トラース・オン・プロダクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トラース・オン・プロダクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。IoTソリューションやSaaS事業を展開。直近決算では、TRaaS事業におけるSaaSサービスの伸長やホスピタリティ市場の回復に伴う受注増により、増収および各段階利益の黒字化を達成しています。


※本記事は、株式会社トラース・オン・プロダクト の有価証券報告書(第31期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トラース・オン・プロダクトってどんな会社?


IoTデバイスの企画・開発から製造、SaaS提供までを一貫して行う「モノづくり4.0」企業です。

(1) 会社概要


1995年に有限会社アイ・ディー・ディーとして設立され、1997年に株式会社トランザスへ商号変更しました。2017年に東証マザーズへ上場を果たし、2020年には株式会社ピースリーを吸収合併して同社へ商号変更しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証グロース市場へ移行し、同年現在の社名である株式会社トラース・オン・プロダクトへと変更しています。

同社(単体)の従業員数は24名です。筆頭株主は創業者の藤吉英彦氏で、第2位はシンガポールに拠点を置く法人です。

氏名 持株比率
藤吉 英彦 17.10%
WORLD F PTE. LTD. 9.22%
寺山 隆一 3.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤吉英彦氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤吉 英彦 代表取締役社長 1995年1月有限会社アイ・ディー・ディー(現同社)を設立し社長に就任。以後、グループ会社の役員を歴任し、2012年には北京大学EMBAコースを修了。現職。
青栁 貴士 取締役CFO アイ・ティー・シーネットワーク、ヤフー、シーエー・モバイルを経て、ニュース・サービス・センター取締役等を歴任。2020年4月より現職。
鈴江 泰仁 取締役 東陽に入社し、海外拠点のVice Presidentや株式会社JSP取締役、株式会社モデュレックス取締役を経て、2022年4月より現職。


社外取締役は、岡安俊英(岡安総合会計事務所所長)、佐々木豊(株式会社ビザライト代表取締役)、原口昌之(英和法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「TRaaS事業」「受注型Product事業」および「テクニカルサービス事業」を展開しています。

(1) TRaaS事業


BtoB市場向けにIoTソリューションと最適なモノを選定し、それを起点としたSaaSサービスを提供しています。具体的には、AI電力削減ソリューション「AIrux8」、店舗DXプロダクト「店舗の星」、デジタルサイネージプラットフォーム「CELDIS」などを展開しています。

収益は、顧客からのサービス利用料(月額課金等)やシステム導入費用などから得ています。運営は主にトラース・オン・プロダクトが行っています。

(2) 受注型Product事業


IoT技術を用いた製品・ソリューションの企画、設計、製造から運用・保守までを垂直統合型で提供しています。顧客(付加価値再販パートナーなど)の要望に応じ、STB(セットトップボックス)やウェアラブル端末などのハードウェアを柔軟に開発・提供します。

収益は、顧客への製品販売代金や保守サポート料などから得ています。運営は主にトラース・オン・プロダクトが行っています。

(3) テクニカルサービス事業


基幹業務システム等のアプリケーションソフトウェア受託開発や、システム運用に必要な機器の提供・メンテナンスを行っています。また、開発したシステムやソフトウェアの保守、エンジニア派遣サービスも提供しています。

収益は、顧客からの受託開発費、システム保守料、エンジニア派遣料などから得ています。運営は主にトラース・オン・プロダクトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年1月期から2025年1月期にかけて、売上高は増加し、各利益段階において損失から黒字へと転換しました。直近の2025年1月期では、売上高が4.1億円となり、経常利益および当期純利益ともにプラスを確保しています。利益率も改善傾向にあり、業績の回復基調が見て取れます。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 3.1億円 4.1億円
経常利益 -0.8億円 0.1億円
利益率(%) -24.6% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.9億円 0.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は50%台後半を維持しており、高い収益性を確保しています。販管費は高水準で推移していますが、増収効果により営業利益は前期の赤字から黒字へと転換しました。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 3.1億円 4.1億円
売上総利益 1.7億円 2.4億円
売上総利益率(%) 54.6% 58.5%
営業利益 -0.7億円 0.1億円
営業利益率(%) -22.4% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が0.7億円(構成比30%)、給料手当が0.6億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しています。特にテクニカルサービス事業が売上・利益ともに最大規模となり、業績を牽引しました。TRaaS事業は売上増ながら利益減となりましたが、受注型Product事業はインバウンド需要の回復等を背景に増収増益となり、全社的な黒字化に貢献しています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
TRaaS事業 0.8億円 0.9億円 0.4億円 0.6億円 63.7%
受注型Product事業 1.0億円 1.3億円 0.7億円 0.8億円 62.3%
テクニカルサービス事業 1.3億円 1.9億円 0.6億円 1.0億円 53.4%
連結(合計) 3.1億円 4.1億円 1.7億円 2.4億円 58.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF -0.7億円 0.3億円
投資CF -0.5億円 -0.5億円
財務CF 0.7億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様への“真の価値提供”を第一に モノづくりを通じVirtualとRealを融合 最適化した新しい社会の礎を創造する」を経営理念としています。モノの価値は物体そのものではなくサービス価値にあると考え、本当に求められる製品をゼロから組み上げる「調合士」として、社会が待ち望むサービス価値の提供を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「モノづくり4.0」を掲げ、モノを買う対象からサービス提供のプラットフォームへと進化させることを重視しています。ファブレス型での自社設計開発や海外ネットワークの活用、ソフトウェアの内製化を通じて、顧客の要望に柔軟に対応し、機能最適化と低コスト化を両立させる垂直統合型のビジネスモデルを強みとしています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的に継続した成長と企業価値の最大化を目指しており、具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、販路の拡大や収益の最大化、顧客満足度および品質の向上を重要な経営課題として挙げています。また、内部統制やガバナンスの強化、優秀な人材の確保と生産性の最大化にも取り組んでいく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


BtoB市場におけるIoTソリューションの潜在顧客獲得を狙い、Webマーケティングやオウンドメディア構築による認知拡大・リード獲得を推進しています。また、開発したソフトウェアを他分野へ横展開することで開発効率を高め、多様な顧客ニーズに対応する方針です。さらに、パートナー企業との協業や業務提携を通じ、提案から導入サポートまで一貫した体制を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


今後の成長のために、開発および営業部門を中心に優秀な人材の育成を重要課題と認識しています。既存社員の能力底上げと定着を図るため、社内教育の拡充や人事評価・報酬制度の見直しを行います。また、個々のポテンシャルを最大限発揮できるよう、就業環境の最適化やスライドワーク制度導入など、働きやすい環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 43.4歳 7.4年 6,287,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向及び業績変動


同社の事業はIoTソリューションやデジタルサイネージ、SaaS市場の動向に影響を受けます。景気低迷や技術革新による製品陳腐化が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、売上規模の大きい案件への依存により、検収時期によっては四半期ごとの業績が大きく変動するリスクがあります。

(2) 為替変動の影響


IoT製品の製造委託や一部の販売において海外取引を行っており、米ドルを中心とした外貨建て取引が多くを占めています。為替変動リスクの軽減策は講じていますが、急激な変動があった場合、同社の事業や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 小規模組織と特定人物への依存


同社は小規模な組織体制であり、内部管理体制もその規模に応じたものとなっています。人員増強や人材育成が進まない場合、事業拡大が制約を受ける可能性があります。また、創業者である代表取締役社長への依存度が高く、同氏の業務遂行が困難になった場合、経営方針や事業戦略に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。