アセンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アセンテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のITインフラ企業。仮想デスクトップソリューションを中心に、セキュリティ対策やクラウドサービスを展開しています。2025年1月期は、大型案件の獲得や自社製品の伸長により、売上高が前期比2倍以上に拡大し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、アセンテック株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アセンテックってどんな会社?


仮想デスクトップを中心としたITインフラ事業を展開し、セキュリティと利便性を両立するソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


2009年にエム・ピー・ホールディングスの新設分割子会社として設立され、仮想デスクトップ関連事業を開始しました。2016年に自社製品「リモートPCアレイ」を発売し、2017年に東証マザーズへ上場。その後、2019年に東証一部へ市場変更し、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は165名、単体では92名です。筆頭株主は創業者の永森信一氏で、第2位は取締役会長の佐藤直浩氏です。

氏名 持株比率
永森信一 23.45%
佐藤直浩 10.58%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は松浦崇氏が務めています。社外取締役比率は約71.4%です。

氏名 役職 主な経歴
松浦崇 代表取締役社長 日本ユニシス、シトリックス・システムズ・ジャパンを経て、2006年にエム・ピー・テクノロジーズ入社。同社取締役副社長などを経て2023年4月より現職。
佐藤直浩 取締役会長 日本テキサス・インスツルメンツ、日本アイ・ビー・エムを経て、2009年に同社代表取締役社長に就任。2023年4月より現職。ブレイクアウト等の子会社代表も兼任。


社外取締役は、萬歳浩一郎(元システム・ビット社長)、彭雅秀(スプレンデオ代表取締役)、松田英典(元コムテック社長)、吉井清(吉井公認会計士事務所所長)、高谷英一(ニューグラス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ITインフラ事業」単一セグメントにおいて、以下の3つの事業領域を展開しています。

(1) 仮想デスクトップ事業


デスクトップ環境をサーバー側に集約し、ネットワーク経由で画面配信を行うソリューションを提供しています。主にCloud Software Group社の製品や、HDDを搭載しないシンクライアント端末を取り扱っており、コンサルティングから設計・構築、保守・運用までのプロフェッショナルサービスも提供しています。

収益は、主にシステムインテグレータ経由でエンドユーザー企業から、製品販売代金や保守・運用サービス料を受け取ります。一部のユーザーには直接販売も行っています。運営は主にアセンテックが行っています。

(2) クラウドインフラ事業


ITシステムのパフォーマンス向上を目的に、高性能なサーバーやストレージをクラウドインフラとして提供しています。また、ハイパーバイザー不要で仮想デスクトップ環境を構築できる自社企画製品「リモートPCアレイ」を開発・販売し、初期コストや構築期間の削減を実現しています。

収益は、サーバー・ストレージ機器や「リモートPCアレイ」等の製品販売代金、およびそれらに付帯する保守サービス料です。運営は主にアセンテックが行っています。

(3) クラウドサービス事業


仮想デスクトップを月額利用できるクラウド型サービスや、AI関連サービスを提供しています。主なサービスには、自社ブランドのDaaS「Resalio DaaS」や、サービスプロバイダー向けのライセンス提供、GPU搭載のAIプラットフォーム「Gcore Edge AI」などがあります。

収益は、サービスの利用に応じた月額または年額の利用料(サブスクリプション収入)です。運営は主にアセンテックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年1月期は、大型案件によるシンクライアント端末の売上増や仮想デスクトップ案件の納品完了により、売上高が前期比で倍増しました。利益面でも、増収効果や自社製品「リモートPCアレイ」の伸長により、経常利益、当期純利益ともに大きく増加しています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 62億円 146億円
経常利益 7.0億円 12.2億円
利益率(%) 11.3% 8.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.8億円 8.6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しました。一方で、連結子会社の増加や人員増、昇給等により販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果がこれを上回っています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 62億円 146億円
売上総利益 12億円 17億円
売上総利益率(%) 19.2% 11.7%
営業利益 6.1億円 8.7億円
営業利益率(%) 9.8% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比39%)、支払手数料が1億円(同17%)を占めています。売上原価においては、商品売上原価や外注費などが含まれています。

(3) セグメント収益


同社はITインフラ事業の単一セグメントであるため、連結業績と同様の推移となります。仮想デスクトップ需要の拡大や自社製品の販売増が全体の成長を牽引しました。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
連結(合計) 62億円 146億円 6.1億円 8.7億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 9億円 36億円
投資CF -0.8億円 -1.2億円
財務CF -0.9億円 2.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.1%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「簡単、迅速、安全に!お客様のビジネスワークスタイルの変革に貢献する。」を経営理念としています。最先端のITソリューションを追求し、顧客の利便性向上とセキュリティ強化を実現する製品・サービスを提供することで、社会課題の解決と持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「アセンテック社員 5つのコミットメント」として、以下の行動指針を掲げています。「チームワーク」で一丸となり支援する、「即応性」を持って迅速に対応する、最新技術を習得する「スキル」、公正中立な「フェアネス」、そして徹底して無駄を排除する「コスト意識」です。これらを社員全員が共有し、顧客目線での事業展開を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高及び経常利益を重要な経営指標と位置づけています。具体的な数値目標としての記載はありませんが、更なる自社製品の開発や継続収入ビジネスの拡大を通じて、技術的付加価値の高い製品・サービスを提供し、これらの指標の向上を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


安定的な収益基盤強化のため、ストックビジネスの拡大と、M&A・提携による事業拡大を推進しています。具体的には、Citrix等のライセンスや自社製品「リモートPCアレイ」の保守サービスの拡販、グローバルパートナーとの提携強化などです。

* Cloud Software Group社との戦略的パートナー契約締結および新会社設立による事業拡大
* 自社製品「Resalio Lynx」「SaaS Secure Client」等の開発強化
* エンジニアリソース確保や販売協業パートナーとの連携強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、営業、SE、マーケティング、管理が一体となる「Team Ascentech」としてのチームワークを重視しています。また、仮想デスクトップ案件の増加に対応するため、エンジニアの採用・育成を強化しています。中途採用者が管理職の多くを占めるなど、経歴に関わらず活躍できる環境整備と組織の活性化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 40.1歳 8.7年 5,941,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(20.9%)、外国籍社員比率(4.0%)、管理職に占める中途採用者の比率(94%超)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新への対応


仮想化ソリューション市場は技術革新のスピードが速いため、同社グループが新たな技術や業界標準に迅速に対応できない場合、あるいは顧客ニーズを適切に捉えられない場合には、競争力を失い、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合との競争激化


ITインフラ事業では事業者間の受注競争が激しく、今後も一層の激化が予想されます。同社は専門性や独自製品で差別化を図っていますが、差別化が困難となり競争力が低下した場合、受注減少や採算性悪化により、事業活動や業績に影響が出る可能性があります。

(3) 取引依存度の高い相手先


主な仕入先であるCitrix Systems(Cloud Software Group)やAtrust Computer等への依存度が高く、これらの企業との取引関係や条件が変更された場合、業績に影響する可能性があります。特にCloud Software Group社との契約には、一定の見込収益に基づく支払条件が含まれており、収益未達時には業績への影響が懸念されます。

(4) 法的規制・コンプライアンス


事業に関連して「個人情報保護法」や「労働者派遣法」等の規制を受けています。法令遵守に努めていますが、万が一の違反や、法令変更による事業制約が生じた場合、または情報漏洩等の事故が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。