※本記事は、株式会社 MORESCOの有価証券報告書(第68期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MORESCOってどんな会社?
特殊潤滑油やホットメルト接着剤などの化学品をグローバルに製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
1958年に設立され、高真空ポンプ油などの特殊潤滑油や水グリコール型難燃性作動液などを開発しました。その後、ホットメルト型接着剤の量産化や、タイ・米国・中国・インドなどへの現地法人設立によるグローバル展開を推進しています。2008年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、現在はスタンダード市場に上場しています。
従業員数は連結で797名、単体で374名です。筆頭株主は事業会社である松村石油で、第2位は同じく事業会社のコスモ石油ルブリカンツ、第3位はMORESCO従業員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松村石油 | 11.60% |
| コスモ石油ルブリカンツ | 5.50% |
| MORESCO従業員持株会 | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは両角元寿氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 両角元寿 | 代表取締役社長CEO | 1987年日本フーラー入社。1999年同社入社後、ホットメルト事業部等の要職を歴任し、2021年より現職。 |
| 瀬脇信寛 | 取締役専務執行役員 COO | 1982年同社入社。東南アジア担当などを経て2021年より現職。モレスコテクノ代表取締役社長も兼任。 |
| 藤本博文 | 取締役常務執行役員 CFOサステナビリティ担当 | 2010年みずほコーポレート銀行入行。2019年同社入社後、経営企画部等を経て2025年より現職。 |
| 細見次郎 | 取締役執行役員海外担当 | 1996年同社入社。金属加工油事業部長等を経て2024年より現職。インド子会社社長も兼任。 |
| 福田勝人 | 取締役執行役員 CTO | 1992年同社入社。ホットメルト開発部長、研究開発部長を経て2025年より現職。 |
| 本田幹夫 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年同社入社。管理本部人事部人事課長、総務部長等を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、酒井浩志(元昭和電工執行役員)、中上幹雄(澤田・中上・森法律事務所代表弁護士)、中塚秀聡(中塚秀聡税理士事務所代表者)、冨士ひろ子(元大丸松坂屋百貨店執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「東南/南アジア」「北米」の報告セグメントを展開しています。
■日本
同社および国内子会社が、高真空ポンプ油などの特殊潤滑油、ホットメルト接着剤、流動パラフィンなどの素材を製造・販売しています。自動車、半導体、衛生材料など多岐にわたる産業を顧客としています。
製品の販売を主な収益源としています。事業運営は主にMORESCOが行い、自動車用ブレーキ液などは子会社のエチレンケミカルが担当しています。
■中国
中国市場において、日系およびローカルの自動車メーカーなどを対象に、ダイカスト用油剤や切削油剤などの特殊潤滑油、ならびにホットメルト接着剤の製造・販売を行っています。
製品の販売代金を収益の柱としています。事業運営は、莫莱斯柯花野圧鋳塗料(上海)有限公司や天津莫莱斯柯科技有限公司などの現地子会社が担っています。
■東南/南アジア
タイ、インドネシア、インドにおいて、現地の製造業向けに特殊潤滑油やホットメルト接着剤の製造・販売および輸入販売を展開しています。
顧客に対する製品の販売を収益源としています。MORESCO(THAILAND)CO.,LTD.やPT.MORESCO INDONESIAなどの現地子会社が事業を運営しています。
■北米
米国およびメキシコにおいて、主に自動車産業や部品メーカー向けに特殊潤滑油の製造と販売を行っています。
製品の販売による収益を柱としています。事業運営は、米国子会社のMORESCO USA Inc.やメキシコ子会社のMORESCO LUBE MEXICANA S.A. DE C.V.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益と当期利益は一時的な増減を見せつつも、直近の期間では高付加価値品の販売増加や原価改善などにより大幅に回復・成長しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 273億円 | 303億円 | 319億円 | 344億円 | 349億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 10億円 | 18億円 | 18億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 3.4% | 5.7% | 5.3% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 9億円 | 5億円 | 7億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において売上高は微増ですが、売上総利益および営業利益は大きく伸びており、収益性が着実に改善していることがわかります。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 344億円 | 349億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 110億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.0% | 31.4% |
| 営業利益 | 14億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が24億円(構成比28%)、支払運賃が9億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本が売上高の大部分を占めており、堅調に推移しています。中国や北米は横ばい、東南/南アジアは微減となっていますが、グループ全体としては高付加価値品の販売増により収益性が高まっています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 216億円 | 222億円 |
| 中国 | 38億円 | 38億円 |
| 東南/南アジア | 69億円 | 68億円 |
| 北米 | 21億円 | 21億円 |
| 連結(合計) | 344億円 | 349億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 30億円 |
| 投資CF | -12億円 | -7億円 |
| 財務CF | -17億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営理念である「ユーザーのための研究開発」をモットーに掲げています。モノとモノとの接点における摩擦や磨耗などといった境界領域におけるニーズに応えることによって、社会に貢献できる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、新しい社会と未来を切り拓くイノベーター企業として社会に貢献していくことを使命としています。研究開発型企業として、社員一人ひとりが常識の「枠」を広げる姿勢を持ち、多様性・公平性・包摂性を尊重する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの3年間を対象とする第10次中期経営計画を実行しており、最終年度の2026年度において以下の目標を定めています。
* 売上高:370億円
* 営業利益:24億円
* 経常利益:27億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:16億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「持続可能な社会の実現」と「事業の付加価値の向上」の両立をテーマに掲げています。サステナビリティ経営の推進や製品ポートフォリオの高度化、次世代事業の創出、業務プロセスの革新を通じた「モレスコ・インフォマティクス」の実現などを重点施策とし、企業価値の向上に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「持続可能な社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を両立するため、全ての社員が能力と意欲を最大限発揮できる成長支援と環境づくりを重視しています。「プロフェッショナル志向」や「自由な発想」等を人材に求めるマインドとして掲げ、多様な人材の登用と人的資本の強化を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 44.7歳 | 15.0年 | 7,106,424円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.5% |
| 男性育児休業取得率 | 114.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 70.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、国内外のグループ全体の女性管理職比率(19.0%)、国内グループの男性育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品の製造に関するリスク
国内外に生産拠点を有しており安定供給への責任を負っていますが、大規模な自然災害やパンデミックの発生、または事故等により生産設備の稼働が長期的に停止した場合、製品の供給が困難となり、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原料購入に伴うリスク
同社の製品は潤滑油や石油化学製品などを主な原料としており、原油やナフサ価格の変動影響を大きく受けます。価格高騰によるコスト増や、災害等による供給停止で原料の入手に支障をきたした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 研究開発に関するリスク
将来の成長に向けて新製品の開発に多くの経営資源を投入しています。社内外のネットワークを活用し市場ニーズの的確な把握に努めていますが、市場の変化等により投資に見合った収益が得られなかった場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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