※本記事は、株式会社あさくまの有価証券報告書(第53期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あさくまってどんな会社?
「ステーキのあさくま」を主力とするレストラン事業を展開し、食を通じたコミュニティの場を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1954年設立の合資会社を前身とし、1962年にステーキレストラン1号店を開店しました。1973年に現在のあさくまへ社名変更し、チェーン展開を開始。2006年にテンポスバスターズ(現テンポスホールディングス)と資本提携し、2019年にJASDAQ(現スタンダード市場)へ株式上場を果たしました。
現在の従業員数は単体で156名です。筆頭株主は親会社のテンポスホールディングスで、第2位はあさしお、第3位は近藤裕貴氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| テンポスホールディングス | 62.15% |
| あさしお | 6.45% |
| 近藤裕貴 | 2.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は廣田陽一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 廣田 陽一 | 代表取締役社長 | 2008年テンポスバスターズ入社。各エリアマネージャーや営業部長を歴任後、ドリームダイニング社長を経て、2022年6月より現職。 |
| 清水 一成 | 代表取締役会長 | 1991年プロントコーポレーション入社。イートアンド執行役員やアールベイカー社長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 森下 篤史 | 取締役 | 1992年テンポスホールディングス設立。あさくま代表取締役等を歴任。現在テンポスホールディングス代表取締役社長と兼務し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、平間律子(ベースシステム代表取締役会長)、藤田和久(グランエンジニアズ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飲食事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
ファミリー層をターゲットとした郊外型レストラン「ステーキのあさくま」を展開しています。和牛や豪州産牛などのこだわりの肉を使用したステーキやハンバーグに加え、新鮮なサラダバーを提供しています。そのほか、もつ焼き居酒屋「エビス参」やカレー専門店「カレーのあさくま」なども運営しています。
収益源は、主に直営店における顧客からの飲食代金およびフランチャイズ(FC)加盟店からのロイヤリティや原材料の販売代金です。事業の運営はあさくまが単体で行っており、東海地区を基盤として関東地区、関西地区へと店舗展開を進め、直営店74店舗とFC加盟店4店舗をあわせた計78店舗を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響から回復し、直近では100億円を突破する右肩上がりの成長を見せています。利益面では一時赤字を計上したものの、原価管理や不採算店舗の見直し等により黒字転換を果たし、経常利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 52.5億円 | 62.0億円 | 61.0億円 | 83.5億円 | 100.5億円 |
| 経常利益 | 4.5億円 | 0.5億円 | 1.8億円 | 1.8億円 | 5.3億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 0.7% | 3.0% | 2.2% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | -0.1億円 | 1.3億円 | 5.7億円 | 3.3億円 |
■(2) 損益計算書
客単価の向上や積極的なイベント施策により売上高が堅調に推移しています。また、食材の仕入価格交渉などの原価管理を徹底したことで売上総利益率が上昇し、営業利益も前年から大幅に増加し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83.5億円 | 100.5億円 |
| 売上総利益 | 46.2億円 | 56.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 55.4% | 56.1% |
| 営業利益 | 1.8億円 | 5.2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が20.0億円(構成比39%)、地代家賃が8.1億円(同16%)、水道光熱費が4.4億円(同9%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いながら、投資も手元資金で賄う健全型の財務状態を示しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.1億円 | 8.8億円 |
| 投資CF | -2.9億円 | -4.2億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | -0.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
食を通じてコミュニティの場を提供するとともに、従業員にとっての自己実現の場を提供し、企業として市場の需要への対応、市場において競争力を確保、社会から信用されることを経営の基本理念としています。株主をはじめとする社会の期待に応えるべく、事業の運営と発展に努めています。
■(2) 企業文化
いかなる従業員であっても「誇りのある職場づくり」を志すことを基本方針としています。クオリティの高いサービスおよび商品を提供できる店舗づくりに日々心掛け、徹底したコスト管理と品質の高いサービスの提供に取り組む文化が根付いています。また、お客様と従業員の境界線をなくす「カンタレス経営」も実践しています。
■(3) 経営計画・目標
高い収益性を維持し企業価値を向上させていくため、原価率の低減やコスト管理に努めています。事業活動の成果を図ることができる「売上高前期比率」「売上総利益率」「総人件費対売上高比率」「売上高」並びに「経常利益」を重要な経営指標として掲げ、持続的な成長を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
東海地区を基盤としつつ、関東・関西地区への出店を拡大し、3年後には売上高200億円を目指します。既存店のブランドイメージを向上させる改装や、小規模スペースでも展開可能な「カレーのあさくま」などの新業態の開発にも注力しています。
* QSCや生産性向上のための人材教育と仕組みづくり
* 商品施策・サラダバーの充実と衛生管理の向上
* 積極的な新規出店や既存店舗のブラッシュアップ
* 新業態の開発・展開による顧客基盤の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
優秀な人材の確保と社内での教育推進を持続的成長に不可欠と位置づけています。店舗運営に必要なスキルをサポートする体制を整え、性別や国籍に関係なく適切な人員配置を実施しています。また、外国人採用では即戦力として活躍できる環境を整備し、意欲的な社員には積極的にチャレンジの機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 38.1歳 | 3.7年 | 4,020,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 119.8% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の目標(2029年度までに30%以上)、特定技能外国人の採用実績(延べ54名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の高騰
牛肉などの原材料は為替相場の変動や国内外の需要増大により仕入価格が高騰する可能性があります。仕入コストが増加し、安定的な数量の確保が困難になった場合、同社の経営成績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 店舗物件の確保と人件費増加
居抜き物件を活用した出店を進めていますが、条件に見合う物件が確保できない場合、成長計画に支障をきたす可能性があります。また、パート従業員への依存度が高く、最低賃金の上昇等による人件費の急激な増加が収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 親会社が支配権を有することに伴うリスク
親会社であるテンポスホールディングスが同社の発行済株式の過半数を所有しています。取締役の選任・解任や重要な事業譲渡など、基本的事項の決定権に対して他の株主の意向に関わらず親会社が影響を与える可能性があります。



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