エスフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エスフーズは東証プライム市場に上場し、食肉の製造・卸売から小売・外食まで一貫したサプライチェーンを展開する総合食肉企業です。直近の業績では、売上高が4,723億円で前期比増収となり、経常利益・純利益も大幅な増益を達成しました。国内外での販売強化や生産拠点の集約により、さらなる成長を目指しています。


※本記事は、エスフーズ株式会社の有価証券報告書(第60期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。

1. エスフーズってどんな会社?


食肉の生産から卸売、小売、外食までを一貫して手がける、総合食肉企業集団です。

(1) 会社概要


1967年にスタミナ食品として設立され、1982年には牛内臓肉製品「こてっちゃん」を発売しました。1999年に東証二部へ上場し、2000年に現在のエスフーズへ社名を変更するとともに東証一部へ指定されました。その後、ムラチクやオーエムツーネットワークなどを子会社化し、事業規模を拡大しています。

従業員数は連結で2,818名、単体で893名です。筆頭株主は創業者の村上真之助氏で、第2位は総合商社の丸紅、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
村上真之助 25.26%
丸紅 15.29%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は村上真之助氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
村上真之助 代表取締役社長全社統轄関係会社統轄 1982年ムラチク社長、2010年同社社長に就任。
平井博勝 専務取締役姫路支店長 1982年ムラチク入社、2018年同社専務取締役に就任。
岩渕弘康 常務取締役営業本部長 2001年ムラチク入社、2025年同社常務取締役に就任。
関口孝行 常務取締役PFC代表取締役社長 2002年ムラチク入社、2015年PFC社長に就任。
出田純治 取締役国内ポーク事業部長 2003年ムラチク入社、2022年同社取締役に就任。
鵜木健治 取締役管理本部長 1987年丸紅入社、2023年同社取締役に就任。
巻本隆大 取締役輸入食肉事業部長 1993年同社入社、2024年同社取締役に就任。


社外取締役は、松野英(松野法律事務所代表)、鴨田視寿子(RITA総合法律事務所代表)、佐藤栄起(佐藤栄起公認会計士事務所所長)、白水雅子(京都光華女子大学短期大学部講師)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食肉等の製造・卸売事業」「食肉等の小売事業」「食肉等の外食事業」および「その他」事業を展開しています。

食肉等の製造・卸売事業


国産肉牛や豚の肥育・加工、食肉製品の製造、事業者向けの食肉商品の卸販売を行っています。国内外で安定的な供給体制を構築し、高品質な食品を提供しています。

事業者に対する商品及び製品の販売により収益を得ています。運営は同社のほか、北海道中央牧場、味兆、フードリエ、オーロラビーフ(米国)などの連結子会社が行っています。

食肉等の小売事業


一般消費者向けに、食肉や食肉製品・商品の販売を行っています。既存店の活性化や新業態店舗への取り組みを進め、地域に密着した店舗展開を行っています。

店舗における一般消費者からの販売代金が主な収益源です。運営はオーエムツーミート、マルチョウ神戸屋、オオタ総合食品などの連結子会社が行っています。

食肉等の外食事業


一般消費者向けに肉料理を中心としたレストラン等の飲食サービスを提供しています。ステーキレストランや焼肉、しゃぶしゃぶチェーンなどを展開しています。

来店客への飲食サービス提供による飲食代金から収益を得ています。運営は焼肉の牛太、オーエムツーダイニング、雄和などの連結子会社が行っています。

その他


食肉流通に属さない事業領域として、主に冷蔵倉庫業などを手がけています。

冷蔵倉庫の利用料などから収益を得ています。運営は主に連結子会社の東冷が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が継続して成長しており、安定した増収基調を維持しています。経常利益は一時的に落ち込む時期があったものの、当期は回復し大幅な増益を達成しました。利益率も当期は改善傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 3,588億円 3,992億円 4,250億円 4,445億円 4,723億円
経常利益 180億円 158億円 144億円 64億円 117億円
利益率(%) 5.0% 4.0% 3.4% 1.4% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 119億円 106億円 91億円 27億円 92億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は改善しています。営業利益は前期比で倍増し、収益性が大きく向上していることが確認できます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 4,445億円 4,723億円
売上総利益 455億円 536億円
売上総利益率(%) 10.2% 11.4%
営業利益 51億円 105億円
営業利益率(%) 1.2% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が101億円(構成比23%)、給料及び手当が92億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である食肉等の製造・卸売事業が増収を牽引しました。食肉等の外食事業も売上を大きく伸ばしており、全セグメントにおいて堅調な売上の伸びを示しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
食肉等の製造・卸売事業 4,116億円 4,366億円
食肉等の小売事業 240億円 249億円
食肉等の外食事業 81億円 100億円
その他 8億円 9億円
連結(合計) 4,445億円 4,723億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で生み出した利益で借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄っている健全型の状態です。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 74億円 88億円
投資CF -150億円 -82億円
財務CF -20億円 -42億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「おいしさと健康を愛する魅力あるスタミナ食品をもって世界に貢献する。我々は真のやりがいを感じ、企業の成長・発展とともに生活・文化の向上を図る」という経営理念・社是を掲げています。食肉製品の開発・販売を通じ、世界の人々が幸せになる魅力ある商品とサービスを提供し、世界に貢献できる企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「5つの愛(お客様を愛する。商品を愛する。会社を愛する。社員を愛する。株主を愛する。)」に基づく「社訓」を重視しています。また、企業管理やコンプライアンスに関するあるべき行動規範である「エスフーズ行動憲章」の下、内部統制の一層の充実を図り、社会から信頼される企業活動を推進する方針を示しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、食肉の総合企業集団として安定的な供給体制の確立を目指し、中長期的な会社の経営戦略のなかで以下の目標とする経営指標を掲げています。

* 連結売上高5,000億円
* 経常利益200億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、食肉流通の川上から川下まで一貫したサプライチェーンの構築を進め、国内外での食肉流通機能の拡充を図ります。米国での新工場稼働による生産効率化や、国産牛・豚肉「ゆめの大地」の輸出拡大に注力します。また、ご当地味やコラボ商品の開発で若年層の認知度向上を図るとともに、既存店の活性化や新業態店舗の開発を通じて収益の多様化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な働き方で互いの立場を尊重し、すべての社員の活躍の場を広げることを重視しています。個々の社員が能力を高められるよう、階層別研修や次世代リーダー育成研修を実施し、「多能工化」やグローバル人材の育成を推進しています。また、女性の管理職登用や労働時間管理の徹底、安心安全な職場づくりを通じ、社員の成長を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東証プライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 37.1歳 11.6年 5,739,387円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量(71,922tCO2)、用水使用量(219千㎥)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(26.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変化による消費動向への影響


同社グループが事業を展開する日本および米国では、経済状況や人口動態、消費者の価値観の変化により市場規模が変動する可能性があります。販売価格の低下や企業間競争の激化が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 市況や為替の変動に伴う調達コストの増減


国内外から食肉原材料や商品を調達しているため、家畜の疾病問題や気候要因による飼料価格の変動、輸入制度の影響を受けます。また、為替相場やエネルギー資源価格の変動は輸入コストの増減に直結し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 各国の政治・法的規制による事業活動への制限


生産や調達を米国、豪州、中国などで展開しているため、各国の政治経済、社会情勢、通商関係の予測不能な変化がリスクとなります。また、食の安全や品質に関する法規制の変更・新設に伴い、設備投資や改善コストが増大する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。