はごろもフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

はごろもフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

はごろもフーズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する食品メーカーです。ツナ、デザート、パスタ、包装米飯などの製造販売を主力としています。直近の業績では、主力のシーチキン等が好調に推移したことで増収となり、価格改定の効果も寄与して経常利益・当期純利益ともに増益を達成しています。


※本記事は、はごろもフーズ株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. はごろもフーズってどんな会社?


同社は缶詰やパスタ等の食品製造販売を主力とし、シーチキンブランドで知られる企業です。

(1) 会社概要


1931年に鮪油漬缶詰事業を起こしたことに始まり、1947年に清水市(現・静岡市)で設立されました。1958年には「シーチキン」を商標登録しています。2000年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しました。2017年のマルアイ吸収合併などを経て事業基盤を拡大してきました。

現在の同社グループは、連結従業員数667名、単体654名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は公益財団法人はごろも教育研究奨励会で、第2位ははごろも高翔会、第3位は静岡銀行となっており、創業家や関連団体、取引先が上位を占めています。

氏名 持株比率
公益財団法人はごろも教育研究奨励会 46.67%
はごろも高翔会 10.08%
静岡銀行 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性4名の計20名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は後藤佐恵子氏が務めています。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤 佐恵子 代表取締役社長 味の素、マッキンゼーを経て2004年入社。経営企画部担当、常務取締役サービス本部長等を経て2019年10月より現職。
後藤 康雄 代表取締役会長 味の素を経て1978年入社。総務部長、常務取締役を経て1986年に代表取締役社長就任。2007年6月より現職。
松井 敬 代表取締役副社長 事業本部長 東食を経て1998年入社。バンコク駐在員事務所長、常務取締役等を経て2019年10月より代表取締役副社長に就任。
山田 雅文 常務取締役事業本部副本部長営業管掌 1982年入社。第1事業部長、取締役東京支店長等を経て2024年6月より現職。
望月 浩志 常務取締役事業本部副本部長生産管掌 1988年入社。富士山パスタプラント工場長、取締役品質保証本部長等を経て2024年6月より現職。
日笠 博文 取締役業務用統轄兼業務用販売部長 1990年入社。シーチキンユニット長、サービス本部長等を経て2026年1月より現職。
田村 智之 取締役特命担当 1991年入社。大阪支店長、事業本部副本部長兼乾物・パスタ・米飯ユニット長等を経て2026年1月より現職。
給田 尚文 取締役品質保証本部長兼品質保証部長兼分析室長兼HICセンター長 1995年入社。新清水プラント工場長等を経て2025年1月より現職。
鈴木 孝夫 取締役東京支店長 1990年入社。事業本部本部長補佐兼シーチキン・デザート・総菜ユニット長等を経て2026年1月より現職。
山本 秀幸 取締役シーチキン・デザート・総菜ユニット長 1991年入社。広域流通部長、開発部長等を経て2026年1月より現職。
越野 勉 取締役社長補佐 1992年入社。経理部長、経営企画本部長兼企画部長等を経て2026年5月より現職。
毛利 恵子 取締役サービス本部長兼総務部長兼女性活躍推進担当 1996年入社。業務用販売部長等を経て2026年5月より現職。
香田 賢治 取締役経営企画本部長兼SDGs担当 1988年入社。総務部長、サービス本部長補佐等を経て2026年5月より現職。


社外取締役は、伊藤元重(東京大学名誉教授)、牛尾奈緒美(明治大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


缶詰・レトルト食品・パスタ・包装米飯・削りぶし・のり・ふりかけ類およびその他製品の製造販売を行っています。また、物流業務としての製品出荷手配や運送事務も含まれています。

収益源は、消費者や卸売業者に向けた食品の販売代金です。運営は同社のほか、子会社のセントラルサービスが物流を担い、関連会社のアネカ・ツナ・インドネシアがツナ製品等の製造委託先として関わっています。

(2) その他事業


主に不動産賃貸などの事業を行っています。

収益源は、所有する不動産等からの賃貸料です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に成長を続けています。経常利益については一時赤字を計上した期もありましたが、その後は回復傾向にあり、利益率も順調に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 684億円 705億円 735億円 747億円 751億円
経常利益 26億円 -8億円 23億円 34億円 37億円
利益率(%) 3.7% -1.1% 3.1% 4.6% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 -13億円 17億円 25億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益ともに増加傾向にあります。売上総利益率と営業利益率も前期に比べて上昇しており、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 747億円 751億円
売上総利益 160億円 161億円
売上総利益率(%) 21.4% 21.5%
営業利益 28億円 31億円
営業利益率(%) 3.8% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が21億円(構成比16%)、販売奨励金が19億円(同15%)、広告宣伝費が18億円(同14%)を占めています。売上原価の内訳を見ると、材料費が182億円(構成比75%)、経費が26億円(同11%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、「積極型」に分類されます。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 48億円
投資CF -7億円 -36億円
財務CF -11億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人と地球に愛される企業を目指します。」を経営理念として掲げ、健全な企業活動の成果をステークホルダーに還元し、社会的責任を果たすことを目指しています。また、「人と自然を、おいしくつなぐ」をコーポレート・メッセージとし、笑顔が溢れる食卓づくりを手伝うことで、顧客の健康づくりに貢献することを存在意義(パーパス)としています。

(2) 企業文化


同社は「食」に関わるすべてのシーンでの美味しさ、栄養、そして楽しい語り合い(テーブルコミュニケーション)に事業機会を広げていく価値観を重視しています。安全・安心な製品の安定供給という社会的責務を果たすとともに、資源の有効活用や環境保全にも積極的に取り組み、多様な従業員が協力・協業する中で新たな価値を生み出す職場環境を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2031年の創業100周年に向け、キッチンで最も愛されるブランドを目指して缶詰・レトルトパウチ分野でシェアNo.1を獲得することを掲げています。収益力の観点から「売上高経常利益率」を、株主重視の観点から「自己資本利益率(ROE)」を指標として捉え、これらの基調的な改善に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


2024~2026年度の中期経営計画「Challenge & Change for 100th!」に基づき、製品の安全・安心と安定生産・供給を実現するための設備・人財投資を推進します。また、高付加価値新製品の投入やSKUの削減を通じた既存事業の強化、強みを活かした新たな事業の構築、多様な人財が活躍できる職場づくり、環境保全・社会貢献活動へ積極的に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財育成を経営の最重要課題の一つ」と認識し、従業員の多様性を活かすことを前提とした働き甲斐や成長意欲を高める人事制度と、安全で安心な職場環境の確立を目指しています。新入社員を専門機関で学ばせるなど即戦力人財を育成するほか、自己申告制度やジョブローテーションにより従業員のキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 15.0年 5,068,307円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 58.5%
男女賃金差異(正規雇用) 58.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健診受診率(100%)、新卒採用における女性比率(69.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の供給量と価格の変動


漁獲量や収穫量の変動、為替相場、原油価格、資源価格の変動などが影響を及ぼします。供給量の減少や価格の高騰に対処するため、供給元の複数化や原材料の戦略的な調達、生産性向上によるコストダウンなどに努めています。

(2) カントリーリスク


政治不安や経済情勢の悪化、法制度の改正、労働ストライキなどにより、製品や原材料の供給遅延や停止が発生する可能性があります。これに対し、供給元や生産拠点の複数化、関係国における情報収集などを進めています。

(3) 市場動向の変化


人口減少による市場縮小や、消費者ニーズの変化、物価上昇による節約志向の強まりなどが販売数量やシェアに影響を及ぼす可能性があります。高付加価値製品の開発やブランド力の強化を通じて、多様化する需要へ対応しています。

(4) 消費者・SNS等の対応


不適切な広告やお客様対応がSNS等で拡散されることにより、不買運動や企業ブランドイメージの毀損を招く恐れがあります。お問い合わせ情報の検証やSNSのモニタリングを通じて、的確かつ迅速な対応に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。