クロスプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロスプラス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダードおよび名証メイン市場に上場するクロスプラスは、婦人衣料を中心としたアパレルやライフスタイル商品の企画、製造、販売を展開しています。直近の業績は、売上高が減少したものの、原価低減や経費削減が奏功して営業利益および経常利益が増益となりました。EC販売の強化でさらなる成長を目指しています。


※本記事は、クロスプラス株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クロスプラスってどんな会社?


婦人衣料を中心としたアパレルの製造卸売を主力とし、小売やライフスタイル商品も展開する企業です。

(1) 会社概要


1953年に櫻屋商事として設立され、婦人ブラウスの製造卸売を開始しました。2001年に現在のクロスプラスに商号を変更しています。2004年に東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第二部に上場し、2022年の市場区分見直しによりそれぞれスタンダード市場とメイン市場へ移行しました。

従業員数は連結で705名、単体で595名です。筆頭株主は創業者とみられる辻村隆幸氏で、第2位は繊維専門商社の田村駒、第3位は同じく繊維商社のヤギとなっています。

氏名 持株比率
辻村 隆幸 8.07%
田村駒 4.34%
ヤギ 3.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は山本大寛氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
山本大寛 代表取締役社長 2008年同社入社。2011年執行役員経営企画室兼情報システム室兼EC事業開発課担当などを経て、2014年より現職。
西尾祐己 専務取締役営業担当 1988年同社入社。2011年執行役員営業担当、2017年常務執行役員営業担当などを経て、2025年より現職。
大口浩和 専務取締役営業担当 1988年同社入社。2012年執行役員営業担当、2017年常務執行役員営業担当などを経て、2025年より現職。
白木規博 常務取締役管理担当 1989年東海銀行入行。2018年同社入社、執行役員経理部担当などを経て、2025年より現職。
西垣正孝 取締役(常勤監査等委員) 1982年同社入社。2007年執行役員営業担当、2017年取締役管理担当などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、岩井恒彦(元資生堂代表取締役執行役員副社長技術イノベーション本部長)、竹内俊昭(元花王代表取締役専務執行役員)、佐野清明(元東京海上日動火災保険専務執行役員)、鬼頭潤子(元有限責任あずさ監査法人・公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アパレル卸売」「ライフスタイル卸売」「小売」などの事業を展開しています。

(1) アパレル卸売


同社の主力事業であり、婦人衣料の製造と卸売を行っています。専門店、量販店、無店舗など幅広い販路へ向けて商品を供給しており、近年は機能性ファッションやメンズ商品の拡大にも注力しています。

収益源は、販売先企業からの商品代金です。主にクロスプラスが事業を運営しており、グループ会社のサードオフィスが専門店向けのメンズ衣料品の製造卸売で領域を補完しています。

(2) ライフスタイル卸売


衣料品以外のライフスタイル商品の企画、製造、販売を行っています。シーズン雑貨ブランドやビューティー分野、ヘルスケア分野の商品を開発し、専門店や量販店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどに販売しています。

収益源は、各販売先からの商品卸売代金です。クロスプラスが主体となって展開しているほか、グループ会社のアイエスリンクが化粧品の製造卸売を通じて事業を担っています。

(3) 小売


自社で企画・製造した衣料品や雑貨などのライフスタイル商品を、直営店舗や自社ECサイトを通じて直接消費者に販売しています。近年はアパレル店舗における雑貨比率の引き上げや、ライブコマースを活用した販促施策を強化しています。

収益源は、店舗やECサイトを通じた消費者からの商品代金です。本事業は主にクロスプラスが運営を行っています。

(4) その他


上記の衣料品およびライフスタイル商品の企画・製造・販売に関連しない事業が含まれます。中国での検品や物流加工、児童発達支援サービスなどを展開しています。

事業運営は、中国法人の客楽思普勒斯(上海)服飾整理有限公司が検品・物流加工を担い、ディスカバリープラスが児童発達支援サービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は571億円から620億円のレンジで推移しています。経常利益は一時赤字を計上したものの、その後は収益性の改善が進み、安定的に利益を創出する体質へと転換しています。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 591億円 571億円 602億円 620億円 599億円
経常利益 -13億円 4億円 20億円 13億円 16億円
利益率(%) -2.2% 0.7% 3.3% 2.1% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -15億円 4億円 20億円 13億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上総利益率は改善しました。広告宣伝費や販促費などの変動費の抑制が奏功し、営業利益率は上昇傾向にあります。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 620億円 599億円
売上総利益 163億円 165億円
売上総利益率(%) 26.3% 27.6%
営業利益 10億円 14億円
営業利益率(%) 1.7% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が32億円(構成比21%)、販売手数料が31億円(同20%)、荷造運搬費が19億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


アパレル卸売向けが苦戦した一方、EC販売の伸長により小売事業は増収を確保しました。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
アパレル卸売 - 442億円
ライフスタイル卸売 - 26億円
小売 - 127億円
その他 - 4億円
連結(合計) - 599億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産の取得・売却による資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。

同社は、短期運転資金を自己資金と短期借入で、設備投資やM&A、長期運転資金は自己資金と長期借入で調達しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF -5億円 9億円
投資CF 2億円 -1億円
財務CF -11億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは『夢と喜びあふれるファッション』を提供し、豊かな社会の創造に貢献します。」を経営理念として掲げています。また、「共存共栄を旨とし、商道を通じ社会に貢献するを経営の目的とする」という社訓を持ち、顧客に価値ある商品を提供する企業を目指しています。

(2) 企業文化


「経営基本方針」として、「お客様第一の行動」「社員の尊重」「チャレンジの姿勢」を重視しています。社員一人ひとりの個性や能力を発揮できる環境を整え、新しく前向きに高い目標に挑戦する組織風土を構築し、誠実かつ信頼のおける企業活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「ファッションの力で、ライフスタイルの新たな可能性を開く。」企業を目指し、2026年1月期からの3か年の中期経営計画を推進しています。アパレルとライフスタイルの両輪で収益力の向上に取り組んでいます。

* 売上高:680億円(2028年1月期)
* 営業利益:20億円(2028年1月期)
* ROE:9.0%以上(2028年1月期)

(4) 成長戦略と重点施策


アパレル卸売では専門店向け販売を拡大し、機能性ファッションブランドやメンズ事業の育成に注力します。小売では雑貨比率を増やして売場の魅力を向上させ、ECではSNSやライブコマースを活用して売上拡大を図ります。また、ライフスタイル卸売ではビューティーやヘルスケア分野での新ブランド・新商品開発を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員一人ひとりの成長こそが、持続的な企業価値向上の源泉である」と考え、多様な個性が活かされる組織づくりを推進しています。経験に応じた階層別研修や専門スキル研修を整備し、多角的な視点を持つリーダー候補の育成に注力するほか、ワークライフバランスを実現し、柔軟に働ける環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 42.2歳 15.4年 5,108,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 86.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 91.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費低迷や天候不順のリスク


衣料品は景気低迷や物価上昇による消費マインドの低下、またシーズン性が高いため残暑や暖冬などの天候不順によって販売不振を招くリスクがあります。同社はアパレル卸売の収益性向上や小売・ライフスタイル事業の拡大を進め、収益基盤の強化に努めています。

(2) ファッショントレンドの変化に関するリスク


ファッショントレンドの移り変わりや消費者の嗜好の変化に対し、適切な商品を提供できなかった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は常にファッション情報の収集や分析を行い、複数のブランドや販売チャネルを展開して多様なニーズに対応しています。

(3) 海外からの商品調達・為替変動リスク


商品の多くをアジア諸国等で生産し輸入しているため、海外情勢の悪化や原材料価格の高騰、急激な為替レートの変動による仕入コストの上昇が懸念されます。同社は調達先の分散や為替予約取引の活用により、安定的な調達とコスト変動リスクの低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。