東京衡機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京衡機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場上場。試験機事業とエンジニアリング事業を展開する老舗メーカー。第119期は、試験機事業が堅調に推移し増収を確保したものの、体制強化に伴う先行投資や監査対応費用の発生等により、大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社東京衡機の有価証券報告書(第119期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京衡機ってどんな会社?


1923年創業の試験機メーカーで、社会インフラの安全・安心を支えるエンジニアリング事業も展開しています。

(1) 会社概要


1923年に合資会社東京衡機製造所として創立し、試験機等の製造販売を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場。2013年に東京衡機に社名変更しました。2015年に試験機事業を連結子会社へ、2017年にはエンジニアリング事業を新設子会社へそれぞれ移管し、事業体制を再編しています。

同グループの連結従業員数は127名、単体従業員数は21名です。筆頭株主は投資事業やコンサルティング事業を行うDream Bridge株式会社で、第2位は個人株主、第3位は有限会社です。

氏名 持株比率
Dream Bridge 30.01%
山下 秀子 3.28%
スマート 2.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は小塚英一郎氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
小塚 英一郎 取締役社長(代表取締役) 富士銀行(現みずほ銀行)入行後、みずほキャピタルや投資会社の代表取締役を経て、2023年より現職。
伊集院 功 取締役管理担当 富士銀行(現みずほ銀行)入行後、ヤザワコーポレーション管理本部長、スモール・プラネット経営管理部長等を経て、2023年より現職。
鈴木 妥 取締役事業推進担当 道南ナショナル住宅設備機器入社後、パナソニック電工ホームエンジニアリング取締役、アサヒ融雪代表取締役等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、渡辺樹一(元アイダエンジニアリング子会社監査室長)、松野絵里子(弁護士)、西谷敦(弁護士)、中野陽介(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「試験機事業」および「エンジニアリング事業」事業等を展開しています。

(1) 試験機事業


試験・計測機器の製造販売に加え、海外の業務提携先製品の輸入販売および受託試験を行っています。自動車、鉄鋼、重工業業界などの顧客に対し、標準製品からオーダーメイドの特殊製品まで幅広く提供しています。

収益は、顧客への製品販売代金や試験機の修理・校正・メンテナンスサービス料等から得ています。運営は主に株式会社東京衡機試験機が行い、関連会社の株式会社ZR東京衡機サービスが保守サービス・メンテナンスを担当しています。

(2) エンジニアリング事業


自社で生産施設を持たないファブレスメーカーとして、ゆるみ止めナット、ゆるみ止めスプリング、その他の締結部材の開発、設計および販売並びに知的財産権の保有を行っています。道路、建築、鉄道、電力業界などのインフラ市場が主な顧客です。

収益は、顧客への製品販売代金から得ています。製造は外部に委託しており、運営は株式会社東京衡機エンジニアリングが行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、グループ外への商事取引や不動産賃貸事業などが含まれます。

収益は、テナント等からの賃料収入等から得ています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円から40億円の範囲で推移しています。第117期には大幅な赤字を計上しましたが、第118期には黒字に回復しました。当期は増収となったものの、利益面では前期を下回り、利益率は低下しています。

項目 2021年2月期 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期
売上高 39億円 40億円 31億円 34億円 35億円
経常利益 3.7億円 3.0億円 1.5億円 1.4億円 0.4億円
利益率(%) 9.4% 7.4% 5.0% 4.1% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.5億円 1.4億円 -7.3億円 0.6億円 0.7億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価の増加に加え、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益率は低下しました。体制強化に伴う費用の増加が利益を圧迫した形となっています。

項目 2024年2月期 2025年2月期
売上高 34億円 35億円
売上総利益 12億円 12億円
売上総利益率(%) 36.0% 34.3%
営業利益 1億円 0.3億円
営業利益率(%) 3.9% 0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.6億円(構成比40%)、業務委託費が1.3億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


試験機事業はオーダーメイド製品の受注増やメンテナンスサービスの拡充により増収増益となりました。一方、エンジニアリング事業は前期の大口受注の一巡や体制強化費用の増加により減収となり、営業損失を計上しました。

区分 売上(2024年2月期) 売上(2025年2月期) 利益(2024年2月期) 利益(2025年2月期) 利益率
試験機事業 29億円 31億円 5億円 6億円 20.3%
エンジニアリング事業 5億円 4億円 0.9億円 -1億円 -34.2%
その他 0.0億円 0.2億円 -0.1億円 0.2億円 100.0%
調整額 - - -4億円 -5億円 -
連結(合計) 34億円 35億円 1億円 0.3億円 0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東京衡機は、財務活動において借入による資金調達を積極的に行い、事業運営に必要な資金を確保しています。営業活動では、売上債権や棚卸資産の増加が資金流出の要因となりました。一方、投資活動では、設備投資等により資金が流出しました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は減少しました。

項目 2024年2月期 2025年2月期
営業CF 2.2億円 -5.9億円
投資CF 1.9億円 -0.5億円
財務CF 0.4億円 1.6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「①技術への挑戦と顧客からの信頼、②人間性の尊重、③地域社会への貢献」を企業理念とし、「技術と知識で豊かな社会の実現に貢献する」ことを目指して経営を行っています。

(2) 企業文化


創業以来の試験機事業を通じて培った技術力で挑戦を続けるとともに、人間性を尊重し、地域社会への貢献を重視する文化があります。社会インフラの安全・安心を支える事業を展開し、誠実な企業活動を通じてステークホルダーからの信頼獲得に努めています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と安定的な収益確保による企業価値向上を目標としています。中長期的な経営指標として以下の数値を掲げています。

* 売上高成長率:10%以上
* 営業利益率:10%以上
* ROE(自己資本利益率):10%以上
* 粗利益率:35%以上
* 営業利益成長率:10%以上
* ROIC(投下資本利益率):7%以上
* PBR(株価純資産倍率):1倍超

(4) 成長戦略と重点施策


「未来志向の経営戦略」として、ハードとソフトを融合させた「デジタル化の推進」、高付加価値製品開発への「先行投資」、および「人財教育への投資」を掲げています。特にデジタルツイン技術の確立を目指し、提携企業の完全子会社化を進め、新たな収益の柱とする方針です。また、ガバナンスと内部管理体制の強化を最重要課題と位置づけ、再発防止策の徹底とコンプライアンス強化に努めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財育成ほど確実な投資はない」との考えのもと、高付加価値を生み出せる人材の育成に注力しています。階層別研修や専門研修に加え、自己啓発支援制度を整備しています。また、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進し、中途採用や管理職登用を積極的に行うとともに、働きがいのある職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年2月期 44.9歳 6.8年 6,119,252円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用) 77.8%
男女賃金差異(非正規) -


※非正規雇用の男女賃金差異は該当者がいないため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害・事故


地震や豪雨等の自然災害、火災等の事故により、設備の損壊や電力供給停止、周辺インフラの機能不全が生じた場合、生産活動が停止・停滞し、同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外での事業活動


海外における商品の仕入・販売を行っているため、為替レートの変動により円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、予期せぬ法律・規制の変更、地域紛争、感染症蔓延等による社会的・経済的混乱が生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品の欠陥


品質管理体制を強化していますが、予期せぬ欠陥やリコールが発生する可能性があります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながる製品の欠陥が発生した場合、多額のコストが発生し、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 新製品開発と他社との提携


新製品の投入遅れ等により市場ニーズに対応できないリスクがあります。また、海外有力メーカーとの販売契約等により最先端製品を供給する体制を構築していますが、不測の事態によりこれらの契約が継続しない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。