ダイケン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイケン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイケンは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、建築金物や外装建材、エクステリア製品の製造販売を主力としています。直近の決算では、エクステリア製品の伸長や価格改定により増収となりましたが、原材料価格の高止まりや円安進行によるコスト増が響き、経常利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社ダイケン の有価証券報告書(第77期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイケンってどんな会社?


建築金物やエクステリア製品の製造販売を行う独立系メーカーです。高い自己資本比率を誇る安定した財務基盤が特徴です。

(1) 会社概要


同社は1924年に藤岡製作所として創業し、1948年に法人化されました。1963年に現在の社名であるダイケンに変更し、鋼製組立物置の開発製造に着手しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は329名です。筆頭株主は創業家出身で社長の藤岡洋一氏で、第2位は取引先の持株会、第3位は資産管理業務を行うりそな銀行となっています。

氏名 持株比率
藤岡洋一 20.30%
ダイケン取引先持株会 8.50%
りそな銀行 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は藤岡洋一氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤岡洋一 取締役社長代表取締役 住友林業を経て、1992年に同社入社。常務、副社長を経て2007年より現職。
岡森正寛 常務取締役製造本部長 1983年入社。兵庫工場長、製造管理部長などを歴任し、2024年より現職。
小野雅行 常務取締役営業本部長 1988年入社。東京支店長、営業本部副本部長などを経て、2025年より現職。
白岩和哉 取締役マーケティング本部長 1994年入社。大阪支店長、マーケティング本部長などを歴任し、2025年より現職。
小林勉 取締役管理本部長 りそな銀行出身。内部監査室部長代理、常勤監査役、経理部長を経て2025年より現職。


社外取締役は、有田真紀(公認会計士・税理士)、川合雄治(スイデン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築関連製品」および「不動産賃貸」事業を展開しています。

建築関連製品


ハンガーレールなどの建築金物、物置や自転車ラックなどのエクステリア製品、天井点検口やルーバーなどの建築建材の製造販売および施工・取付工事を行っています。

収益は、主に建設業者や金物店、ホームセンターなどの顧客からの製品販売代金および工事代金によって構成されています。運営は主にダイケンが行っています。

不動産賃貸


単身者向け賃貸マンション「アメニティ新高」および貸店舗の運営を行っています。

収益は、入居者およびテナントからの賃貸料収入によって構成されています。運営は主にダイケンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で底堅く推移しており、直近では110億円まで伸長しています。一方、経常利益は原材料価格の高騰や為替の影響を受け変動しており、利益率は3〜4%台で推移しています。自己資本比率が高く、財務の安定性は維持されています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 101億円 99億円 106億円 109億円 110億円
経常利益 4億円 4億円 5億円 5億円 3億円
利益率(%) 4.3% 3.9% 4.5% 4.5% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 3億円 3億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は横ばいとなりました。さらに、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は減少しています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 109億円 110億円
売上総利益 33億円 33億円
売上総利益率(%) 30.5% 30.3%
営業利益 4億円 3億円
営業利益率(%) 4.1% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10億円(構成比33%)、運搬費が6億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


建築関連製品事業は、エクステリア製品などが好調で増収となりましたが、コスト増により減益となりました。不動産賃貸事業は、大規模改修による費用増などで微減益となりました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
建築関連製品 107億円 109億円 7億円 6億円 5.2%
不動産賃貸 2億円 2億円 1億円 1億円 54.5%
連結(合計) 109億円 110億円 4億円 3億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイケンは、営業活動で資金を生み出し、事業投資に充当し、株主への配当を実施しています。

営業活動では、本業で得た利益や減価償却費などが主な収入となり、棚卸資産の増加や仕入債務の減少、税金支払いの影響を受けました。投資活動では、主に事業に必要な設備投資を行いました。財務活動では、株主への配当金の支払いが主な支出となりました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF -2億円 3億円
投資CF -5億円 -6億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、金属製品の製造販売を通した「豊かな環境と住まいづくり」の実践により社会の役に立つことを経営理念としています。多様性と変化の速度が増す現代において、環境に適応し、社会課題の解決に貢献していくことを方針としています。

(2) 企業文化


人間尊重を第一義とし、「常にかよいあう息の心、助け合いの心、感謝の心を大切に信頼を基」とすること、また「みんなで相談みんなで実行」を社是として掲げています。従業員一人ひとりが働きやすさと働きがいを持てる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


収益性を改善するため、変化し続ける社会に応える高付加価値製品の提供により、高い収益を獲得することに取り組んでいます。改善を判断する指標として、以下を重要視しています。

* 限界利益(売上高から変動費を控除した利益)
* 売上高経常利益率

(4) 成長戦略と重点施策


人口減少により縮小傾向にある国内市場において、新分野・新市場の開拓を進めるとともに、強みのある商材に注力し、自社製品の価値を高める戦略を掲げています。

* 既存製品の改良による利用用途の拡大や新製品による新分野開拓
* 海外市場における知名度拡大と市場開拓
* 部品・部材の共通化やシステム統一による原価低減
* 不動産賃貸における法人テナントの早期獲得と入居率維持

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員一人ひとりが働きやすさと働きがいを持てる会社に」という目標を掲げ、従業員の成長を支援する機会の提供や、従業員と企業が持続的に成長できる環境の実現を目指しています。女性が活躍できる環境づくりや積極的な採用、健康経営の実践にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 42.5歳 15.2年 5,867,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.8%
男女賃金差異(正規雇用) 81.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒及び中途採用に占める女性労働者の割合(21.4%)、有給休暇取得率(75.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による影響


事業活動のほとんどを国内市場で展開しており、国内の建設および住宅建築市場に大きく依存しています。公共投資や設備投資の減少、少子高齢化による住宅需要の縮小など、国内経済の動向によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料等の調達リスク


製品製造の主な材料であるアルミ、ステンレス、スチール等の価格は市況の影響を受けます。投機的な変動や地政学的な情勢変化により原材料価格が高騰したり、サプライチェーンの停滞により確保が困難になった場合、コスト増大などにより業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定顧客への依存


幅広い顧客獲得に努めていますが、売上高の約20%を杉田エース株式会社に依存しています。同社の事業方針の変更や業績変化があった場合、売上高や売上債権の評価などを通じて、ダイケンの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 労働力不足と物流費高騰


依然として続く人手不足による建築工事物件の減少リスクや、高止まりが続く物流費などのコスト増加を認識しています。これらは厳しい経営環境をもたらす要因となり得ます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。