※本記事は、ベステラ株式会社の有価証券報告書(第53期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ベステラってどんな会社?
同社は独自の特許工法を駆使し、製鉄や電力などの各種プラント解体工事に特化した事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1974年2月にプラント解体事業を目的として設立されました。2004年には独自の特許技術である「リンゴ皮むき工法」を取得し、事業の優位性を確立しています。その後、2015年に東証マザーズへ上場を果たしました。近年ではM&Aを積極的に行い、2023年にオダコーポレーション等を子会社化しています。
現在の従業員数は連結で185名、単体で121名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社創業家であり元会長の吉野佳秀氏で、第2位は吉野炳樹氏、第3位は同社専務取締役の長泰治氏となっており、創業家や会社役員が上位を占める構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 吉野佳秀 | 10.41% |
| 吉野炳樹 | 9.86% |
| 長泰治 | 1.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は本田豊氏が務めています。監査等委員である取締役3名は全員が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 本田豊 | 代表取締役社長 | 東京急行電鉄(現東急)等を経て2009年に同社入社。取締役企画部長等を経て2023年2月より現職。 |
| 長泰治 | 専務取締役 | 1997年に同社入社。事業本部工事部長、事業本部長等を歴任し、2024年11月より現職。 |
社外取締役は、若松俊樹(弁護士・Saltus法律事務所開業)、込山雅弘(元JALUX社長)、村松高男(税理士・元高松国税局長)、樋川加奈(公認会計士・樋川公認会計士事務所開業)です。
2. 事業内容
同社グループは、「解体・メンテナンス事業」および「その他」事業を展開しています。
■解体・メンテナンス事業
解体・メンテナンス事業では、製鉄所や発電所、石油精製設備などの各種プラントをはじめ、一般建築物の解体・メンテナンス工事を手掛けています。顧客は各種プラントを有する大手企業であり、工法の提案から設計、施工管理、安全管理までエンジニアリング全般を提供しています。
収益源は、施主や元請け企業から受け取る解体工事の請負代金に加え、工事の進行に伴って発生するスクラップ等の有価物を業者に売却して得られる収入です。事業の運営は同社および連結子会社の矢澤などが担っており、独自の特許工法やAIを活用した高度な施工管理で収益化を図っています。
■その他事業
その他事業では、主に建設技能労働者の慢性的な人手不足に対応するための人材サービスなどを展開しています。プラント解体のトータルマネジメント強化を目的としており、全国規模のネットワーク拡充や調達機能の強化を推進しています。
収益源は、派遣社員や専門人材を必要とする顧客企業に対して、同社が雇用・教育した人材を派遣することで得られる人材派遣料やサービス提供料です。運営は同社および子会社のオダコーポレーションなどが連携して行っており、大規模な解体需要にも対応できる施工体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は一時的な落ち込みがあったものの、その後は大型工事の受注増などにより拡大基調にあり、直近では過去最高を更新しています。経常利益についても、一時的な赤字を計上した時期を乗り越え、独自工法の活用や選択受注による採算性の改善が奏功して回復傾向にあり、増収増益のトレンドを形成しています。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 60億円 | 55億円 | 94億円 | 109億円 | 111億円 |
| 経常利益 | 7.2億円 | -0.9億円 | 4.1億円 | 5.9億円 | 7.6億円 |
| 利益率(%) | 12.1% | -1.7% | 4.3% | 5.4% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13.9億円 | -0.6億円 | 2.3億円 | 4.1億円 | 7.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高はプラント解体工事の順調な進捗により前期から増加しています。また、積算体制の整備による見積精度の向上や採算性の高い工事の選択受注が進んだことで、売上総利益率は改善しました。営業支援等の費用増を吸収し、営業利益は前期比で大幅な増益となっています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 111億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.3% | 20.1% |
| 営業利益 | 3.7億円 | 7.4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が3.9億円(構成比26%)、株主優待引当金繰入額が0.8億円(同6%)を占めています。売上原価においては、完成工事原価の外注費が47億円(構成比53%)、経費が20億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である解体・メンテナンス事業は、豊富な受注残と積極的な人員採用による体制強化が寄与し、工事の施工が順調に進捗したことで増収増益を牽引しました。人材サービスを主体とするその他事業においても、営業先の拡大や派遣人員の増加により堅調な成長を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) | 利益(2025年1月期) | 利益(2026年1月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 解体・メンテナンス事業 | 106億円 | 108億円 | 18億円 | 22億円 | 20.0% |
| その他 | 3.0億円 | 3.2億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 21.6% |
| 連結(合計) | 109億円 | 111億円 | 19億円 | 22億円 | 20.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金と保有資産の売却等で得た資金を用いて、借入金の返済や株主還元を進める改善型の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -6.1億円 | 16.4億円 |
| 投資CF | 14.8億円 | 14.9億円 |
| 財務CF | -7.2億円 | -33.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」という企業理念を掲げています。プラント解体業界におけるリーディングカンパニーとして、顧客のニーズを的確かつ先見的に把握し、革新的な提案を行うことで環境関連企業として社会に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は従業員エンゲージメントを高め、柔軟な発想と創造性が発揮できる企業風土を醸成するため、全社員行動指針として「誇り(誇れる仕事をしよう)」「共創(共に創ろう)」「挑戦(挑戦を楽しもう)」を策定しています。ただ壊すのではなく、環境に配慮しつつ独創的な技術で美しく解体することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2031年1月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画「Leading the Future 中期経営計画 2030」を策定しています。インフラ老朽化やカーボンニュートラルといった社会課題に対し、解体業界を牽引する存在となることを目指しています。
・売上高:300億円以上
・営業利益:33億円以上
・ROE(株主資本当期純利益率):20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「脱炭素解体」の工法開発とAI活用により、プラント設備に関する知見を形式知化し、新たな解体工法の開発や環境負荷低減を図ります。また、プラント集積地域への新たな営業拠点開設による全国展開の加速や、有望な海外市場での市場調査や日系企業を通じたアプローチを実施し、さらなる成長基盤の構築を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は事業の発展に人材が不可欠であるとの考えから、人的資本を重視した経営を推進しています。各種制度の見直しを行い、従業員が働きやすい環境整備を進めるとともに、新卒や海外人材、女性施工管理職など多様な人材の獲得に注力し、ベテラン社員から若手への技術継承を行う教育プログラムの拡充も図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東証プライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 42.2歳 | 5.3年 | 6,538,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 67.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 50.3% |
また、同社は「指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の割合(17.0%)、施工管理職の離職率(5.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制や許認可の維持に関するリスク
同社は建設業法に基づき特定建設業許可を受けており、その他にも建設リサイクル法や労働安全衛生法、土壌汚染対策法など多様な法的規制の適用を受けています。コンプライアンスを徹底し規制の改廃にも対応できる体制を構築していますが、万が一法令違反等により許可の取消しや事業活動の制限を受けた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 設備投資動向と主要顧客への依存リスク
同社は製鉄や電力、ガス等の大手企業を主要顧客として安定した受注確保に努めています。老朽化に伴う解体需要は中長期的に増加が見込まれますが、顧客の設備投資計画が経済情勢等の変化で先送りされた場合や、主要顧客との関係悪化、受注競争の激化により営業基盤が損なわれた場合、受注の減少を通じて業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 工期延長や追加工事による工事原価増加のリスク
プラント解体工事は着工前に周到な調査や準備を行いますが、通常の建設工事とは異なり、土壌汚染や有害物質などの予期せぬ問題が着工後に判明することがあります。その結果、工期が延長されたり追加工事が発生したりした場合、施工計画の変更により同社の特許工法やノウハウが活用できず、工事採算の悪化を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。



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