ジェイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイックは東京証券取引所グロース市場に上場し、20代のフリーターや第二新卒を対象とした教育融合型人材紹介サービスなどを展開しています。直近の業績は、売上高が約45億円と増収となった一方、人材採用や集客に係るコスト増加などの影響により経常利益は約1.9億円で減益の増収減益トレンドとなっています。


※本記事は、株式会社ジェイックの有価証券報告書(第35期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイックってどんな会社?


ジェイックは、若年層の就職支援に教育ノウハウを融合させた人材紹介サービスを強みとする企業です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、2005年に20代未就業者向けの教育融合型人材紹介サービスを開始しました。2011年には大学4年生向けの支援も開始し、2019年に東京証券取引所マザーズへ上場しています。近年はキャリア面談プラットフォームや合同企業説明会を展開する企業のM&Aを進め事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で289名、単体で228名体制で事業を展開しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は代表取締役の資産管理会社であるエンスーで、第2位は創業者の佐藤剛志氏、第3位は個人の山本太氏となっており、経営陣やその関連会社が株式の過半数を保有する安定した経営基盤を持っています。

氏名 持株比率
エンスー 53.05%
佐藤剛志 12.36%
山本太 2.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.0%です。代表取締役兼執行役員社長は佐藤剛志氏が務めています。社外取締役の比率は16.6%(6名中1名)です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤剛志 代表取締役兼執行役員社長 1986年日本エル・シー・エー入社。1996年エンスー代表取締役。1997年ジェイック取締役を経て、2000年代表取締役。2024年4月より現職。
近藤浩充 取締役兼常務執行役員Human Growth Division 部長 1994年パーソナル情報システム入社。2005年ジェイック執行役員、2013年取締役、2015年常務取締役を経て、2024年4月より現職。


社外取締役は、高須恵一(元富士通ホーム&オフィスサービス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「New Career Business」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) New Career Business


中堅中小企業に対し、フリーターや第二新卒、大学中退者など「就職ポテンシャル層」に教育機会を提供したうえで紹介する教育融合型人材紹介サービス「就職カレッジ」を展開しています。無料の就職支援講座と人材紹介を組み合わせ、集団面接会を通じて効率的なマッチングの場を提供している点が特徴です。

就職・採用をゴールとせず、入社前研修から入社後1年にわたる定着・活躍支援プログラムを提供しています。主な収益源は求職者が入社した際に企業から受け取る紹介手数料であり、本事業の運営は主にジェイックが行っています。

(2) First Career Business


大学4年生を専門に人材紹介を行う「新卒カレッジ」や、適性診断を基にした求人サイト「Future Finder」、さらに大学3年生向けの合同企業説明会を提供しています。全国の大学や大学生協と提携し、就職活動の時期に応じて複数の支援サービスを使い分けるチャネル展開が強みです。

収益源は、求職者の内定承諾時に企業から受け取るコンサルティング対価や、合同企業説明会に参加する企業からの出展料・運営費などです。事業の運営は、ジェイックおよび合同企業説明会を担う子会社のキャンパスサポートが主に行っています。

(3) Human Growth Businessその他


中堅中小企業や一部大手企業を対象に、「7つの習慣」や「原田メソッド」、「デール・カーネギー・トレーニング」などのパッケージ研修、若手社員の定着・活躍を支援する「エースカレッジ」などをインハウス型やオープンセミナー型で提供しています。また、キャリア面談のプラットフォーム事業も展開しています。

主な収益源は、企業から受け取る各種研修・教育・コンサルティング業務の実施対価や、適性診断の販売代金、キャリア面談サービスの利用料などです。運営はジェイックが主体となり、キャリア面談プラットフォーム事業は子会社のKakedasが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、着実な事業拡大の傾向がうかがえます。一方、利益面では年度によってばらつきがあり、先行投資や採用市場の変化に伴うコストの増減が経常利益や最終利益の変動要因となっていることが読み取れます。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 25.9億円 32.1億円 36.8億円 41.9億円 44.8億円
経常利益 1.1億円 2.2億円 0.6億円 2.4億円 1.9億円
利益率(%) 4.2% 7.0% 1.6% 5.6% 4.3%
当期利益 0.9億円 1.6億円 0.5億円 1.8億円 1.6億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、原価や販売費及び一般管理費の増加幅が売上の伸びを上回ったため、営業利益は減少しました。売手市場化が進む中で求職者を獲得するための投資などが影響しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 41.9億円 44.8億円
売上総利益 36.1億円 37.3億円
売上総利益率(%) 86.1% 83.3%
営業利益 2.4億円 2.0億円
営業利益率(%) 5.7% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が12.5億円(構成比35.4%)、販売促進費が6.2億円(同17.6%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金と借入を組み合わせて、積極的な投資活動を行っている状態です。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 4.2億円 3.7億円
投資CF -2.3億円 -1.1億円
財務CF 1.2億円 1.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「可能性を羽ばたかせる」をミッションに、「強みが輝く世界をつくる」をビジョンに掲げています。これまでの実績や経験を通じて「人と組織の可能性は無限である」と確信し、一人でも多くの雇用を生み出し、一人でも多くのビジネスパーソンの人生が輝き、一社でも多くの中堅中小企業が「いい会社」と呼ばれる存在になるために尽力することを理念としています。

(2) 企業文化


同社は、国籍や学歴、年齢、性別等に関わらず多様な人材を採用し、互いを理解・尊重しながら高めあえる企業風土の醸成を重視しています。全社員を対象とした「7つの習慣」研修を通じた相互理解や、「ストレングス・ファインダー」研修により個人の強みにフォーカスすることの重要性を共有しており、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を支援しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、人的資本経営を重視し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために以下のサステナビリティ関連の指標と2027年1月期の目標数値を設定しています。

・女性管理職比率:35%
・産・育休からの復帰率:100%
・ストレスチェック受診率:100%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、教育ノウハウを磨き教育融合型人材紹介サービスの価値を保ちつつ、オンライン化による求職者支援とオフライン回帰のニーズへの対応を進めています。マーケティング施策の強化により求職者の獲得コストを抑制するとともに、M&Aでグループジョインした各社とのシナジー発揮や、人材の確保・育成、情報管理体制の維持強化を重点施策として事業規模の拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッションやビジョンに共感した人材を採用し、人と組織に貢献できるように育成を図ることを人材戦略の基本としています。キャリア研修や定期的なアンケート、キャリア相談プラットフォームの活用により従業員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、ブラザーシスター制度や多様な働き方を支える制度、不妊治療支援などを通じて、働きやすく働きがいのある環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 35.2歳 7.8年 5,188,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 31.6%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 70.6%
男女賃金差異(正規雇用) 83.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、産・育休からの通算の復帰率(100.0%)、法定の健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受診率(99.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材サービス市場の動向と競争激化


人材サービス業界は景気動向や雇用情勢の影響を受けやすく、企業の採用意欲の減退は業績に直接的な影響を及ぼします。また、若年層に特化した競合他社が存在する中、新規参入や他社による教育融合型サービスへの参入が生じた場合、競争の激化により同社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 検索エンジン等の求職者集客への依存


採用支援サービスでは継続的な求職者の集客が重要であり、同社は検索エンジンからの流入に一定割合を依存しています。検索エンジンのロジック変更や、インターネット広告の費用対効果の低下が生じた場合、求職者の集客効果が低下し、マッチング機能の低下や広告費用負担の増加を招く可能性があります。

(3) M&Aに伴う事業展開リスク


同社は事業拡大のため、シナジーが見込まれる企業のM&Aを検討・実施しています。事前の調査や計画立案に努めているものの、買収した事業が計画通りに展開できず投下資金の回収ができない場合や、追加的な費用が発生した場合には、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。