エスフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合食肉企業グループです。「こてっちゃん」等の食肉製品製造から、卸売、小売、外食まで一貫したサプライチェーンを展開しています。直近の業績は、売上高が前期比4.6%増と伸長しましたが、原材料高騰等の影響で経常利益は55.6%減、当期純利益は70.6%減の増収減益となりました。


※本記事は、エスフーズ株式会社 の有価証券報告書(第59期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エスフーズってどんな会社?


「こてっちゃん」で知られる総合食肉企業です。生産から外食まで垂直統合した事業モデルが特徴です。

(1) 会社概要


同社は1967年にスタミナ食品として創業し、内臓肉の販売を開始しました。1989年に店頭登録を行い、2000年に現社名へ変更しました。2005年には株式会社ムラチクを吸収合併し、米国FREMONT BEEF COMPANYを完全子会社化するなど事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しにより、東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は2,735名、単体では890名です。筆頭株主は代表取締役社長の村上真之助氏で、第2位はその他の関係会社である総合商社の丸紅株式会社です。第3位には信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)が名を連ねています。

氏名 持株比率
村上 真之助 25.28%
丸紅株式会社 15.30%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は村上真之助氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 真之助 代表取締役社長全社統轄関係会社統轄 1975年村上畜産就業。1981年エムアンドエム食品設立。2006年同社代表取締役社長に就任し、2010年より現職。
平井 博 勝 専務取締役姫路支店長 1982年ムラチク入社。2004年同社取締役に就任。営業本部長などを経て2024年3月より現職。
岩 渕 弘 康 常務取締役営業本部長 2001年ムラチク入社。同社執行役員営業本部・部長兼東京営業所長などを経て、2025年3月より現職。
関  口  孝  行 常務取締役株式会社PFC代表取締役社長 2002年ムラチク入社。2015年PFC代表取締役社長に就任(現任)。2025年5月より同社常務取締役。
出 田 純 治 取締役国内ポーク事業部長 2003年ムラチク入社。2019年同社執行役員国内ポーク事業部長に就任し、2022年5月より現職。
鵜 木 健 治 取締役管理本部長 1987年丸紅入社。丸紅韓国会社副社長などを経て2022年同社入社。2023年5月より現職。
巻 本 隆 大 取締役輸入食肉事業部長 1993年同社入社。輸入食肉事業部原料統括部長などを経て2024年5月より現職。


社外取締役は、松野英(弁護士)、鴨田視寿子(弁護士)、佐藤栄起(公認会計士)、白水雅子(大学講師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食肉等の製造・卸売事業」「食肉等の小売事業」「食肉等の外食事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食肉等の製造・卸売事業


食肉の生産、製品の製造、および卸販売を行っています。生産はエスファームや北海道中央牧場などが担い、製造は同社や米国の子会社AURORA PACKING COMPANY,INC.、フードリエなどが行います。卸販売は同社や子会社のヒョウチク、関係会社の丸紅などが事業者に販売しています。

主な収益源は、食肉製品および食肉商品の販売代金です。運営は、同社および、エスファーム株式会社、株式会社北海道中央牧場、AURORA PACKING COMPANY,INC.、株式会社ヒョウチク、その他の関係会社である丸紅株式会社などが担っています。

(2) 食肉等の小売事業


一般消費者向けに食肉製品や商品を販売しています。食肉を中心とした小売店舗の運営を行い、消費者に直接製品を提供しています。

主な収益源は、一般消費者からの商品販売代金です。運営は主に、連結子会社の株式会社オーエムツーミート、株式会社マルチョウ神戸屋、およびオオタ総合食品株式会社が行っています。

(3) 食肉等の外食事業


肉料理を中心とした一般消費者向けの外食サービスを提供しています。焼肉レストランやステーキレストランの経営を行っています。

主な収益源は、一般消費者からの飲食サービス代金です。運営は主に、連結子会社の株式会社焼肉の牛太、株式会社オーエムツーダイニング、および株式会社雄和が行っています。

(4) その他事業


食肉流通に属さない事業領域として、冷蔵倉庫業などを行っています。

主な収益源は、冷蔵倉庫の利用料などです。運営は主に、連結子会社の株式会社東冷が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、第59期には4,445億円に達しました。一方、利益面では第56期をピークに減少傾向が見られます。特に直近の第59期は、経常利益および当期純利益が前期から大きく減少しており、利益率は低下しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 3,275億円 3,588億円 3,992億円 4,250億円 4,445億円
経常利益 130億円 180億円 158億円 144億円 64億円
利益率(%) 4.0% 5.0% 4.0% 3.4% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 100億円 119億円 106億円 91億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。営業利益は前期の半分以下となり、営業利益率は低下しています。原材料価格の高騰などが利益を圧迫している状況が読み取れます。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 4,250億円 4,445億円
売上総利益 519億円 455億円
売上総利益率(%) 12.2% 10.2%
営業利益 127億円 51億円
営業利益率(%) 3.0% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が100億円(構成比24.9%)、給料及び手当が84億円(同20.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高は増加または微増となりましたが、利益面では主要な「食肉等の製造・卸売事業」が62.5%減益と大きく苦戦しました。「食肉等の小売事業」および「食肉等の外食事業」も減益となりましたが、「その他」事業は増益となっています。全体として、増収ながらもコスト増等により利益確保に課題が見られました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
食肉等の製造・卸売事業 3,927億円 4,116億円 116億円 44億円 1.1%
食肉等の小売事業 240億円 240億円 16億円 13億円 5.5%
食肉等の外食事業 75億円 81億円 5億円 5億円 6.0%
その他 8億円 8億円 1億円 1億円 16.0%
調整額 - - -12億円 -11億円 -
連結(合計) 4,250億円 4,445億円 127億円 51億円 1.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

当社の連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度より減少しました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少等により収入となりましたが、法人税等の支払額等により、前連結会計年度と比較して収入額は減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や関係会社株式の取得等により、支出超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払い等により支出となりましたが、短期借入金の増加や長期借入により、前連結会計年度と比較して支出額は減少しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 90億円 74億円
投資CF -145億円 -150億円
財務CF 73億円 -20億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「おいしさと健康を愛する魅力あるスタミナ食品をもって世界に貢献する。我々は真のやりがいを感じ、企業の成長・発展とともに生活・文化の向上を図る」という経営理念・社是を掲げています。食肉事業を主領域とし、企業の存在価値を高め世界に貢献できる企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に基づき、「お客様を愛する」「商品を愛する」「会社を愛する」「社員を愛する」「株主を愛する」という5つの愛からなる「五愛の精神」を社訓としています。これらに基づく「エスフーズ行動憲章」の下、法令順守や企業管理を含めた行動規範を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、食肉の総合企業集団を目指し、以下の経営指標の早期達成を目標としています。

* 連結売上高5,000億円
* 経常利益200億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、食肉流通の川上から川下まで一貫した食肉サプライチェーンの構築を進め、国内外での食肉流通機能を拡充することを目指しています。製造・卸売事業では、海外のオーロラビーフ新工場の稼働や国内拠点の整備・集約を進め、製品事業ではバラエティーミートや国産牛を活用した開発・販促を強化します。小売・外食事業では、不採算店の整理を行いつつ、新規出店や新業態への取り組みを進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の獲得と活躍の場の拡大を重視し、役職位や入社年次に応じた「階層別研修」と、幹部候補を育成する「選抜型研修」を継続して実施しています。また、女性管理職を増やすための積極的な登用や職務拡大、適正な労働時間管理、職種を問わない多能工化の推進などに取り組み、従業員が能力を高められる環境と安心安全な職場づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 36.6歳 10.6年 5,656,365円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 12.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.1%
男女賃金差異(正規) 64.7%
男女賃金差異(非正規) 74.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した労働者に占める女性労働者の割合(28.6%)、管理職に占める女性労働者の割合(1.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況・消費動向等


同社グループの主な市場である日本および米国における経済状況や人口、消費者の価値観の変化などが、市場規模や販売価格の変動、企業間競争の激化を招き、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制


食肉原材料や商品を海外から調達しているため通商・関税等の規制を受け、国内では食の安全・品質保証に関する法規制を受けます。これらの規制の改変や新設により、設備投資やコスト増大、事業活動の制限が生じ、業績に影響する可能性があります。

(3) 市況及び為替の変動


疾病問題(BSE等)や輸入制度(セーフガード等)、気候による飼料穀物の作柄などが調達・販売価格に影響します。また、為替相場の変動や資源価格の変動が輸入コストの増減要因となり、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 国際的活動


米国での生産・販売活動や世界各地からの調達を行っているため、各国の政治経済、社会情勢、法的規制、通商関係、気候などの自然条件において予測不能な問題が生じた場合、業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。