はごろもフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

はごろもフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する食品メーカー。「シーチキン」や「ポポロスパ」等の缶詰・パスタ製品を主力とします。直近の業績は、価格改定の浸透や高付加価値製品の販売好調により、売上高は747億円と増収、経常利益は34億円と大幅な増益を達成しています。


※本記事は、株式会社はごろもフーズ の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. はごろもフーズってどんな会社?


「シーチキン」ブランドで知られる食品メーカー。缶詰、パスタ、包装米飯などを製造・販売しています。

(1) 会社概要


1931年に後藤磯吉が鮪油漬缶詰事業を開始し、1947年に株式会社清水屋(現・はごろもフーズの前身)を設立しました。1958年には主力製品となる「シーチキン」を商標登録しています。2000年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は677名、単体では663名です。筆頭株主は教育研究の奨励を行う公益財団法人で、第2位は同社の関連団体、第3位は地元地方銀行である株式会社静岡銀行です。

氏名 持株比率
公益財団法人はごろも教育研究奨励会 46.67%
はごろも高翔会 9.64%
静岡銀行 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性4名(監査役含む)の計20名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は後藤佐恵子氏です。社外取締役比率は13.3%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤 佐恵子 代表取締役社長 味の素、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2004年同社入社。経営企画本部長等を経て2019年10月より現職。
後藤 康雄 代表取締役会長 1971年味の素入社。1978年同社入社。1986年代表取締役社長就任。2007年6月より現職。
松井 敬 代表取締役副社長 事業本部長 東食を経て1998年同社入社。シーチキン・デザート・総菜ユニット長等を経て2019年10月より現職。
山田 雅文 常務取締役 事業本部副本部長営業管掌 1982年同社入社。名古屋支店長、第1事業部長、東京支店長等を経て2024年6月より現職。
望月 浩志 常務取締役 事業本部副本部長生産管掌 1988年同社入社。新清水プラント工場長、品質保証本部長等を経て2024年6月より現職。
日笠 博文 取締役 サービス本部長 1990年同社入社。シーチキンユニット長、サービス本部副本部長兼人事厚生部長を経て2022年4月より現職。
田村 智之 取締役 首都圏統轄(東京・広域・関東)兼東京支店長 1991年同社入社。大阪支店長、事業本部副本部長等を経て2019年6月より現職。
給田 尚文 取締役 品質保証本部長兼品質保証部長兼分析室長兼HICセンター長 1995年同社入社。品質保証部長、新清水プラント工場長等を経て2021年6月より現職。
鈴木 孝夫 取締役 事業本部本部長補佐兼シーチキン・デザート・総菜ユニット長 1990年同社入社。広域流通部長、大阪支店長を経て2022年6月より現職。
山本 秀幸 取締役 開発部長 1991年同社入社。広域流通部長等を経て2022年6月より現職。
越野 勉 取締役 経営企画本部長兼企画部長兼SDGs担当 1992年同社入社。財務部長、経営企画本部副本部長等を経て2022年6月より現職。
毛利 恵子 取締役 業務用統轄兼業務用販売部長 1996年同社入社。広域流通部次長、業務用販売部長を経て2024年6月より現職。
香田 賢治 取締役 サービス本部長補佐兼総務部長 1988年同社入社。全員経営推進室長、総務部長を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、伊藤元重(東京大学名誉教授)、牛尾奈緒美(明治大学情報コミュニケーション学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


「シーチキン」等の缶詰製品、パスタ、パスタソース、包装米飯、削りぶし、のり、ふりかけ、デザート、ペットフードなどの製造・販売を行っています。顧客は主に卸売業者を通じた量販店や小売店、および一般消費者です。

製品の販売による代金を主な収益源としています。運営は主にはごろもフーズが行い、子会社のセントラルサービスが物流業務を担っています。また、関連会社のP.T.アネカ・ツナ・インドネシアがツナ製品等の製造委託先となっています。

(2) その他事業


食品事業以外の事業として、不動産賃貸業などを行っています。

保有する不動産の賃貸料を主な収益源としています。運営ははごろもフーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が673億円から747億円へと着実に拡大しています。経常利益は2023年3月期に原材料価格高騰等の影響で赤字となりましたが、その後は価格改定の浸透やコスト管理によりV字回復し、直近では34億円の利益を計上しています。当期純利益も同様の傾向を示し、収益性が改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 673億円 684億円 705億円 735億円 747億円
経常利益 39.1億円 25.5億円 -7.9億円 22.7億円 34.0億円
利益率(%) 5.8% 3.7% -1.1% 3.1% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 20億円 -13億円 17億円 24億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これは価格改定や高付加価値製品の販売が奏功したことによるものです。営業利益率は前期の2.5%から3.8%へと上昇しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 735億円 747億円
売上総利益 150億円 160億円
売上総利益率(%) 20.4% 21.4%
営業利益 18億円 28億円
営業利益率(%) 2.5% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、販売奨励金が21億円(構成比16%)、荷造運賃が21億円(同16%)、広告宣伝費が18億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品群別の売上が開示されています。主力の「家庭用食品」は、パウチ製品やふりかけ等の伸長により全体で増収となりました。「業務用食品」や「ペットフード・バイオ他」も堅調に推移し、全区分で前期を上回る売上を記録しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
家庭用食品 586億円 596億円
業務用食品 126億円 127億円
ペットフード・バイオ他 20億円 21億円
その他 3億円 4億円
連結(合計) 735億円 747億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って借入金の返済や配当支払い(財務CFマイナス)を行いつつ、設備投資(投資CFマイナス)も実施する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9億円 25億円
投資CF -6億円 -7億円
財務CF 0.2億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と地球に愛される企業を目指します。」を経営理念として掲げています。「人と自然を、おいしくつなぐ」をコーポレート・メッセージとし、笑顔がおいしい食シーンの手伝いをすることを使命と考えています。また、存在意義(パーパス)として、笑顔が溢れる食卓づくりを手伝い、顧客の健康(Health& Beauty)づくりに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「人と自然を、おいしくつなぐ」というメッセージのもと、幅広い食材の提供や「食」に関わるすべての事業を領域と捉えています。おいしさ、栄養、そして楽しい語り合い(テーブルコミュニケーション)に事業機会を広げることを重視する文化があります。また、自信・働き甲斐・生き甲斐をより一層確信できる会社を実現し、多様な従業員が協力・協業する中で新たな価値を生み出す職場創出を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までの中期経営計画「Challenge & Change for 100th!」を推進しています。2031年の創業100周年に向けて、キッチンで最も愛されるブランドの確立、自信・働き甲斐・生き甲斐を確信できる会社の実現、次世代に向けた新たな事業基盤の創出を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、積極的な設備・人財投資による製品の安全・安定供給の実現、高付加価値新製品の投入や業務デジタル化による既存事業の強化、新たな事業の柱の育成、多様な人財が活躍できる職場づくり、環境保全や社会貢献活動への取り組みを基本方針として掲げています。

* 製品の安全・安心、安定生産・供給を実現する積極的な設備・人財投資の推進
* 既存事業の強化(高付加価値新製品の投入、SKU削減、デジタル化)
* 新たな事業の柱の育成と開発
* 多様な人財が元気に活躍できる職場づくり
* 環境保全や社会貢献活動への積極的な取り組み

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自信・働き甲斐・生き甲斐の持てる会社の実現」を目指し、従業員の多様性を活かすことを前提とした人事制度と、安全で安心な職場環境の確立に取り組んでいます。女性の活躍推進や男性の育児・子育て支援、労働環境の多様化に沿った新人事制度の導入、戦略的な人財開発育成制度の導入を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 14.9年 5,014,431円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.1%
男女賃金差異(正規雇用) 57.1%
男女賃金差異(非正規) 59.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者における女性比率(2025年4月:60.9%)、女性管理職比率目標(2030年3月:11.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の供給量と価格の変動


同社製品の主原料である農水産物は、漁獲量や収穫量の変動、為替相場、原油価格、気候変動、各種規制等の影響を受けます。これにより供給量の減少や価格高騰が生じ、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、供給元の複数化や戦略的な調達等で対応しています。

(2) カントリーリスク


原材料の供給元や製造委託先である海外における政治不安、法制度の変更、ストライキ等のリスクがあります。これらが顕在化した場合、製品供給の遅延や停止、在外関連会社の利益減少等が生じる可能性があります。情報の収集や生産拠点の複数化等でリスク軽減を図っています。

(3) 市場動向の変化


人口減少による市場縮小や消費者ニーズの変化、販売競争の激化等のリスクがあります。これらは販売数量やシェアの低下につながる可能性があります。高付加価値製品の開発、ブランド力の強化、コストダウン等により対応を進めています。

(4) 物流業界の労務管理の厳格化


物流業界におけるドライバー不足や労務管理の厳格化(2024年問題)により、配送能力の低下や物流費の上昇が懸念されます。これは販売機会の喪失やコスト増につながる可能性があります。ドライバーの拘束時間削減や物流拠点の最適化等に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。