※本記事は、株式会社東京衡機の有価証券報告書(第120期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京衡機ってどんな会社?
東京衡機は1923年創業の老舗メーカーで、試験機や社会インフラ向け部材、デジタルソリューションを提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1923年に材料試験機などの製造販売を目的に創立されました。1961年に東京証券取引所に株式を上場し、2015年に試験機事業、2017年にエンジニアリング事業をそれぞれ分社化しました。近年では2025年に先端力学シミュレーション研究所を子会社化し、新たにデジタル事業を開始しています。
現在の従業員数は連結で185名、単体で21名です。筆頭株主は同社代表取締役が代表を務める投資会社のDream Bridgeで、第2位はSBI証券、第3位は個人投資家となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Dream Bridge | 29.90% |
| SBI証券 | 3.70% |
| 山下秀子 | 3.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は小塚英一郎氏が務めています。社外取締役は5名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小塚 英一郎 | 取締役社長(代表取締役) | 1987年富士銀行(現みずほ銀行)入行。富士銀キャピタル等を経て、2022年同社社外取締役就任。2023年3月より現職。 |
| 伊集院 功 | 取締役管理担当 | 1988年富士銀行入行。スモール・プラネット等の管理部門長を経て2023年同社入社。社長室長などを務め、2024年7月より現職。 |
| 鈴木 妥 | 取締役事業推進担当 | 1973年道南ナショナル住宅設備機器入社。パナソニック電工ホームエンジニアリング取締役等を経て、2024年5月より現職。 |
| 原田 秀人 | 取締役試験機担当 | 1994年JTトーシ入社。東京衡機試験機にて生産部門の要職や取締役COOを歴任し、2026年5月より現職。 |
| 竹内 秀太郎 | 取締役管理本部長 | 1991年日本農産工業入社。らでぃっしゅぼーややグランビスタホテル&リゾートの総務部長等を経て、2026年5月より現職。 |
社外取締役は、粕谷寿久(元ジャムコ常務執行役員)、大喜多治年(元ジャムコ代表取締役会長)、鶴由貴(弁護士)、出村真樹子(公認会計士)、清水美紀音(元検事・弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「試験機事業」「エンジニアリング事業」「デジタル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 試験機事業
重工業、鉄鋼、自動車メーカーや官公庁、研究機関を顧客とし、材料評価や安全基準対応を目的とした試験機・計測機器の製造販売および受託試験を提供しています。
顧客からの製品販売代金や修理・保守メンテナンス費用を収益源としています。開発から保守までのワンストップソリューションを提供し、運営は主に東京衡機試験機とZR東京衡機サービスが行っています。
■(2) エンジニアリング事業
道路、建築、鉄道、電力業界等の社会インフラ分野を顧客とし、ゆるみ止めナットやゆるみ止めスプリング、その他の締結部材の開発および設計を提供しています。
自社で生産施設を持たないファブレスメーカーとして製品を外部委託で製造し、顧客からの製品販売代金を収益源としています。運営は主に東京衡機エンジニアリングが行っています。
■(3) デジタル事業
大手自動車メーカーや機械メーカーを顧客とし、CAEソフトウェアの開発・販売やCAE解析・開発サービス、AIソリューションの提供を行っています。
パッケージソフトウェアの販売代金や保守サービス料、受託開発・解析の対価を収益源としています。試験機事業との連携によるデジタルツイン技術の展開も進め、運営は主に先端力学シミュレーション研究所が行っています。
■(4) その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、グループ外への不動産貸与などのサービスを提供しています。
相模原工場の一部敷地を貸与したことによる賃料収入等を収益源としています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の単体ベースの業績は、一時的な最終赤字を計上した時期もありましたが、売上高は着実に成長を続けています。特に直近では、主力事業での受注残高の順調な消化などにより、売上高が大きく伸長しています。
| 項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40.4億円 | 30.5億円 | 33.7億円 | 34.8億円 | 44.7億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 | 1.5億円 | 1.4億円 | 0.4億円 | 1.6億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 5.0% | 4.1% | 1.1% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.4億円 | -7.3億円 | 0.6億円 | 0.7億円 | -0.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構造を見ると、増収効果により売上総利益が順調に拡大し、利益率も維持されています。販売費及び一般管理費は増加したものの、増収による増益効果が上回り、営業利益率も大幅に改善しました。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 34.8億円 | 44.7億円 |
| 売上総利益 | 12.0億円 | 15.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.3% | 34.5% |
| 営業利益 | 0.3億円 | 1.5億円 |
| 営業利益率(%) | 0.7% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.1億円(構成比43.6%)、業務委託費が1.2億円(同8.3%)、福利費及び厚生費が1.1億円(同8.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の試験機事業は、高付加価値案件の増加や受注残高の順調な消化により、大幅な増収を達成しました。エンジニアリング事業は堅調に推移し、当期より新規連結されたデジタル事業が売上の拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年2月期) | 売上(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 試験機事業 | 30.8億円 | 36.8億円 |
| エンジニアリング事業 | 3.9億円 | 3.7億円 |
| デジタル事業 | - | 4.1億円 |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 34.8億円 | 44.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態である「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年2月期 | 2026年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5.9億円 | 5.6億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | 1.6億円 | 3.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「技術への挑戦と顧客からの信頼」「人間性の尊重」「地域社会への貢献」を企業理念として掲げています。創業当初からの試験機事業をはじめとして、社会インフラの安全・安心を支える事業などを展開し、「技術と知識で豊かな社会の実現に貢献する」ことを使命として事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティ基本方針において「従業員一人一人が働きがいをもって活躍できる職場の形成」を掲げています。多様性の確保に努め、性別や国籍、障害の有無等に関わりなく多様な人材が能力を発揮できる企業風土の醸成を重視し、安全・安心な労働環境の提供に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と安定的な収益の確保による企業価値の向上を基本的な経営目標としており、中長期的な経営指標として以下の目標を掲げています。
* 売上高成長率:10%以上
* 営業利益率:10%以上
* ROE(自己資本利益率):20%以上
* 粗利益率:35%以上
* 営業利益成長率:10%以上
* ROIC(投下資本利益率):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、新たな中期経営計画に基づき、「デジタル化の推進」「持続的成長のための投資」「人材教育への投資」を重点施策に掲げています。ハードウェア一辺倒の事業からソフトウェアやAI等の技術と融合した事業体への発展を目指し、デジタルツイン技術を活用したソリューションの提供により付加価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、事業基盤の強化と拡大のため、必要な人材の確保と育成を重要な経営課題と認識しています。従業員の能力に応じた公平な処遇を行うとともに、社員の自立的な成長を基本とする人事制度等を導入し、会社の成長と合わせて従業員が自発的にやりがいを持って成長できるよう教育訓練を充実させています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | 41.3歳 | 7.3年 | 6,247,819円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | 80.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 80.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は有価証券報告書に該当数値が存在しない項目について記載がありません。
また、同社は有価証券報告書において、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、東京衡機試験機の男性労働者の育児休業取得率(100.0%)、東京衡機エンジニアリングの管理職に占める女性労働者の割合(50.0%)、東京衡機試験機の労働組合員数(47人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外有力メーカー等との販売提携解除の可能性
同社は新製品開発に加え、市場ニーズに即応するため海外有力メーカーと試験機製品の販売契約等を締結しています。不測の事態によりこれらの提携契約が継続できなくなった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模な製品リコールや製造物責任賠償の発生リスク
品質管理体制を強化し製品・サービスの信頼性維持に努めていますが、予期せぬ欠陥が発生する可能性はゼロではありません。大規模なリコールや製造物責任の追及が行われた場合、多額のコストが発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外事業における為替変動やカントリーリスク
同社の事業には海外における商品の仕入や販売が含まれており、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。また、海外特有の予期せぬ法規制変更や社会的・経済的混乱が発生した場合も、事業活動に支障をきたす恐れがあります。



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