グラファイトデザイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グラファイトデザイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

グラファイトデザインは東京証券取引所スタンダード市場に上場するスポーツ用品メーカーです。主にゴルフシャフトの製造販売とゴルフクラブ組立加工を手掛けています。直近の業績は、ゴルフクラブ用カスタムシャフト等の受注量減少等の影響を受け、減収減益となりました。世界市場向けの開発・製造に注力しています。


※本記事は、グラファイトデザインの有価証券報告書(第37期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. グラファイトデザインってどんな会社?


ゴルフシャフト等スポーツ用品の製造販売と、ゴルフクラブ組立加工を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1989年に設立しブリヂストンスポーツと取引を開始、1990年に埼玉県秩父市に工場を設け操業しました。その後米国メーカーとの取引拡大や海外拠点の設立を経て、2001年に上場を果たしました。2002年からは自社ブランドのゴルフシャフトの製造販売を開始し、現在に至っています。

同社の単体従業員数は128名です。筆頭株主は創業家・役員である山田拓郎氏で、第2位は事業会社の東レ、第3位はTNNアドバイザーズです。

氏名 持株比率
山田拓郎 14.56%
東レ 5.55%
TNNアドバイザーズ 5.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山田拓郎氏が務めています。取締役7名中2名が社外取締役です(比率28.6%)。

氏名 役職 主な経歴
山田拓郎 取締役社長(代表取締役)営業本部管掌 2000年東レインターナショナル入社、2002年同社入社。国際事業部長などを経て2016年代表取締役社長就任。2024年より現職。
木本裕二 取締役副社長(代表取締役)企画本部 本部長 1983年オリムピック入社、1989年同社入社。営業本部長などを経て2016年代表取締役副社長就任。2022年より現職。
松田喜良 専務取締役開発部 部長 1985年オリムピック入社、1991年同社入社。開発部長兼製造部長などを経て2016年取締役専務就任。2022年より現職。
窪田悟 常務取締役管理部担当 1981年鈴茂器工入社、1997年同社入社。経理部長兼管理部長代理などを経て2018年常務取締役就任。2023年より現職。
松本敬三 取締役製造部担当・品質管理室兼基礎研究室室長 1984年オリムピック入社、2012年同社入社。品質管理室長兼生産技術部長などを経て2014年取締役就任。2023年より現職。


社外取締役は、和田壮司(元PwCアドバイザリー)、徳山秀明(元プライスウォーターハウスクーパースベルギー)です。

2. 事業内容


同社は「スポーツ用品関連事業」の単一セグメントのもと、ゴルフシャフト製造販売事業、ゴルフクラブ組立加工事業およびその他事業を展開しています。

ゴルフシャフトの製造販売


日本や米国のゴルフクラブメーカーや代理店向けに、比較的高価格・高付加価値なカーボン製ゴルフシャフトの製造販売を行っています。顧客の新製品開発の企画段階から提案を行う「デザインイン」を強みとしています。

ゴルフクラブメーカーや代理店からの製品販売代金を主な収益源としています。また、小売店を通じて一般ユーザー向けの交換用シャフトの販売も行っています。運営は同社が行っています。

ゴルフクラブの組立加工


ゴルフクラブメーカーからの委託により、特注製品などのゴルフクラブの組立加工を受託しています。メーカーとの関係強化を目的に開始され、自社ブランドシャフトの動向調査としても活用されています。

ゴルフクラブメーカーから受け取る組立加工の受託手数料などを主な収益源としています。運営は同社が行っています。

その他


ゴルフシャフト製造で培った炭素繊維積層技術を応用し、CFRP製品の開発と製造を行っています。自動車部品メーカーとのスポーツカー用オプションパーツの共同開発や、他スポーツ分野の製品を展開しています。

自動車部品メーカーや一般顧客などへのオプションパーツ、カーリングブラシ用ハンドルといった製品の販売代金を収益源としています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、好不調の波が見られます。3期前までは増収増益基調で高い利益水準を維持していましたが、その後は受注状況の変動や原価率の上昇等により、売上と利益が大きく変動しています。当期は減収減益となり、利益率も低下傾向にあります。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
売上高 33億円 36億円 27億円 31億円 27億円
経常利益 8億円 9億円 2億円 6億円 2億円
利益率(%) 22.7% 25.2% 8.9% 18.2% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 2億円 4億円 1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、当期は減収に加えて原価率の上昇等により売上総利益率が低下しました。さらに物価高による諸経費の上昇も重なり、営業利益率も大きく低下しています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上高 31億円 27億円
売上総利益 18億円 15億円
売上総利益率(%) 57.2% 54.6%
営業利益 5億円 2億円
営業利益率(%) 17.4% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が3億円(構成比20%)、給料及び手当が2億円(同19%)を占めています。また、売上原価に含まれる当期総製造費用のうち、労務費が35%、材料費が32%を占めています。

(3) セグメント収益


事業部門別の売上動向を見ると、主力であるゴルフシャフト製造販売が大きく減収となり全体の足を引っ張る形となりました。ゴルフクラブ組立加工は横ばい、その他事業は新規分野への展開等により増収となっています。利益データは開示されていません。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
ゴルフシャフト製造販売事業 29億円 25億円
ゴルフクラブ組立加工事業 2億円 2億円
その他 0.6億円 0.8億円
連結(合計) 31億円 27億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


キャッシュ・フローの状況は、本業の資金創出がマイナスとなる一方、借入等の資金調達によって投資を継続する「勝負型」となっています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 7億円 -2億円
投資CF -5億円 -8億円
財務CF 1億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「世界の人々を笑顔にする “もの創り”」を企業理念に掲げています。ここには「開拓精神」「貢献」「笑顔」というテーマが込められており、価値ある製品の提供を通じて人々を笑顔にすることを目指しています。持続可能な企業活動により社会や株主に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


技術と品質の向上に挑み続ける開拓精神を重視する文化があります。機械による自動化が困難な製品を、人材に宿る技能によって一本一本手作りで生産しており、もの創りを通じて創造力豊かな人材を育成しています。また、多様な人材の尊重と働きやすい環境づくりも大切にしています。

(3) 経営計画・目標


売上・利益の成長や生産体制の改善に取り組みながら、収益力の強化と企業価値の向上に努めています。

・営業利益率の成長

(4) 成長戦略と重点施策


主力のゴルフシャフト製造販売事業において、国内外の市場変化に対応しつつブランド価値の向上と安定的な利益創出を図ります。

・日本・世界市場での収益力強化
・PGAツアー選手へのサポート強化によるブランド露出の向上
・アイアン市場での「RAUNE」ブランド定着とシェア拡大
・炭素繊維積層技術を応用した第2の事業基盤確立

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は製品の多くを手作りで生産しているため、人材を中心的な経営資源と位置づけています。性別・国籍・年齢など多様な人材を持続的に確保・育成し、各種研修制度の充実や安全な職場環境の整備を図ることで、就業満足度の向上と後進への技能伝承を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 42.8歳 15.0年 5,752,945円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 62.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 65.6%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 42.9%


※女性管理職比率については、現状課長職以上の女性管理職が在籍していないため該当がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(100%)、ストレスチェック受検率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達リスク


同社製品の主要素材である炭素繊維について、飛行機用途の増産などが進む場合、品薄感が生じることが想定されます。将来的な原材料価格の上昇や供給不安が発生した際には、同社の経営成績や販売政策に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外生産における為替・労務費リスク


米国市場向けの製品は中国の生産委託先で製造されています。中国元の大幅な切り上げや現地での労務費の大幅な上昇が実施された場合、製造コストが増加し、同社の経営成績等に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 特定販売先への依存リスク


日本および米国のゴルフクラブメーカーや代理店を主要な販売先としていますが、特定販売先に対する販売依存度が高い状況です。販売先の販売戦略や動向、競合他社製品の採用状況によっては、同社の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。