ベルトラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベルトラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ベルトラは東京証券取引所グロース市場に上場し、世界150か国の現地体験型オプショナルツアー専門のオンライン予約サイト「VELTRA」の運営や観光IT事業を展開しています。インバウンド需要の急回復やコスト管理の徹底により、直近の業績は増収増益となり、コロナ禍以降5年ぶりに黒字転換を達成しました。


※本記事は、ベルトラ株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ベルトラってどんな会社?


同社グループは、世界中の現地体験ツアーをオンラインで予約できるサービスを中心に展開しています。

(1) 会社概要


1991年にアランとして設立され、2004年に現地体験ツアー予約サイトの本格稼動を開始しました。2012年にブランド名を現在の名称に変更するとともにベルトラへ商号変更し、2018年に株式を上場しました。2020年には子会社を設立し、観光関連のチケットプラットフォーム事業も開始しています。

現在の従業員数は連結で242名、単体で141名です。筆頭株主は創業者関連の資産管理会社であるPaxalan S.à r.l.で、第2位は旅行比較サイトを運営するオープンドア、第3位は個人の永島徹三氏となっています。

氏名 持株比率
Paxalan S.à r.l. 24.56%
オープンドア 14.61%
永島徹三 4.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは二木渉氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
二木渉 代表取締役社長兼CEO 1989年IWANAGA入社。パックプラスを経て2004年同社入社。海外事業本部長等を経て2015年より現職。
倉上智晴 取締役HR&General Affairs Division Director 1994年サンクレスト入社。オカベマーキングシステム等を経て2001年同社入社。執行役員等を経て2017年より現職。
皆嶋純平 取締役CFO兼Headquareters Division Director 1993年明治製菓入社。プレンティー等を経て2016年同社入社。経営管理部長等を経て2022年より現職。


社外取締役は、カスバートロドニー(Viator創業者)、池田哲司(元セガゲームス監査役)、鈴木学(弁護士)、毛利正人(大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「OTA事業」および「観光IT事業」などを展開しています。

(1) OTA事業


国内および世界150か国の現地体験型オプショナルツアー専門のオンライン予約サイト「VELTRA」や、ハワイに特化した英語サイトを運営しています。世界中の約8,000社の催行会社と直接契約し、観光ツアーから文化体験、マリーンスポーツまで幅広いジャンルの商品を提供しています。

主な収益源は、予約成立に応じて現地のツアー催行会社から受け取る手数料収入です。収入額はツアー代金や手数料率、予約数によって決定されます。この事業は主に同社および海外子会社のVELTRA Inc.などが運営を行っています。

(2) 観光IT事業


交通や観光関連事業者に向けて、ITインフラやチケットプラットフォームを提供する事業です。国内外のオンライン旅行事業者や対面対応の旅行事業者など、1万社以上の旅行関連企業に対してB2B2C向けのシステムやサービスを供給しています。

事業者へのプラットフォーム提供を通じた取引手数料や、QR改札機導入支援などのシステム関連収益が主な収入源となります。この事業は主に連結子会社のリンクティビティおよびLinktivity Korea Inc.が運営を行っています。

(3) その他事業


報告セグメントに含まれない新規事業などを展開しています。

新規事業などによる収益が計上されています。同事業は主に同社が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、新型コロナウイルスの影響により数年にわたって経常損失と当期純損失を計上する厳しい経営環境が続いていました。しかし、継続的なコスト管理とインバウンド需要の回復により、直近の事業年度では黒字転換を果たし、収益性の抜本的な改善に向けた構造改革が着実に成果を上げていることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 - - - - -
経常利益 -11億円 -8億円 -1億円 -3億円 1億円
利益率(%) - - - - -
当期利益 -11億円 -8億円 -2億円 -4億円 3億円

(2) 損益計算書


売上に関する数値の記載はありませんが、営業利益は前期のマイナスから1億円の黒字へと大きく改善しています。事業環境の回復に加えて、徹底したコスト管理やオペレーションの効率化が利益体質の改善に寄与したと考えられます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 -2億円 1億円
営業利益率(%) - -

(3) セグメント収益


主力であるOTA事業は、広告費のコントロールなど収益性を優先した施策を進めつつ、国内旅行やインバウンド商品の好調により堅調な推移を見せています。また、観光IT事業は、インバウンド旅行者の増加を背景にチケットプラットフォーム事業が大きく伸長し、グループ全体の収益成長を牽引する柱として飛躍的な伸びを示しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
OTA 36億円 37億円
観光IT 7億円 9億円
その他 0.2億円 0.4億円
連結(合計) 43億円 46億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」の傾向を示しており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 5億円 9億円
投資CF -4億円 -4億円
財務CF 14億円 -


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人を想い、人に寄り添うことでよりよい世界を実現する」を企業ビジョンとして掲げています。旅行者や取引先など同社グループに関わる全ての人たちの発展と繁栄を目指し、共に成長する共存共栄の精神で観光産業をリードするとともに、世界各地から奥深い魅力ある体験を世界中の旅行者に届けることを使命としています。

(2) 企業文化


取扱う商品情報の正確性と品質・安全性に責任を持ち「ベルトラが扱う商品だから」と常に信頼されるサービスの実現を目指すという価値観を持っています。また、個の成長が組織の活性化に直結する仕組みづくりを掲げ、社員一人ひとりが「ワクワク」と挑戦できる環境を整備し、グループ全体の企業価値を最大化する文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


営業収益成長率ならびに営業利益率を重要な指標としています。また、中長期的な目標として、連結ROEを60%、連結当期純利益を40%の比率で評価する業績連動型株式報酬制度を導入し、資本コストや株価を意識した経営の実現を目指しています。高効率経営の実現と利益成長の加速を最優先の課題として取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


主力であるOTA事業の収益拡大を推進するとともに、AIをはじめとする先端技術を活用したオペレーションの効率化による生産性向上を図ります。

・現地催行会社との緊密なパートナーシップによるユニークな体験商品の開発
・システム連携による予約プロセスの即時性向上
・蓄積された顧客データに基づくAI活用の内製化とパーソナライズ・サービスの提供

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の拡充と組織変革」をテーマに掲げ、全社戦略の実現に向けた組織再編や成果主義の徹底を図っています。「Work From Anywhere」を生産性向上のための戦略的手段として再定義し、優秀な人材の獲得と労働生産性の向上を両立させています。また、AI活用等の実践的テーマを学ぶ「ベルトラカレッジ」を通じ、社員の自律的キャリア開発を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.4歳 5.6年 5,860,612円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 108.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害や地政学的リスクの顕在化


現地体験ツアーは主に海外で行われるため、現地の自然災害、テロ、紛争等によりツアー実施が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、日本国内の災害等による旅行需要の急減や、ツアー中の事故に伴う風評被害も重大なリスクと認識し、事業継続計画(BCP)の策定と運用を徹底しています。

(2) 検索エンジンの仕様変更と競争激化


同社グループはオンライン旅行サービスを主力としているため、検索エンジンの仕様変更による集客への影響や、強力な資本力を持つ他社の参入による競争激化がリスクとなります。これに対し、現地催行会社とのパートナーシップ強化や独自性の高い商品開発を進め、グローバル市場における競争力の維持・向上に努めています。

(3) システム障害やサイバー攻撃の発生


事業の大部分がインターネット環境に依存しているため、ITインフラの障害やサイバー攻撃、個人情報の流出によるサービス停止や信用失墜のリスクがあります。過去の子会社の資金流出事案も重く受け止め、クラウド化の推進やシステムの常時監視、グループ共通の情報セキュリティ・ガバナンス体制の高度化に取り組んでいます。

(4) 海外展開や為替変動による影響


海外商品を主力として取り扱うため、ツアー催行会社への外貨建決済において為替変動の直接的な影響を受けます。また、グローバルな事業拠点での法規制の変更や政治情勢の悪化も事業運営の支障となる可能性があります。為替予約取引によるリスクヘッジや、現地の専門家との情報共有を通じて、これらのリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。