トラース・オン・プロダクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トラース・オン・プロダクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トラース・オン・プロダクトは東京証券取引所グロース市場に上場しています。主にBtoB市場向けに、モノを起点としたSaaSサービスを提供するTRaaS事業や、IoT技術を用いた受注型Product事業などを展開しています。直近の業績は、売上高が増加した一方で経常損失を計上しています。


※本記事は、トラース・オン・プロダクトの有価証券報告書(第32期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トラース・オン・プロダクトってどんな会社?


BtoB市場向けに、モノを起点としたSaaSサービスやIoTソリューション事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1995年1月にアイ・ディー・ディーとして設立され、1997年にトランザスへ商号変更しました。2002年よりSTB(セットトップボックス)の開発と製造を開始し、2006年に本格的なIoT機器メーカーとしてスタートを切りました。2017年には東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2022年にトラース・オン・プロダクトへ商号を変更しています。

現在の従業員数は連結で25名、単体で25名です。筆頭株主は創業者の藤吉英彦氏であり、第2位はWORLD F PTE. LTD.(常任代理人 いちよし証券)、第3位は寺山隆一氏となっています。

氏名 持株比率
藤吉英彦 17.09%
WORLD F PTE. LTD. 9.11%
寺山隆一 3.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤吉英彦氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
藤吉英彦 代表取締役社長 1995年アイ・ディー・ディー(現トラース・オン・プロダクト)設立、代表取締役社長。さんぽ路取締役などを経て現職。
青栁貴士 取締役CFO 2004年アイ・ティー・シーネットワーク(現コネクシオ)入社。ヤフー、ニュース・サービス・センター等を経て2020年より現職。
鈴江泰仁 取締役 1998年東陽入社。JSP取締役、モデュレックス取締役などを経て2022年より現職。


社外取締役は、岡安俊英(岡安総合会計事務所所長)、佐々木豊(ビザライトワークス代表取締役)、原口昌之(原口総合法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「TRaaS事業」「受注型Product事業」「テクニカルサービス事業」を展開しています。

TRaaS事業


BtoB市場向けに、IoTソリューションと最適なモノの選定を行い、そのモノを起点としたSaaSサービスを提供しています。AI電力削減ソリューション「AIrux8」、店舗活性プロダクト「店舗の星」、デジタルサイネージプラットフォーム「CELDIS」などを展開しています。

同社が事業を運営しており、SaaSの月額利用サービスや運用・保守サポートなどによる継続的な役務提供を収益源としています。自社設計開発した製品と海外ネットワークを組み合わせることで価格競争力のある製品を提供しています。

受注型Product事業


IoT技術を用いた製品やソリューションの企画、設計、製造から運用、保守サポートまで一貫して提供しています。STB(セットトップボックス)やウェアラブル端末、コードレス呼び出しチャイムなどを顧客の要望に合わせて柔軟に提供しています。

同社ならびに子会社のアクスト東日本が事業を運営しています。同社製品に価値を付加して再販するパートナー企業(VAR)への製品販売を主な収益源とし、VARと協業することで様々なマーケットに販売経路を拡大しています。

テクニカルサービス事業


基幹業務システム等のアプリケーションソフトウェアの受託開発や、システム運用に必要なパソコンやサーバー等の提供とメンテナンスを行っています。また、ソフトウェアの保守に向けたエンジニア派遣サービスも提供しています。

同社が事業を運営しており、受託開発に基づく業務完了時の収益や、エンジニアの常駐型保守サービスによる収益を主な収入源としています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社は直近の2026年1月期より連結財務諸表を作成しています。TRaaS事業等での月額収益の本格化や子会社の新規連結に伴い売上高を確保した一方、一部大型案件の期ずれや開発工数の反動減等により、利益面ではマイナスを計上しています。

項目 2026年1月期
売上高 4.9億円
経常利益 -0.4億円
利益率(%) -7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円

(2) 損益計算書

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 - 4.9億円
売上総利益 2.4億円 2.2億円
売上総利益率(%) - 45.7%
営業利益 0.1億円 -0.4億円
営業利益率(%) - -7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が0.8億円(構成比29%)、役員報酬が0.7億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上動向を見ると、TRaaS事業はデジタルサイネージプラットフォームの大手店舗への設置完了により月額収益が本格化しました。受注型Product事業では子会社の新規連結が寄与した一方、一部大型案件の期ずれが発生しています。テクニカルサービス事業は前期の大型案件終了による反動減を受けています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
TRaaS事業 - 1.4億円
受注型Product事業 - 2.2億円
テクニカルサービス事業 - 1.2億円
連結(合計) - 4.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、IoT製品及びサービス・ソリューション開発への投資を支えています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた設備投資等に活用されます。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己資金、借入、社債発行、増資等により、運転資金及び設備投資を賄うための資金調達を行っています。

項目 2026年1月期
営業CF -0.3億円
投資CF -1.0億円
財務CF 0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様への“真の価値提供”を第一に モノづくりを通じVirtualとRealを融合 最適化した新しい社会の礎を創造する」を経営理念としています。モノは買う物からサービス提供に付帯するプラットフォームになるべきであり、モノの価値は物体価値ではなくサービス価値にあると考えて事業を展開しています。

(2) 企業文化


同社グループは、本当に求められる製品をゼロから組み上げられる「調合士」であることを自認しています。顧客の要望に柔軟に対応するためソフトウェア開発を内製化し、垂直統合型のビジネスを展開することで、顧客の価値を最大化する最善のソリューション提案を単独で行える組織文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中長期的に継続した成長を実現し、企業価値の最大化を図ることを目標としています。営業活動の質的向上と効率化を通じた新規顧客の開拓や既存顧客の深耕を進めることで、グループ全体の収益最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、販路拡大に向けた専門パートナーとの協業や他企業との業務提携を推進しています。また、既存製品向けのソフトウェアを他分野に応用する横展開を進め、研究開発の強化による開発スピードの向上とリードタイム短縮化を図ることで、多様な顧客ニーズに迅速に対応する戦略を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


今後の更なる成長に向け、開発部門や営業部門を中心に優秀な人材の確保と育成を重要な課題と認識しています。既存社員の能力底上げと定着を図るための社内教育の拡充や、人事評価・報酬制度の見直しを進めるとともに、個々のポテンシャルを最大限に発揮できる就業環境の最適化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 42.8歳 8.6年 6,448,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向及び業績変動に関するリスク

同社が展開するIoT製品やSaaSサービスは、IoTソリューションやデジタルサイネージ、SaaS市場の動向に影響を受けます。技術革新による製品の陳腐化や景気低迷による市場悪化、また特定案件への売上依存による四半期ごとの業績変動がリスクとなります。

(2) 知的財産権及び情報管理に関するリスク

製品の製造・販売には複数社のソフトウェアライセンスを利用しており、使用条件の変更が業績に影響する可能性があります。また、ネットワークに依存したサービス運営において、サイバー攻撃や情報漏洩、第三者の知的財産権の意図せぬ侵害が発生した場合、社会的信用の失墜を招く恐れがあります。

(3) 開発及び生産体制への依存に関するリスク

高度な技術力が求められるため、新規技術の研究開発成果が必ずしも収益に結びつかないリスクや、開発の長期化による費用増大の懸念があります。また、製品生産の多くを中国の委託先に依存しており、特定地域での規制変更や予測不能な事態が供給体制に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。