トーヨーアサノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トーヨーアサノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メイン上場。コンクリート二次製品(パイル)の製造・販売および工事請負を主力とする。直近決算では、主力商圏での出荷量減少や工事着工遅れ等の影響を受け、売上高は減収、利益面でも大幅な減益となった。


#記事タイトル:トーヨーアサノ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社トーヨーアサノ の有価証券報告書(第82期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トーヨーアサノってどんな会社?


コンクリートパイルの製造・販売・施工を一貫して行う基礎事業と、遊休地を活用した不動産賃貸事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1951年に東洋パイルヒューム管製作所として設立され、1962年に東証二部へ上場しました。1997年に東扇アサノポールと合併し、現商号であるトーヨーアサノへ変更しました。2022年の東証市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行した後、2024年2月には名古屋証券取引所メイン市場への上場を果たしました。

連結従業員数は190名、単体では147名です。筆頭株主はその他の関係会社である東洋鉄工(28.36%)で、第2位は主要な取引先でもある太平洋セメント(13.22%)、第3位は取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
東洋鉄工 28.36%
太平洋セメント 13.22%
トーヨーアサノ取引先持株会 6.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は植松 泰右氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
植松 泰右 代表取締役社長 東京放送入社を経て同社入社。管理本部長などを歴任し、2013年代表取締役副社長。2015年5月より現職。東商代表取締役社長も兼務。
杉山 康彦 常務取締役パイル営業本部長 1994年同社入社。パイル営業本部開発営業部長、同副本部長、執行役員パイル営業本部長を経て、2019年3月より現職。
杉山 敏彦 取締役管理本部長 1986年同社入社。総務部部長、執行役員管理本部長などを経て、2020年3月より現職。
西村 裕 取締役技術部長 1998年同社入社。技術部部長、執行役員技術部長を経て、2022年5月より現職。
木下 年久 取締役東京工場長 1988年同社入社。開発営業部部長、執行役員東京工場長を経て、2022年5月より現職。TAパイル製造代表取締役社長も兼務。
有森 国三 取締役工事部長 1993年同社入社。神奈川営業所所長、執行役員工事部長を経て、2022年5月より現職。
石村 耕一 取締役(常勤監査等委員) 静岡銀行入社。同行営業推進部長、静銀リース取締役常務執行役員などを経て同社に入社し、内部監査室長を歴任。2025年5月より現職。


社外取締役は、星野 馨(弁護士)、勝又 康博(公認会計士)、桝田 好一(元警察庁交通局長)、中村 藤雄(太平洋セメント執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基礎事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

基礎事業


コンクリート二次製品であるパイル(杭)の製造・販売、および建材の仕入・販売を行っています。また、コンクリート二次製品に付随する諸工事の請負も手掛けており、製品の供給から施工までを一貫して提供できる体制を整えています。建設会社やゼネコンなどが主な顧客となります。

製品の製造・販売および工事請負による収益が主な柱です。同社が主体となって事業を行っていますが、製品の出荷および構内作業については連結子会社のTAパイル製造が行っています。また、セメント資材および継手金具の一部は、連結子会社の東商から仕入れています。

不動産賃貸事業


同社グループが保有する不動産を活用し、賃貸事業を行っています。静岡県沼津市の工場跡地を利用した大型貸店舗などが含まれ、安定的な収益源となっています。

テナントからの賃貸料収入が収益源です。運営は、同社および連結子会社の東商が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 164億円 178億円 183億円 151億円 144億円
経常利益 3.0億円 1.8億円 2.1億円 9.1億円 6.0億円
利益率(%) 1.8% 1.0% 1.1% 6.0% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.6億円 1.1億円 -1.9億円 6.0億円 3.6億円


売上高は2023年2月期まで増加傾向にありましたが、直近2期は減少しています。利益面では、2024年2月期に利益率が大きく改善しましたが、2025年2月期は減収に伴い減益となりました。当期利益は2023年2月期に赤字を計上しましたが、その後は黒字を維持しています。

(2) 損益計算書

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 151億円 144億円
売上総利益 28億円 27億円
売上総利益率(%) 18.6% 18.9%
営業利益 9.2億円 6.1億円
営業利益率(%) 6.1% 4.2%


減収の影響を受け、営業利益は前期比で減少しました。一方で、売上総利益率は若干改善しています。コスト面では、販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が7.4億円(構成比35%)、役員報酬が1.3億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
基礎事業 149億円 142億円 14.3億円 11.1億円 7.8%
不動産賃貸事業 2.1億円 2.0億円 0.8億円 1.2億円 61.7%
調整額 -0.0億円 -0.0億円 -5.9億円 -6.3億円 -
連結(合計) 151億円 144億円 9.2億円 6.1億円 4.2%


主力である基礎事業は、需要低迷や着工遅れの影響で減収減益となりました。一方、不動産賃貸事業は売上規模は小さいものの高い利益率を維持しており、当期は増益となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:勝負型
* 営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスの状態です。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 3.5億円 -15.3億円
投資CF -1.6億円 -11.5億円
財務CF -4.8億円 24.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%でスタンダード市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.0%で同市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「顧客第一」「合理追求」「人倫遵守」の3つを経営理念として掲げています。「顧客第一」と「合理追求」を事業推進の両輪とし、「人倫遵守」をそれらを繋ぐ車軸と位置づけ、顧客満足の追求を通じて社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「社是」において、経営理念よりも具体的な心構えを定めています。売上高と利益の成長を志向するとともに、働くことを通じて社会とつながり、同社での経験が人生において有意義なものとなるよう、人材や仕事に対する基本的な考え方を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


第8次中期経営計画(2025~2027年度)において、利益率の改善・安定を目的とした「Reform戦略」と、成長投資の管理・実行を目的とした「Advance戦略」を推進します。財務面では、株主資本コストを上回るROEの実現と、長期的目安として自己資本比率30%を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


基礎市場の潜在需要は底堅いと判断し、経営資源を基礎事業に集中させます。具体的には、技術開発、人的資本、事業基盤の強化の3つを重点領域とし、既存の工場設備や基幹システムの更新に加え、無形資産への投資を強化します。また、省エネ化やデジタル化など事業基盤を支える投資も計画的に実行する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「TAFCO-HR戦略」として、①安心、②公正、③成長をコンセプトとした人事政策を掲げています。終身雇用や福利厚生を通じた安心感の醸成、公正な評価制度による健全な競争環境の構築、そして社員一人ひとりのキャリア形成支援を通じて、組織の活性化と持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 45.6歳 13.5年 5,611,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※「労働者の男女の賃金の差異」については、女性活躍推進法の規定による公表項目として同社が選択していないため記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 販売環境・市場変化に係わるリスク


主力事業である基礎事業は、建設市場の動向に強く影響を受けます。需要が想定を下回った場合、販売量や価格の変動を通じて、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格に係わるリスク


セメント、鋼材、LNGなどの主要原材料やエネルギー価格は市場の影響を受けやすく変動します。市場価格の高騰などにより調達コストが上昇した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 金利変動に係わるリスク


設備投資や新本社建設などで金融機関からの借入を行っており、有利子負債残高は85億円(当連結会計年度末)となっています。市場金利が想定を超えて上昇した場合、支払利息の増加などを通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 与信管理に係わるリスク


与信管理システムにより貸倒れ防止に努めていますが、販売先の急激な経営悪化などによるリスクを完全に排除することは困難です。貸倒れが発生した場合、その規模によっては業績に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。