※本記事は、株式会社きんえいの有価証券報告書(第129期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. きんえいってどんな会社?
シネマ・アミューズメント事業と不動産事業を主軸に、あべのエリアの発展に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
1937年に大鉄映画劇場として設立され、1944年に近畿映画劇場へ改称しました。1949年に株式を上場し、1972年にはアポロビルを開業して不動産賃貸部門を拡充しました。1998年に現在のきんえいへ商号を変更し、あべのルシアスでのシネマコンプレックス運営等を開始しています。
従業員数は単体で45名です。筆頭株主は近畿日本鉄道退職給付信託口の日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は近鉄保険サービス、第3位は親会社の近鉄グループホールディングスとなっており、近鉄グループの事業会社として強固な関係性を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(近畿日本鉄道退職給付信託口) | 45.55% |
| 近鉄保険サービス | 9.00% |
| 近鉄グループホールディングス | 5.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。取締役社長(代表取締役)は作田憲彦氏が務めており、取締役6名中2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 作田憲彦 | 取締役社長(代表取締役) | 1983年近畿日本鉄道入社。アド近鉄を経て2011年同社入社。常務、専務等を経て2024年4月より現職。 |
| 北悦治 | 専務取締役技術部担当不動産事業部長 | 1985年近畿日本鉄道入社。奈良交通等を経て2011年同社入社。執行役員等を経て2025年4月より現職。 |
| 山野貴生 | 常務取締役総務部長 | 1987年近畿日本鉄道入社。近鉄不動産執行役員等を歴任後、2022年同社入社。2023年4月より現職。 |
| 都司尚 | 取締役 | 1982年近畿日本鉄道入社。同社社長や近鉄グループホールディングス社長等を歴任。2024年4月より現職。 |
社外取締役は、梅本史郎(元MBSメディアHD社長)、船戸貴美子(アイマン総合法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「シネマ・アミューズメント事業」および「不動産事業」を展開しています。
■(1) シネマ・アミューズメント事業
あべのアポロシネマにおいて、邦画や洋画の封切作品を上映する映画館事業を展開しています。9つのスクリーンを備えるシネマコンプレックスに加え、同ビル内でゲームセンターなどの娯楽場も運営し、映画鑑賞と連携したアミューズメント体験を顧客に提供しています。
主な収益源は、映画館における鑑賞券の販売収入や売店での商品販売収入、およびゲームセンターでの遊戯設備の利用料です。本事業の運営はきんえいが単体で行っており、周辺の大規模商業施設とタイアップしたイベントなどを通じて、顧客誘致と収益拡大を図っています。
■(2) 不動産事業
大阪市阿倍野区に所在するきんえいアポロビルの賃貸および管理業務を主体としています。また、付帯する駐車場や宝くじ売店の運営のほか、近接するあべのルシアスやヴィアあべのウォーク内の店舗区画においても賃貸および運営管理業務を行っています。
主な収益源は、入居テナントから受け取る不動産賃貸収入やビル共益費、および時間貸し駐車場の利用料です。本事業の運営はきんえいが単体で行っており、定期的な設備更新やリニューアル工事を実施することでビルの安全性と快適性を高め、安定した賃貸収入を確保しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、売上高および経常利益ともに着実な成長を続けています。特に映画館への集客施策や不動産テナントの安定稼働が寄与し、利益率も5%台から8%台へと順調に改善しており、収益基盤の強化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 33億円 | 36億円 | 36億円 | 38億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 5.5% | 7.1% | 8.2% | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 1億円 | 2億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。諸経費の抑制に努めた結果、営業利益率も改善傾向にあり、本業での稼ぐ力が着実に高まっていることが確認できます。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 38億円 |
| 売上総利益 | 6億円 | 7億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 17.8% |
| 営業利益 | 3億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 7.9% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が1億円(構成比33%)、役員報酬が1億円(同17%)を占めています。また、売上原価においては、不動産賃借料が9億円(構成比31%)、フィルム料他が9億円(同28%)となっています。
■(3) セグメント収益
シネマ・アミューズメント事業は、人気作品の上映や周辺施設とのタイアップ効果により増収増益となりました。不動産事業も、計画的な設備更新によるビル環境の向上とテナント誘致の推進により、安定的な賃貸収入を確保して増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) | 利益(2025年1月期) | 利益(2026年1月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| シネマ・アミューズメント事業 | 15億円 | 17億円 | 2億円 | 2億円 | 13.1% |
| 不動産事業 | 20億円 | 21億円 | 4億円 | 4億円 | 21.7% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -3億円 | -4億円 | -% |
| 連結(合計) | 36億円 | 38億円 | 3億円 | 3億円 | 8.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
きんえいでは、営業活動で得られた資金が、投資活動と財務活動での支出を上回った結果、現金及び現金同等物が増加しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益の計上やその他の流動負債の増加などにより、前事業年度と比較して収入が増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得や短期貸付金の増加などにより、前事業年度と比較して支出が増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などにより、前事業年度と比較して支出額が減少しました。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 6億円 |
| 投資CF | -3億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、映画興行やビル賃貸といった事業活動を通じて、顧客の立場に立った高度なサービスを提供し、豊かな生活文化と地域の発展に寄与することを経営の基本方針としています。安定的な経営基盤を確立し、経営環境の急激な変化に機敏に対応しながら、持続可能な社会の実現に貢献することを使命として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、ステークホルダーとの信頼関係を重視し、長期的な視点で社会課題の解決と企業価値の向上を図る文化を持っています。法令や企業倫理の遵守(コンプライアンス)を徹底し、安全で安心な施設運営に向けたリスクマネジメントを組織全体で推進するなど、誠実で透明性の高い事業運営が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は効率的な経営を推進し、部門別業績管理の徹底によって利益率の向上に努めています。財務体質の強化としてキャッシュ・フローの向上や借入金の圧縮を進めるほか、収益性の指標として以下の数値を重視して事業を展開しています。
* ROA(総資産経常利益率)の向上
* 営業利益率の改善
■(4) 成長戦略と重点施策
映画館と周辺の大型集客施設との連携を深め、あべの・天王寺エリアならではの相乗効果を創出することで、持続的な集客力の強化を図ります。また、不動産事業では適応力の高いテナント構成の追求やビル管理コストの低減を進め、収益基盤のさらなる安定化を目指します。
* 安心で快適な映画鑑賞環境の整備
* 「アポロシネマメンバーズ」等による販売促進
* 省エネルギー化に配慮したビル設備の更新
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「働きがいのある職場づくりと人材の成長」を重要なテーマに掲げています。客観的で公正な人事評価に基づき、性別や年齢、経歴に関わらず能力に応じた人材登用を実施しています。また、資格取得奨励制度や各種研修を通じて従業員の自己啓発を支援し、育児・介護支援制度など多様な働き方を支える環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 50.7歳 | 14.3年 | 5,931,942円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コンプライアンス研修受講率(89.8%)、定期健康診断受診率(98.6%)、ストレスチェック受検率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 映画興行成績の変動リスク
映画の興行成績は上映作品の人気に大きく左右され、事前の予測が困難です。ヒット作に恵まれない期間が続く場合や、周辺エリアに競合映画館が出店して顧客が流出した場合、同社のシネマ・アミューズメント事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は魅力的な作品の確保と効果的な宣伝に努めています。
■(2) 賃貸ビルの空室と競合リスク
景気動向によるテナント賃料の下落や空室率の上昇は、不動産事業の収益を直接的に圧迫します。また、周辺の商業施設との競争激化によりテナントの売上が減少し、退去につながるリスクもあります。これに対し同社は、ビル機能の維持・向上を図りつつ、他施設と共存共栄できるテナント構成の構築を進めています。
■(3) 大規模災害・気候変動による施設被害リスク
同社の事業拠点はあべのエリアに集中しているため、直下型地震や大型台風による風水害等が発生した場合、施設が甚大な被害を受け、休業を余儀なくされるおそれがあります。同社は建物の耐震補強や防災マニュアルの整備、定期的な設備更新を実施し、被害を最小限に抑える危機管理体制の強化に取り組んでいます。



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