※本記事は、JMACS株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JMACSってどんな会社?
同社は、電線・ケーブルの専業メーカーとして、防災・通信・計装制御等の分野で製品を展開しています。
■(1) 会社概要
1965年に日本電線工業として設立され、通信用屋内電線の製造を開始しました。1989年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年の市場統合に伴い東京証券取引所市場第二部へ移行しました。2015年には現在の社名に変更しています。近年では生産拠点の再編を進め、2024年には東京営業所を閉鎖するなど、経営効率化に取り組んでいます。
同社(単体)の従業員数は100名です。筆頭株主は創業家出身の役員が株式を保有する資産管理会社で、第2位は大手証券会社、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日電ホールディングス | 29.13% |
| 野村證券 | 9.07% |
| 青木さち子 | 5.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は植村剛嗣氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 植村 剛嗣 | 代表取締役社長 | 1975年入社。製造部長、営業部長、専務取締役開発部長などを経て、2005年より社長。2014年より現職。 |
| 植村 瑠美 | 専務取締役 | 2010年入社。国際営業部部長、営業管理部部長、取締役営業推進部長などを経て、2024年より現職。 |
| 掘井 尚登 | 取締役(監査等委員) | 1984年入社。製造技術本部長、常務取締役電線営業本部長などを歴任。2020年より現職。 |
社外取締役は、住吉正充(元リケンテクノス代表取締役専務)、阿登靖紀(あと法務司法書士事務所代表)、秋重好亜(鈴木鋼材取締役)、久木田佳代(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電線事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■電線事業
防災用電線、通信用ケーブル、計装・制御用ケーブル、およびその他の弱電用電線の製造・販売を行っています。主要製品は、工場の自動化設備や通信インフラ、ビルの防災設備などで使用される産業用・インフラ用のケーブルです。特に、顧客ニーズに合わせた高機能・高付加価値製品の開発に注力しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取る代金から成ります。主な販売先は電線商社などの代理店であり、特定の顧客(泉州電業)への販売割合が高くなっています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は50億円前後で推移しており、直近の2025年2月期は前期比で微減となりました。利益面では、経常利益は減少傾向にありますが、当期純利益は特別損失の減少等により増益となっています。全体として、厳しい市場環境の中で利益確保に努めている状況です。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 51億円 | 53億円 | 52億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 2.3億円 | 1.4億円 | 1.1億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 4.6% | 2.6% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 2.1億円 | 0.7億円 | 1.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上原価の低減等により、売上総利益率は一定水準を維持しています。営業利益は販管費の抑制に努めましたが、売上総利益の減少をカバーしきれず減益となりました。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 53億円 | 52億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.0% | 21.2% |
| 営業利益 | 0.8億円 | 0.7億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が1.8億円(構成比18%)、給料及び手当が1.5億円(同15%)を占めています。売上原価においては、材料費が31億円(売上原価比76%)と大半を占めており、原材料価格の変動が利益に与える影響が大きい構造です。
■(3) セグメント収益
全セグメントで減収となりました。特に「その他」区分の減少幅が大きくなっています。「防災用ケーブル」は増加しましたが、「計装・制御用ケーブル等」の減少が全体に影響しました。単一セグメントですが、製品区分ごとの売上状況は以下の通りです。
| 区分 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) |
|---|---|---|
| 防災用ケーブル | 10億円 | 11億円 |
| 通信用ケーブル等 | 8億円 | 8億円 |
| 計装・制御用ケーブル等 | 29億円 | 27億円 |
| その他 | 7億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 53億円 | 52億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを確保しました。財務活動によるキャッシュ・フローが大幅なプラスとなっていますが、これは主に借入金の増加と新株発行による資金調達によるものです。調達した資金により手元流動性を高めています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.5億円 | 1.4億円 |
| 投資CF | -6.9億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | 8.6億円 | 10.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、経営方針として「挑戦!」を掲げています。この方針のもと、顧客のニーズに合致した製品の開発・販売に注力し、販路の拡大に努めることを基本としています。変化する市場環境の中で、常に新しい価値の創造に挑み続ける姿勢を示しています。
■(2) 企業文化
同社は「人物主義」を掲げ、国籍、人種、性別を問わず、各従業員の発揮能力および成果に基づいた人事評価を行う文化を持っています。また、人材育成と適材適所の配置による組織強化を図り、企業価値の持続的な向上を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値および株主共同の利益を確保・向上させるため、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 自己資本当期純利益率(ROE):5.0%以上
* 1株当たり当期純利益(EPS):24.10円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内需要が縮小傾向にある中、「スピードと技術」の短納期対応を武器として、価格競争を回避し収益性を高める戦略をとっています。具体的には、生産能力の向上と効率化を図るとともに、高付加価値製品の開発・販売を推進しています。また、原材料価格や送料の高騰に対しては、適正な販売価格の提示を行うことで対応していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人物主義に基づき、能力と成果による評価を行う方針です。OJTや階層別教育、自己啓発支援を通じて専門能力の底上げを図りながら、組織の成長を支える人材育成を進めています。また、年間休日130日以上を確保するなど、働きやすい職場環境の整備にも力を入れています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 46.7歳 | 17.8年 | 5,695,756円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向による影響
同社の営業収入は日本国内の需要に大きく依存しています。特にメタル電線においては、建設業界や情報通信業界、電気機械業界などの内需の変動が、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動
主要製品の材料である銅や、ビニル、ポリエチレンなどの石油製品価格は国際市況の影響を強く受けます。これらの材料価格が急激に変動した場合、コスト増などを通じて経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 大規模災害による影響
同社の生産設備および物流設備は兵庫工場(兵庫県加東市)に集中しています。これらの工場は隣接しているため、同地域で地震等の大規模災害が発生し操業が停止した場合、製品供給が滞り、経営成績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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