きもと 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きもと 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

きもとは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、高機能材料事業とデジタルツイン事業を主力とする企業です。フィルム表面に多様な機能を付加する各種工業用材料の製造・販売や、空間情報データ作成を展開しています。2026年3月期は通信機器向け等の反動減や自動車生産低迷の影響を受け、減収減益となりました。


※本記事は、株式会社きもとの有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年5月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. きもとってどんな会社?


フィルム加工技術による高機能材料と、データ活用によるデジタルツイン事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1961年2月にきもと商会として設立され、同年埼玉工場を新設し機能性フィルム事業部門の製造を開始しました。1967年にきもとへ商号変更し、1973年以降はアメリカやスイスに販売・製造子会社を設立してグローバル展開を進めました。2005年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌年には市場第一部銘柄に指定されています。

従業員数は連結で417名、単体で341名です。筆頭株主はきもと共栄会で、第2位は創業者の木本和伸氏、第3位は精和です。

氏名 持株比率
きもと共栄会 15.32%
木本和伸 5.56%
精和 4.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は小林正一氏が務めています。社外取締役の比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
小林正一 代表取締役社長 1985年同社入社。営業副本部長、Digital Twin事業部長を経て、2023年常務取締役。2024年より現職。
引場孝 代表取締役常務 1998年同社入社。営業本部長、技術本部長、KIMOTO TECH, INC.執行役員等を歴任。2024年より現職。
山田資子 代表取締役常務 1996年同社入社。営業統括グループMDグループ、管理本部長、KIMOTO AG執行役員等を歴任。2024年より現職。
木本和伸 取締役会長 1979年同社入社。プリンティング事業部長、KIMOTO AG社長等を経て、2009年に代表取締役社長。2024年より現職。
紀暁東 取締役 2004年瀋陽木本実業有限公司入社。同社総経理等を経て、2026年より現職。
首藤宣幸 取締役 1994年同社入社。営業副本部長、KIMOTO AG執行役員等を歴任。2026年より現職。


社外取締役は、根來恒男(元ケイラインロジスティックス専務取締役)、小野寺洋子(光英科学研究所代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「東アジア」「欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


日本セグメントでは、高機能材料事業とデジタルツイン事業を展開しています。高機能材料事業ではフィルムの表面加工による工業用材料の製造・販売を、デジタルツイン事業では空間情報データ作成やソフト開発受託、機器販売などを行っています。
運営は主にきもとが行い、製造した製品を国内外の顧客や海外子会社へ供給して収益を得ています。

(2) 北米


北米セグメントでは、高機能材料事業の製品を製造し、米国内外の通信機器や産業分野の顧客に向けて販売しています。
運営は米国の製造・販売子会社であるKIMOTO TECH,INC.が行い、自社で製造した製品を同社や他の販売拠点に供給することで収益を得ています。

(3) 東アジア


東アジアセグメントでは、デジタルツイン事業の製品を製造し、中国内外で販売しています。
運営は中国の製造・販売子会社である瀋陽木本実業有限公司が行い、製造した製品をきもとに供給するとともに、直接顧客へ販売して収益を得ています。

(4) 欧州


欧州セグメントでは、同社グループが製造した製品を欧州市場の自動車産業や住宅市場の顧客に向けて販売しています。
運営はスイスに所在する販売子会社であるKIMOTO AGが行い、主に高機能材料製品の販売を通じて収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は96億円から122億円の間で推移しています。2023年3月期には減収により経常赤字となりましたが、その後は回復基調にあり、直近では利益率10%を超える水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 122億円 96億円 99億円 113億円 105億円
経常利益 8億円 -5億円 4億円 14億円 12億円
利益率(%) 6.7% -5.3% 4.1% 12.2% 11.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 -10億円 5億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上総利益率は約39%と安定して推移していますが、売上高の減少に伴い売上総利益および営業利益は減少傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 113億円 105億円
売上総利益 44億円 41億円
売上総利益率(%) 39.0% 38.9%
営業利益 13億円 11億円
営業利益率(%) 11.9% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が9億円(構成比29%)、研究開発費が5億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントが収益の柱であり、安定した利益水準を維持しています。一方、北米および欧州セグメントは市場環境の悪化による影響で減収となり、営業損失を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 97億円 95億円 14億円 14億円 14.6%
北米 8億円 5億円 -1億円 -3億円 -49.3%
東アジア 0.1億円 0.1億円 -0.3億円 -0.6億円 -1220.0%
欧州 7億円 5億円 1億円 -0.2億円 -5.1%
連結(合計) 113億円 105億円 13億円 11億円 10.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、本業で得た資金を投資や還元に充てる健全型のキャッシュ・フローです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 6億円
投資CF -14億円 -16億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術開発型の企業としてグローバルに発展することにより、顧客・株主及び従業員の満足を得ることに努め、地域の発展と繁栄に寄与し、地球環境をまもり、未来に向けて社会とともに前進します」を企業理念に掲げ、100年先も続く企業の実現を目指しています。

(2) 企業文化


従業員が職務や職位に関わりなく自由に意見を交わすことでその技能等を伝承する企業風土が創業時から連綿と受け継がれています。新たな挑戦を繰り返すことが従業員の技能向上の基礎となっており、自律分散型組織への変革を推進しています。

(3) 経営計画・目標


第6次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)において、収益性及び資本効率を重視した経営を推進しており、以下の目標を掲げています。

* ROE(自己資本利益率)8%の達成

(4) 成長戦略と重点施策


「新しい可能性への挑戦」をビジョンに掲げ、従来の枠組みを超えて化学技術、デジタル技術及びノウハウを融合させることで、社会課題の解決に貢献します。高機能材料事業では環境配慮型製品や成長分野への展開を進め、デジタルツイン事業では自社のDX実績を活かしたソリューション提供を拡大します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


イノベーションの源泉である「人財」の活躍が不可欠であると考え、従業員一人ひとりの成長と企業の成長を連動させる自律分散型組織への変革を推進しています。新人事制度の導入を通じて、多様な経験機会を提供し、幅広い領域で活躍できる人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.5歳 24.8年 5,523,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 88.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.8%
男女賃金差異(パート・有期) 89.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員に占める女性の比率(27.3%)、キャリアアップに関する研修への参加率(男性99%、女性100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の製品・技術への依存

同社グループの収益の大部分は高機能材料事業によっています。市場のニーズや技術の変化を十分に予測できず新製品の投入が遅れた場合や、競合製品がより低価格で導入され価格競争が激化した場合、収益性を保てず業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 環境規制の強化

機能性フィルムの製造工程で有機溶剤を使用しており、法規制を受けています。今後、これらの規制が強化されたり、新たな法的規制が設けられたりした場合には、新たな設備投資が必要となり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 固定資産減損のリスク

国内外に複数の生産拠点を所有し、設備投資を積極的に実施しています。収益性の低下による大幅な業績悪化や固定資産の市場価格の下落があった場合、固定資産について減損損失が発生し、財務状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。