※本記事は、株式会社きもと の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年5月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. きもとってどんな会社?
主力である工業用フィルム製品の開発・製造に加え、デジタルツインなどのデータ処理サービスも展開する技術開発型企業です。
■(1) 会社概要
1961年に株式会社きもと商会として設立され、翌年には埼玉工場を新設し機能性フィルムの製造を開始しました。1967年に現社名へ変更し、1994年に店頭登録、2005年に東証二部、2006年には東証一部へ上場しました。現在は東証の市場区分見直しによりスタンダード市場に上場しています。
2025年3月31日時点の連結従業員数は432名(単体355名)です。筆頭株主はきもと共栄会(持株比率15.21%)で、第2位は取締役会長の木本和伸氏(5.38%)、第3位は個人株主の井村俊哉氏(5.34%)となっており、創業者一族や従業員持株会が主要株主に名を連ねています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は小林正一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林 正一 | 代表取締役社長 | 1985年入社。筑波営業所、東京支店等を経て、Digital Twin事業部長、営業本部長を歴任。2024年4月より現職。 |
| 木本 和伸 | 取締役会長 | 1979年入社。情報システム事業部長、プリンティング事業部長等を歴任。2009年代表取締役社長、2020年代表取締役会長兼社長を経て、2024年4月より現職。 |
| 引場 孝 | 代表取締役常務 | 1998年入社。営業本部、技術本部等を経て、KIMOTO TECH, INC.執行役員を兼任。2024年4月より技術本部長として現職。 |
| 山田 資子 | 代表取締役常務 | 1996年入社。管理本部長、KIMOTO AG執行役員等を歴任。2024年4月よりDigital Twin事業部長として現職。 |
| 紀 暁東 | 取締役 | 2004年瀋陽木本実業有限公司入社。同社董事長兼総経理、当社技術副本部長等を歴任。2024年4月よりDigital Twin事業部筆頭副事業部長として現職。 |
| 首藤 宣幸 | 取締役 | 1994年入社。KIMOTO TECH, INC.等を経て、営業本部チーフゼネラルマネージャーを歴任。2025年4月よりWWF(海外事業担当)として現職。 |
社外取締役は、伊藤麻美(日本電鍍工業代表取締役)、根來恒男(元ケイラインロジスティックス常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「東アジア」「欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
同社(連結財務諸表提出会社)が中心となり、フィルム事業、デジタルツイン事業、コンサルティング事業を行っています。フィルム事業では、フィルム表面加工技術を用いた各種工業用材料を製造・販売し、在外子会社へも供給しています。デジタルツイン事業は画像処理や地理情報データ作成等を担います。
主な収益は、顧客への製品販売やサービス提供による対価です。運営は主に株式会社きもとが行っています。コンサルティング事業では業務改善提案や関連機器の販売を行っています。
■(2) 北米
米国において、フィルム事業の製品製造および販売を行っています。同社グループの製品を米国内外で販売するほか、日本や他地域の販売拠点へ製品を供給する役割も担っています。
収益は、製品販売による売上です。運営は、製造・販売会社であるKIMOTO TECH, INC.が行っています。
■(3) 東アジア
中国において、デジタルツイン事業およびコンサルティング事業の製品製造、ならびに同社グループ製品の販売を行っています。製造した製品は同社(日本)へ供給されるほか、中国内外で販売されます。
収益は、製品販売およびサービス提供による対価です。運営は、製造・販売会社である瀋陽木本実業有限公司が行っています。
■(4) 欧州
スイスを拠点に、同社グループ製品の欧州市場における販売を行っています。
収益は、製品販売による売上です。運営は、販売会社であるKIMOTO AGが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は回復傾向にあり、第65期には113億円に達しました。利益面でも、第63期には赤字を計上しましたが、その後V字回復し、第65期には経常利益率が12%を超える高水準となっています。当期純利益も大幅に増加し、収益性が大きく改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 122億円 | 96億円 | 99億円 | 113億円 |
| 経常利益 | 5.3億円 | 8.2億円 | -5.1億円 | 4.1億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 6.7% | -5.3% | 4.1% | 12.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5.5億円 | 7.6億円 | -10億円 | 5.4億円 | 7.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が大幅に伸長しました。特に営業利益率は前期の2.2%から11.9%へと劇的に改善しており、増収効果に加えてコストコントロールが奏功していることが伺えます。売上原価率の低下も利益押し上げに寄与しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 99億円 | 113億円 |
| 売上総利益 | 32億円 | 44億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.9% | 39.0% |
| 営業利益 | 2.1億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比33%)、研究開発費が6億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントが売上・利益ともに全体を牽引しており、特に利益面での貢献が顕著です。北米セグメントは増収ながらも赤字が続いています。欧州セグメントは増収増益となりました。東アジアセグメントは売上規模が小さく、若干の損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 87億円 | 97億円 |
| 北米 | 6.0億円 | 8.3億円 |
| 東アジア | 0.1億円 | 0.1億円 |
| 欧州 | 6.0億円 | 7.3億円 |
| 連結(合計) | 99億円 | 113億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
きもとグループは、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の動きを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、将来の事業基盤強化に向けた資金の動きを表します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.1億円 | 18億円 |
| 投資CF | -6.4億円 | -14億円 |
| 財務CF | -2.8億円 | -5.7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、技術開発型の企業としてグローバルに発展することを通じて、顧客・株主および従業員の満足を得ることに努めています。また、地域の発展と繁栄に寄与し、地球環境を守り、未来に向けて社会とともに前進することを使命としています。
■(2) 企業文化
環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営を推進し、「人と未来を守る環境フレンドリーな企業へ」をスローガンとして掲げています。創業以来、従業員が部署や職位に関わりなく自由に意見を交わすことで技能を伝承し、新たな挑戦を繰り返すことで成長する企業風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、グローバル企業として継続的かつ収益性の高い企業を目指し、100年継続企業となることを目標としています。具体的な経営指標として、売上高および営業利益率を重要指標として意識した経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
フィルム事業ではIoT関連ビジネスへの進化や海外市場への展開強化を進め、デジタルツイン事業ではDXの広がりに合わせて技術を磨き、多様な産業の生産性向上に貢献する方針です。また、グローバル体制の強化や新製品開発プロセスの最適化、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた環境対応にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル展開を推進するため、国籍、学歴、性別、年齢の壁を越え、多様な文化を理解しコミュニケーションスキルの高い人材を育成する方針です。また、業務改革をワールドワイドに推進し、多様な顧客ニーズに迅速に応える自律分散型のスマートな組織を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.5歳 | 23.8年 | 5,256,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員に占める女性の比率(27.3%)、女性の育児休業取得率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先・製品・技術等への依存のリスク
収益の大部分をフィルム事業が占めており、市場や技術の変化を予測できず新製品投入が遅れた場合や、競合製品による価格競争激化、技術革新による需要激減などが起きた場合、収益性が低下する可能性があります。これに対し、情報収集強化や高付加価値製品開発による差別化を図っています。
■(2) 特有の法的規制・取引慣行の影響
製造工程で使用する有機溶剤は各種法規制を受けており、規制強化により新たな設備投資が必要となる可能性があります。また、知的財産保護が不完全な地域では、製品や技術の模倣を防止できないリスクがあります。これに対し、環境配慮型プロセスの推進や積極的な権利保護を行っています。
■(3) 重要な訴訟事件等の発生の影響
第三者の特許権侵害の可能性を完全に排除することは困難であり、訴訟提起を受けた場合、対応に多大な費用と時間を要し、事業戦略や業績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、製品の欠陥等により損害賠償請求を受けた場合、利益や信用の喪失につながるリスクがあります。
■(4) 固定資産減損のリスク
複数の生産拠点を所有し設備投資を行っているため、収益性低下や地価下落により減損損失が発生し、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、歩留向上による原価低減、開発スピード向上、受注生産方式の採用などの施策を進めています。



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