MORESCO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MORESCO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、特殊潤滑油やホットメルト接着剤などを手掛ける化学品メーカーです。2025年2月期の連結業績は、売上高344億円(前期比7.8%増)、経常利益18億円(同0.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益10億円(同21.1%減)の増収減益でした。


※本記事は、株式会社MORESCO の有価証券報告書(第67期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. MORESCOってどんな会社?


特殊潤滑油や合成潤滑油、ホットメルト接着剤などの化学品を製造・販売する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


1958年に松村石油の研究室を分離して設立され、特殊潤滑油や合成潤滑油の製品化を開始しました。その後、ホットメルト接着剤の量産化や海外拠点の設立を進め、2001年には本社・研究センターを神戸市へ移転しました。2009年に現社名へ変更し、近年では中国や米国での現地法人設立や事業譲受を通じてグローバル展開を加速させています。

2025年2月28日時点の連結従業員数は795名、単体では372名です。筆頭株主は同社の母体企業である松村石油で11.60%を保有し、第2位は潤滑油事業を展開するコスモ石油ルブリカンツ(5.40%)、第3位はMORESCO従業員持株会(4.60%)となっています。

氏名 持株比率
松村石油 11.60%
コスモ石油ルブリカンツ 5.40%
MORESCO従業員持株会 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは両角元寿氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
両角 元寿 代表取締役社長CEO 1999年同社入社。ホットメルト事業部長、取締役専務執行役員などを経て2018年社長COOに就任。2021年5月より現職。
瀬脇 信寛 取締役専務執行役員 COO 1982年同社入社。機能材営業部長や東南アジア担当などを歴任し、2021年5月より現職。モレスコテクノ代表取締役社長を兼務。
藤本 博文 取締役常務執行役員 CFOサステナビリティ担当 みずほ銀行等を経て2019年同社入社。管理部門・安全担当CFO等を歴任し、2025年5月より現職。
細見 次郎 取締役執行役員海外担当 1996年同社入社。金属加工油事業部長、モレスコテクノ社長等を経て2024年5月より現職。インド子会社社長を兼務。
福田 勝人 取締役執行役員 CTO 1992年同社入社。ホットメルト開発部長、研究開発部長を経て2025年5月より現職。
本田 幹夫 取締役(常勤監査等委員) 1986年同社入社。総務部総務課長、赤穂工場業務課長、総務部長を経て2022年5月より現職。


社外取締役は、酒井浩志(元レゾナック取締役常務執行役員CTO)、中上幹雄(澤田・中上・森法律事務所代表弁護士)、中塚秀聡(元大阪国税局国際調査審理官・税理士)、冨士ひろ子(元大丸松坂屋百貨店執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「東南/南アジア」「北米」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内においては、特殊潤滑油(難燃性作動液、ダイカスト用油剤等)、合成潤滑油、素材(流動パラフィン等)、ホットメルト接着剤、エネルギーデバイス材料の製造・販売を行っています。自動車産業や衛生材料業界などが主な顧客です。

収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は主にMORESCOが行っており、自動車用ブレーキ液・不凍液については関連会社のエチレンケミカルが製造・販売を行っています。

(2) 中国


中国市場向けに、特殊潤滑油やホットメルト接着剤の製造・販売を行っています。自動車産業の拡大や衛生材料の需要に対応し、現地での生産体制を構築しています。

製品の販売代金が収益源となります。特殊潤滑油の製造は莫莱斯柯花野圧鋳塗料(上海)有限公司および莫莱斯柯(浙江)功能材料有限公司が、販売は莫莱斯柯貿易(浙江)有限公司等が行い、ホットメルト接着剤は天津莫莱斯柯科技有限公司が製造・販売を行っています。

(3) 東南/南アジア


タイ、インドネシア、インド等の市場において、特殊潤滑油およびホットメルト接着剤の製造・販売を行っています。現地の自動車メーカーや紙おむつメーカー等の需要に応えています。

製品販売による収益が主となります。タイではMORESCO(THAILAND)CO.,LTD.、インドネシアではPT.MORESCO INDONESIA等が、インドではMORESCO HM&LUB INDIA PRIVATE LIMITEDがそれぞれ製造・販売を担っています。

(4) 北米


米国市場を中心に、特殊潤滑油の製造・販売を行っています。自動車産業向けの潤滑油需要等に対応しています。

製品販売による対価が収益源です。運営はMORESCO USA Inc.およびCROSS TECHNOLOGIES N.A. INC.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第63期の245億円から第67期には344億円まで拡大しています。利益面では、経常利益は10億円台から20億円前後で推移しており、増減を繰り返しています。当期純利益は第64期に高い水準を記録した後、変動が見られます。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 245億円 273億円 303億円 319億円 344億円
経常利益 10億円 20億円 10億円 18億円 18億円
利益率(%) 4.2% 7.4% 3.4% 5.7% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.6億円 17億円 9億円 13億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益の伸び率は売上高の伸び率を上回りました。営業利益率は微増しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 319億円 344億円
売上総利益 90億円 100億円
売上総利益率(%) 28.2% 29.0%
営業利益 12億円 14億円
営業利益率(%) 3.8% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が24億円(構成比28%)、支払運賃が9億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに売上高は増加傾向にあります。「日本」セグメントは増収増益となり、利益率も改善しました。「中国」は増収かつ大幅な増益を達成しました。「東南/南アジア」は増収ながら減益となりました。「北米」は大幅な増収となりましたが、利益は減少しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
日本 202億円 216億円 6億円 9億円 4.0%
中国 35億円 38億円 1億円 2億円 5.7%
東南/南アジア 67億円 69億円 3億円 2億円 3.2%
北米 14億円 21億円 2億円 1億円 5.1%
連結(合計) 319億円 344億円 12億円 14億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動によるキャッシュ・フローで安定的な資金獲得に努め、グループ各社の資金集約化による効率的な運用を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出が主な要因となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 29億円 28億円
投資CF -43億円 -12億円
財務CF 28億円 -17億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ユーザーのための研究開発」を経営理念のモットーとして掲げています。モノとモノとの接点における摩擦や摩耗などの境界領域におけるニーズに応える製品や技術を提供することで、社会に貢献できる企業を目指しています。

(2) 企業文化


コンプライアンス体制の根幹として「MORESCO行動憲章」を定め、法令遵守や社会的要請への対応を企業活動の基本としています。また、全ての社員が能力を最大限発揮できる環境づくりを重視し、多様性・公平性・包摂性を尊重する文化の醸成に努めています。人材には「プロフェッショナル志向」「自由な発想」「共感力と巻き込む力」「挑戦し続ける姿勢」を求めています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までの3年間を対象とする「第10次中期経営計画」を推進しており、最終年度である2026年度の数値目標を設定しています。

* 売上高:380億円
* 営業利益:27億円
* 経常利益:30億円
* ROE:8%水準
* 連結配当性向:30%以上
* MGS(MORESCO Green SX)製品の売上比率:40%

(4) 成長戦略と重点施策


「持続可能な社会の実現」と「事業の付加価値の向上」の両立をテーマに、サステナビリティ経営の推進や製品ポートフォリオの高度化を図ります。具体的には、環境貢献製品(MGS)の拡充、半導体分野でのPFASフリー潤滑剤の開発、マテリアルリサイクルの推進、次世代事業(ライフサイエンス、エネルギーデバイス材料)の創出、生成AI活用による業務プロセスの革新に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「『持続可能な社会の実現』と『中長期的な企業価値の向上』の両立」を目指し、社員の能力と意欲を最大限発揮できる成長支援と環境づくりを重視しています。「プロフェッショナル志向」「自由な発想」等のマインドを持つ人材を育成し、多様性・公平性・包摂性を尊重した組織文化を醸成することで、常識の枠を広げる人材の活躍を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 44.3歳 14.5年 6,899,187円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.7%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 82.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 66.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外市場での展開


中国、タイ、インドネシア、米国、インド等に拠点を展開しており、海外売上高比率は4割を超えています。各国の景気変動、為替変動、政治情勢の変化、災害・疫病、法規制の変更等が、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 気候変動


気候変動を重要な経営課題と認識しており、移行リスク(コスト上昇、市場変化)や物理的リスク(サプライチェーン寸断等)が事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。一方で、環境課題への対応を新たな機会とも捉え、サステナビリティ課題への積極的な取り組みを進めています。

(3) 製品の製造に関するリスク


国内外の生産拠点が自然災害、パンデミック、事故等により稼働停止した場合、製品供給が困難になる可能性があります。また、特定製品の生産が一部拠点に集中している場合や、外部委託先の状況変化により、生産能力や供給に支障が生じるリスクがあります。

(4) 原料購入に伴うリスク


主要原料である潤滑油や石油化学製品等は原油・ナフサ価格の変動の影響を受けます。価格高騰や災害・事故による供給停止、サプライヤーの再編等により原料調達に支障が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。価格転嫁や調達先の多様化で対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。