※本記事は、イタミアートの有価証券報告書(第27期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イタミアートってどんな会社?
のぼり旗や幕などの販促品を扱うECサイトを複数運営し、自社製造で販売する企業です。
■(1) 会社概要
1999年に有限会社イタミアートとして設立され、広告制作業を開始しました。2006年にインターネット通販事業に参入し、2011年にのぼり旗の自社製造を開始しました。2024年に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たし、2025年には東京ネオプリントを完全子会社化するなど事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で189名、単体で133名です。筆頭株主はイタミホールディングスで、第2位は創業者の伊丹一晃氏、第3位はファンドのK&Pパートナーズ3号投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イタミホールディングス | 36.05% |
| 伊丹一晃 | 14.73% |
| K&Pパートナーズ3号投資事業有限責任組合 | 5.58% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は伊丹一晃氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊丹一晃 | 代表取締役社長 | 1990年西日本法規出版入社。1999年イタミアートを設立し、代表取締役社長に就任。イタミホールディングス代表取締役等を経て現職。 |
| 伊丹亮平 | 取締役業務本部長兼業務部部長 | 2004年アルファ入社。2008年同社に入社し、2019年に取締役に就任。東京ネオプリントの取締役も兼務。 |
| 一ノ瀬達也 | 取締役管理本部長兼管理部部長 | 2005年はるやま商事(現はるやまホールディングス)入社、同社経理部長等を経て、2023年同社に入社。2024年より現職。 |
| 吉田昭彦 | 取締役商品本部長兼商品本部DTP部部長 | 1991年日本交通公社(現JTB)入社。ベネッセコーポレーション等を経て、2021年同社に入社。内部監査室長等を経て現職。 |
| 河田肇 | 取締役内部監査担当 | 1987年川西医科器機(現オルバヘルスケアホールディングス)入社。同社取締役等を経て、2021年に同社取締役就任。 |
社外取締役は、稲葉雄一(元ブルーテック社長)、田丸浩昭(元日本アレフ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「SP商材の企画・制作・販売」事業を展開しています。
■(1) BtoB向けECサイトの運営
同社は、飲食店や小売業向けにのぼり旗、幕、看板、冊子などのセールスプロモーション商材(SP商材)を販売する「のぼりキング」などのECサイトを複数運営しています。商品企画、サイト構築、集客、販売、制作、出荷の全工程を自社で行うD2Cビジネスモデルにより、小ロットからの短納期・低価格販売を実現しています。
顧客から入稿されたデータの処理や製造管理を自社開発システムで自動化し、高い生産性を保っています。また、WEB広告やSEO対策などのデジタルマーケティング施策に注力し、主要サイトでは検索エンジンの上位表示を獲得して安定した集客基盤と高いリピート率を維持しています。事業の運営は同社が行っています。
■(2) 卸販売および大ロット印刷の提供
大口注文や継続的な取引がある法人顧客に対しては、専任の営業担当を配置した卸販売事業を展開しています。ECサイトだけでは対応しきれないニーズを汲み取り、競争力のある価格と納期で数千枚単位の大ロット商材を提供しています。
さらに、連結子会社を通じた営業受注による印刷事業も展開しています。大手印刷会社や広告代理店などの法人顧客を中心に、中ロットから大ロットの印刷案件を受注しています。この事業の運営は、主に同社および東京ネオプリントが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、当期利益は1億円台で安定して推移しています。当期より連結決算へ移行しており、売上高は約48億円、経常利益は約2.2億円を計上しました。主力事業のEC販売において積極的なプロモーションやSEO対策が奏功し、事業規模が順調に拡大しています。
| 項目 | 第23期 | 第24期 | 第25期 | 第26期 | 第27期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | 48億円 |
| 経常利益 | - | - | - | - | 2.2億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.1億円 | 0.9億円 | 1.5億円 | 1.7億円 | 1.5億円 |
■(2) 損益計算書
当期より連結財務諸表を作成しているため、前期との比較は一部の利益項目に限られますが、当期の売上総利益は約17億円、営業利益は約2.2億円となっています。積極的な広告宣伝と子会社化などの影響により、利益水準は前期と同等規模を維持しています。
| 項目 | 第26期 | 第27期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | 48億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | - | 36.0% |
| 営業利益 | 2.7億円 | 2.2億円 |
| 営業利益率(%) | - | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が3.9億円(構成比26%)、荷造運賃が3.6億円(同24%)、支払手数料が2.6億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、事業全体の売上高を示しています。ECサイトにおける主要取引先との提携強化や、積極的なマーケティング施策による新規顧客およびリピーターの獲得が売上に貢献しました。
| 区分 | 売上(第26期) | 売上(第27期) |
|---|---|---|
| SP商材の企画・制作・販売 | - | 48億円 |
| 連結(合計) | - | 48億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示す「積極型」です。
| 項目 | 第26期 | 第27期 |
|---|---|---|
| 営業CF | - | 5.7億円 |
| 投資CF | - | -9.7億円 |
| 財務CF | - | 4.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「商売繁盛応援企業、日本一!」を経営ビジョンに掲げています。顧客に対し、集客の成功、売上アップ、利益率の改善を提供し続けることで、日本全国の経済活性化に貢献することを目標としています。顧客や働くスタッフ、取引業者のために繁盛を創造し、ビジョンの実現に向けて惜しみない努力を続けています。
■(2) 企業文化
「『IT』×『モノづくり』の力で世の中を変える。」というミッションを掲げています。伝統的な印刷業界においてインターネットを活用し、D2Cビジネスモデルと効率的な社内管理システムを構築することで、必要な時に必要な分だけを低価格かつ迅速に制作し、安定した品質の商品を届ける文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は主な経営指標として、トランザクション数(注文件数)と平均客単価を重視しています。トランザクション数の推移は、小ロット・多品種・大量受注を特徴とするEC販売の成長性を示す重要な指標であり、平均客単価は提供するサービスや商品の市場価値を示す長期的な成長の基盤として設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
取扱商品の拡充や他ECサイトへの横展開を進めつつ、集客数・成約率・リピート率の維持と向上に注力しています。また、製造ライン全体のシステム化・自動化によって生産体制を強化し、オペレーションコストの低減を図っています。今後は中堅・大企業向けの営業も強化し、幅広い顧客層の取り込みを目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長を遂げるため、優秀な人材の確保と育成、組織設計の強化を不可欠な課題としています。年齢、性別、国籍等の属性にとらわれない多様な人材の採用や部門管理者への登用を進めるほか、社内研修制度の充実、年間休日の増加、製造工程等の自動化推進による職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第27期 | 28.8歳 | 3.5年 | 3,362,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 42.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 95.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 検索順位アルゴリズムの変更リスク
同社のECサイトへのアクセスは自然検索からの流入が多いため、検索エンジンのアルゴリズム変更により表示順位が低下した場合、集客力や売上高が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格や物流コストの変動リスク
のぼり旗等の原材料価格が高騰した場合や、運送会社への委託による配送コストが上昇した際、それらをタイムリーに販売価格へ転嫁できなければ、収益性が圧迫され、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害リスク
全取引がインターネットを介して行われるため、個人情報や機密情報の漏洩が発生した場合は社会的信用を喪失する恐れがあります。また、アクセス集中や自然災害等による大規模なシステム障害も事業運営の重大なリスクとなります。



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