アセンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アセンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アセンテックは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、仮想デスクトップを中心としたITインフラ事業を展開しています。情報セキュリティやテレワーク需要を背景に自社製品やサービスが好調に推移し、直近の業績は売上高173億円、経常利益29億円と大幅な増収増益を達成、成長を続けています。


※本記事は、アセンテック株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. アセンテックってどんな会社?


仮想デスクトップ環境の構築や専門エンジニアによる技術支援を手掛けるITインフラ企業です。

(1) 会社概要


同社は2009年にエム・ピー・ホールディングスの新設分割子会社として設立され、仮想デスクトップ関連製品・サービスの販売を開始しました。2012年にアセンテックへ社名変更し、2016年には仮想デスクトップ専用サーバ「リモートPCアレイ」の自社販売を始めました。2017年の株式上場を経て、2024年にはCloud Software Groupと資本業務提携を結ぶなど事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で177名、単体で88名となっています。筆頭株主は資本提携先であり投資業を営む合同会社ルビィで、第2位は創業メンバーであり取締役会長を務める佐藤直浩氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
合同会社ルビィ 23.26%
佐藤直浩 6.99%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は松浦崇氏が務めています。社外取締役は5名選任されており、取締役会の過半数(71.4%)を占めています。

氏名 役職 主な経歴
松浦崇 代表取締役社長 日本ユニシス(現BIPROGY)、シトリックス・システムズ・ジャパン等を経て、2006年に入社。2009年に取締役、2013年に取締役副社長を務め、2023年4月より現職。
佐藤直浩 取締役会長 日本テキサス・インスツルメンツ、日本アイ・ビー・エムを経て、2006年に入社し取締役社長に就任。2009年に同社代表取締役社長を務め、2023年4月より現職。


社外取締役は、萬歳浩一郎氏(アイサット代表取締役社長など)、彭雅秀氏(スプレンデオ代表取締役)、松田英典氏(元ビジネス・コンシェルジュ代表取締役社長)、吉井清氏(吉井公認会計士事務所所長)、高谷英一氏(ニューグラス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITインフラ事業」の単一セグメントにおいて、3つの事業領域を展開しています。

(1) 仮想デスクトップ事業


デスクトップ環境をサーバ側に集約し、ネットワークを介して配信する仮想デスクトップや、セキュリティに特化したシンクライアント端末を提供しています。また、導入検討時のコンサルティングから設計・構築、保守・運用までの一貫した技術支援サービスも手掛けています。

収益源は、海外メーカー製品や自社開発製品の販売代金、および専門エンジニアが提供する技術支援サービスに対する対価です。販売にあたっては、同社からシステムインテグレータを経由してエンドユーザー企業へ提供される形態が主流となっています。

(2) クラウドインフラ事業


IT利用の多様化に伴うパフォーマンス課題を解決するため、高性能なサーバやストレージをクラウドインフラとして提供しています。また、ハイパーバイザー不要で初期導入コストや構築期間を削減できる仮想デスクトップ専用の自社企画サーバ「リモートPCアレイ」を展開しています。

収益源は、ハードウェア製品やソフトウェアの販売代金です。特に「リモートPCアレイ」は同社が仕様の起案・開発を行い、台湾企業での製造を経て国内で独占販売を行っており、製品の販売に伴う収益を獲得しています。

(3) ゼロトラストセキュリティ事業


クラウドサービスやモバイルデバイスの普及により、従来の境界型防御だけでは防ぎきれないサイバー攻撃に対応するため、現代の柔軟なIT環境に適した安全性を実現する新たなゼロトラストセキュリティソリューションを提供しています。

収益源は、情報資産を保護するための自社専用クライアント「SaaS Secure Client」や、海外の大手データセキュリティ企業であるForcepoint社のプラットフォーム製品の販売による収益です。同社および子会社が製品の提供を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績は、売上高が62億円から173億円へと大幅な増収を記録しています。利益面でも、経常利益が7億円から29億円へと急激に成長しており、利益率も16.8%と高い水準に改善するなど、強い成長トレンドを描いています。

項目 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期
売上高 62億円 146億円 173億円
経常利益 7億円 12億円 29億円
利益率(%) 11.3% 8.4% 16.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 9億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益は17億円から41億円へと増加し、売上総利益率も11.7%から23.5%へと大きく向上しています。また、営業利益も9億円から28億円へと拡大し、高い収益性を確保しています。

項目 2025年1月期 2026年1月期
売上高 146億円 173億円
売上総利益 17億円 41億円
売上総利益率(%) 11.7% 23.5%
営業利益 9億円 28億円
営業利益率(%) 6.0% 16.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3.7億円(構成比30%)、支払手数料が2.6億円(同22%)を占めています。また、売上原価の多くは商品売上原価が占めますが、サービス売上原価の内訳では労務費(39%)や外注費(35%)が高い比率となっています。

(3) セグメント収益


同社の事業はITインフラ事業の単一セグメントですが、提供形態別に商品とサービスに分かれています。商品売上高が主力であり順調に拡大を牽引しているほか、専門エンジニアによる技術支援などのサービス売上高も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年1月期) 売上(2026年1月期)
商品売上高 126億円 152億円
サービス売上高 20億円 21億円
連結(合計) 146億円 173億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)にあります。

項目 2025年1月期 2026年1月期
営業CF 36.4億円 66.1億円
投資CF -1.2億円 -80.9億円
財務CF 2.6億円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「簡単、迅速、安全に!お客様のビジネスワークスタイルの変革に貢献する。」を経営理念として掲げています。最先端のITソリューションを常に追い求め、顧客に利便性向上とセキュリティ強化を実現する製品やサービスをお届けすることで、持続可能な社会の実現に積極的な役割を果たしていくことを目指しています。

(2) 企業文化


社員のコミットメントとして、「チームワーク」「即応性」「スキル」「フェアネス」「コスト意識」の5つを重視しています。部署が一丸となる組織力や、迅速かつ公正な意思決定、継続的な技術スキルの習得を奨励するとともに、コスト意識を持って無駄を排除し、お客様目線に立った事業展開を重んじる文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、売上高および経常利益を重要な目標として位置づけています。自社製品の開発や継続収入ビジネス(ストックビジネス)の拡大を図り、技術的付加価値の高い製品やサービスを提供することで、これらの指標を継続的に向上させ、利益成長を実現していく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画として「価値創造を軸にした製品力強化と利益成長」「M&Aや戦略的提携による事業拡大」「持続的成長に向けた堅牢な経営基盤の構築」の3つを掲げています。具体的には、バーチャルヒューマン向けのAI基盤への参入、自社製品の自治体・金融機関での利用加速、ストックビジネスの拡大やESG経営の深化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


柔軟な働き方や多様な外部研修制度の整備、ダイバーシティ&インクルージョンを通じて、高度なプロフェッショナル人材の育成に努めています。国籍や年齢、性別に関わらず活躍できる環境づくりを推進し、業務経験を通じたOJTや階層別の外部トレーニングを実施することで、組織と人材の力を最大限に生かす風土を醸成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年1月期 39.6歳 8.9年 6,316,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(21.3%)、外国籍社員比率(3.8%)、中途採用入社者比率(77%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応遅れ

仮想化ソリューション市場は技術革新のスピードが速いため、最新の技術動向の把握や対応に遅れが生じた場合、業界標準や顧客のニーズを捉えられず、同社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の仕入先への高い依存

事業を展開するうえで、特定の海外メーカーに対する仕入金額への依存度が高い状況にあります。取引先との良好な関係構築に努めていますが、取引の解消や契約条件の大幅な変更、契約期間の満了による終了が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 経営トップへの依存

同社の経営方針や事業戦略の決定において、取締役会長および代表取締役社長の果たす役割が大きく、両氏の知識や経験に依存している状況です。全社的な組織構築や人材育成を進めていますが、両氏が業務を継続できなくなった場合、事業遂行に支障が生じる可能性があります。

(4) 専門的な人材の確保と流出

ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークを統合するシステムインテグレーションには、高度な専門知識と技術を持った人材が不可欠です。優秀な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合や、既存の従業員が流出した場合、今後の事業拡大に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。