ラピーヌ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラピーヌ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するラピーヌは、婦人服や服飾雑貨の企画・製造・販売と障害者福祉サービス事業を展開する企業です。直近の業績は、物価高騰等による消費者の節約志向や厳しい需要環境の影響を受け、売上高が減少傾向にあり、営業利益および経常利益ともに赤字が続く厳しい状況となっています。


※本記事は、株式会社ラピーヌの有価証券報告書(第78期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラピーヌってどんな会社?


婦人服や服飾雑貨の企画から製造、販売までを一貫して手がけ、障害者福祉事業も展開するアパレル企業です。

(1) 会社概要


1950年に総合衣料の小売業として設立され、1967年に婦人既製服の企画から販売までを開始し、ブランド名をラピーヌと定めました。1990年に東証二部へ上場し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。また、2012年にはラピーヌ夢ファームを設立し、障害者福祉事業にも参入しました。

従業員数は連結で37名、単体で35名体制です。筆頭株主は事業会社のフリージア・マクロスで35.36%を保有し、第2位は金融機関の楽天証券、第3位は事業会社の技研ホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
フリージア・マクロス 35.36%
楽天証券 3.58%
技研ホールディングス 2.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は佐々木ベジ氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
佐々木 ベジ 代表取締役社長 フリージア・マクロス代表取締役社長、技研ホールディングス代表取締役社長等を経て、2021年3月より現職。
松永 敬司 取締役専務執行役員 1993年同社入社。第一企画部や東京企画部のチーフデザイナーを務め、2023年5月より現職。
森岡 正人 取締役執行役員 1989年同社入社。各販売部長やWEB事業本部オムニチャネル推進室長を務め、2024年5月より現職。
奥山 一寸法師 取締役 2007年フリージア・マクロス代表取締役社長等を経て、2020年同社取締役(監査等委員)、2021年2月より現職。


社外取締役は、西信子氏(弁護士)、山本昌弘氏(全日本きものコンサルタント協会勤務)、大須賀和志氏(ホワイトルーム商品管理担当)、畠山誠氏(元パナホーム副社長)、佐藤生空氏(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「卸売事業」「小売事業」「福祉事業」を展開しています。

(1) 卸売事業


百貨店や全国の婦人服専門店を中心に、婦人服および服飾雑貨の卸売販売を行っています。幅広い年齢層に向け、お買い求めやすい価格帯の商材供給や新規顧客の開拓に取り組んでいます。

百貨店や専門店への製品卸売による販売代金を収益源としています。商品の企画、製造管理、および卸売販売の運営は同社が行っています。

(2) 小売事業


直営店舗やECサイトを通じ、一般消費者に向けた婦人服および服飾雑貨の小売販売を行っています。全国で32店舗の直営店を展開し、多様な販売チャネルを通じて顧客接点を深めています。

一般消費者への店舗およびオンラインでの製品販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社のほか、子会社のベルラピカが行っています。

(3) 福祉事業


障害者の安定的な職場の確保を図ることを目的とし、水耕栽培や土耕栽培による野菜の生産および販売を通じた障害者福祉サービス事業を展開しています。

生産した野菜の販売代金や、就労支援事業運営費収入などの助成金が収益源となっています。事業の運営は子会社のラピーヌ夢ファームが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響や物価高騰による消費者の節約志向などが響き、売上高は減少傾向が続いています。利益面においても、販売費および一般管理費の抑制などの合理化策を進めているものの売上高の減少を補うには至らず、直近3期連続で経常赤字と厳しい状況が続いています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 44億円 33億円 23億円 20億円 19億円
経常利益 2億円 3億円 -3億円 -1億円 -2億円
利益率(%) 4.1% 8.1% -13.4% -6.6% -13.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 -3億円 -1億円 -3億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に加え、原材料価格の上昇が影響し、売上総利益も減少しています。製造や仕入のコントロールに努めているものの売上総利益率が低下し、営業損失の計上に至っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 20億円 19億円
売上総利益 13億円 12億円
売上総利益率(%) 64.1% 62.2%
営業利益 -4億円 -3億円
営業利益率(%) -17.6% -14.7%


販売費および一般管理費のうち、給料および手当が8億円(構成比52%)、地代家賃が3億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、衣料消費の多様化や物価高騰を背景とした消費者離れなどの影響により、主力の卸売事業および小売事業ともに売上高が減少しています。各事業において新規顧客の開拓や効率改善に取り組んでいますが、全体として減収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
卸売事業 9億円 8億円
小売事業 11億円 11億円
福祉事業 0.1億円 0.1億円
連結(合計) 20億円 19億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -5億円 -5億円
投資CF -0.1億円 -
財務CF -0.6億円 2.0億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「真実と信頼」を創業以来の経営理念とし、消費者第一主義に徹した経営のもと、ファッションを通じて社会の生活文化向上に貢献することを目指しています。また、ご愛用いただくお客様一人ひとりの満足度向上とファンの増大を目標とした事業展開を推し進めています。

(2) 企業文化


同社グループは、「ファッションとデジタルで顧客接点の拡大」をビジョンとして掲げています。世界に選ばれる一着を目指して、「PRIDE(時流に乗らず時流をつくる)」「QUALITY(国境を越えていくラピーヌクオリティ)」「MIND(これからも一着一着に思いを込めて)」のコンピタンスをもとに事業活動を行う文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


安定的な収益構造の確立と永続的な成長発展の実現を目指し、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:19億円
* 営業損失:-2億円
* 経常損失:-1億円
(いずれも2027年2月期の目標値)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営ビジョン「ファッションとデジタルで顧客接点の拡大」のもと、リアル店舗やWEBなど多様なチャネルを通じてブランド価値を高める施策を進めています。主力のアパレル事業では、販売価格の見直しによる新規顧客の開拓や、店頭での戦略商品のPR強化を図ります。また、発表型数や展開サイズの絞り込みによる低コスト生産と在庫リスクの低減に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様性の確保を重要視し、性別や入社時期に関わらず、能力を本位とする人材登用を行っています。また、自社の企画力や技術力、マーケティング力を向上させるため、作業効率アップに資する施設利用者の教育訓練など、社員教育を積極的に継続して行う方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 48.7歳 23.7年 3,961,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ファッショントレンドと消費動向の変化


同社が取り扱う製品は、変化しやすい流行などのトレンドや顧客ニーズの影響を受けやすい市場にあります。急激なトレンドの変化や消費者の嗜好の変化、景気変動による個人消費の低迷が起きた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、流行情報を的確に把握し、魅力的な製品の提供に努めています。

(2) 気象状況による需要変動と自然災害


取り扱う製品は天候の影響を受けやすく、冷夏や暖冬、長雨などの天候不順により消費者の需要が大きく変化する場合があります。予測を超えた気象状況の変化で見込んでいた売上が伸び悩んだ場合、業績に影響する可能性があります。生産の短サイクル化や生産コントロールにより、影響を極力受けないよう努めています。

(3) 海外における生産・ライセンス契約リスク


一部の製品を中国などの海外に生産委託しているため、為替レートの変動や現地でのカントリーリスクが発生し、原価高騰や輸入困難に陥る可能性があります。また、海外有力企業とのブランドライセンス契約が終了や変更となった場合も、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。