※本記事は、ポールトゥウィンホールディングス株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月21日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ポールトゥウィンホールディングスってどんな会社?
ゲームデバッグやソフトウェアテストなどを通じて、顧客の課題解決を支援する企業です。
■(1) 会社概要
2009年にポールトゥウィンとピットクルーの株式移転により、純粋持株会社として設立されました。2011年に上場を果たし、その後は国内外のゲームデバッグ、カスタマーサポート、ソフトウェアテストを手掛ける企業を多数子会社化しています。近年では英国や米国などグローバル展開を加速し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で2,953名、単体で7名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位および第3位は創業者の松本公三氏と橘民義氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.70% |
| 松本公三 | 6.40% |
| 橘民義 | 5.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は橘鉄平氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橘鉄平 | 代表取締役社長 | PTW International Holdings Limited CEOを経て2018年より現職。 |
| 橘民義 | 代表取締役会長 | ポールトゥウィン代表取締役会長等を経て2009年より現職。 |
| 津田哲治 | 取締役 | エヌアイシ・オートテックを経て、ポールトゥウィン代表取締役社長等に就任。2010年より現職。 |
| 山内城治 | 取締役CFO | ピットクルー代表取締役社長やポールトゥウィン取締役CFOなどを経て2022年より現職。 |
| 志村和昭 | 取締役 | ピットクルー代表取締役社長等を経て2025年より現職。 |
| 松本公三 | 取締役 | ピットクルー代表取締役などを経て2013年より現職。 |
| 本重光孝 | 取締役 | ハドソン取締役、ピットクルー代表取締役等を経て2009年より現職。 |
| デボラカーカム | 取締役 | Bandai Namco Games America等を経て、2019年よりPTW International Holdings Limited CEOおよび現職。 |
社外取締役は、筒井俊光(ジーピーシー代表取締役)、小林睦(デジタルアイデンティティ取締役)、白井久明(京橋法律事務所開設)、岡本英明(ニコンを経てModern Metrology Solutions開業)、宮田彰彦(さざれキャピタルマネジメントマネージングディレクター)、清水夏子(清水・新垣法律事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「サービス・ライフサイクルソリューション事業」の単一セグメントとして事業を展開しています。報告セグメントが1つのため、社内の業務区分別に事業内容を解説します。
■(1) 国内ソリューション
ゲーム市場向けにデバッグ、カスタマーサポート、ローカライズ等を提供し、Tech市場向けにソフトウェアテストやシステム開発、Eコマース市場向けにモニタリング等を提供しています。主な顧客は、国内のゲーム開発会社やIT企業などです。
主に工数ベースのサービス料金を受領する収益モデルです。運営はポールトゥウィンやSynXなどの国内子会社が行っています。
■(2) 海外ソリューション
主に海外のゲーム開発会社向けに、ゲームデバッグ、ローカライズ、音声収録、カスタマーサポート、グラフィック開発などのサービスをグローバル規模で提供しています。
顧客からサービスの対価として業務委託料を受け取る収益モデルです。運営は、Side International Holdings Limitedをはじめとする欧米やアジアの多数の在外子会社およびSide International Japanが行っています。
■(3) メディア・コンテンツ
バリアフリー字幕・音声ガイド制作、バリアフリーコンサルティング、映画配給などのサービスを提供しています。
顧客から制作費やコンサルティング料、配給収入を受け取ります。運営はPalabraが行っています(なお、同社は当期に一部のメディア・コンテンツ業務から撤退し、今後の再編を予定しています)。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高はM&Aなどの効果もあり2025年1月期まで順調に拡大していましたが、2026年1月期はメディア・コンテンツ業務からの撤退の影響などにより減収に転じています。また、事業環境の変化や先行投資負担等により経常利益は低下傾向にあり、直近では赤字となっています。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 343億円 | 399億円 | 467億円 | 522億円 | 488億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 27億円 | 5億円 | 8億円 | -5億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 6.7% | 1.1% | 1.4% | -1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 7億円 | 5億円 | 21億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少したことに伴い、売上総利益も減少しています。また、人件費の高騰や拠点整備、海外事業での事業整理費用などがかさみ、営業利益は前期の黒字から当期は赤字へと転落しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 522億円 | 488億円 |
| 売上総利益 | 116億円 | 112億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 22.9% |
| 営業利益 | 8億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | -0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が48億円(構成比42%)、役員報酬が9億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内ソリューションは堅調なゲーム市場等により増収、海外ソリューションも事業環境の持ち直しで増収となりました。一方、メディア・コンテンツは事業撤退による株式譲渡等のため大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) |
|---|---|---|
| 国内ソリューション | 246億円 | 259億円 |
| 海外ソリューション | 202億円 | 208億円 |
| メディア・コンテンツ | 74億円 | 21億円 |
| 連結(合計) | 522億円 | 488億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針とし、運転資金及び設備資金は内部資金を基本としつつ、企業価値向上を目的とした有利子負債も活用しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却等による資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払い等、資金調達や返済に関する動きを示しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 4億円 |
| 投資CF | -32億円 | -3億円 |
| 財務CF | 13億円 | 0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人とテクノロジーを融合してお客様の課題を解決する」ことを使命とし、ゲーム、ネット、EC、テクノロジー等の市場において、様々な課題解決を提供しています。国内外でグループ会社間のシナジーを向上させ、一層のグローバル化や事業領域の拡大を推進し、顧客の最善のパートナーとして利便性の高いサポートサービスを提供することを経営方針として掲げています。
■(2) 企業文化
事業活動を通じてステークホルダーとともに成長することで社会基盤を支え、持続可能な社会の実現に貢献するというサステナビリティ基本方針の下、多様な価値観を尊重し、お互いを認め合い自由に意見を言い合える職場環境づくりを推進しています。法令遵守を徹底し、経営の適正性や健全性、透明性の向上を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
従来の売上高の成長を追求する経営方針を見直し、収益性の回復と再成長を最優先課題と再定義しています。再編期からの脱却を図り、まずは最終利益の確実な黒字回復を目指しています。また、株主還元においては安定的かつ継続的な累進配当の実現を目標として掲げています。
* 総還元性向30%以上
* DOE(純資産配当率)3%下限
■(4) 成長戦略と重点施策
「工程」「地域」「分野」の3軸で成長戦略を推進する「3次元的成長」を掲げています。国内ではTech分野での成長やAI技術を活用した労働生産性向上に取り組み、海外では市場規模の大きいゲーム分野を中心にM&A等を通じてシェア拡大を図ります。従来の労働集約型ビジネスから脱却し、AI技術を中心に据えた知識集約型のビジネスモデルへの転換を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は事業活動の源泉であるとし、「DE&Iの推進」「働き方改革の推進」「女性活躍推進」「従業員の労働環境の保護」を掲げています。非正規雇用者の正規雇用化や福利厚生制度の充実化、管理職登用の平等な機会の提供などを通じて人材定着を促進するとともに、フレックスタイム制度やリモートワークの導入など、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 48.7歳 | 6.4年 | 8,413,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※表の数値は単体(提出会社)のものです。男性育児休業取得率および非正規雇用の男女賃金差異は「-」となっています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) アウトソーシング業務の需要変動
顧客企業等におけるアウトソーシングの需要が減少したり、AIなどの技術進歩によって同社が提供する業務サービスの一部について需要が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 臨時従業員および業務請負者の確保
実務の多くを臨時従業員や個人事業主である業務請負者に依存しており、人材の確保や育成に万全を期しているものの、人員確保が困難となった場合には業務遂行や受注活動に支障が生じるリスクがあります。
■(3) サービス品質と瑕疵担保責任
顧客企業が開発したソフトウェア等のデバッグにおいて、製品発売後に不具合が発生した場合、サービス品質への信頼性が低下する可能性があります。また、損害賠償責任などを問われるリスクもあります。



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