トーヨーアサノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーヨーアサノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーヨーアサノは東証スタンダードおよび名証メイン市場に上場する企業です。コンクリート二次製品の製造・販売や工事請負を行う基礎事業と、不動産賃貸事業を主力としています。直近の業績では、コンクリートパイルの需要低迷や工事着工の遅れなどの影響により、売上高が減少し当期純損失を計上する減収減益となっています。


※本記事は、トーヨーアサノの有価証券報告書(第83期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーヨーアサノってどんな会社?


コンクリートパイルなどの二次製品の製造・販売や工事請負、および不動産賃貸事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1951年に東洋パイルヒューム管製作所として設立し、コンクリートパイルとヒューム管の製造販売を開始しました。1962年に東証二部へ上場し、1997年に東扇アサノポールと合併して現在のトーヨーアサノに商号変更しました。2022年に東証スタンダード市場へ移行し、2024年には名証メイン市場にも上場しています。

現在の従業員数は連結で179名、単体で139名です。筆頭株主は不動産賃貸事業等を行う関係会社の直木商事で、第2位は事業会社である太平洋セメント、第3位はトーヨーアサノ取引先持株会です。

氏名 持株比率
直木商事 28.36%
太平洋セメント 13.22%
トーヨーアサノ取引先持株会 7.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は植松泰右氏が務めており、社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
植松泰右 代表取締役社長 東京放送入社。トーヨーアサノ経理部管理課長、パイル営業本部副本部長、取締役執行役員等を経て2015年より現職。東商代表取締役社長も兼務。
杉山康彦 常務取締役パイル営業本部長 トーヨーアサノ入社。パイル営業本部開発営業部長、同副本部長、取締役執行役員パイル営業本部長などを経て2019年より現職。
杉山敏彦 取締役管理本部長 トーヨーアサノ入社。総務部部長、執行役員管理本部長、取締役執行役員管理本部長を経て2020年より現職。
西村裕 取締役技術部長 トーヨーアサノ入社。技術部副部長、技術部部長、執行役員技術部長を経て2022年より現職。
木下年久 取締役東京工場長 トーヨーアサノ入社。開発営業部部長、執行役員パイル営業本部副本部長等を経て2022年より現職。TAパイル製造代表取締役社長も兼務。
有森国三 取締役工事部長 トーヨーアサノ入社。神奈川営業所所長、工事部部長、執行役員パイル営業本部副本部長などを経て2022年より現職。
石村耕一 取締役(常勤監査等委員) 静岡銀行入社。静銀リース取締役常務執行役員等を経てトーヨーアサノ顧問に就任。内部監査室長を経て2025年より現職。


社外取締役は、星野馨(銀座誠和法律事務所弁護士・監査等委員長)、勝又康博(勝又公認会計士事務所開設)、桝田好一(元警察庁交通局長)、中村藤雄(太平洋セメント執行役員セメント事業本部営業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基礎事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

基礎事業


コンクリート二次製品であるパイルの製造・販売および建材の仕入・販売、ならびにこれらに付随する工事請負を提供しています。主に建設市場における設計事務所やゼネコン、販売会社などを顧客として展開しています。

収益源は、顧客に販売する製品の代金や請け負った工事の代金です。運営は主にトーヨーアサノが製品の製造・販売や工事請負を行い、TAパイル製造が製品の出荷および構内作業を担い、東商がセメント資材や継手金具の仕入を行っています。

不動産賃貸事業


自社グループで所有している不動産を顧客に賃貸するサービスを提供しています。主に静岡県沼津市のショッピングセンターをはじめとする商業施設や土地を対象として事業を展開しています。

収益源は、テナント顧客から受け取る不動産の賃貸料です。事業の運営は、トーヨーアサノおよび子会社の東商が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は減少傾向にあります。特に直近の事業年度では、コンクリートパイルの需要低迷や工事着工の遅延などが影響し、大きく減収となりました。利益面でも、売上高の減少による固定費負担の増加や貸倒引当金繰入額の計上により、経常利益が減少し当期純損失を計上しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 178億円 183億円 151億円 144億円 117億円
経常利益 2億円 2億円 9億円 6億円 0億円
利益率(%) 1.0% 1.1% 6.0% 4.1% 0.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 -2億円 6億円 4億円 -2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の低下に伴い売上総利益率も減少しています。販売費及び一般管理費についてはコスト削減を進めているものの、売上の減少幅が大きく、営業利益および営業利益率は前年度から大きく低下する結果となりました。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 144億円 117億円
売上総利益 27億円 20億円
売上総利益率(%) 18.9% 17.5%
営業利益 6億円 1億円
営業利益率(%) 4.2% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が7億円(構成比35%)、役員報酬が1億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメントごとの売上高を見ると、主力である基礎事業において、全国的な需要の低迷や主力商圏での競争激化の影響を受け、売上高が大きく落ち込んでいます。一方で、不動産賃貸事業については安定したテナント需要を背景に、売上高は前年度とほぼ同水準を維持し、安定的に推移しています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
基礎事業 142億円 115億円
不動産賃貸事業 2億円 2億円
連結(合計) 144億円 117億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業の営業活動で得た資金を使って借入金の返済を進めつつ、投資活動も手元資金の範囲内で賄っている「健全型」の状況にあります。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-5.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF -15億円 15億円
投資CF -11億円 -4億円
財務CF 24億円 -3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「顧客第一」「合理追求」「人倫遵守」の3つを掲げています。「顧客第一」は仕事を通じて社会の発展に貢献するという基本概念であり、「合理追求」は科学的な思考を徹底して事業を前に進める手段です。また、「人倫遵守」は人と人との道徳的秩序を意味し、事業を進める上での要として位置づけています。

(2) 企業文化


社是において具体的な心構えを定めており、人材や仕事に対する基本的な考え方を反映しています。働くことを通じて社会とつながり、会社での経験が人生において有意義な経験となるような働き方を重視しています。これらを通じて、顧客満足を追求し、社会の発展に貢献する文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


第8次中期経営計画(2025~2027年度)「TAFCO Reform & Advance」を策定し、実行しています。財務の安定性向上に取り組み、中長期的な目安として自己資本比率30%を目指しています。また、収益性指標として「自己資本利益率(ROE)」を重要指標と位置づけています。

・自己資本比率:30%
・ROE:株主資本コストを上回る水準(中長期的な目標として8%)

(4) 成長戦略と重点施策


利益率の改善・安定を目的とした「Reform戦略」と、成長投資を適切に組み合わせて管理・実行する「Advance戦略」を柱としています。短期的な経営環境の変化に対して有効な施策を実行しつつ、中長期的には基礎市場に経営資源を集中させます。特に、技術開発、人的資本、事業基盤の強化といった無形資産領域への投資を着実に実行していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人事政策に関する基本方針(TAFCO-HR戦略)」を定め、「安心」「公正」「成長」をコンセプトとしています。終身雇用や充実した福利厚生による安定した雇用環境の提供、公正な評価制度による健全な競争環境の醸成、および個人のキャリア形成支援を通じて、社員の意欲を引き出し持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 46.3歳 14.1年 5315000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※男女賃金差異については、女性活躍推進法の規定による公表項目として同社が選択していないため有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主力商圏での販売環境の変化

主力事業である基礎事業は、建設市場などの需要動向に大きな影響を受けます。需要が想定を下回って推移し、競争激化を伴う場合には、販売量や販売価格の低下を通じて、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料およびエネルギー価格の高騰

主要原材料であるセメントや鋼材、LNGなどは市場価格の影響により大きく変動します。仕入業者との対話を通じて価格低減に努めていますが、市場価格の上昇が想定を超えた場合、収益を圧迫し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 有利子負債にかかる金利変動

工場リニューアルや新本社建設などを金融機関からの借入金により実施しており、有利子負債残高を有しています。着実な返済計画を立てていますが、市場金利が大きく変動し想定を超えて高騰した場合、金利負担の増加により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 顧客の経営状況悪化による貸倒れ

与信会議を中心とした管理システムにより、貸倒れの未然防止に努めています。しかし、販売先の急激な経営状況の悪化などによる貸倒れリスクを完全に排除することは困難であり、多額の貸倒れが発生した場合には、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。