧客の多様なニーズに的確に対応できる体制を強みとしています。

製品の販売を収益源としています。運営は石井表記のほか、フィリピンでシルク・ラベル印刷製品を生産するJPN,INC.や、中国で電子部品実装を主力とする上海賽路客電子有限公司などの連結子会社が担っています。

その他


報告セグメントに含まれないその他の事業活動を行っています。主に国内子会社のトリアスが事業運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は140億円から180億円規模のレンジで推移しています。一時的に減収減益となる期間もありましたが、直近ではAI関連基板向けの設備投資増や電子部品実装需要の回復に支えられ、増収および経常増益を達成しています。利益率も安定した水準を維持しています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 144億円 182億円 167億円 148億円 157億円
経常利益 17億円 20億円 17億円 11億円 12億円
利益率(%) 12.0% 11.1% 10.3% 7.5% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8.8億円 9.7億円 7.4億円 8.9億円 4.8億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益のいずれも前期を上回る実績となりました。売上総利益率と営業利益率も改善傾向を示しており、需要を取り込みながら本業の収益性を着実に向上させている状況が確認できます。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 148億円 157億円
売上総利益 34億円 36億円
売上総利益率(%) 22.9% 23.2%
営業利益 9.1億円 11億円
営業利益率(%) 6.1% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が5.3億円(構成比21.1%)、試験研究費が1.6億円(同6.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


電子機器部品製造装置セグメントは、民生機器向け投資が停滞したものの、AI関連向けパッケージ基板の需要増などにより増収となりました。ディスプレイ及び電子部品セグメントは、自動車向け等が生産調整の影響を受けましたが、中国子会社の受注増加基調に支えられ増収を確保しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
電子機器部品製造装置 46億円 49億円
ディスプレイ及び電子部品 102億円 108億円
連結(合計) 148億円 157億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

石井表記のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加により、前連結会計年度比で減少しましたが、一定の資金を生み出しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入・払戻しや有形固定資産の取得・売却などにより、前連結会計年度とは異なり資金が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加があったものの、長期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得などにより、前連結会計年度比で資金の使用額が減少しました。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 23億円 13億円
投資CF -6.3億円 1.8億円
財務CF -18億円 -9.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「『独創的』な製品作りに情熱を持って『挑戦』し、会社と社員の永遠の幸福を目指す」を経営理念に掲げています。技術を原点としたハイテクに情熱を傾ける技術集団として、高い信頼性を得て社会の発展に貢献し、永遠の成長を目指す方針です。

(2) 企業文化


「人」を大切にし、活躍の場を提供することを重視しています。変化が速くグローバルな市場環境において成長するため、適時・適材・適所をボーダレスに実現する人事制度の再構築を進めるなど、従業員の自主性や意欲を引き出し企業と社員が共に成長する文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


本業の収益に加え、為替変動等の営業外のリスクも考慮した経営管理を行うことを目的に、「売上高経常利益率」を重要な経営指標として掲げています。コア技術の深掘りや新製品開発、新市場の開拓により、常に安定的な収益と永続的成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長見込みの高い分野での開発力強化や、在庫削減・着実なコストダウンなど製造業の原点回帰に注力します。自動車業界向けには意匠性の高い加飾部品などの提案を進め、液晶関連製品では塗布技術の他市場展開や中国以外の市場へのアプローチを検討するなど、特定領域への依存からの転換を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員が最大限に能力を発揮できる職場環境の実現を目指し、適材適所の人員配置を「自己申告制度」を通じて行っています。健康イベントの開催や短時間勤務制度の整備など、安心・安全に働きながらキャリア形成を目指せる環境づくりを進めており、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 47.0歳 21.6年 5,357,558円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含み、中途入社者の給与は除いています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 55.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新製品開発の遅延リスク

同社は顧客要求や市場動向を慎重に見極めて新製品を開発していますが、市場ニーズに合致する新製品の投入が遅れた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。開発部門を通じた効率的な技術的課題の解決により、リスクの低減に努めています。

(2) 資材調達と価格高騰リスク

急激な環境変化によって原材料の供給が逼迫し、価格の高騰や納期の長期化が発生した場合、生産活動に支障をきたす恐れがあります。複数社を利用した購買先の多様化や、事前のまとめ買いによる在庫確保によってリスクの分散を図っています。

(3) 輸出機械装置の据付・検収リスク

輸出する機械装置の売上代金の一部は、現地での据付や検収の完了後に入金される場合があります。検収作業が長引いた際には入金が遅延する可能性があり、同社は進捗管理を慎重に行うことで早期の検収完了に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。