※本記事は、JMACS株式会社の有価証券報告書(第62期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JMACSってどんな会社?
防災用ケーブルや計装・制御用ケーブルなど、多様なニーズに応える各種電線の製造と販売を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1965年に創業者により日本電線工業として設立され、通信用屋内電線の製造販売を開始しました。その後、消防用耐熱電線や計装用ケーブルなど製品群を拡大し、1989年に大阪証券取引所市場第二部に上場。2015年に現在のJMACSへ商号を変更しました。現在は兵庫工場に生産拠点を集約し効率化を進めています。
単体従業員数は112名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の植村剛嗣氏および専務取締役の植村瑠美氏の資産管理会社である日電ホールディングスで、第2位は青木さち子氏、第3位は事業会社である泉州電業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日電ホールディングス | 29.13% |
| 青木さち子 | 5.53% |
| 泉州電業 | 4.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は植村剛嗣氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 植村剛嗣 | 代表取締役社長 | 1975年入社。製造部長等を経て1990年代表取締役社長に就任。営業部門担当等を歴任し、2014年より現職。 |
| 植村瑠美 | 専務取締役 | 2010年入社。国際営業部部長や営業推進部長等を歴任。2021年専務取締役管理部管掌を経て、2024年より現職。 |
| 掘井尚登 | 取締役(監査等委員) | 1984年入社。品質保証課長や製造技術本部長、電線事業部営業本部長等を歴任し、2020年より現職。 |
社外取締役は、住吉正充(元リケンテクノス代表取締役専務執行役員)、阿登靖紀(行政書士事務所Garden開設)、秋重好亜(鈴木鋼材取締役)、久木田佳代(元有限責任あずさ監査法人)です。
2. 事業内容
同社は、「電線事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 防災用ケーブル
消防用耐熱電線や耐火電線など、火災時等の非常用設備に向けた防災用ケーブルの製造と販売を行っています。短納期対応を強みに、顧客ニーズに合った製品を迅速に開発・提供しています。
収益は、建設現場やプラント等の需要家および電材卸売業者に対する製品の販売代金から得ています。製品の引き渡しや検収時点で収益を認識しており、運営は同社が行っています。
■(2) 通信用ケーブル等
データセンターや大容量LAN配線システムなどで使用される通信用ケーブルや高強度光ファイバーケーブルの製造と販売を行っています。高難燃化や細径化など多様なニーズに対応しています。
情報通信分野のインフラ整備に向けた製品販売が主な収益源であり、顧客への販売代金を収益として計上しています。運営は同社が行っています。
■(3) 計装・制御用ケーブル等
ファクトリーオートメーションなどの産業用分野や、再生エネルギー向けの環境・エネルギー分野で使用される計装・制御用ケーブルの製造と販売を行っています。
工作機械や産業用ロボット等の可動配線向けや省配線化などのカスタマイズ製品の販売代金が収益の柱となっています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は48億円から60億円へと順調に拡大しており、増収傾向が続いています。利益面では一時的な踊り場があったものの、直近の当期は経常利益、当期純利益ともに大きく伸びており、収益性が大幅に改善していることが分かります。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 51億円 | 53億円 | 52億円 | 60億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 2.3億円 | 1.4億円 | 1.1億円 | 5.4億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 4.6% | 2.6% | 2.2% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 2.1億円 | 0.7億円 | 1.2億円 | 4.0億円 |
■(2) 損益計算書
2025年2月期から2026年2月期にかけて、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、売上総利益率も大きく改善しています。これにより、販売費及び一般管理費の増加を吸収して営業利益が大幅に増加しました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 60億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.2% | 27.6% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 5.0億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.9億円(構成比16%)、役員報酬が1.5億円(同13%)、運賃が1.5億円(同13%)を占めています。売上原価のうち、材料費が33億円(構成比76%)、経費が6.0億円(同14%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は電線事業の単一セグメントであるため、売上高は全体業績と一致しています。データセンター向け等の活発な投資需要を背景に増収となりました。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 電線事業 | 52億円 | 60億円 |
| 連結(合計) | 52億円 | 60億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で生み出したキャッシュで投資と借入返済を行っており、財務の健全性が高い状態を示しています。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.4億円 | 13億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | 10億円 | -8.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「100年企業を目指し、継続的な企業価値の向上」を目標として掲げています。既存の方法にとらわれず、多方面で工夫や業務改善に取り組み、顧客ニーズに合った製品開発と販売を通じて社会に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「スピードと技術」による短納期対応を武器としており、原価低減や多能工化など、現状に満足せず継続的に改善を追求する文化があります。適材適所の配置による組織強化を図り、収益力や製造力の強化を牽引する人材の育成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値および株主共同の利益を確保・向上させるための客観的な経営指標として、自己資本当期純利益率(ROE)および1株当たり当期純利益(EPS)を重視しています。
* ROE 5.0%以上
* EPS 24.10円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内需要が縮小する厳しい環境のなか、価格競争を避けて収益性を高めることに注力しています。取引先との連携強化に努めるとともに、人材教育を強化し生産能力の向上と効率化を図っています。
* プラント案件の受注獲得と販路拡大
* 付加価値の高い製品の開発・販売
* 原材料や送料の高騰に対する適正な販売価格の提示
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
国籍、人種、性別を問わず人物主義で各従業員の発揮能力および成果に基づいた人事評価と処遇を行っています。OJTや階層別教育、自己啓発の支援等を通じて専門能力の底上げを図り、各部門の成長を支える人材育成を進め、社員個々に自己実現の機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 44.3歳 | 16.8年 | 5,753,446円 |
※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与が含まれております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社は関連法令の規定による公表義務の対象ではないため、一部項目の有報における記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間休日(130日以上)、所定休日(125日)、有給休暇の義務化取得日数(5日以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向による影響
同社の営業収入は日本国内における需要に大きく影響を受けます。特にメタル電線においては、建設電販、情報通信、電気機械など内需の変動が経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 材料価格の変動
主要製品の材料として使用される銅、石油製品であるビニルやポリエチレンなどは、国際市況に大きく影響されます。材料価格の急激な変化は、同社の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 販売価格の競争激化
事業を展開する市場において、価格競争力の強化に努めていますが、販売価格面において競争優位に展開できる保証はありません。常に厳しい価格競争に晒されており、収益性に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 大規模災害による影響
同社は兵庫工場(生産設備)、物流設備、本部棟の3工場体制ですが、これらの工場は隣接しています。地震等の大規模災害が発生し、操業が停止した場合、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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